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― 昨夜のこと ―
[桃色酢豚の味を必死に上書きしてから
片付けをするルートヴィヒを手伝った。
沢山出た野菜屑はスープにしてしまおう、と袋にまとめた。
いつの間にやら睡魔に襲われた兎が一羽、二羽。
広い部屋で、誰かのいる場所で眠る気にはなれなかったから
壁に凭れたまま、嵐のざわめきが小さくなっていくのをじっと聞いていた]
[兎が二羽増える前、朝日は未だ眠りから覚めぬ頃合いに
ローゼンハイムの小屋を出た。
朝露というにはたっぷりの水を湛えた葉たちを愛でる。
洞穴は遠いから、野菜たちの様子を見ることは諦めた。
久々に見た顔を、幾つか数えた。
寝台に誰彼かまわず引き込む癖があるローに
まんまと捕まったルートヴィヒ。
青兎のように、逆に組み敷く、くらいの反撃があの白兎に出来るだろうか]
無理、だろうね
あの白兎じゃあ
[雫に耐えきれなくなった葉が、うなずくようにその頭を垂れた]
[朝ごはんはしっかりご馳走になって、片付けまでこなした後
晴れた空の下、自宅である洞穴まで戻ることにした。
嵐の爪跡、野菜の状況
手遅れになる前に、と慌てて収穫した幾つかの野菜を持って、昼過ぎに再びローゼンハイムの小屋を訪れる]
[アスパラガスとレタスを少し。
それにたっぷりのそら豆を、今日はレタスそっくりの黄緑色と白の風呂敷に包んで携えてきた]
………?
[少し、兎の影が少ない気がする。
何より小屋の主の姿が見えない。
首を傾げたのは、中に入って、一瞬。
すぐに荷物を解こうと厨房へ。
ちなみに、この青兎。
料理はサラダしか作れない]
[レタスは冷たい水にさらしてぱりっとさせ、アスパラガスとそら豆は軽く茹でた後、さっと火を通す。
味付けは塩のみ。
お好みでローゼンハイム特製ドレッシングを冷蔵庫から頂戴しておいた。
それらをトレイにのせて、皆のいるリビングへと戻る]
……花びら
[風が部屋を通り抜ける。
目の前を横切った花びらが、来た先。
窓の前。
落ちた苺は、少し潰れていた]
[トレイをテーブルに置き、開いた窓に歩み寄る。
外を覗き、黒い森に流れる桃色に目を細めた。
音もたてずにしゃがみ、落ちた苺をつまみ上げ
そのまま口に運んだ]
食べ物、粗末にしたら
怒るよ
[濡れた指を舐め、もう一度、窓の外を見やった]
そう、花
[苺を摘み上げた指で、柔らかな薄紅にそっと触れた。
ローゼンハイムの小屋からは遠い
あの洞穴よりももっと奥に行ったところに
それは見事な、一本の桜の樹があった]
綺麗だろう
……食べちゃ、駄目だよ
[これよりずっと薄くて、柔らかくて
甘い色をしているその桜は
もしかしたら、昨日の嵐で、散ってしまったかもしれない]
/*
あのね!!!ファミルがきてくれてうれしい!!!
ふぁみるって兎っぽいなーーーーーーーーーーっておもってたんです!!!!!!!
それならいいよ
[確かに「駄目」は沢山言ってきた。
最初はローが何かした時に口にしていたけれど、
いつしか何かする前に、と増えていた]
チューリップ、綺麗だったな
[ローの耳の間に、綺麗なほうの手でふれて
よしよし、と撫でてやった]
……悪戯、してないで
ちゃんと食べなさい
[指に残っていた苺の赤みが消えて
頬に少しだけ、色が灯る。
指を取り戻したあと、今度は耳の先を軽く引っ張ってやった。
駄目、とは言わないけれど、怒ることだってわかればいい]
[耳から手を離して、立ち上がった。
ゲルトの手にした人形に、その不完全な様子に気をひかれていたけれど、気づけばもういなくて
太陽はもう隠れていて
足元がふらついた。
そういえば、昨夜はろくに寝ていない。
サラダ以外にも夕餉ができているようだが
食欲は、朝ほどはなかった]
ん、ねむ ………貰う
[遠慮なくパニーニを受け取り、飲み物(3(3x1))を取って座り込んだ。パンは好きだ。好きだが、さすがに洞穴では小麦は作れないし、作ったところでパンは作れない。
うとうととふねをこぎながらパニーニに舌鼓を打った]
[適当にと取ったグラスは分厚い陶器のもので
中は暖かなホットチョコが入っていた。
ほろ苦い甘みのそれは塩気のあるパニーニと良く合う。
味わうためというより眠気によりゆっくりと食べ
両手で持ったカップが空になれば]
ちょっと ……寝る
[ソファ――の後ろに潜り込んで、壁との間、隙間に挟まるようにして丸くなった。細いながらも大きな身体を無理やりちぢ込ませる様子は、少し滑稽だったかもしれない]
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