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[ まるで何時か、"猫"がやってきた日、
遊び相手を無くした男が、
髪を手繰った其れによぅく似て、 ]
[ ペンギンは溺れ死んだりしねぇんだぞ、と
重たい軍服を身につけたまま 水に蹴り出される。
抑ペンギンとは身体の作りが違う! とか
…そういう正論よりも " 命 "の方がずぅっと大事だった。
泳げないことには、此れから先
死ぬよりキツいことは目に見えていたから。
…少しでも沈めば、ヘルメットごと頭を引かれ、
留め具が首を絞めるようで。]
[ 死なない為の "授業"を 幾つも渡ってきた。
…今となっては 想像もつかないようであるけれど。
只、"おにきょうかん"という言葉に 思い出は有れど、
─── 確かにだいぶ 怒られはしたが、
彼の教官は、普段は結構気の良い男だった、とも思うのだ。 ]
──── 君が生きるためなら、
怒ることだって 有るさ。
[ 彼女の顔は 見ないまま
言葉のうちを 知らぬまま
……たぶんね、 と 添えて。*]
── おいろなおし の うらばなし ──
[ プール近くの簡単な売店で、きっと、
このbuffetの"ドレスコード"のために、仮装の服が揃っていたのだろう。
びしょぬれになってしまったアロハシャツを着替えるため、
何かほかのものを…と 覗いたは良いものの
…何故やら店員の進めてくれる"仮装"はわりと際どかった。
" えっ これ 男用なの。 "……とか、
パーティションの向こうで呟く男の声があったとか…]
[ …そうして結果的に、白い帽子に白い服を着ている。
所謂 "コックさん"の 格好だ。
時々間違えられて料理の説明をもとめられたりしているが、
にこやかに、そつなくこなしてしまう辺り "主"とは 何なのやら。 ]
── buffet ──
[ つまりは、コック服の男が料理を指差し、
自分や彼女の皿に取り分けていく図になっている。
この男は 見た目と家柄のわりに、
(…軍人家系だ。
また、"男は女好き"っていうのも血筋である。)
ジャンクな食事を選ぶ節がある。
フライドポテトや、 がっつりめの肉が好き。
肉って赤身の方が美味いよね。
そんなわけで皿の上は割合茶色い。]
ユーリエに引き摺ってもらうのも良いけどなあ。
[ そう、嘯きつつ、
片手に拾ったのは、"ブルー・ハワイ"…ラムベースのトロピカルカクテルだ。
まだアロハシャツの余韻を残しているらしい。
たぶん、言うわりにそんなに飲まない。
どうにもアメリカンな皿とドリンクである。
ローストビーフを切り刻むおんなじような服の 男の前で
…偽コックの足はぴたりと止まった。 ]
──── 君は……、
[ "ひとりでも生きていけるかい。"
…愚問だった。そう 口にする前に噤む。
きっと 彼女の人生に"ソマリ"は必ずしも要るものじゃあない。……きっと。
そう "誰だって良かった"筈だ。
…彼女は 買われた身なのだから。]
[
幾度、 俺は買っちゃあいないんだと、 言おうと思ったろう。
幾度、 "君のともだち"は皆救われたのだと 話そうと思ったろう。
────何故? さあ。
本日二度目の問いだ。
"いまさら" ほんとうのことなんて
言えようはずも 無かった。 只、それだけ。]
…自分で選ぶなら、 僕の真似はしない方がいいよ。
[ 彷徨う指先をサラダバーの方に導いてやろうか、
…すこぅしだけ 悩んだ。
結果、男の方はローストビーフを切って貰うことにする。
珍しく、 "従者"のぶんを 共に頼むことは 無かった。]
…君も すこぅし 大人になったんだねえ。
[ 立席用のテーブルひとつに皿とドリンクを幾つか並べ、
髪を下ろした姿を 正面からしげしげ 眺め
ぽつり と 呟いた。
記憶の中の"彼女"は 恐らく
十にも満たない 少女だから、
変わったものだなあ、 と 思う
