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[尤も、こちらも意識をシャットアウトしてバーサーカーモードへと切り替えるための、精神管理用チップを埋め込んでいるのだが、変なところで倫理観を持っている軍部には伝えない。
画面は3人目に代わった。
茶髪で髪を真ん中分けにした目つきの鋭い少年だ。
機体色はシルバー。腕と足、そして胸にミサイルや大口径バルカン装備。ヘッドの額部分にも頭部に不釣合いな大型ビーム発射口を備えているが、一番の特徴は背面に背負ったX上のバーニヤだ]
「作品機体名:S-05 パイロットモルモット名:ジェラード。遠距離砲撃による支援及び大火力による殉滅を目的として制作しました。追尾型ミサイル15基に300ミリバルカンが2基そして背面にあるXは――」
[機体の写真が切り替わる。
そこにはXがそれぞれ両肩と両脇にロングバレル砲となって変形した姿があった]
「このように4門の量子ビーム砲となります。
尚、命中率向上のために両目は義眼に改造済みです」
[その威力は実際に見てからのお楽しみ。と、玩具を自慢するように指を振ってから4人目
の説明に移行する。
4人目は緑色のセミロングの髪型をした優しげな表情の少女だ。
機体は全身が赤系で統一され、これまでの3体を寄り集めた印象を持つ機体だ。左肩にレーダーを装備し、右肩には小型ミサイル。バックパックの左側に長い刀が一本。フリーになっている両手には長めのライフルが握られている]
「作品機体名:R-01 パイロットモルモット名:ローレル。チームのリーダーを務めさせます」
「白英ではなくローレルをリーダーにした理由は?」
「1機がやられただけで動けなくなるチームなんて、クソですから」
[さらりと言い切って、質問に興味をなくした実剣は機体説明を続けた]
「見ての通り、これまでの3機を組み合わせたバランスタイプの性能を有しています。まぁ特筆すべき点はないですね」
[さて! と、拍手を打って、実剣は12人を見直した]
「実は皆さんを収集した理由はこれからです。いいですか? 本題はこれからです」
[悪戯の共犯者を作るようににこやかに笑ったマッドサイエンティストの口から、続けて発せられた言葉は、場の全員を再び凍りつかせた]
「この特殊機甲実験小隊……Besondere Panzerpartei。長たらしいので、通称BPPを極東軍及び民間兵器と戦わせてみようと思っています」
[一瞬の沈黙]
「ふ、ふざけるな! 友軍同士で殺しあえというのか!」
「いえいえ。まさかそんな。大事な大事な駒を無駄死にさせるつもりなんて微塵もありません。ただ……」
「ただ、なんだ?」
「僕の最高傑作が量産化されれば、こんな戦争、あっさりと終わらせられると、証明したいのですよ」
[確かに実剣の用意した実験小隊が説明どおりの機能を発揮するのであれば、一隊だけでも大隊規模の戦火を期待できるかもしれない。だがそのために一時とはいえ軍の弱体化を容認するには躊躇いがあった。
ただ独り、鑑を除いては]
「……ターゲットは?」
[それは実剣が予想していた質問だった。
恐らく鑑もこの流れになった時点でわかっていたのかもしれない。無表情のまま視線だけを投げかけた]
「まずはRainbow Arch社の機動兵器」
[球体にバルタザールと白騎士が映し出された]
「次に極東司令部第12機甲大隊『ストーンズ』」
[ストーンズのエースパイロットであるリエヴルに切り替わる]
「クレモト精機汲フ糸川くんシリーズ」
「アレは町工場が趣味で作っただけのロボットと聞いているが?」
「知らないんですか? 趣味は仕事を凌駕するんですよ」
