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10人目、気儘な猫 カレル が参加しました。
気儘な猫 カレルは、狂神官 を希望しました(他の人には見えません)。
――自室――
[薄く開けた窓の隙間から吹き込む柔らかな風がカーテンを揺らす度、すっかり高い位置に上った太陽の暖かな日差しが薄暗い部屋に遊びに来る。
…――近い内に一雨振りそうだ。
風の匂いに鼻をひくつかせて、特に根拠がある訳でも無く、微睡と覚醒の狭間で、そんな風にぼんやりと思う。
乱れたシーツだけをその身に纏うしどけない姿で、柔かく清潔な寝台の上、おおきく伸びをして欠伸を零した]
[――さて今日はなにをして過ごそうか。考えてはみるも、過ぎ行く日々に不自由がない代わりに目的も何一つなく、半分以上終えてしまった今日、この時間から、急ぎしなければならない事も、したい事も思い当らない。
唯一のイベントであった王子からの深夜の呼び出しも最近はめっきりなくなった。随分愛らしい新人が入ってきたと、最後の夜に寝物語に聞いた記憶がある気がするから、きっと、ご執心なんだろう。
交わるにしろ、虐げられるにしろ、別段望んで王子の寝室へ通っていた訳ではないが、なければないで退屈だ…なんて、我儘な自分の思考に気付けば、ふ、と自嘲めいた笑みが零れた]
[気が向いた時に餌を蒔いて居るお蔭で気紛れに窓辺に遊びに来る野鳥の声が子守唄となり、うとうとと、再び眠りの淵へと沈んで行き――…**]
――森の中・湖の畔――
[お茶会の準備に賑わう城を抜け出して、人の気配の薄い森へ。
積る木の葉をざくざく踏み締めて抜けて、訪れたのは湖の畔。
堅苦しい軍服の上着は何処かへ放ってきてしまい、代わりに肩に厚手の大判のストールを肩から羽織っている。
ストールの裾や、膝なんかに所々に付いた土汚れもお構いなしで、「これ」も王子の親衛隊の一人であると、言った所で信じる者は少ないだろう。…尤も、信じるも疑うも、人目に触れる場所でも無いが]
[湖畔を辿って傍近く建てられた小屋の扉を開ければ、中から取り出すのは、水桶と簡素な釣竿。
問題無く使える事を確認すれば、表情の乏しかったその顔に、ほんの少しだけ笑みを浮かべた]
[おもむろに懐から取り出したのは、握りこぶし二個分程度の大きさの小さな、袋。もぞもぞ蠢く怪しげなそれの中身は餌として使うミミズだ。
鳥を呼ぶ餌にもなるので、物置の隅に置かれた大きな瓶の中に掴まえては放り込み、厨房から貰う野菜くずと古新聞紙を餌に飼って増やしているなんて話は、嫌がるものも居るので一部以外には内緒の話]
[釣り糸を張り直し、砥ぎ直して来た銀色に光る針を付け替え餌となるミミズを付けて、当たりを知らせる鈴を取り付ければ準備は完了だ。適当なポイントに放り込んで、後は待つだけ。
途中適当に拾ってきた木の枝を地面に刺して組んで作った即席の竿立てに釣竿は任せて、その間自分は数日前に辺りに仕掛けた投げ込み式の罠の回収に向かう]
[余り当たらない自分の天気予想だが、今回は当たるらしい、重い色の雲が幾重にも重なり空を覆っている。近い内に降り出すだろう。
…となると仕掛けは増水して流されてしまう前に回収しておく必要がある。まぁ、別段高価なものを使用している訳でもないので、作り直したっていいのだけれど、その辺りは気分の問題だ。
気紛れに掛かっていたりする中身が、自分の腹に収まる事になるかミミズに代わる生餌になるかは、獲物次第]
[時折強く吹く風が木々をざわめかせ、鳥の声は既に、遠い。
嵐にでもなるのだろうか、――なんてぼんやりしていれば、指先に痺れるような痛みを覚え、顔を顰める。
余所見をしていて何処かに引っ掛けたらしい。さっくりと切れ表皮の下に隠れた鮮やかな色を晒す傷口から溢れる赤色を清んだ湖に沈めて適当に洗い流した後、尚も滴り零れるそれを指ごと口に含んだ]
……――――――甘い。
[うっとりと機嫌良く目を細めぽつり、呟き零せば、傷口を押し潰すよう歯を立てる。広がる鉄錆に似た匂いが鼻を抜けた。
其れ程深くはなかったらしく、程無くしてある程度出血が収まった事を舌で確認すれば、適当に服の裾で拭い、後は気にせず作業に戻り――…**]
――少し前・湖の畔――
[枯葉を踏み近づく足音に気付いてはいたが誰であろうと振り返る気は然程無く、無関心の侭に投げ込み仕掛けの罠を一つ一つ空けては、中身を選別し、片付ける作業をマイペースに続けていた。
しかし、「無関心」の例外である一人だと気付いたのは、声を掛けられる少し前。振り返って、>>208呼ばれる名に、ふわり、綻ぶ華の様に柔らかく微笑み返せば、別段急がない自分の作業は後回しに、ゆっくりと歩み寄り…]
何か騒がしかったから――…。
先生は、行かなくて良いの?
