情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
ー昨日/村内ー
なんだ?…………?
[何かいいよどむ少女に訝しげな視線を送るものの、言及することはなかった。
肉塊となったものに僅かに残っていた魔力は相手のもので、それらが元々持っていた魔力はすでに失われ、少々の魔力に紛れており
結局気づけないままだった。
それゆえ相手の死の匂いに過敏な理由もよくわからないまま、己が甘いものが苦手なように相手も死の気配が苦手なのだろうというなんとも単純な考えで自己完結してしまっていたのだった。
買い物が済めば一旦宿へと戻り、改めて荷物を整理し。休憩も軽く済ませて渓谷へと向かうのだった。]
ー渓谷ー
[村を出てから数刻。少女の不安そうな様子が、道を進むにつれ色濃くなっていっていた。だが、嫌な予感がするというだけで避けていては何も得られない。
あの、黒い光は一体なんなのか。自然と無言になりながら渓谷へと入り、一路目的の場所へと向かっているときだった。
全身の毛が逆立つような、強烈な寒気とともに魔力の奔流が突如襲いかかってきた。]
な………………っ?!
[避けることも防御することも出来ない。ただ、いつの間にか膨張する黒い光に呑まれ、思わず目を閉じて衝撃を覚悟していた。
少女に腕を捕まれたが、気にすることなく。
だが、予想していたような衝撃はなく代わりに酷く慌てたような少女の声が聞こえた。]
シュテラ?!
[一体何があったのか、と声をかけながら目を開ければ、周囲は先程とはまったく様相を変えていた。いつの間にか草原に立っていることに困惑しながら、幻術の類でもかけられたのかと考える。
だが、地響きとともに何かがやって来るのを感じれば慌てて少女へと視線を向けていた。
その口から唱えられる呪文に意図を察し、慌てて少女の体を抱き寄せる。
端からはそう見えても、実際の心情としてはしがみつく、が正しいのだが。
一気に空へと舞い上がり、地上は遥か彼方となる。平時であれば地につくまでしっかりと目を閉じていたいところだが、現状それは叶わない。
がっしりと相手にしがみついたまま、オークの大群が走り回る草原を抜け、5(6x1)へと飛んでいった。]
……そう、だな…。結界か、どこか別の場所に転移させる術だったのか…。
[少女にがっちりとしがみつきながら思案していた。僅かに己の声が震えているような気がするのは気のせいだろう。
そうなんとか思い込みながら、眼下に広がる平原を見つめていた。
すぐにぬけられるかと思われた平原は、なかなかに広く。湯気の立ち上る、オークも近づかないらしい場所を見つければ思わず安堵の息を吐いていた。
黒い光に飲み込まれて以降、急に深くなった魔の息遣いと瘴気に顔をしかめながら向けられる言葉に頷いていた。]
ああ、そうだな。
風を纏った方がいいだろう。継続的にかけられる治癒魔法はない。
[正確には、己には扱えない、というべきか。
毒を受けたり痺れたりしたのならそれを治癒することもできるが、それを防いだり、怪我をしてもすぐになおるよう治癒魔法を続けるといった呪文は持ち合わせていなかった。
降りる、と宣言する少女に頷き地に足を着ける。なんだかまだ体がふわふわとするようだ。安定した大地に降り立ったことで、思わず深い息を吐いていた。]
……このあたりには特に魔物があるわけでは無さそうだな。
[魔のものの気配はあたりにはないようだ。たご、それと同じく普通の生き物の気配もない。訝しげに周囲を見渡していた。近くに湧き出る湯からは絶えず湯気が立ち上ぼり、温泉であろうことが見てとれた。
さすがにこんな場所で湯に浸かろう等とはまったく思えないが。]
さて…どうするか。とにかくここから脱出をはかりたいところだが…
[少なくとも、飛行したところで抜けられないことはわかった。一体だれが、なんの目的でこんなことをしているのか検討もつかないが]
とりあえず、周囲を警戒しながら辺りを探索するしかない、か…?