[ばっさりと切り捨てて、次は民間企業グローセンハンク社が映される]
「民間企業グローセンハンク社のビルドラプターとビルドファルケン」
[パイロットのシュテルンとシュテラの顔を一斉に軍人達が見た]
「後は色々と軍の部隊を選択中なのでなんともですが、基本エース部隊をチョイスするつもりです」
「それは……」
「大丈夫です。何かあれば試作品で穴埋めをしてあげますから」
[先手を打って口を封じて、視線を鑑に固定した。
彼は瞳を閉じてしば熟考してから]
「いいだろう」
「鑑大将!」
「但しオマエのいう試作品の完成度を見て、穴を埋めて余りあると判断できた場合のみだ。そうでなければ許可はしない。それだけではなく軍に多大な損害を与えたとして拘束。更に表面上の軍法会議の後で死刑だ」
[2人の、正反対の感情を奥に隠した視線が数瞬だけ交わる。
それで十分だった。
鑑は大きい音を立てて席を立ち上がると、無言のまま円卓から姿を消した。他の11人も慌てて後に続く。
そして最後に残ったのは実剣。
と――]
「そういう訳です。後は……分かりますね?」
分かっていますDr.実剣。
[すっと闇から現れたのはBPPの4人。白英・ケリィ・ジェラード。そしてローレル。
彼らは無表情で実剣の背中を見つめながら、同じく感情の篭らない返答をしたのだった]
「なぁ、本当にいいのかよ」
[無機質な廊下を歩きながら、ケリィが前を行く三人にそう問うた]
「何が?」
「いや、さっきのドクターのやり方」
「いいも悪いもないだろう。提案し、軍が許諾した。今更何を言ったところで決定が覆る事はない」
[ジェラードの回答に、白英も同意を示すように首肯した。
だがケリィは納得がいかないとばかりに言葉を続ける]
「でもよ。毎回ドクターが言ってたじゃん。『君達は世界を救う勇者。英雄となるべくして生まれてきたのだ』ってよ。なのにお披露目が友軍退治とかありえねーだろ」
「言いたい事はわかるわ。でも従わなければならない……。それは貴方もわかっているでしょう」
「そうだけどよ……」
[三人の間に、どんよりとした重苦しい空気が横たわった。
それを破ったのは、会話に入らなかったローレルだった]
ハイハーイ。暗い顔はここまで! 今はそんな事言っても始まらないんだし! ドクターの考えとは違うかもしれないけど、実力テストと思って、強制だけど手伝ってくれる人達を死なせちゃわないように頑張ろう! ほらっ! 私達ならできる訳だし!
[妙な明るさを振りまく彼女に、三人は顔を見合わせると、ぷっと吹き出した]
な、何よ〜。
「や、その通りだって思っただけだよ」
「そうね。ローレルの言うとおりだわ」
「ああ。俺達にはそれだけの力が与えられた。なら、それをどこまで利用できるかを図るのも仕事の内だな」
[重い空気はいつの間にか消えていた。四人はローレルの「それじゃいこっか」という言葉に合わせて再び歩き出した。
初回の相手は、極東軍空軍第一大隊・通称クラウズ。
彼らとのテストを行うために、彼らは格納庫へと向かった]
/*
最初はPvPなんて微塵も考えてなかったのに、気付いたら狼になっていた……。
何を言っているかわからねーと思うが、俺もわかtt(ry
――中国・大連付近――
[極東軍空軍第一大隊・通称クラウズは、その日、これまでにない戦果を挙げて基地へと戻っている最中だった。
無線から聞こえる部下達の撃墜数やこれから取得する休暇の予定という、楽しげな話題を耳にしながら、穏やかな表情で機動兵器『アレス』の中でシートに深く座っていた。
『アレス』は空中機動に特化した人型兵器で、機動性に加えて複数のギミックを換装することで様々な任務に対応できる汎用兵器の一翼を担っていた]
『隊長』
