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[呪法の行使者相手にカスパルは律儀に投降を勧告している。
普段から、そういうことをしているのだろうか。慣れた所作だった。
そういえば、今なにをしているのかなども聞いていない。
あとで聞いてみようか。
予想通りに勧告は退けられ、動き出した岩人形の前へ彼が立ちはだかる。
牽制の一撃、と彼は考えていたかも知れないが、繰り出された爪は易々と岩人形の身体を裂いた。
裂かれた部分からざらざらと砂を零しながら、一体が崩れていく。]
予想以上に効果があるな。
駆け出しを相手にしているようだ。
[魔法使いとしては駆け出しレベル。そんな感想が相手の耳に届いたか、術士の顔が明らかな怒りで染まった。]
いくがいい。
今の君の前では、岩人形など紙くずも同じだぞ。
[相手術士の動向に気を配りながら、カスパルに発破を掛ける。*]
[残る岩人形をカスパルが鮮やかに仕留める。
その間に、術士が詠唱に入っていた。
聞いたことのない形式、抑揚の呪文。
詠唱というよりは、呪詛に近いそれ。]
貴様のそれは魔法ではないな。呪いだ。
世を恨む思考だけでここまでのことを成し遂げるとは驚嘆に値するが、所詮は単なる恨み言だ。
これ以上、貴様の愚痴に付き合わせるな。
[言いたいだけを言って、引き金を引く。
撃ち出したのは、ごく単純な石の弾だ。
近くの石を弾の形に変えただけのもの。
当たり所が悪くなければ命の危険もないだろうが、痛みで集中が途切れれば術を破れるかもしれない。]
[だが弾の行方は確認できなかった。
一瞬早く発動した相手の術が、こちらへ飛んできたのだ。
質量のある闇、としか言いようのないなにかが、なだれ落ちるように襲い来る。
咄嗟に周囲に石のドームを作って防いだが、闇は守りごと押しつぶそうと圧力を掛けてきた。
これは、長くは保たないかもしれない。]
行け!
[石と闇に閉じこもる寸前の言葉は、彼に届いたか。
防壁の維持強化に力を注ぎながら、外の気配に神経を集中する。*]
[カスパルと共にある鎖の位置を追う。
僅かに動きが淀んだが、すぐに動き出したその速度に、内心で快哉を叫んだ。
彼が跳躍し、放物線を描く。その軌跡を意識の中に追う。
小さくも重い衝撃が足元に伝わり、周囲を覆う闇の圧力が減じた。
その隙を突いて、前方に向かって遮蔽を解く。
開けた視界の先、カスパルが敵術士を踏みしだいているのが見えた。]
[跳躍からの踏みつけに耐えられなかったのだろう。術士は仰向けに倒れていた。
まだ意識も戦意もあるらしく、カスパルへ指を向けている。
そこから何が飛び出すよりも早く、カスパルに預けた鎖へ力を通した。
彼の武具となっていた部分を鎖の形に戻し、術士の手首を縛り上げる。
口枷を噛ませてしまえば、もはや脅威はないだろう。]
終わりだな。
[蠢いていた闇も霧散して消えていく。
おつかれ、と片手を上げながらカスパルへ歩み寄った。*]
[戦いを無事に乗り越えた安堵からか、カスパルの笑みも柔らかく見える。]
共闘が有益なのは実証されたな。
君の勇姿を堪能できてよかった。
[いきなりの抱擁には驚いたが、こちらも軽く返す。
これまでも腹に乗ったり足でぶら下げられたりしてきたのだ。
驚くのも、今更だろう。]
そうだな。
ずいぶんと、重量オーバーだな。
[カスパルの問題提起に、捕縛した相手を見る。
確かに、歩くのも苦手そうな体型だった。
脅して出口を聞き出す手も考えたが、奴が一矢報いる気でいたら危険だ。]
こいつが歩かない派なら、近くに別の機構もあるだろう。
探してみるか……
でなければ、こいつをソリにでも乗せて、君が引っ張っていくかだな。
[肉体労働は専門外なので、ソリなら作成までしか担当しない気である。*]
[照れて頬を染める姿は、思いのほかあどけない。
いや。同い年のはずだし、その表現が相応しくないのは理解しているが、超獣戦士として戦っていた姿からは多分にギャップがあった。
そんな顔もするのか、と注視してしまったのは不可抗力だ。間違いない。]
短い距離なら、だな。
例の歩道の脇に新しい通路を引くとなると、時間が掛かるし俺の精神力も尽きる。
薄くなっている天井を抜くくらいなら余裕だろうが、基本的には手を触れたものしか変形できない。
[自分の得意とする魔法は物体の変形及び、精製である。
変形は文字通り、物体の形を変えること。連続して変形させ続ければ、鎖でやってみせたように、自在に動かすことも可能だ。
精製とは、周囲の物体から望む物質を取り出し、新たな形を与えること。
見た目は無から有を生み出すようなものだが、素材は必要だし、あまり複雑なものも作れない。
軽く、そんな説明をした。*]
そうだな。
やろうか。
[カスパルの提案に、というよりは表情に頷いて、脱出作戦に取りかかった。
幸いにして、洞窟の天井は地上近くまで達しており、薄い岩盤と土壌を動かすだけで十分だった。
諸々の手段を駆使して地上に戻り、無事に呪術師をしかるべきところへ引き渡して、ようやく肩の荷を下ろす。
あとのことも諸々あったが、なにはともあれ、今は心身を癒やす一杯が欲しいところだった。]
食堂にでも行かないか?
