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下手をするとどころか、確実に嘴で突きまくられるな。
[ フェリクスの姿を見せる前に、間をおくように、ことさら明るいコエを贈る。 ]
勘弁して欲しいところだが、まあ、逝くときはお前と一緒だろうから、今度は二人一度に挑んでみるか。
[ かつては師と慕い、今は将として頼みにしていた男の物言わぬ姿に、カナンは相応しい嘆きと慰撫を贈り、その姿にケファラス隊の主だった隊長達がぐいと目元を拭うのが見える。
彼らの心に、新たな支えとして、元首の姿が刻まれたのは確かだろう。 ]
見事な屁理屈だったな。お前らしい。
[ やがて人払いされた天幕の内、最初に口にしたのは、死ぬまでは負けじゃない、と口にした相手への揶揄めいた言葉。 ]
...が、この先はその口先が物を言う、かもしれん。
カナン、お前は、あの王弟殿下ともう一度会うべきだ。
[ そして続いて告げたのは、はっきりとした結論だった。 ]
王国とゼファーの常識は食い違っているし、彼らの要求と、俺達の求める物は重なっている。
だが、わかちあえるものがある、と、彼は言った。
それに、彼のすぐ側に、俺たちの目指す先と同じ理想を口にした将がいる。
フェリクスを...一騎打ちで倒した男だ、あれは心底からの言葉だろう。
[ 告げた結論に頷いたカナンに、男は目にし、耳にした事柄をさらに告げ、そして、意地を見せねばならない、というカナンの言葉に頷きを返した。>>42 ]
ああ、お前はお前らしく、その手で道を開け。
後ろは俺が引き受ける。
[ 後ろを、と、言った途端に先鋒を務めろと告げられて笑う。 ]
お前は俺を使いすぎだ。
だが、拠点を離れた将軍に先鋒を命ずるというのはいい懲罰だな。
ついでに麾下の歩兵を外して、ケファラスの隊をつけてくれ、今一番、信用出来るのは彼らだろう。
[ やがて、男は一本の槍を穂先を上に立ててカナンの前に差し出した。 ]
フェリクスの槍だ。いずれ彼の息子の物になる形見だが、いまはこれを、俺達の誓いの印としよう。
フェリクスは、俺たちに
その言葉を必ず実現せんことを。**
[ 決戦の相談をしているというのに、目の前の男は、愉しげに瞳を輝かせ、悪童の顔で、敵味方双方を出し抜こうという悪巧みを口にする。 ]
気にした所で、お前が止まるわけもない。今更、だ。
[ そんな時、一度は、溜め息混じりに肩を竦めるのも、昔から。
呆れたような口調とは裏腹、唇には笑みが浮かぶ。
そうして続いた言葉には、くっ、と喉が鳴った。 ]
全く、我らが師の教えは有用極まりないな。
せいぜい、驚かせてやるといい。
― 天幕 ―
[
その指が額に残る毒の傷に触れようとすると、男は身を引いて顔を顰めた。
傷が痛むのを嫌ったわけではない。 ]
まだ毒が残っているかもしれん。不用意に触れるな。
[ 言ってから、僅かに眉を下げ「俺も」と、示すカナンの身を上から下までじっと眺める。>>53 ]
どう見ても、俺よりひどいな。相変わらず馬鹿だ、お前は。
もちろん薬草は持ってる。
いいとも、殴れるものなら、殴ってみろ。
[ こんなことは幾度もあった。そしてその度に、カナンの身に増えていく傷跡を、男は全て心に刻んできたのだ。 ]
ああ、そういえば、この薬草と毒消しの酒の調合法を王弟殿に譲ると取引したんだった。
お前、ついでに持って行ってくれ。
[ とびきり効き目が強いが、とんでもなく染みる薬草だ、とは、伝えていないが構わないだろう、と、手当てに悶絶の表情を見せているカナンに真顔で告げる。 ]
引き換えに、毒矢は使わないでくれ、と頼んで来たから、お前もそこは心配しなくていい。
[ むしろ、あの願いは、この時を想定していたからのものだった。
そして、ギデオンが、その約を破る事は想定していない。* ]
― 北東の森 ―
[ 二人きりの会談を終えた元首が、恐ろしい渋面だったのが、染みる薬草のせいで、顔に明らかに殴られた痣を残した将軍の酷い顰め面が、念のため飲んでおいた薬酒の苦さのおかげだという事は、運悪く二人を目撃した兵士達には、判らなかったろう。 ]
フェリクス殿を失ったばかりの貴君等には、色々と、思う所もあるだろうが、元首殿の機嫌がどうであれ、任を得たからには、私も、全力もって先鋒を務める所存だ。
よろしく頼む。
[ 更に、決戦準備に慌ただしい野営地で、新たに麾下に付いたケファラス隊の待機場所へ、わざわざ挨拶に出向いてきた将軍の姿と、かけられた言葉に、応対した若い小隊長が「は?いえ、はい!」と、思わずきょどってしまったのも仕方のないことだった。 ]
私も共に、騎馬で...