瘴気はともかく、ここは特に魔物も寄ってこれないようだからここを拠点に少しずつ回りを探索するしかないな。
[少女の魔法により、自らの周囲に緩やかな風が巻き起こる。体を蝕む瘴気が薄れ、呼吸もしやすくなったように思えた。
相手の言葉に頷きながら波打つ水面を眺めた。]
そうだな…。ただの村にある温泉ですらよくわからない効能があったほどだ。ここが元々温泉で変質したのだとしたら、一体どんな効能があるか…
[周囲の禍々しさを思えば、入ったとたんに命を無くす可能性すらあった。側を離れないよう告げる相手に頷きつつ]
お互いに、だな。お前も単独で動いて訳のわからんトラップにはまったら逃げられない可能性もある。
[相手が抜けていると言いたい訳ではないが、こんな場所だ。通常あり得ないようなトラップがあっても不思議ではない。少女が寄り添うのを見れば視線を先へと向け、歩き始めた。]
平原の植物か。たしかに、魔と化していたな…。あのまま地上を逃げていたらあっという間に足をとられてオークの下敷き、というわけか。
[少女を連れていて正解だったと言わざるを得ないだろう。ここはなぜかそういった植物もないため、安心して歩を進められるわけだが、この先植物の生えている場所があるなら注意が必要そうだ。]
原因…。あれだけの魔力をもつ光を一気に放てるのなら、扱う術者も相当な魔力を持っているだろうが……
魔力探知したところで、その辺を漂っている魔力の気配を探知するだけのような気もするな。だが、まぁやってみるか。
[魔力探知の魔法、なら持っている。ダメ元でやってみることにした。己の魔法が、結界内でも使えるのかを試したいというのもあった。]
―――『この地に潜む魔の力を我に示せ
サーチマジック』
[短い詠唱とともに放った呪文により、淡い光が周囲に放たれる。そして、案の定それらは中空のいたるところに散り漂っていた。
だが、それよりも多く淡い光を集めている場所がある。それは…お互いの体周辺だ。]
……………………………。
[強大な魔力の主を探すどころか、自分達の居場所をアピールしたような気分になった。]
……温泉のある村とはいえ、街ほどには大きくない集落にしては魔力をもつものが多かったな。もし、あの黒い光を調査しに来ていたのだとしたら同じく巻き込まれている可能性はある。合流した方が安全か…?
[冒険者としてはさまざまなスキルをもつものがパーティーを組むのが定石だ。自分はあまりそういったことを好まないため少女と二人で行動していたが、今回は合流できるならした方がいいのかもしれない、と思案していた。
同じく沈黙したあと、笑った方がいいのかという問いは黙殺。]
………シュテラ?
[ふと少女を見ればなにやら驚いた表情。だが、すぐにそれは変わり笑みへと変わっていた。それは、どこか普段のものとは違う………禍々しいもの。
そして、それはまたすぐに消え、頭を抱えて苦しみ出す。『声』の聞こえていない男には、少女の変化の理由はまったくわからなかった。]
シュテラ、どうした?!
シュテラ?………どうした、急に?先程は、何か辛そうだったのにもう平気なのか。
[頭を抱えるほどに苦しげだった様子はあっさりと変わり、今度は問いをむけられる。
先程からころころと表情や様子の変わる相手に困惑しながら言葉を返していた。問いには答えない。というより、相手の変化についていけず、問いまであたまが回っていないというべきか。
だが、続く言葉に、自然と眉間に皺が寄せられていた。
相手の言っているのは恐らく、出会ったときに肉塊となっていた、あれらのことだろうと何となく察しがついたからだった。
死の匂いに嫌悪を示すのは、恐らく少女を襲った者のなかに死霊遣いもいたからだったのだろう。
不意に重ねられる問いに頷き。]
お前が目覚めたときに、言っただろう。その首輪があるかぎり、お前は私のものだ、と。
なんのことだ…?
