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― 西門付近 ―
[こちらの宣に、今すぐ捕虜を殺してもいいのとなんのと騒ぐ妖術師に向けるのは、揺らぎない意志を込めた視線と笑みひとつ]
は、そんな脅しに屈するようなら、最初っから抵抗なんてするはずねぇだろっての。
……ここにいる連中は、てめぇの薄汚い策なんかにゃ屈しねぇよ。
[はきと言い切るのと、風が燻るような臭いを運んでくるのは、どちらが先だったか。
風はやがて、黒煙と魔物たちの悲鳴を近くまで運んでくる。
感じる火の気配に、周囲を取り囲む魔物たちが落ちつきなくざわめいた]
……っつか、手段としちゃありありだけどな。
[前線で動いてる方の身にもなりやがれ、とは口にはしない。
口を開けば、まともに煙を吸い込みかねない状況。
状況的にも、短期決戦で決めるべき、との判断は早い。
聖地が、そして気高いと称賛される姫が妖術師に屈する可能性など、頭の中には一欠片もなく。
大剣を両手で握り直し、距離を測るべく目を細めた。*]
― 西門付近 ―
[一人、突出している状況。
他の動きを確かめる術はない。
けれど、妖術師の脅しに屈する者などいない、と自然に思えたのは、団結して護りを固めんとしていた人々の姿を見ているから。
『何でも屋』という稼業的には、甘い考えと言える。
それでも]
……ここで手ぇ抜くわけにゃいかんからなぁ。
[小さく呟き、不意を打つような踏み込みから横薙ぎの一閃を放つ。
その一撃は、とっさに眼前に躍り出た魚の異形を捕えるに留まり。
舌打ち一つ落とし、下がろうとした矢先、足元に何かが絡みついているのに気がついた]
― 聖地・大通り ―
[食堂の賑わいに目を細めるも、そちらに足は向かわず。
のんびりと歩いていると、おにいちゃん、と呼びかける声が耳に届いた]
ん? ああ……。
[振り返った先には、猫を抱えた少女と母親の姿が見える。
共に在る男性は父親だろう]
どーしたんだ、一体。
[膝をついて視線を合わせて問いかければ、みんなを守ってくれたお礼がしたかったの、という答えが返る。
どうやら、昼間の立ち回りの話が届いたらしい]
そーか、わざわざありがとな。
でも、もうちょっと続きそうだし、お礼は全部終わってから改めて、にしてもらえっかな?
そうすれば、それを楽しみに全力出せるからなあ。
[にっこり笑ってこう言って、ぽふぽふと頭を撫でてやる。
もうちょっと続く、という言葉に一家の表情には僅かに影が差すが]
なに、心配すんなって。
ここにゃ、強い連中がたくさんそろってる。
何より、みんなの気持ちが一つだからな……あんな奴に負けたりしねーよ。
[それを吹き飛ばすように、明るい声を上げて。
絶対負けない? と問う少女に頷きながら、もう一度その頭を撫でてやった]
そんなわけですから、ま、ご心配なく。
今夜はゆっくり休んでくださいよっと。
[そんな風に軽い言葉を向けて親子と別れ。
ふらりと向かった先は、物見塔。
人の賑わいも嫌いではないが、どちらかというと静かな方が性に合う、というのは。
かつて同じ道を志した者でもなければ知らぬ事だろうけれど。*]
― 外壁上 ―
[塔に登れば、警戒に当たる者たちが振り返る]
あー、何でもない何でもない。
……ちょっと、風に当たりたくてな。
[何かありましたか、と言う問いにさらりと返し、外壁の上へと移動する。
今は穏やかに感じる風に吹かれつつ、ふと、思うのは置いてきた時間の事]
[貴族の家の長子として生まれ、望む望まざるに関わらず、多くの期待を受けて過ごしていた。
そんな中で、騎士としての道を志したのは数少ない自らの意思で選んだ事。
それ自体は、家の方針による突然の呼び戻しと、その後の盛大な親子喧嘩の果ての出奔よって途絶える事となるのだが]
……その言葉、そのまま返してやるよ。
[その日々の中、向けられていた言葉>>123にはいつもこう返していた。
最初の内は戸惑いもあったけれど。
鍛練を重ね、ぶつかる内に見えた表情の変化。
それが増える毎に、こちらも普段は晒さぬ素の物言いが増えていったのもまた、接した当事者以外は知らぬ事]
……まー、しかし、ほんとになんつーか。
[幾度か垣間見た姿を思い返して、ふ、と零れるのはため息]
今まではここに来ることあっても、上手い事避けてたんだがなぁ。
[今度ばかりは捕まるか、なんて。
ぼやくような言葉は緩く、風に散った。*]
……は?
