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6人目、 ギィ が参加しました。
ギィは、ランダム を希望しました(他の人には見えません)。
[なにをしているのだろう。
我に返ればそう思う。
けれど、現状では他に手立てもない。
そんなわけで男は今、ブロック状の雪を積んだ『かまくら』なる建物の中で、干した甘い芋を焼いていた。]
[事の発端はこうだ。
北方の小国へ折衝に赴いた帰り、先方から国の名所となっている温泉保養地を紹介された。
正直、そんなことよりも国に残した妻の元へと早く帰りたかったのだが、古傷にも効くと勧められ、案内までつけられては断りにくかった。
そんなわけで雪深いその場所へ案内されたは良いものの、気づけば案内のものとはぐれ、奇妙な建物の奇妙な案内人に様々な遊興を勧められた末に、最も無難な―――いいかえれば思案の時を稼げる場所に身を置いていた。]
[己を謀殺する策であろうか、と疑いもした。
だが、どうも勝手が違う。
むしろ、策であった方が対処のしようもある。
どうやら違うらしいあたり、どうしたものかと頭を悩ますばかりだった。*]
は……くしゅ。
[芋を炙っているとくしゃみが出た。
煙のせいか。風邪でも引いたか。
誰かに噂された、などと名神を持ち出す気はないが。
『かまくらは温かいですよー』などと案内の者が言っていたが、確かに外よりは温かいとはいえ雪に囲まれているのだ。それほど温かいものでもない。
こういう時は妻の淹れる茶でも飲みたいものだ。
そう思いながら芋を齧れば、ほろ苦い味がした。
若干焦がしたか。*]
[本来ならば、帰るための方策を練らねばならないところだ。
だが、今は焦っても仕方がないと感じている。
ここは明らかに知らない世界だった。
道に迷ったとか、謀略で連れ込まれたというレベルではない。
聞いたことのない地名に、見たことのない道具。
知らない習俗に、食べたことのない食材。
さすがにこれは、普通ではない。
聞けば、面白そうな遊びも提供されるらしい。
傍に妻がいれば、不可抗力の休暇だと開き直って楽しんだかもしれないが、そういうわけにもいかない。
……気がするのだが、なんとなくまだ動き出す気にならない。
いればいいのに、と思ってしまうからだろうか。]
― 池 ―
[どこかで猫の声が聞こえた、気がする。
猫は飼ったことがないな、などととりとめなく思考していた。
猫の一匹も飼っていたら、家に残しがちな妻の気も紛れるだろうか。
そんなことを考えていたら、指先にあたりが伝わってきたので竿を上げる。
氷に空けた丸い穴から上がったのは、銀色の身体も美しい小魚だ。
こんな魚、それこそ猫にやるくらいしかないのではないか。
そう思っていたが、どうやら衣をつけて丸ごと揚げるらしい。
威勢のいい男が呼ぶままに誘われて始めた釣りだったが、これもなかなか面白いものだった。*]
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