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[真っ直ぐ見つめられて問われた問い>>162に、一瞬目を丸くするが、すぐに考え込むような仕草をする。]
そうねえ…この島のことが好きだから…うん。そうね。
[そう言いながら少しだけ都会のことを思い出す。]
知っての通り、私は都会で絵の勉強をしていたでしょ?
でもね。都会って思ってたより窮屈だったわ。
空は狭いし、空気は汚いし。自然はない。海はない。
だから少しホームシックに掛かったのよ。
不思議よね。昔は何とも思ってなかったのに、都会に行って、初めて島のことが好きだってわかったの。
[ああ、後は……と付け加えるように。]
ここには幼馴染みのヨアヒムやオト兄さん。
大切な皆がいるしね。
勿論ペーター、貴方も大事よ。可愛い弟みたいで。
[そう言ってクスクス笑う。]
―自宅前―
[家に着いた娘は、赤い雨合羽を脱ぐとついている水滴を落とそうとする。
と、強い風が吹き付けた。]
きゃっ!?
[あまりにも急なことだったので、手にしていた雨合羽を手放してしまったらしい。
閉じた目を開くと手元に雨合羽はなく。
未だ晴れぬ空に赤が舞っていた。]
待って!
[必死でその雨合羽を追い掛けるが、追い付くことは叶わず、雨合羽はそのまま荒れ狂う海へ。]
どうしよう……
[この海の中に入るのは自殺行為だろう。
だが、母親の最後の言い付けは守りたい。
しばらく右往左往していたが、やがて諦めると家に戻っていった。**]
[とぼとぼと家に帰り、タオルを持ってきて体を拭うと溜め息を吐く。]
新しい赤いの、買わなきゃ……
[何時くるかわからない、次の嵐のために。
もう一度溜め息を吐いた娘は、キッチンへ行き、すっかり冷めたお湯を沸かし直す。
雨の中を走ったせいで身体は冷えきっていた。
身体を温めるのがいいな。ならばジンジャーティーだろうか。
ポットに紅茶の茶葉を淹れ、お湯を注ぐ。
蒸らしている間に生姜をすり、搾った汁をカップの中へ。
蒸らし終わればポットの中身をカップに注ぎ、わざわざ椅子に座るのが億劫だったため、そのまま口に運んだ。]
はぁ……
[温かいのが身体に染み渡るとほっと息を吐いた。
飛ばしてしまったものは仕方がない。
晴れたら街に出て買いにいこう。
やがて飲み終わった娘はオットーの言い付けを守るためにベッドへ行くと、そのまま目を閉じた。]
―真夜中―
[ぱちりと赤い目を覚ますと、ゆっくりと起き上がる。]
…………オ腹、スイタア……
[嵐が来る前に取った"食事"。
浜辺に捨てた漁師の味は今まで感じたことがないと思えるほど美味だった。]
オ腹、スイタヨォ……
[またあの味を。
そう欲した娘は扉に手をかける。
今日は昨日と違い、すんなり扉は開いた。
そのまま外へ出る。
行く先は娘の家から一番近い、ゲルトの家。]
―???―
[空には満天の星。
それを見ながら、ああ晴れたんだ。そう思いながら足を進める。
行き先は娘の家から一番近いゲルトの家。
何故そこに行こうとするのかはわからないまま、歩く映像をみている。
やがてゲルトの家にたどり着けば、扉をノックする。
しばらくした後、ゲルトが出てきた。
眠そうに目を擦っている。
娘はその光景をぼんやり見ていた。]
「……パメラ? どうしたのこんな夜遅くに……」
[そう言いながらゲルトは1つ、大きな欠伸をした。]
オ腹、スイタノ……
[娘は一言そう言った。]
「そりゃ難儀。でもわざわざぼくの所に来なくても……」
[そう答えたゲルトは此方を見ると目を大きく見開いた。
次の瞬間、叫びながら娘を突飛ばし、林の方へ逃げ出した。]
待ッテ……
[娘はその後を追う。]
[一回瞬きをすると、景色が変わっていた。
先程まではゲルトの家の前にいたはずなのに、気が付いたら今は林の中。
目の前ではゲルトが走っている。
どうしたの?
そう尋ねようとすると獣の息遣いが聞こえた。
まさか……。
娘は蒼くなり、走りながら目の前のゲルトを呼び止めようとする。]
ネエ、待ッテ。
[ぼーっとした顔で必死に逃げるゲルトの後を追う。
ゲルトは此方を振り向く。その顔には恐怖の色が宿っていたか。]
逃ゲナイデ
[来るな!と叫ぶゲルト。
するとゲルトは木の根に躓いた。
起き上がろうともたついている間に距離を縮め、やがてゲルトの目の前に立つ。
此方を見たゲルトは恐怖に目を見開いていた。
娘は右手を振り上げる。
するとその手は人の手から、その身体にはおよそ似つかわしくない大きな、獣の手へと変貌する。]
「ひっ……あ、う、うわああああああああ!!!」
[叫ぶゲルトの頭へ、娘は右手を力強く降り下ろした。]
[瞬きをすると、また景色が変わっていた。
目の前には赤い頭巾を被った男が横たわっていた。
星に照らされ、頭巾の合間から見えるのは金髪。
それからゲルトだと言うことは容易にわかった。]
(ゲルト、その頭巾似合わないわよ)
[何故頭巾を被っているのか不思議には思わず。
似合わないと思いながらもそれを外すことはしない。
目蓋が重くなった娘はそのまま目を閉じた。]
[倒れたたゲルト≪獲物≫をぼーっと見つめ、動かなくなったのを確認すると、娘は四つん這いになり口をゲルトの喉元へ。
口を開き、首筋に犬歯を立てると、そのまま食事を始めた。
やがてお腹が満たされると立ち上がり、フラフラと家の方へ歩き出した。]
赤ずきんは首を傾げながら母親に訊ねました。
「もし、頭巾を外したらどうなるの?」
母親は赤ずきんを優しく抱き締めながら答えました。
「お前は、お前ではなくなってしまうかもしれないね。
だから、そうならないよう、頭巾を被ろうね」
起きているときも。出掛けるときも。寝るときも。
絶対外さないようにしようね……――
―10年前:人狼視点―
[緑の服を着た男は海の側で待っていた。
嵐は過ぎたとはいえ、未だ雨風は強い。
だが飛ばされない程度だ。何とかなるだろう。
そう思って呼び出したのだ。]
「お待たせしました、何かご用でしょうか?アルビンさん」
[後ろから声が聞こえ、振り返ると小さな同胞の母親の姿。]
「…まさか、本当に来るとは思いませんでた」
[そう言いながらフッと鼻で笑った。
まあ、呼び出したのは自分なのだが。
訝しげに此方を見る女の視線に気付くと、アルビンは真っ直ぐ見詰めた。]
「騒ぎを起こしたくありません。単刀直入に言いましょう。
娘さんを迎えに来ました」
[何のことだかわかりますよね?