[驚いた……というよりは、呆れた、の方が大半だったが、とにかくどこかとぼけた響きの声が上がる。
念のために、と愛剣は担いでいたが、この展開は予想外だった……のだが]
走り回ってお疲れだろーに。
……やらなきゃ気が済まん……ってやつですかねぇ。
[夜中の仕合の理由は、やらなきゃ気が済まない何かがあった事が大半で。
これは引かねぇな、というのはわかったから、担いでいた大剣を抜いて、切っ先下げた低い構えを取る。
不利な状況下での訓練は、自身と最も相性がいい武器を定めてからは欠かさなかったな、なんて。
一瞬だけ、意識を彼方に飛ばした後]
俺でよければ、お付き合いしましょ。
[軽い口調で返すのは、是の言葉。*]
……ちっ!
[舌打ち一つ、とっさに後ろに飛びずさって距離を取る。
片膝突きの低い姿勢、大剣の柄は右手だけで支え剣先は地に下ろし。
呼吸整え、次の動きを模索する。*]
[気合と共に駆けだす姿。
その鋭き一閃がこちらの手元を狙っている、と気づいた時、とっさに取ったのは剣から放していた左の手をその軌道上にかざす事]
おら、よっと!
[同時、左の足で刀身を蹴り上げながら、右手と、蹴りの力だけで剣を上へと振り上げる。
刃が左の手を捉える痛み顔を顰めつつ、それでも勢い任せに放った切り上げの閃はいささかどころかとんでもなく正確さを欠いてはいるが。
距離の近さと向こうの勢い、それら重ねたなら、完全に外れる……事はない、と思いたい。*]
……んだよ、っとに。
[上手く言えない。
ただ、何となく、面白くない]
そんな不景気な面、殴っても面白くもなんともないんだけど。
[浮かんだ感情を隠すことなく言い放つ。
殴っても、とは言ってはいるが、体当たりの衝撃ですぐに動くのが辛い状態なのは、言わぬがなんとやら。*]
……ったく。
この不器用はどーしよーもねーなー。
[やや大げさに言い放った後、視線は一度、頭上の空へ。
道別つ以前、仕合の後に見せていた仕種と同じもの]
親父が、騎士修行を止めてすぐに戻れ、って言ってきてな。
……どうにも色々と面倒な気配を感じたから……下手な事、言えんかったんだよ。
どう転ぶにしても、ここで目指してたものは捨てにゃならん……そう思ったら、なんも言えなくなっちまってな。
[普段の態度はともかく、騎士を目指す事に真っ直ぐだった事、それだけは正しく伝わっていただろうから。
周囲の都合でそれが歪められてしまった事を伝えるのに恐れがあって]
さすがに、ここに対して何かやらかすって事はないだろうが、下手に戻ると迷惑かけちまうかも知れん、ってのもあって。
結局、家飛び出してからも寄りつけんまま……気が付いたら、5年もたっちまってたってわけだ。
[できる限り軽い口調で経緯を離した後、視線を空から下ろし]
……ま、なんつーか。
しょーじき、すまんかった、とは思ってる。
[口にするのは遠回しの謝罪]
恨むなら貴族社会の柵恨んでくれ、としか言えんが……な。
[軽く言って、肩を竦める。
先は不器用のなんのと称しはしたものの。
ただ、言葉だけで問われたなら答えられなかったことは自分でもわかっているから。
剣を交えられたのは結果的には間違ってなかった、なんて思いつつ。**]
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