情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
少女 リーザ は、負傷兵 シモン を護衛している。
―未明―
[人狼が来た気配がないまま、窓の外が白む。]
(今日も護れた。でも、たぶん、また誰かを護れなかった…)
[シモンの手を布団の中に戻し、静かに部屋を出る。]
[ロビーに向かって歩く。
と、従業員室から冷たい隙間風。
扉が少し開いていた。]
(ゲルトさんとヨアヒムさんが傷まないように窓開けてるんだっけ…)
[扉の隙間を閉めようとしたとき、その隙間から見えたのは…パメラ。]
パメラさん!?何で!?
[閉じようとした扉を勢いよく開き、中のパメラに駆け寄る。
氷のように冷たくなったパメラ。
しかし、その表情はどことなく穏やかで…。]
―談話室―
[ひとまず、パンと飲み物くらいの食事が並んだ。
食べられるかわからないし、食事作りに時間をかける余裕もない。
倒れない程度に口にすれば、それでいいのだから。]
(――何から話せばいいんだろう…?)
[今朝の「護れなかったもの」は、ヴァルターだった。
どうやら人狼が別のところ―恐らく村長の家だろうが―で襲った後、頭だけ宿に持ってきたようだった。]
(私達、人狼に弄ばれてるのかなぁ…)
[ヴァルターが襲われたことにより、彼が本物の占い師だったらしい、ということよりも、
どんなに酷い村長でも、場を仕切る人って必要なんだなって、今のみんなの沈黙を思えば強く感じる。
(村長、護るべきだったのかなぁ…)
[頭によぎるは、後悔ばかり。
――昨日の夜ね。
クララさんがいきなり部屋の扉をノックしたんだ。
人狼がいるって夜にだよ?
今夜は一緒にいてほしいって。
いつもシモンと一緒の私がいうのも変かもしれないけど、普段から一緒だった人じゃなければ、一人が心細くっても、一緒にいよう言うのかな?
しかも。
疑ってるなら縛ってもいいって。
[意を決して、一気に口に出す。
この場にいた者はどんな反応を見せただろうか?
反応を待たず、さらに続ける。]
しかも来た理由なんだけどね。
疑いを晴らしに来た、って言ったの。
いくら昨日の話し合いが、ディーターさんの大暴れで有耶無耶になったとはいっても、夜に部屋に来て、「縛っても構わないから一緒にいてほしい。疑いを晴らしたいからって。
何でみんなといる時じゃないの?リーザひとりなら力づくで黙らせようとしてるんじゃないの?って思った。
私、扉開けなかった。
まだ部屋で起きてるような時間だったから、扉蹴破ったらさすがにその音で誰か来るでしょ?
でも、部屋の中に入れて、クララさんが人狼だったら、例え縛ったとしても引きちぎられると思ったんだ。
だから、扉開けなかった。
昨日、クララさんがすごい他人事みたいだって言ったでしょ?
それで、昨日の夜のことがあったから、私はクララさんが、人狼を怖がってるように思えない。
私、クララさんは人狼だと思う。
[はっきりと断言した。*]
少女 リーザは、司書 クララ を投票先に選びました。
シモンさん!?
何やってるの!? やめてよ!
(いつの間にあんな銃を持ってきてたの…!)
[他の人なら飛び込んで止めているところだが、シモンが相手だと足が動かない――]
それに昨日オットーさん言ってたことそのまままるっと返すけど、
私独りなら簡単でも、シモンさんがいつもそばで守ってくれてるから、手を出せなかっただけなんじゃないの!?
昨日だって、もしシモンさんが部屋にいなくて、私一人だったらラッキー♪とか思ってきたのかもしれないしね!
私は夜に他の人の部屋に行った人じゃないからわかんないけどね!
[真の姿を現したクララ。
しかし、シモンの首が…!]
…っざけんなぁ!
[厨房に飛び込むと、包丁を持ってクララの足に飛びかかる。
足に刃物が刺されば、一瞬の隙くらい生まれはしなかっただろうか?]