[気付いても聞こえてもいない。その言葉に訝しげな表情を返していた。悲しげな表情に困惑しても、放った言葉は戻らない。
そして、続けられた言葉とその行動に目を見開いた。首輪を嵌めた自分でなければ外せないはずのもの。少女が自分のものであるという証。
それがなければ自分は―――――――。]
シュテラ。さっき苦しんでいたのは…っ、
く………っ
[強い風が巻き起こり、それとともに砂や砂利が巻き上げられる。顔を腕で覆い、目に入らないようにしながらも、視線は少女を捕らえていた。]
――――シェルプロテクト。
[小さな声で呪文を唱え、薄く透明な防御壁を生み出す。元々自分はそれほど強い術者ではない。相手の魔力にどこまでこれが耐えてくれるかわからなかったが、ないよりはましと思えた。]
たしかに、罠だったようだな。僕たちが巻き込まれたのか狙われたのかはわからないが……
[相手の言葉に深くため息をつきながら答えた。強い風は相変わらず吹き荒れている。それはまるで、少女の心を現すかのように。
一応、と張った防御壁は少女の指先で触れられただけであっさりと砕け、パリンという硬質な音が微かに響いていた。あまりにもあっさりとそれが砕かれてしまったのは、この地に溢れる魔力によって、少女の力が増強されているから、なのかもしれない。
ただでさえ力の差がある相手に、さらに環境までが相手に味方しているとなれば勝ち目はほぼないと言っていいだろう。
あまりといえばあまりな状況に、思わず渋面となっていた。]
――……そうだな。僕はお前に比べればずっと弱い。攻撃魔法などほとんど持っていない上、魔力自体もお前の方がずっと多い。
それでも。いま、やろうと思えばすぐにでも俺を殺せる状況で、そうしないのはなぜだ?
お前は……、僕を、どうしたい。
[そう、何かに囁かれ理性を飛ばされそうになりながらも、少女は理性を保ち続け攻撃することもない。
これ以上下手に魔法を使って刺激するよりも、話し合いをした方が得策と思われた。]
[殺したくない。その言葉がどこまで本当なのか、それはわからなかった。ただ、今だ攻撃すらされてないことを思えばたしかにそれはシュテラの本心なのかもしれない。
溢れる涙をやや乱暴に拭う姿を見つめながら、ただ吹き荒れる風の中心に立つ少女を見つめる。]
助けた、というほどのことはしていない。私が見つけたときにはすでに気を失っていて、肉塊と血だまりの中で倒れるお前を浄め治癒しただけだ。
………っ?!
[話の最中、急に風の流れが変わった。足元を掬われ、よろめいた瞬間を狙い肩を押される。抵抗する間もなく、視界はぐるりと回り背中は地に着いていた。腹の上に、少女の重みと熱。
自然と見上げるかたちになりながら、まっすぐに従者だった者を見つめていた。]
そう言いながら、なぜ泣く。
僕をお前のモノにしたいのなら、そうすればいい。
僕がお前をそうしたように。…いや、自らの力によらない分、僕の方がずっと卑怯か。
[自嘲するような苦笑と言葉。相手が馬乗りになってさえ、男は抵抗しようとはしていなかった。
首輪という繋がりが断たれ、それでも新たな繋がりを求めるのなら。それに否やをとなえるつもりなど、なかった。]
[まるで、塩を含んだ雨のように。パタパタと馬乗りになった相手の両目から涙が落ちてくる。頬を滑り落ち、地面へと吸収されていく液体。少女が首を振れば、その滴は周囲に飛び散ったか。]
お前が絶対に側にいる、と何故信じられる?
人間が従わせる魔族を見下すように、魔族も人を見下す。魔力や力が弱い分、人間の方が見下されやすいだろう。
首輪もなにもなく、ただ危機に居合わせたというだけで護ってもらえるなどと思えるはずがない。
そばにいれば…その時間が長ければ…それだけ、失うことも怖くなる。
最初は…もう一度、見られれば。ただそれだけだったのに…、。
[心の叫びとも言うべき少女の言葉に、男もまた普段見せない本音を見せ始めていた。言葉を紡ぐ間、まっすぐに見つめていた瞳はわずかに揺れ、視線は下へと滑り落ちていた。相手へと告げる言葉はいつしか独白のように。
相変わらず相手の口調も呼称も従属していたときと同じものだ。相手の申告がなければ、首輪が機能していないなど、今でもわからなかっただろう。
相手の唇が寄せられ、何度かの失敗のあと口付けられた。頬に触れる手が震えるのは緊張ゆえなのか。
だが、それでも過去の、出会った原因ともいうべき出来事を思えばこれ以上はないだろうと思っていた。しかし、少女が下へと移動し衣服を脱がせようとその両手を動かしているのを見れば、さすがに押し止めようと身動きし始めていた。]
シュテラ…?なにを…………
[問われた言葉は、意図的に黙殺していた。
言いたくない、と言うよりは言い辛い。言ったあとのことが怖い、と言う方が正しいだろうか。
だが、質問をあえて避けようとせずともその後に続く少女の言葉と行動に慌て、答えるどころではなかっただろう。]
そういうのは、特殊なモノたちだけだ!