...果たし状でも送ってきたか?
[ フェリクスに倣い騎馬隊に混ざって道を開くつもりで、その打ち合わせに臨まんとしていた男は、笑み含んで飛んできたコエの告げる内容に>>58思わず気を取られた。
この戦況の中、よくも、そんなものが届いたものだ、という感嘆は、口には乗せずにおく。 ]
...足の強い騎馬一頭を、借りたい。私は
[ その任が必要ならば、如何様にもしてみせる。が、 ]
お前、本当に俺を働かせ過ぎだぞ。
[ 恨み言だけは、挨拶代わりに投げておいた。* ]
― 開戦前 ―
[ 男が騎馬から
先鋒に配された将軍が全軍の指揮を執ろうというのだから、並みのやり方では務まる筈もない。 ]
旗と鏡で合図を出します。クレメンス殿は、それに従って、「元首殿」と「共に」号を発して下さい。
[ 事前にクレメンスと打ち合わせして、合図を決める。鏡を使うことにしたのは、ギデオンとの海戦を経て、王国軍の連絡方法を取り入れた成果だ。おかげで、旗だけでの連絡よりも複雑なやりとりが出来る。 ]
― 開戦 ―
[ ゼファーの兵士は、常に決死の覚悟で戦に臨む。そうでなければ、倍する以上の敵と互角に戦うことなどできるはずもないからだ。
けれど、彼らとて死にたいわけではない。生きるために命を捨てる、その覚悟を持て、と、幼い頃から教えられ、育てられた結実が、男の目の前の軍勢だった。 ]
我らは生来の戦士である!
戦神は、我らが剣と槍に宿っている!
戦場が我らの日常だ。進め!
[ クレメンスの合図に従って無言で立ち上がり、前を示して腕を伸ばした「元首」の動きに合わせ、男が号令を発すると、全軍が前進を始める。
号令までの流れの自然さの「不自然さ」については、深く考える兵もいなかった。* ]
/*
ついでに細かい軍団戦描写も眠くて出来そうにないです、わーん!
二人でさぼって寝ようぜ、ベリアーン!
[ 聞こえません ]
― 最前線 ―
[ 男の率いる騎兵と軽歩兵から成る一隊は、只管に前進を敢行していた。
陣容は騎兵300を配し、中衛に軽歩兵300、最後尾に騎兵100という配置だ。指揮官たる男自身は
前の騎兵、縦陣とって右翼寄りに走れ、軽歩、少し下がれ。
後衛はそのまま。
[ やがて前方より、押し出してくる王国軍の威容が迫る。>>100 ]
盾兵に正面から当たる愚は犯すな。アレは後方の重装歩兵に任せればいい。
敵騎兵を確実に潰す。
[ そう指示を出す頃には、王国軍からも動きがあったろうか。* ]
なるほど、誘い込んで数で押し包もうという策か。
[ 縦列に組んだ騎兵の戦闘が近づいても王国の盾兵は足を動かさず、ただ生きる壁となったように背後を守る。
敵騎兵の姿が見える手前、あからさまに誘い込むような隙が開くのを見ると男は口の端を上げた。 ]
弓兵も背後に控えているだろうな。さすがは王国の将、隙一つない布陣だ。
[ 浮かべる笑みは今は女神の寵児との会見に臨む元首のそれに、どこか似る ]
だが、我らを誘い込むということは獣を家に招き入れるに等しい。
前騎兵!盾構え、楔型をとって駆けろ!せっかく敵の作ってくれた入り口だ。こじ開けろ!!
軽歩は、落馬したものの援護を。
[ 号に応じて騎兵は駆け、誘い込まれたと見せて一部が左右に別れ、周囲の王国兵を蹂躙しようと槍を揮う。
当然王国から降りかかる矢の雨によって落馬するものも居たが、致命傷でない限り、そのまま歩兵として周囲の兵をなぎ倒さんと剣を抜くのもこれまで通り。
ただひとつ、先の会戦と違っていたのは、彼らが長を失い、失ったが故に、その存在を深く心に抱いて戦っていたことだろう。 ]
『
[ 老練の兵が、鉄の盾で振る矢を弾き飛ばしながら槍を大きく振り回す。
その姿と声から伝わる慟哭に似た熱は、若き兵にも伝播して、力を与えていた。*]
[ ふいに届いた声に、僅かに笑う気配を返す。 ]
その話か......