女の顔は恐怖でひきつっていた。が、それに構わずアルビンは続ける。]
「迎えに来たのはいいんですがねえ…。
誰かさんが術をかけてしまったらしく、今のままでは同胞として迎えられないんですよねぇ…」
[そこまで言うと、アルビンはにっこり笑って女に尋ねた。]
「あの術、解いてもらえませんかね?」
[術さえ解いてくれれば危害は加えません。そう付け加えて。
しかし返ってきた返事はNOだった。]
「うちの娘を人狼として引き渡す訳にはいかない」
[そう気丈に答えて見せた。
アルビンは真顔に戻ると溜め息を吐き、右手を横に伸ばした。]
「……仕方ありませんね」
[右手は段々変化していき、やがて大きな獣の手へ。
それを見た女が息を飲むのとアルビンが間を詰めるの。
どちらが早かっただろうか。
アルビンはその手を女の心臓目掛けて突き刺した。
温かい液体が手を染める。
足で身体を押さえ、手を引っこ抜くと女はそのまま後ろへ倒れ、荒れ狂う波に浚われた。]
「大人しく頷けば、死なずに済んだものを…」
[そう呟くと、もう一人が迎えに行っているだろう同胞の元へと足を進めた。]
―10年前:人狼視点―
[緑の服を着た旅人風の男は、パメラの家の前に立っていた。]
『やっと見付けた。小さき同胞、我らが妹』
[そう人狼特有の"声"で囁く。
しかし、中からは返事が来ない。
母親の手によって掛けられた術。
そのせいで、"妹"は人狼としての能力を封じられているのだ。
ニコラスは溜め息を吐くと、扉をノックした。]
「だあれ……?…ママ?」
[中から聞こえてきたのは怯えたような小さな声。
ママかという声にできうる限り優しく、裏声を使って返事をする。]
「そう。ママだよ。この扉を開けて頂戴」
[しばしの沈黙の後、再び小さな声が聞こえた。]
「…ウソ。
ママは出掛けるとき、ちゃんと鍵を持っていくもん」
[そう答えられニコラスは溜め息を吐いた。]
「…嘘をついて悪かったね。僕はママのお友達だよ。
君の面倒を見てくれって頼まれたんだ。この扉を開けてくれないかな?」
[嘘を認めながらも、また嘘を重ねる。
するとまた小さな声が返ってきた。]
「…ママに、知らない人が来ても扉を開けちゃダメだよ、って言われた」
[そう言われてしまい、深い溜め息を吐いた。
躾ができているのも困り者だ。
どうしようかと悩んでいると、海の方からアルビンがやって来た。]
「首尾はどうですか」
「それがね。中にいる子やぎちゃんは慎重でね」
『記憶も戻らないみたいでねぇ…』
『そうなんですか?』
[アルビンがここにいるということは、パメラの母親を始末してきたということなのだろう。
参ったと言う風に両手を上げながら、念のために囁いてみる。しかし中からは返事がこない。
やはり記憶は戻っていないらしい。]
『参りましたね…母親は今頃、海の藻屑ですよ?』
[アルビンは頭をかきながら唸り始めた。
術者を殺せば術が解ける。そう思っていたのだが。
どうやらそれは思い違いだったらしい。
死んだ後まで。忌々しい術者≪母親≫だ。]
「この家を壊す訳にはいかないんですか?」
[そう言いながら扉に手をつく。
この程度なら、ちょっと力を使うだけですぐに壊れそうだ。
しかし、ニコラスは首を横に振る。]
「それは駄目だよ。妹は記憶を失っているんだよ?
僕らの本当の姿を見たら、きっと騒いでしまう。
それで誰かが来たら、それこそ問題になってしまう」
[アルビンはうーーん……と再び唸り始める。]
「強引にでも、記憶を呼び覚ます他、なさそうですねぇ…」
「どうやって?」
[それは…とアルビンはちらりと扉を見る。]
「それは…本能を呼び起こさせるしかないでしょう」
[三大欲求の1つ、食欲に。
そう答えるとニコラスは溜め息を吐いた。]
「…できればやりたくないけど…それしかなさそうだね…」
[自分の命を危険に晒すことなど、出来うるかぎりしたくない。
だが、本当にそれしかなさそうだ。]
[娘は知らない。
自分のせいで10年前の騒動が起きたことを。
母親に掛けられた封印のせいなのか、お陰なのか。
何も覚えていなかった。**]
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