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おかげさまで、鬼ごっこから隠れんぼまで一通りね。
まーそうだね。
おねーさんと先に会わなかったのは、あちらさんにとっても良かったんじゃない?
ごまんぞくいただけたようだし?
[左手で頭を掻いて視線を逸らす。
結局女の子も助けてやれなかった自分は、心残りだらけだ。]
もう一度は勘弁かなあ。
走ったら貧血で倒れそー。
[へらりと笑って軽く言うけれど、立っているのも辛いのは本当だ。
正直早くこの場を離れたいけれど、今はまだ蛇に睨まれたカエル状態継続中*]
[少年はしばらく困った顔で吸血鬼の方を見ていたが、そのうちおずおずと狩人と呼ばれた青年を見上げた]
「お…お兄さんは怖い人?
みんなみたいにおかしくなっていない?」
[腰のフルーレの柄に手をかけてはいるけれど、握りが逆手*]
ちょ……
[わけがわからないが、呼び止めるのもちょっと嫌だ。
そうこうしているうちに、少年と二人して取り残される。]
[会話を信じるなら、この少年は人間らしい。
あっけにとられ、どうしたものかと悩んでいたら、少年の方から話しかけてきた。]
ん?
おにーさんは、怖い人でもないし、変にもなってないよ。
まー。そうだな。
とりあえず、ここにいるのも何だし、どこか行こうか。
[フルーレを握りしめている彼の前に手を差し出す。
繋いでいこうかというつもりだった。*]
[少年は男の顔を見上げて、吸血鬼の方を振り返り、そして差し出された手を見た。
そのたび首に結ばれた鴉羽色のリボンが揺れる]
「あの、ミリアム様は
これをお兄さんにもって」
[小さな、透けるほど薄い陶器の小瓶を取り出し、男の手に添える。そのまま手を繋ごうか離そうか迷うそぶり]
「失った血と元気をおぎなうお薬よって
直接そそがなくても、飲むだけでも少しきく……て」
[1/3ほど残った液体が揺れるのが透けて見える。
男の顔を見上げながら、手を繋ごうとした]
「……どこに行くんです、か…?」
[少年は使い魔か隷従者かと見えていたのに、あっさり離していく吸血鬼の思考は、やはりよくわからない。
首のリボンは鴉が羽ばたくのを思わせて、あのおねーさんが結んだんだろうなという気がした。
少年は手を取る代わりに、小瓶を取り出す。
一目で値打ちものとわかる細工の陶器だ。
むしろ陶器なのかと一瞬疑うほど。]
そいつはすごいな。
今にも倒れそうだから、助かるよ。
[瓶を受け取り、おずおずと触れてきた手も捕まえて繋いだ。]
とりあえずは、荷物が図書館にあるから、そっちだな。
そのあとは、朝までどこかに隠れていようか。
日が昇ったら、後は多分なんとかなるさ。
[少年に答え、小瓶を目の高さに翳す。
少し考えた後、中身を口に流し込んだ。*]
「図書館…場所わかります」
[繋いだ手を握り直し、吸血鬼のそれよりも手のひらが大きいことに少年は瞬いた]
「夜の住民は僕をおそって来ないってミリアム様が
おかしくなった人間にだけ気をつけるのよと」
[隠れている、という提案に頷いた。
"薬"を飲む様子に整った唇を綻ばせる。今にも倒れそう、の言葉通りになったとしても、支えるには少年の手足はまだ細かったから]
「あの、僕はペーター」
レトだ。
よろしくな、ペーター。
[繋いだ手を強く握って名前を交わす。
少年が吸血鬼に狙われないというのが本当だとしても、街にはおかしくなった人間が何人もいるようだった。
怪我の深い身体で、身を隠しながらでは急ぐこともできない。
図書館にたどり着き、武器類を回収する頃には夜明け間近になっていた。]
一緒に来てくれてありがとな。
それで、おまえはこれからどうする?
[吸血鬼に連れられていた子供だ。
親がいるなら返してやりたいが。
そんなことを思いながら問いかける。*]
[ものものしい武具に、少年は驚いたようだった。
怯えるというよりは子供らしい興味の眼差しでそれらを見つめ]
「……僕」
[問いかけられて、その光を隠すように目を伏せた。
長い睫毛を揺らす]
「ミリアム様は、朝が来るまでに選びなさいって。
ミリアム様のおうちで働くか。
元のところに戻るか。
それか……あの、自由になるか」
[もっとマシな保護者を見つけなさいと本当は言ったのだけど]
「お兄さ──レト様はこれからは……?」
危ないからうかつに触るなよー。
[武器に興味を示す少年に注意はしたが、隠すようなこともせずむしろギミックなども見せてやった。
だってほら。変形合体弓とか格好いいに決まってるだろ。
この後を聞けば、きらきらとしていた瞳が落ちる。]
ふー…ん。そうか。
[既にあの吸血鬼に選択肢を与えられていたと聞いて、若干感心したような声を漏らす。
吸血鬼もいろいろだなというのが第一の感想。
狩人をしていても、あれほどの大物に出くわしたのは初めてだった。
狩りの依頼を出されるような奴らは、大抵が未だ若い、自分の力に酔って好き放題しているような馬鹿な連中だ。
長く生きている奴らは多分、そんな刹那的なことはしない。
少年をどうするつもりだったのか、もう一度彼女に会えたら聞いてみたい気もした。
二度とお会いしたくないけれど。]
俺?