[事後処理が終わった頃合いのカスパルを捕まえて、約束の一杯に誘う。*]
/*
諸々考えるのが面倒くさくなったので、楽しいところまですっ飛ばしてやったぜ。
エピ明日で終わり?だよなあ。
[カスパルを見ていると大型犬を連想するのはなぜだろう、と考えるが、おそらくは最初の犬鼻の印象が強いからだろうということにしておく。
食事時を外した食堂は適度に人も少なく、個人的な祝杯を上げるにはちょうど良い場所だ。]
ああ。乾杯しよう。
君との再会と、共同作戦の成功に。
[軽く泡立つリンゴ酒が入ったグラスを掲げる。
アーケシアを出たのは、まだ飲酒の習慣がない頃だったから、彼と飲み交わすのはこれが初めてだ。]
改めて思うが、この会議に参加した一番の収穫は、君と再会したことだ。
共に力を合わせることまでできたのは、他の連中には悪いが、願ってもない僥倖だったな。
[呪術師がもたらした混乱はいくつかの被害ももたらしていたが、両国の友好を阻むものではなかった。
むしろ、こと自分とカスパルの関係においては良いきっかけを運んできてくれたようなものだ。
良かった、と思う。*]
君が、自分の実力を低く見るのは、昔から変わらないな。
確かに、魔法の技術ならば上のものもいた。
だが魔法を使う以前の、根本のところを含めれば、君を越える者はいなかったぞ。
なんなら今だって、
―――いや。今はこの議論は止そう。
まずは再会と勝利と生還を祝おうか。
[もう一度乾杯して、グラスを傾ける。
リンゴ酒の仄かな甘みと爽やかな酸味が喉を駆け下りていった。]
それで、だけどな。
この再会を一度きりにしないための案があるんだ。
聞いてくれるか?
[テーブルに身を乗り出し、肘をついて顔を寄せる。
他人に聞かれたくないからというよりは、"ここだけの秘密だけど"というような児戯めいた仕草だった。*]
[同じように身を乗り出したカスパルと、間近で顔を合わせる。
やはり、悪巧みをする少年期に戻ったようで、楽しい。]
いずれ、この辺りに、共同魔法研究所を作ろうと思っている。
[先ほど浮かんできたばかりの腹案を、そのまま口に出す。]
アーケシアとゾラントの魔法使いを呼び寄せて、複合魔法の研究をする。
お互いの魔法技術の交換もしよう。
二つの魔法を組み合わせれば、今まで以上のことができるのは既に実証済みだ。
さらに研究を進めれば、これまでは考えもしなかったことができることになるだろう。
可能性は、それこそ無限大だ。
[思いつくまま、展望を語る。
実現にはいくつもの困難があるのは明白だが、そんな困難になど目もくれずに、求める先を見据える。]
そんな場所が完成したら、君も来てくれるか?
いや、一緒に作らないか?
[そうして、その道を共に行こうと誘うのだ。*]
当然だとも。
俺が生体魔法に向いていなかったというだけで、アーケシアの技術は素晴らしいものだ。
出奔して良かったのは、ゾラントの魔法も技術も同等に素晴らしいものだと実感できたことだな。
これからは、お互いに驚き合えば良い。
[どこか安心したような顔をしたカスパルに、心持ち胸を張りながら答える。]
できることなら、あの呪術師の使った技も研究してみたいものだな。
力の源泉は良くないものだが、引き起こした現象には興味がある。
あれも、この土地の力が関係しているんだろうかな。
[他の誰かが聞いたらぎょっとしそうなことを口にするが、当人は至って真剣だ。]
[遠回しな言葉で賛同を得て、晴れやかに笑う。]
君が来てくれるなら、もう成立したも同然だ。
主に、俺のやる気の面でな。
両国にも、ここいらの動物にも文句を言わせない施設を作ってやろうじゃないか。
[だとすると、大規模な魔法の実験場は地下だなとか思考が及べば]
やはり、奴が作り出したか呼び出したかしたあの洞窟を徹底調査する必要があるな。
崩れていないといいが。
[傍目から見れば唐突なことも言い出す。
この先のことなら、いくらでも話すことがあった。*]
[不意に手がぷにぷにと、もふもふに包まれた。
わかっていてやっているんだろうか、この男は。]
なにか悩んでいても、一度に吹き飛びそうだな。
[もふもふ。ぷにぷに。もちもち。
ついでに、今まで考えていたことも全て吹き飛ぶが、仕方ない。
破壊力が大きすぎるのだ。この手は。]
やはり君となら、1人ではできないこともできそうだ。
改めて、よろしく頼むよ、――相棒。
[柔毛と肉球の手を握る。
何気なく口から出た言葉だが、2人の関係はそれがちょうど良いように思えた。*]
/*
やあおつかれさま。
良い感じで収まったので、こちらはあれで仕舞いにしておこう。
あと10分だな。
お隣さんも、なんだかんだ幸せそうでなにより。
終わったらゆっくり読み直しにいくんだ…。
/*
そう。意外に近いところにいたかもとは思ってた。
川、川に流されてるな、向こうも、とか横目で見てたよ。
ラスボスは放置しても問題ない系だったけれど、こっちが戦闘するぜーってキャラ設計だったから好き放題させてもらいました。
/*
俺たち親密度初期値低かったよねー。
ほんと頑張った。
次やる時はもうちょっと高い位置からやろう…。
でもああいう(親密度上げ的な)戦いも楽しかったよ。
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