[茶会の支度に賑わう光景を興味無さそうにぼんやり思い返しつつ、赤く染まった彼の手を取り、…厭われなければ、ぺろり、無造作に舐めたりしたやもしれない。味を確認する事が叶っても叶わずとも、咳止めのやつ?なんて確認するだけですぐに解放しただろうけれど]
[特に何か指示される訳でもなく自然な所作で彼の手から薬草を受け取って、後々処理しやすい様に汚れと不要な葉を落とす。
座学で学ぶ読み書き計算は如何にも得意になれなかったけれど、先生と慕い軽鴨の雛の様に彼の後ろを付いて回った日々のお蔭で薬草の扱いは随分と覚えた、
…尤も、扱い方と効能に関しては覚えているのに、実用するに当たり必要のない名前だとかはさっぱりだったけれど]
[彼の用事が済み、見送迄のそう長くはない時間、ぽつりぽつり、言葉少なに会話を交わして、静かで穏やかに過ぎ行く時間を共有しただろうと――…]*
――現在・湖の畔――
[罠の中に随分と掛かっていたザリガニを食用と判断して水桶の中に放り込んで、一緒に紛れ込んだ生餌には少し大きすぎる小魚を湖に帰し、片付ける罠は風に晒して乾かすべく並べておく。
――一通り片付いた頃、不意に、鳴り響いた鈴の音に気付いて竿の元へと戻れば、魚が餌に喰い付くタイミングに合わせて一度だけ勢いよく竿を引いた。針に掛かった手応えの後は、暴れる魚の動きを抗うでなく利用して、少しずつ少しずつ水面へと引き寄せて…―
―ぱしゃり、水面から飛び出し、宙を踊った魚を釣り糸を手繰って受け留める。名前なんて覚えちゃいないけれど、食べて美味い種類で、食べ甲斐のあるサイズで有る事を確認すれば、針を外して満足気に水桶の中に泳がせた]
[まだ水温の下がり切らない秋の終わり、訪れる冬に向けて蓄える為だろう、餌への喰いつきが良く、既に水桶には作業の合間に釣り上げた丸々太った数匹の魚。捌けば人数分に足りるだろうか?
1、2匹程度ならば火を起こして一人こっそり腹に収めてしまう所だけれど…
…――厨房に持ち込もうか…――持ち込んで迷惑ではないか、少々、悩む]
[分厚い雲でもうすっかり暗い見上げる空模様と相談して、火を起こすには不向きと判断すれば、食べてしまわずにあと1匹釣れたら、帰ろう。そう決めて、再び餌を仕掛けた針を水面に向けて放りこんだ]
――湖の畔・回想――
[昔、子供には――チャールズには、兄がいた。血の繋がりは無いけれど、娼婦だった母が幼い子供を捨て男と何処かへ行ってしまった後、色々気に掛けてくれた。優しい兄だったとおもう。
白い肌に整った顔立ち、淡い金の髪、…こんな場所に居ても尚、うつくしいひとだと、純粋にそう思っていた。
大きくなったら、彼を護る者になろうと、終ぞ口に出す事は無かったけれど、痩せっぽっちの小さな子供はそんな風に思っていた。
兄との別れは突然だった。見知らぬ大人たちが兄を連れて行くのを、子供は茫然と見送った。目の前で兄の身に何が起きているのかと、こんな時如何したら良いのかが判らなかったから。
兄の居ない日を一日、二日――…何日か過ごしてやっと、兄は戻ってこないのだと理解し、ならば迎えに行こうと思い付いた。
手掛かりなんてある筈はない、けれど、子供の狭く小さな世界には兄しか居なかったから、諦めるという選択肢は無かった]
[兎に角死にもの狂いの日々が続いて、やっとの事で兄を見つけ出した時には、あれからもう何年も経って居た。
忍び込んだ豪華な屋敷の中で、花開いた薔薇のように何処かに鋭い棘を隠した侭に、凛と、美しく笑う彼を見て、
あぁ、自分はまた捨てられたんだ、と、…途端にそう理解した。
最初は母を捨てた父に、次は男と去った母に、そうして今度は、兄に――…
あの街に居た頃とは比べ物にならないくらい、美しく、そして健やかなその姿を見れば見る程、
