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少女 リーザ は、負傷兵 シモン を護衛している。
[ばきり、という音が響いた瞬間、ふわり、とした感覚に包まれた。]
…………?
[力の抜けた自分の躯体と別にある「自分」。
ふと彼の顔を見上げれてみれば――]
(――泣い…てる…?)
[狩人だと告白した後なのだから。
嬉々として襲撃に来るものだと、そう思ってた。
しかし、彼は、― 獣の姿となった後も ― 涙を浮かべながら、喰らっている。]
(最後に苦しめて、ごめんなさい…)
[躯体を喰らう黒い狼の頭を、そっと撫でた。
彼には、届かないが…]
[自分の躯体だったものが、涙を浮かべた黒い狼に喰らい尽くされていく。]
(あぁ、終わったんだね…)
[自分の躯体だったものが目前で無くなっていけば、否が応にも【死】を自覚せざるを得ないわけで。
喰らい尽くした狼が立ち去った後、その部屋の片隅に膝を抱えて座り、ほんの僅かに残る自らの痕跡をじっと見つめていた。]
[黒い狼が立ち去ってすぐに扉が開き、オットーが姿を見せた。
室内を見回し、ほんの僅かに残るリーザの痕跡に、狂った微笑を浮かべる。
素早く黒い狼の痕跡を消していくオットー。]
(そっか、毎日そうしてたんだね。
私が「護れなかったもの」達にも。)
[と、オットーの視線が部屋の扉に向く。]
[シモンの姿を目にしてオットーが放った言葉>>5:19>>5:20>>5:21>>5:22は、生体でない自分の胸を抉る。]
(そうだよね。酷いよね。
…でも、演技かもしれないって思って――って、それも言い訳か。)
[恨まれるようなことは、充分にしたと思っていた。
右手には、赤い狼―クララ―を撃ち抜いた衝撃が、痺れが、この存在になる前に黒い狼と対峙していたときよりも強く、生々しく残る。]
[撃ち殺し、止めをさす。
私のしたことは、惨殺して喰らう人狼より酷い。
食べるために殺したのではなく、殺すために殺したのだから。]
[オットーが去った部屋で血の海に膝を落とし、僅かな残骸を抱くシモンを抱きしめながら、自らの業を噛みしめた。*]
[クララに抱きしめられれば拒否しない。
大丈夫、リーザのおかげという言葉には、泣く子を落ち着けるための意味もあるだろう。]
(私が泣いたら、困らせちゃうんだから、泣くな。泣くな。)
[自分に言い聞かせて嗚咽を抑えれば、無理してでもクララに笑顔を向けただろう。]
[再びクララに抱きしめられ、クララの胸に顔を埋める。
そうしている間に眠ってしまっただろう。
眠ってしまったならば、目をさましたときに見えるのは避難部屋のベッドからの景色だろうか。**]
[気がつくと、泣いていた2階の奥の部屋>>5:+39にいたはずが、いつもの避難部屋のベッドにいた。]
(昨夜、シモンさんに手を握って貰いながら寝入った>>4:135後のことは全部夢……だった訳ないか。)
[あの後朝まで眠っちゃって、夜のことが全部夢だったらよかったのに、という僅かな望みは、右手の『業』が打ち砕く。]
[ベッドから身を起こせば、そこには僅かに血の滲むシーツに包まれたリーザの骨と服の残骸、そしてピストル。
そして、部屋の中で身支度を整えるシモン>>5:66。
リーザの血で真っ赤に染まった服は、綺麗に畳み、リーザの傍らにあった。]
[「……じゃあ、行って来る」なんて、銃を懐に部屋を出ようとすれば、聲について話してくれたあの日のこと(>>2:238>>2:255>>2:257>>2:260)を、思い出す。]
(シモンさんがあの『聲』で私とジムゾンさんを背負うか、ジムゾンさんが私とシモンさん、ディーターさんを背負うか…しかないんだよね。もう…。)
[本当はジムゾンに元に戻ってもらいたい。
でも、いつかのジムゾンの問い>>2:293に返した言葉>>2:309が、そのまま彼からの答えになるんだろう。]
(――もう、同じ場所には、戻れない。から。)
[銃を手に出ていくシモンを、止めることは出来なかった。
例え、リーザの声がシモンに届くのだとしても。]
―談話室―
[虚ろなジムゾン、詰め寄るシモン、煽るオットー。
あまり会わなかったアルビンの反応、ペーターの反応。そして、ディーターの反応。]
(ディーターさんの反応が一番意外だったな。
本当に…シモンさんとジムゾンさんと、3人で悪友だったんだ…)
[遭難したり、バカなことやったり、というエピソードは詳しく知らないが、お互いがお互いを深いところで信頼しあってるんだ…と強く感じると同時に、もう、シモンさんの家で3人が飲む、という淡い夢は現実にはならないのだと突き付けられたようだった。**]
―談話室→外―
[虚ろなジムゾンが外へフラりと出た。
いや、談話室から遠ざかろうとしている。
…ディーターが追いかける。]
ディーターさん、戻って!!
[ジムゾンの様子は、私を喰らってる時から少しずつ酷くなっている。
クララの最期のそれと通ずるものがある。
宿から離れてるのは、もしかしてディーターやシモンを手にかけたくない理性と、人狼としての本能のせめぎあいではないか?
リーザを手にかけた時の涙を再びは流したくないからではないか…?
しかし、ディーターもリーザの声は聞こえない。
ジムゾンに声をかけるディーター。
虚ろな目で訴えるジムゾン。―黒い狼が現れる―
ジムゾンとしての「理性」が、人狼としての「本能」に抗う。
「本能」が勝っても、「理性」が流し続ける涙――。]
(―私が自分を護れたならば、ジムゾンさんがここまで苦しむ前に…楽にしてあげられたのかな…?)
[右手に強く残る衝撃。
例えこれが強くなったとしても、今のジムゾンよりは辛くない。
そう思えば、自らが選択肢に挙げることすらかなわなかったそれを選びたかった気持ちが堪らなく零れた。**]
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