俺の個人的な問いだ。
お前が話をつけてしまえば答えを聞く必要もなくなるだろう。
[ 気にするな、と、言えば、或いは余計に気になるのかもしれないと、知った上で、そう告げた。 ]
[ 最初の会戦では、倒れても戦い続けるゼファーの兵に、恐ろしさを感じる王国兵も多かったろう。
しかし、千人将をベリアンが倒したことで、その恐ろしさも軽減しているのは確からしく、冷静に連携をとり、的確に急所を狙ってくる兵の数が格段に多い。>>116 ]
気合いと数...ではないな、死を恐れぬ力と、生きようとする力の戦い、か。
[ どちらが正しいとも、強いとも言えぬ。だが、どちらも負けるわけにはいかぬ戦いだ。 ]
[ この場所ばかりではなく、戦場全体を見渡しても、戦況は、ほぼ拮抗していた。クレメンスが直接指揮している一隊など、一部押し込めている場所もあるが、びくともしない盾の壁に跳ね返され続けている場所もある。 ]
押し負けるな!
[ そんな中、男は率いる兵達を励ましながら、指揮を執り続ける。
目立つ
諦めず道を開け!
[ 道を開くのは元首を敵の要まで押し通すため、の筈だった。と、知る者は少なく。故にその号令に疑問を抱く者は皆無** ]
― 過去 ―
[ 男にとって母の思い出は遠く薄い。
名家の出だった母は、その出自に相応しく、子が共同体に預けられる七歳までの育児の殆どを乳母と侍女に任せきりだったからだ。
それでも、愛情がなかったというわけではなく、時折抱きしめられれば喜びが湧いたし、「父上のような強い男になりなさい」と、言われれば、誰に対するより素直に「はい」と頷いた。 ]
『奥様は、旦那様に操をたてられたのです。』
[ その母が命を失ったと知った日、叔父の目を盗んで教えてくれたのは、男が生まれる前から、母に仕えていた侍女だった。
叔父は戦死した父に代わり、母を妻にと望んだと言う。けれど母はそれを断り、翌日の朝に謎の突然死を遂げた。
原因不明の病死と言われたが、外科以外は進歩の遅れたゼファーの医者の言うことなどもとより宛にはならない。 ]
叔父は、女を毒殺などしない、と、言った。あれが本当なら、おそらく母は自分で命を絶ったんだ。
[ そしてその瞬間、親族全てが叔父の側に付き、英雄の子は、孤立無援の孤児になった。 ]
母が、生きてくれていたら、とは、思わない。だけど...
[ 遺言ひとつ、形見のひとつも、母は残して逝かなかった。まるで、我が子の存在を丸ごと忘れてしまったように。 ]
散々苦労してきたお前には、おかしな話に聞こえるだろうが、俺はお前が羨ましいよ、カナン。
[ 父からの愛情を確かに残された、それが羨ましい、と。そんな心情を吐き出したのは、父母が亡くなって一ヶ月も過ぎた頃。
叔父から身を守るため、毒に体を慣らそうと思い立って、少量の毒草をわざと口にし、手足の痺れと悪寒で昏倒したところをカナンに見つかった時の事だった。
今思えば毒のせいで随分気が弱っていたのだろう。 ]
[ その日から、カナンが叔父に対して、蛇蝎に対するごとき嫌悪をあからさまに向け始めたのには、少し驚き、驚きながらも、喜びを感じずにはいられなかった。 ]
女性に、特に未亡人達に、自分一人でも生きられる道を用意するのは、悪くないだろうな。
俺も詳しくは知らないが、女達には、独自の情報網や、助け合いのためのグループがすでにあるらしい。
それを利用すれば、話も早いだろう。
[ カナンの計画に、そう賛同の意を示しながら、男は過去の記憶の中の母を思い出していた。彼女にも家を出て生きる道があれば、或いは、と。 ]
......フェリクスの奥方なら、きっとそういったこともご存知だろう。
お前の計画が、彼女自身の張り合いにもなればいいがな。
[ そう語るコエは、柔らかい** ]
/*
よし、書きたかったとこは、だいたい書けたと思う。
眠いけど、楽しかった。
カナン愛してるぜっ!!(ぐう
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