[この場合のモノというのは魔族や人間等を指すのだが、相手に伝わったかどうか。]
僕も首輪を使っただろう?!
お前もそうするなり、力で屈伏させるなりすればいいと言っているんだ!………っ!
[風が、まだ一段と強くなった気がした。目の前の少女は今、とても不安定で、少しのことでも一気に魔力を暴発させる可能性があった。下手に言葉を誤魔化すのは危険。
その事を改めて痛感し、眉根を寄せる。言ったあとが怖いだとか、男のプライドが、とか。そんなことを言っている場合では、ない。]
お前に触られるのが嫌なんじゃない。
こういった行為自体が苦手なんだ。その………
昔、嘲笑われたことがあるから……
[ふい、と顔をそらした。このような行為は初めてではなかった。だが、不馴れな己は馴れた相手に散々嘲笑われ、行為は出来たもののとても苦い思い出となっていた。それゆえ相手を従属させても性処理をさせることはなかったし、させようと思ったことすらなかったのだった。
急に強まった風が衣服を濡らし、溶かす。濡れた部分が妙に寒く、自らの体を見下ろし惨状に言葉を失った。]
[混乱と共にあげた声は、相手を怯ませたようだった。はっと我に返り、自己嫌悪に眉根を寄せる。そして、首輪がないという相手を再びまっすぐに見つめていた。]
……あの首輪は、魔族だけにしか使えないものじゃない。
お前が望むなら、僕につけることで従属させることも可能だろう。
……僕に売り付けた店主の言葉が正しければな。
シュテラ…
[怪しい露店商の言葉を信じるのなら、取り付けた相手は取り付けた主に服従するということだった。それは魔族であろうと人間であろうと思いのままだ、と。だご、それが本当かどうかはわからない。そう告げながら肩を竦ませていた。
涙を流し、しゃくりあげる少女を見上げ、その頬に手をあてようと腕を伸ばし。
しかし、急に怒気を孕んだ声をあげる様子に、挙げられかけた手がぴたりととまる。立ち上がり、ふらふらと後ずさっていく様子を見ながら男もゆっくりと体を起こしていた。]
シュテラ…?どうし…………、シュテラ!
[相手の紡ぐ言葉は、自分に向けられているのではないようだった。まだ、何か自分には聞こえない声が聞こえているのかもしれない。今まで何度も聞いた短い詠唱呪文が叫ばれるのを聞けば、引き留めるように相手の名前を呼んでいた。
このまま飛び去ってしまうのかもしれない。そんな思いに囚われていた。だが、事態はさらに酷いものとなっていた。]
シュテラーーーーっ!!
[自らの体を切り刻むように、少女の操る刃はその細い体に襲いかかった。糸が切れたように落下してくる体を受け止めようと走り出す。間に合え、と強く念じながら。
間に合ったにしろ間に合わなかったにしろ、その風のように軽い体を抱き起こしては回復呪文をかけようと詠唱を始めていた。]
………キュアーズ。
[柔らかな光が掌から溢れるように拡がっていく。翳した相手の体にもその光は降り注ぎ、わずかに暖かな温もりを感じられたことだろう。]
[なんとか少女を受け止めることは叶ったようだった。頭上から落ちてくる少女を辛うじて受けとめると、その場に膝をつき少女を支える。明らかに回復呪文だけではない治癒速度で、少女の傷は回復していく。
回復呪文を何度か続けてかけると、少女は息をふきかえしたように小さな呻き声をあげた。小さく安堵の息をはいては、じっと少女の顔を覗きこむ。]
よかった……、シュテラ……。
お前が僕を傷つけたことなど、一度もない。
首輪が外れていてさえ。
それに……僕はまだお前に従わされてはいないから、僕の好きにさせてもらう。
[傷つける。そうはいいながらも、未だ一度もやいばを向けられてはいないのだ。
それが少女の理性によるものだとしても、男を傷つけるよりも自分を傷つけることを選んだことを思えば、やはりこれでいいのだろうと思えた。]
僕は、お前を置いていく気はない。二人でここから出るんだ。
どうしたいかわからないなら、これからゆっくり考えればいい。
[生きて、帰ることができたのなら。その言葉は口にはできなかった。正直、二人生きてここから出られる確率はかなり低いと思われた。それでも絶望を口にすることはなく。ただ、言葉少なに、相手へと語りかけていた。]
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新