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― 八幡 甲板 ―
若は統制室か…ならば。
[水夫らが協力して帆を畳みおえた後、
男が向かうのは己が愛騎の元だった。
龍は嵐の予兆を感じて、龍社から出て
背の羽を小さく折り畳み、
船縁にある杭のようなものに尾の先を巻きつけていた。]
鳴丸、お主は一端空へ…
[男が言うと、不満げに髭を張る龍に苦笑する。]
行かぬか。強情な奴め。
ならばしっかりと掴まえておれよ。
[わしと鬣を撫でると、男は船室の方へと身を隠す。
嵐という災害に対して、これ以上の役には立たぬ事を、
己が一番理解していたからだ**]
― 嵐通過後/八幡 甲板 ―
また随分とすっきりとしたものだ。
[己が国の船の大半は視界の中に見当たらない。
嵐の後、甲板に出て周囲を見回した男はそう渋い顔を作った。]
蛟に水夜……
ユウレンの船も在るか。
海に放り出された者がおるやもしれぬ。
少し周囲を見て来よう。
なに、鳴丸もあの嵐で燻っておる故、
気晴らしも兼ねてだ。
船の事はそちらに任せた。
[そう水夫の一人に言付けると
既に甲板へと身を移していた龍の背へ跨り、周囲を飛んだ。
海に人影を見つけたならば、船へと輸送したりと働いたものの、
行方知れずとなった船の位置までは、男には掴めなかった。]
[暫くの捜索の後に視界に見えるのは
船、ではあったが。
それは男が探している物ではなかった。]
南投軍諸島の飼い犬めが…。
こちらが嵐に遭うたのを知って
仕掛けて来おったか。
[排除通告に眉間に深い皺を寄せると、
男は一度八幡へと帰還する。]
若はどうされておる?
統制室に押し込めた、か
さて何処まで大人しくしておられるやら。
[男は弟子である若者が、
何時までも大人しく部屋に閉じ籠っているような
気性でない事も知っている。]
なれば若が痺れを切らして
敵艦へ乗り込む等言い出す前に、
某は露払いといこう。
若の事、頼んだぞ。
[そう踵を返し、再び騎龍の背に乗ると、
八幡に最も近い船へと飛ぶ。]
――――唸れ鳴丸!
『――――――――!!!』
[八幡に最接近している船へと定めて、
鳴丸が鬨の声を上げると同時に、
鰐のように長い口元に、微かな閃光が弾けた。]
― 嵐通過後/八幡 近海上空 ―
フン、なまくらでは無さそうだな。
[いまひとつ敵船への効果が薄かった事に、
黄土の龍は長い尾をゆらと不満気に揺らした。
もう一撃と命じる前に、男の視界の端に、
>>46空に太陽に似た輝きが入り視線はそちらへ向けられる。]
紅輝のか。
蛟はあれの守護があれば問題あるまい。
[男は同じ騎竜師相手には一定の信頼を置いていた。
また艦長代行は、カガチの息女の精霊師の他、
名のある精霊師が乗り込んでいるとも聞く。
――悪名の方だが。
男はウルズ当人については良く知らなかった。]
なれば――…と、
その前に目の前の有事だな。
鳴丸よ、援護任せたぞ。
[言うと同時に男は騎龍の背を蹴り飛び降りた。
着流しの袖を風にたなびかせながら、
敵船へと落下する最中、その手は腰の一振りに添えられる。]
― 八幡付近 敵船上 ―
[甲板に男の足が着いた瞬間、
間近に居た水夫へ、抜刀と同時に斬りかかる。
袈裟がけの形に傷痕残すとすぐさま、
次に近い者へと走り込もうとして。]
ッ
[背中、肩の辺りに熱を感じ低く呻く。
飛び道具の気配は感じなかったが、
精霊の加護を受けた一撃に気づくのが遅れた男は、
追撃に身構えようとそちらを向いた。
だが追撃は来ず、荷の影に隠れていただろう影が、
悲鳴をあげてそこから倒れて転がっていた。]
すまん鳴丸!
[上空からの雷撃に助けられたと知り、
男が呼ぶと黄土の龍は被膜の羽をはためかせ
鳥に似た声で誇ったように鳴いた*]
― 八幡付近 敵船上 ―
[背の一撃を喰らいながらも、
太刀持つ男の動きは軽妙変わらずではあった。
後顧の憂いを絶つべく、
あえて頭を取らず数を減らすべく立ち回る。]
破ッ!
[水夫が持つ曲刀を、身体に合わせた無銘の太刀で押し返し、
跳ねつけると同時に懐に飛び込み下からの一閃を見舞わせ、
男は甲板を朱に染めた。
多勢に無勢ではあるものの、そこは上空からの援護が大きく、
鳴丸は時折は甲板付近まで舞い降りて、
しなやかな蛇の体をうねらせ敵を弾き飛ばした。
上空を飛ぶ鳴丸を厄介と見た者らが、
矛先を鳴丸へと向け弓を向ける。
それを邪魔すべく男は懐に仕込んであった匕首を投げた。]
― 八幡付近 敵船上 ―
[刺さった匕首は1本、残りは掠る程度だったが、
牽制にはなったらしく、その間に
鳴丸は長い尾で船員を弾き飛ばし海へと落とした。
周囲を見ればずいぶんと、遠巻きに敵影は見えるものの、
こちらに向かって来ようとする人数は減っていた。
怪我人が多いせいか、覇気も少ない。
更に精霊師の類は居るようだが。]
…頭にあたる者は居らんのか?
[何となしバラバラにも見える動きに、男は眉を潜めた。]
[おそらく旗艦が全艦を統括しているのだろう。
そう知れば、ここでこれ以上、
小競り合いを続けるのは意味を持たないと判断した。]
行くぞ鳴神。
[ひらと背に乗る男を止める様子は無かった。
むしろ早く帰って欲しい程度遠巻きに
眺めている者らを一瞥すると、男と騎龍は空へと戻る。]
[去り際、船首に一撃雷を落とし破壊しておいた。
航行するには問題がない個所を壊しておけば、
容易に八幡には近づけまいと思った為でもあった*]
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