[無線から彼を呼ぶ声が聞こえた。
副隊長だ。
「ん?」
『隊長は休暇はどうしますか?』
「そうだな……」
[少し考えて笑ってしまった。こんな世の中だ。必死に生き抜いてきた自分には家族はおろか恋人すらいない。そんな独り身が休みにやれる事などない]
「寝て過ごすさ」
『ハハ。いつも通りですね』
「わかってるなら聞くな」
[何気ない会話。戦闘終了後、いつも交わされる平凡な会話。
そんな平凡な一幕は、次の瞬間破られた。
突如、機体に設定してあったエマージェンシーコールが全機体で鳴り響いた]
「どうした!」
[索敵担当が瞬時に答える]
『前方より高エネルギー体接近! 接触まで二十秒!』
「友軍信号は?」
『ありません!』
「全機散開! 戦闘準備!」
[サー! と返答する声が重なり合って無線をハウリングさせるのを聞きながら、彼もまた武装のロックを解除する。
索敵担当が接敵までのカウントダウンを開始する。
部隊に緊張が走る]
『接敵まで10……9……』
[カメラを最大望遠に設定し、索敵担当から送られてくる情報を元に、凝視する。
真っ青な空に、緑の点が生まれた]
「迎撃準……」
[クラウズの隊長は優秀だった。
どんな苦境であっても自分を見失わず、多くの仲間を救った彼は、部隊の内外問わず信頼され、上司の覚えも良かった。
そんな優秀な彼であっても、自分の想像の上を行く存在を前にしてはあまりにも無力だった]
「――え?」
[隊長の誤算は、緑の点――ケリィの駆るG-04が全力ではなかった事だった。
G-04のコックピット内でクラウズを確認したケリィは、バーニヤをフルスロットに踏み込んだ。それまでの数倍に速度を上げたG-04は一瞬で隊長機に寄るや、腰から愛刀抜く。
刃が回転し、ビームにコーティングされた刀身全体が薄いピンク色を帯びる。その光を煌かせ、抜刀された。
それが隊長が見た最後だった。
次の瞬間、隊長の乗った『アレス』は爆散した]
「まず一機」
[隊長機を切り去ったのはG-04は、血を払うように刀を振るうと、近場にいる三機を一刀の元に切り捨てた。
爆発が同時に花咲く。
残ったパイロットがはっと意識を取り戻すまで、更に五機分の花が必要だった]
「う、撃てぇ!」
[誰かの合図を皮切りに、G-04が一斉射される。
だが]
「な、何で当たらない!」
[改造によって強制的に能力を強化された視覚は、一発一発の銃弾の軌道を把握し、そして回避した。
焦るクラウズ隊員達に、またも理解不能の一撃が襲う。
今度は何の前触れもなく撃墜されたのだ。
索敵担当がレーダーに目を凝らした。
だがG-04以外に機影はない。そうしている間に二機目が撃墜される。
まさか――?]
「レーダー範囲外からの――?」
[索敵機はそれだけを無線で伝え、後は雑音を送ってきた。
それを裏付けるのは、G-04の遙か後方にいたS-02だった。Xの左上のバーの長距離カノンで撃墜したのだ]
「次のターゲットは?」
[隣にいたW-03は霞んでしまいそうな速度で360度に展開しているキーボードを操作して、数百に及ぶデータを処理しながら、最適な一体を選び出してデータをジェラードに送信した]
「ケリィの十二時方向三機。ついで四時方向の二機」
「了解」
[正確無比のスナイピングが次々と撃墜数を増やしていく。
それはG-04も同様だ。W-03から送られてくる情報を元に、回避斬檄を繰り返していく。
瞬くまに大隊は中隊一隊……二十機へと数を減らした。
しかし腐っても精鋭部隊クラウズだ。
残った全機が体勢の建て直しに入る――]
「ローレル……今よ」
了解。
[気付いたのは副隊長だった。
たまたま空を映したモニターに視線を送った時、何か違和感を感じた]
(なんだ?)