時が止まっているのは 一体 誰 なのだろうか。
…そんなのは 分かりきってさえ 居た。**]
/*
あとやっぱり、こいつは結局身売りされた子達のなんたるかは外からしかわかってないので
案外安易に綺麗事を言う。
めも。
でもあのときに捕まってた女の子たちの今の居場所は把握してそうなところがある。
過去売られた子たちも行方だけは追ってるよ…然しそっちは管轄外なので詳しくないのだ…(ソマリ事情)
[ おんなじ景色の皿に、
─── やっぱり野菜がいるかなあ? とか
少し、 思いはすれど、
己から取りに行くようなことは、結局 しないで、]
僕だって 全部を教えられるわけではないのだよ、ユーリエ。
例えば 食事のバランスだとか……
部屋を常にきれいにしておく方法とか。
[ 抑、"普通のおんなのこ"の生活にそんなに詳しくなかった。
…海軍士官の女性は "普通"じゃあないと思うので。
このくらいの年齢のおんなのこには、
彼氏がいたり 同年代の友達がいたり する のか、
もし、楽しそうに、嬉しそうに語られたときに、
"ソマリ様でない誰か"は 父親なのか、 兄なのか、
─── 嫉妬を隠しもせずにふくれっ面をする、 それだけは想像ができる。
はじまりが違えば きっと そう言う人生だって あったのに
─── 呪詛を掛けたのは誰か、 ]
[ ずぅっと昔の記憶
若き軍学校の少年に、 強く つよく疵を残した
" 初恋 "
白い髪に 紅色の瞳、
名もない少女の 肖像画 ]
[ ── 写真立ての向こうを思い、 ]
さあ、 僕は "何"だろうね。
君の成長が、 すこぅし 嬉しくて
…すこぅし 寂しい。 そういう者さ。
[ "おや"には もう 成れないし
きっと 唯の主人でもない。
コック服の襟を 片手で直して
ブルー・ハワイの 邪魔な傘飾りを 取り外した。]
[ "酔ったわけでもないのに"…良く回るものだ。
口から生まれたような男の 真似か、
…それもちょっと 良くない気がする。
怒られたように 視線を下げる。]
──── 彼女はね、 別の家を持とう、 と 言うんだよ。
[ …話の、流れで
"彼女"が "指輪の送り主"というのは 知れたろうか。
指先で傘を弄くりながら、 ぽつり "ほんとうのこと"。
抑、 別段親しい女でさえ無いことは …まあ、 "どうでも良い"が、父親に手を回せる"家"の女ではある。
軍人家系の"ソマリ"には 結構 良い話ではあった。
─── だから、 ただの 我儘なんだ。 ]
僕はあの "コレクション"を捨てる気にはなれないし
…綺麗にしておく のも "未だ" …やる気になれないのだよ。
君がいるなら良いけれどね。
[ …厳密には。
ユーリエが唯の"従者"であるなら、連れていくことも出来たけれど
─── 其の辺りにも "本日二度目の質問"は 響いてくるのだ。
髪を耳にかけた 目の前の 白髪の少女は
あくまで ソマリ家で"保護"している少女なので、]
…そうも いかないのだけど。
今回だってね、 ユーリエ。
返事をさきのばしにするための旅なのだよ。
帰る日さえ 知らせてない。
[ 邪魔を取り去ったグラスに
漸く 口をつけた。
理想郷の目的地の、 其の先。
─── そんなことは全く 考えちゃあいなかったんだ**]
( 腕を引かれた、髪を掴まれた、
嗚呼此から人としての"わたし"が死ぬ、
── 等と、愚かにも、モノのくせに、 )
[ "買われる"前の 想起。 ]
[ 相手なんか、誰でも良かった。
誰だって どうせ、わたしは選べないのだから。
だから 誰かの"かわり"になればいい。
望まれるなら 愛を囁かれる相手になればいい。
その腕に 抱かれる者に、
そうすれば きっと、まだ、
"わたし"が望まれていないのなら、其れが、
──── 嗚呼、
あと どれだけ、呪いを重ねれば、 ]
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