俺は村に帰るよ。
金も手に入ったし、首長くして待ってる連中もいるし。
その後はまた仕事探しだなー。
[おまえはどれを選ぶのかと重ねて問いはしなかった。
多分、彼もずっと考え続けていることだろうから。
代わりに、自分のこれからを語り、]
ちょ、
その、様ってつけるのやめようぜ。
兄ちゃんとかにいにいとか、
別に呼び捨てだっていいからさあ。
[なんかむずむずする、と身体を捩らせた。*]
「ぁ……」
[俯いたまま、高級な仕立ての服の裾を指で整える。
待っている人がいる、お金のために来たからと]
「に、 にー?」
[少し頬を赤くして言葉に詰まり、しばらくしてまた唇を開いた]
「前の旦那様は
……い、いやなことをしなきゃいけなくて。
これからお城でも、そのようにお仕えしろって」
[戻りたくない、と絞り出すような声]
「レト…お兄さんの、その、村というのは」
「……
いえ。
すみません、ミリアム様と行き……ます
[胸のところで細い指を握りしめた。
貴人の世話以外は何も出来ない、教わったこともない。見目ばかり整えられた子供だから*]
[服の裾を弄る少年の態度には覚えがある。
貴族の農園で働いていた小さい子らと同じだ。
あいつらと同じなら、こいつも金で買われたのか。
こんな、ガキを。
絞り出すような声を聞いているうちに、知らず拳を握っていた。]
あーーーー。
もういい。やめやめ。
[消え入りそうで、苦しげで、諦めたような声を途中で遮って、ぱたぱたぱたと手を振る。]
いいか、ペーター。
ここにはおまえを殴る奴だっていないし、
金がどうのって脅す奴もいない。
あの……ミリアムっていうのか、あの吸血鬼。
あいつだって、選べって言うからにはどれを選んだって文句を言いやしないだろ。
だからさ。やりたくなきゃやらないっていえば良いし、
したいことをしたいって言えばいいさ。
[だからさー、と言いかけて、ちょっと考えた。]
いいか、ペーター。
ここにはおまえを殴る奴だっていないし、
金がどうのって脅す奴もいない。
あの……ミリアムっていうのか、あの吸血鬼。
あいつだって、選べって言うからにはどれを選んだって文句を言いやしないだろ。
だからさ。やりたくなきゃやらないっていえば良いし、
したいことをしたいって言えばいいさ。
[だからさー、と言いかけて、ちょっと考えた。]
……… 一緒に、村来るか?
[元のところもミリアム様のところも否定したら、そうなるなー、という一種の悟り。]
良いとこだぞ。
金もなけりゃ、服だってぼろだけど。
兄弟もいっぱいいるぞ。
血は繋がってないけどなー。
[勧誘文句にしては雑だったが、その道も選べると示してやれればそれでいい。*]
[吸血鬼と共に、この明るい世界を出る。そして誰の記憶からも去って自由になる。
そう言おうとしてた少年の声は、遮る仕草に止まった。
そのまま、ぱたぱたぱたと動く指を見る]
「でも、僕」
[また俯く。
柔らかく整えられた白金の髪が揺れ、鴉羽色のリボンも揺れる]
「いいんでしょうか。ご迷惑では」
「僕は、そこへ行きたいと言っても…?」
[パシ、と瞬いて、男の手を握ろうとした]
「……僕にも兄弟がたくさん、出来ますか」
[握ってきた小さな手を上から包むように握り返す。]
そりゃできるさ。
あそこじゃみんな兄弟だ。
まー。その服は売っぱらってパン代になるだろうし、
朝から晩まで水汲みだー子守だーと走り回るけどな。
楽な生活したいってんなら勧めないよ。
けど、賑やかに生きたいってんなら歓迎だ。
俺も弟が増えるのは嬉しい。
おまえが望むんなら、一緒に帰ろうぜ。
[彼にとってどっちが幸せかなんてわからないし、言ってしまえば服だって食べものだって勉強だって、あの吸血鬼のところにいた方が良いものをもらえるんじゃないかとも思える。
それでも、こういうときに手を離したりできないのが性分だった。*]
「…………はい!」
[少年の頬に薔薇色の血色が射す。
服だけでなく、腰に提げた剣もパンと干し肉に変わるだろう]
「ミリアム様は、僕がちゃんと暮らせているか
抜き打ちで見に来るって言ってました。
彼の方に恥じないよう、水汲みも子守も励みます」
[性質の悪いアフターフォローがついてくることを花のような笑顔で告げて、繋いだ手を振った**]
「一緒に行きたいです、レトお兄さん」
/*
ペーターにひどいおまけが付いてくるのを見た!
でもきっと村の連中たくましいから、金持ってそうな顔で来たら、ぎぶみーちょこれーとすると思うよ!
へ?
抜き打ち?
[マジか、の顔になるけれど、まあ良いかに変わるのもすぐだった。
あれに襲われたら村なんてひとたまりもないだろうけれど、村の連中のたくましさには向こうも驚くだろうさ。]
よし。じゃあ行くか。
[改めて少年の手を握って、街を後にした。**]
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