[目の前のG-04やS-05ではなく、そのモニターに集中した。
そして赤い流星がモニターいっぱいに広がっると同時に、副隊長機も撃墜された。生き残った全員が、その爆発に驚愕した。
雲の如く爆煙がたゆたう光景に呆然と動きを止めた。そうして爆煙を見ていると、影が現れた。
それは赤を基調としたカラーリングの機体。
双眸を黄に光らせたそれは――]
R-01、行きます。
[左右に腕を伸ばし、動きを止めた二機の頭部を掴むや粉砕する。力なく落ちていく落ちていく敵機を気に留めず、R-01は可哀想な子羊に踊りかかった。
刀を抜き、切り裂くと同時に反対手に持ったライフルを連射する。S-05に比べて正確さに欠けるため、幾つかは外れていくが、それでも急激に数を減らしていく。
W-03の指揮の下、G-04が戦場を駆け、S-05が撃ち抜き、そしてR-01が確実に迎撃する。
後に残されたのは五つの星。
その星達がクラウズという名の雲を消し去るまで僅か一分。
そして世界の各組織にクラウズの消滅という驚愕のニュースが流れるまで、そう時間はかからなかった]
「ご苦労様でした」
[自室にある重厚感のあるデスクに腰を深く降ろした実剣が、乱れぬ起立姿勢を崩さない四人を見て、満足げにそう口にした]
「G-03の指揮に対して、残り三機の反応速度は僕が想定した数値を大きくクリアしていました。これは嬉しい誤算です」
ありがとうございます。
「いえ、別に褒めた訳ではありません。僕の遺伝子が計算上より優秀だったと言うだけの話ですから」
……失礼しました。
[そんなローレルの事などすでに意識の外なのか、実剣は報告書を満遍なく読み進めていき、最後の一枚に差し掛かった時、ピタリと手を止めた。そして珍しく顔から表情を消すと、報告書をデスクに投げ捨てて手を組んだ]
「……一ついいですか?」
はい。
「報告書内に負傷者はあれど死亡者がゼロ人となっています。これは君達が意図的に殺さなかったと、そういう事でいいんですか?」
はい。
「何故?」
ドクターのお考えが正しい事を証明するためです。
「と、言うと」
[その質問に答えたのは、白英だった]
「ただ殺す……それは優秀であれば誰でも可能な技術です。ですが、圧倒的実力を持って、殺さずに生かす。どれだけの実力差が必要なのか軍上層部に対するパフォーマンスには打ってつけと考えました」
それを受け、私が許可を出しました。
「……なるほど」
[それに。と、続けたのはローレルだった]
今後を考えると、捨て駒は残しておいた方が良いかと。
「それは一理ありますね……。わかりました。今後も同じ方針で結構です」
はっ。
[それで実剣は四人に興味をなくしたのか、自室のPCに向かいキーを打ち始めた。その様子をしばし見つめた後で、敬礼。退室した]
「は〜」
[背後で自動ドアが閉まった瞬間、ケリィが大きく溜息をついた]
「何度きてもなれねーなぁ」
アハハ……。
[さすがに同意するのか、愛想笑いしたローレルを留意一つせず、ジェラードと白英は先を歩き出した]
「それで、この後のスケジュールはどうなっているんだ?」
うん、この後○七三○に出撃。今度のターゲットは極東海軍・第六中隊。通称シェルズ。鉄壁の防御力を誇ってて、海から侵入を試みてくる深海帝国を撃退している海のエース部隊だって。
「んげー。まっためんどくさい」
「愚痴を言ったって始まらないでしょ」
「そうだぞ。特にお前のS-05は実弾しか使えない。クラウズの時の様な遠距離射撃はできないぞ」
[S-05の最大武装は四問のロングカノンだ。クラウズを撃墜したのも、この武器の貢献が大きいのは、メンバーの全員が理解している]
うんうん。今回はおねーちゃんに任せなさい。
[薄い胸をドンと叩き、鼻息荒く言い切ったローレルに、全員が苦笑した]
「どうみてもおねーちゃんじゃねーのになぁ」
「仕方ない。ロールアウトされた順にドクターがつけたんだ。諦めろ」
ちょっとー! 私がおねーちゃんらしくないっていうの!?
「……一番童顔だし、そこは仕方ないわね」
白英ちゃんまで!?
[そうしていると、学生にしか見えない。
そんな四人によって、二時間後にシェルズ壊滅のニュースが世界を駆け巡った]
/*
BPPはMJPのパク……オマージュ。
さすがにそのままだとアレだから、色と機体数を変えたけど。
ヴヴヴも考えたけど、さすがにハラキリブレードはないかなって(
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