みすぼらしい自分の隣ではなく、其処に居る姿こそが正しい姿のように思えた。
兄の口から直接、そうだと、確かめる勇気や、気力は、探し続けた日々に疲弊しきった心にはもう残って居なかった。
物分りの良い振りをして理解した心算になって…
…――その後のことは余り、良く覚えて居ない]
[暫くは、遠くから見守る日々を続けた気がする。
明日こそは諦めて此処を去ろう。明日こそは、明日――…
そんな風に積み重なる日々が幾つも続いた
ある日……
兄が再び姿を消した]
[子供の元から兄を奪っておいて、兄を其処に引き留めて置く事も出来ない彼らに覚えた、酷い憤りが爆発したのは、
多分、ただの、やつあたりだったとおもう。
一番目は背の高い門番の男、二番目はいかつい護衛の男、三番目は年若いメイドの娘、
悲鳴と怒声をBGMに、何度も覗き見た兄の様に、そのひ、生まれて初めて、踊った。
喝采の拍手代わりの銃弾の音は次第に鳴り止み、代わりに降り注ぐ赤い雫の雨音と甘たるい匂いが当たりに充満する。
兄の隣に自慢げに並んだあの男は何番目だっただろう?
折角のメインディッシュだったのに、
…―――――余り、覚えて居ない]
[おいてけぼりの小さな子供は、ひとりぼっち迷子の侭に、静まり返った屋敷の奥で、一番さいごに
[…――そう、確かに殺したはずだった。
甘たるい匂いに満ちた、静まり返ったその広い広い棺の底から、逃げ出した記憶は、ない。
けれど次に気が付いた時には監獄ではない、小さな檻の中に居た]
[屋敷に忍び込んだ物取りが、息の有る自分を拾って奴隷商に売り払ったとか、そんな話を聞いた気がする。
気紛れに見せて貰った、貴族の屋敷の惨殺事件の手配書には確か、自分とはまるで似ても似つかぬ人相書きが添えられていた――…]
[指名手配中の犯人は、未だ、逃走を続けている。
新聞で見掛けた記事の締め括りの一文に、逃げた心算も隠れた覚えもないのにまるで可笑しな話だと、他人事の様に思ったのは、此処に来て最初の頃、読み書きを教わり始めた頃の話]
[この城で初めて「ソマーリュ」と対面した時、かつて子供だった少年は顔色も変えず「はじめまして」の挨拶と共に「カレル」と名乗った。
無邪気に笑い「兄」を慕った幼い日の「チャールズ」の面影を僅かに残しながら、酷く荒んだ目をした少年に、彼は最初に何と声を掛けたんだったろうか?]
……――あ。
[丁度掛かった魚に気を取られ、懐かしくも優しくもない幼き日の思い出は、散り散りになって消えて行った*]
――回想終了――
――外出先→厨房――
[厨房の勝手口からこっそり顔を出して中を伺う濡れ鼠。その手には水桶を二つと風呂敷包みにした濡れて重そうなブランケット。
…幸い厨房の主は不在らしい。
二つの水桶の中身は、未だ元気に泳ぐ比較的良型のヤマメかヒメマスかその類の魚が合わせて8匹程と、もう一方にはザリガニがごっそり折り重なって入っている…ガチャガチャ非常に姦しい。
脱走しようとするザリガニの蓋代わりに乗せたブランケットの中身は、たっぷりの山葡萄。これを見つけて気を取られた所為ですっかり濡れてしまった訳だ。
幾つか摘み食いしながら帰った所為で、ブランケットが所々赤紫色の指の形に染まっているけれど汚した本人は多分全く気にして居ない事だろう。
…――以前このまま厨房を突っ切って、泥に汚れた足跡の水溜りを点々と残し厨房の主にこっ酷く叱られたような記憶がある気がして置くだけ置いて来た扉から引っ込んだ。
ブランケットの包みの上に、山葡萄の粒を並べて書いた「EAT ME」の置手紙を残して何処かへと…*]
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