[トリガーを引いた後、もう1発を充填する。
実際に使うのは初めてで、何発撃てば人狼を撃退できるのか、全く分からない。
本来は気配を消して護り、襲撃に来た狼の視界に入らずして追い返す力を持つ、と聞いていた。
完全に人と人狼として、対峙したらどうなるかなんて、パパの手紙には書いてなかった。]
[まさか、追い返すだけじゃなくて殺せるだなんて。
こんな威力があるなんて、知らなかった。
クララに向けた衝撃の残る手でピストルを構えたまま、赤い狼―クララ―がもがく姿をじっと見つめていた。]
―クララが動かなくなった頃―
[ピストルを構えながら、注意深く赤い狼―クララ―に近づく。
ピクリとも動かない。
――少し考えた後、止めにもう1発撃ち込む。
衝撃で、わずかに体が撥ね上がるが、それきり動かない。]
[「完全に狼となった人狼も、息絶えれば後は、普通の躯の処分と同じでいい。」
ピストルと一緒に入ってた、会うことのなかったパパの、小さなメモに書いてあった。
ならば、シーツでくるみ、雪が融けたら葬ればいい。
大人の男は足の不自由なシモンと、隻腕のディーター。
躯の処理の手伝いはさほど見込めない。
あとは、オットーとアルビン。ジムゾンも騒ぎを聞きつけて談話室に来ていただろうか。
人狼を恐れて誰も手伝わなかったとしても、粛々と処理を進めたであろう。]
[――そうして片付け終わった頃、クララと過ごした図書館での時間が頭の中を駆け巡る。
まだ小さく、シモンに連れられて足を踏み入れた時、そばに来てしゃがみこみ、視線を合わせてくれたこと。
いろんな本に触れさせてくれたこと。
時には、こっそり一緒にキャンディーを口にしたこと。
いつも図書館に行けば笑顔で迎えてくれた、あの人は、もういない。
しかも、この手で殺めた。
例え、姿を変えた人狼だったとしても、身近な人を、この手で―。]
[覚悟は決めていた――つもりだった。
でも、覚悟が足りなかったのかもしれない。]
[クララとの日々を思い返しながら談話室の片付けと掃除を―他の誰かが手伝ってくれたならば一緒に―済ませると、避難部屋に戻っただろう。シモンも一緒に戻っただろうか?その時ジムゾンは部屋に居たのか?]
―避難部屋―
[部屋に戻ると、先程使ったピストルに弾を補充する。]
[そこにシモンがいれば、 ― もしかしたらジムゾンやディーターも居たかもしれないが ― ぽつり。]
――黙っててごめんなさい。
[さらに続ける。]
もし、クララさんの他にも人狼がいるんなら、たぶん、次に襲われるのは、私。
…恨みも買っちゃったし。
だから、言っとかなきゃ、と思ったの。
[ふう、と息をつく。]
[そこに居れば、シモンとジムゾンに向かって]
いっぱい心配かけてごめんなさい。
私がいるからシモンさんが苦しいこともたぶんあったんだよね?
でも。
一人になったときに助けてくれてありがとう。
引き取って、育ててくれてありがとう。
いつも話を聞いてくれてありがとう。
いつも支えてくれて、ありがとう。
[伝えたかった、感謝。]
…こんなことでもないと言えなくてごめんなさい。
[素直な気持ちを吐露し、気恥ずかしい。
何か言葉は返ってきただろうか?]
[やりとりがおちついたならば、少し疲れたような表情で、しかし、微笑みを浮かべ]
…少し、眠ってもいい?
毎晩起きてたから、眠くて。
[気恥ずかしさも手伝い、部屋に居る人に背を向けてベッドに潜り込む。
シモンが居たならば、傍にいただろうか?
すぅ、と眠りに落ちた。**]
―深夜、避難部屋―
[シモンが寝付いたようだと確認し、ベッドから起き上がる。
手元には、ピストル。
今夜も左手はシモンの手を握り、ピストルを右手に警戒を強める。]
(人狼がクララだけなら、いいんだけど。)
[不安は払拭出来ず。一応今日もシモンを護る。
何事もなければ、それでいい…。]
―未明、避難部屋―
[かちゃり、と扉が開く。…無言で部屋に入る、まだ人の姿のもの。
その視線が、警戒するリーザとぶつかる。
シモンに向かってきたならば、リーザとは視線が合うわけがない。警戒中のリーザの姿は見えないのだから。
普通の用事ならば、こんな時間に来るとは、思えない。ならば、彼もまた、人狼ということになる。]
―やっぱり、まだ居たんだね。
[ぽつり、呟く。]
[一言、二言。言葉を交わしただろうか。
リーザはピストルを床に投げる。]
…もう、いいよ。どうせ自分に向かって来られたらどうしようもないんだから。ただ――この部屋で、だけはやめてもらっていいかな。
できれば、シモンさんがめったに上がらない、2階の部屋がいい。
[彼は要求を聞き入れてくれた。静かに2人、2階に上がる。]
―2階の一番奥の部屋―
(クララさんも、たぶん彼も、今まで優しくしてくれたのは、嘘じゃない。)
[彼がいなければ、自分はもっと悩んでいたに違いない。何度考えても、彼に抱く感謝は、変わらない。]
―もういいよ。
最後のお願い、聞いてくれてありがとう。
[少女が発した言葉はそれが最期。
一切声を上げることなく、素直に黒い狼の手にかかった。**]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新