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[少しだけ、遠くを見るような目で。
誰を、何を思い出していたのかは、男以外に知るすべは無い。]
俺にとっては、たいした事もしてやれなかった"敗け戦"だ。
そんでも、終わった以上は並んだ首の数だけ、手向ける花は要るもんだ。
[戦火の鎮んだ戦場に。
悼む者の無い墓石に。
無数の"再会の約束"を咲かせるために、男は独り練り歩く。
そうして打ち捨てられたような冷たい石の上。彼岸と此岸を繋ぐ緋色の花が揺れる中で、再び彼と出逢ったのだ。]
戦さ場を駆けるお前は美しかった。
手負いになってもそれは変わらなかった。
動く脚を失っても、未だ消えぬ火を押し隠し生きるのを見るのは忍びなかった。
…どう話かけてみても、お前に俺は見えなかったようだが。
[変顔とかも相当やったぞ。まあ見えるほうが稀だからな。
肩を竦めて、茶化すような溜息。けれど、青年はどんな表情をしたとて、男はそれから目を反らすことはしない。]
ルート。ルートヴィヒ。
俺はお前が愛おしいよ。
もう一度、お前が自由に野を駆けるのを見たかったんだ。
[すいと手が伸びて、青年の銀の前髪を掬った。そのまま、指の甲が頬の上を撫で落ちる。
慈しむようなその動きは、彼が拒まなければそのまま何度か繰り返されただろう。*]
[捉えた、と思った。
双牙は獲物に食らいつき、引き裂こうと顎を開く。
しかし、食らいついた瞬間に、その姿が掻き消えた。>>*14]
ッ、
[聞える声の出所は、頭上>>*15。
まるで幻のような虚像と、本体の区別はつけられない。
しかし、声が出されるのであれば、話しは別だ。
男は空いた左手で大地を捕え、全店するように体を反転させた。
身体の前に構えた刃が、ギン、と鳴る。
受ける手首に走るは衝撃。]
ッ、く
[刃を支えるように、峰に沿えた左の指先から、バチンと火花が生まれ、刃が帯電する。]
これしき!
[流石に、一撃が重い。
揚々と弾き返せるそれではない一撃を受け、背中が大地を抉る。
しかし一撃を耐えきると、攻撃の主を強い眼差しで捉えた。
男を支えるように、雷獣がその背に寄り添う。
それを確認してから、男は左手を右の腰へと伸ばした。**]
[追撃を覚悟し構えた刃は、思いの外あっさりと引かれ>>*21、呆気にとられるより先に、背中の雷獣の助けを借り、体を跳ね上げ起き上がる。
片膝を付いたままの低い姿勢は、即座に大地を蹴り次の一歩を踏むための構え。
かけられる言葉>>*22にぞくりと駆け抜けたのは、人ならざるものに対峙した、畏れか。
まるで牙を剥いた獣のように、男の口角が釣り上がる。]
…俺に与えた一瞬の間。
後で後悔すれば良い!
[吠えると同時、右腰のホルスターから小型拳銃を引き抜いた。]
[抜くと同時にトリガーをひく。
本来であれば、あくまで隙を生むための武器で有るそれは、ダブルアクションでノータイムの射出も可能にしてある。
その分精度は落ちるが、威嚇には充分…まして、今は。]
マリー!
[彼女が憑いている。
その名を口にした刹那、背後の雷獣が掻き消えた。
同時に銃身にバチリと火花が散り、弾丸に乗せて飛び出すはスパークを帯びた電気玉。
一直線に、獲物を狙う。]
行けッ
[電気玉は多少よけた所で狙う敵を追尾し宙を駆ける。
そして何処かにぶつかった所で弾け、中から金色の魚が姿を現した。
魚は周囲に電磁場を発生させ、物理法則を狂わせんと尾びれを揺らした。**]
[放つ電気玉が指先に触れ>>*34、バチリと弾けた刹那、踊り出す金色の魚。
掌程度の小さなその身で、尾びれを振るい、獲物を絡め取ろうとするが]
…まさか。
[そう簡単に攻撃が届くなどとはゆめゆめ思っていない。
溢れ出す花弁を眼に捉え、男は深く息を吐く*]
チ、
[雷魚の操る磁場では彼を捕えることは出来ぬらしい。>>*42
予想の範囲内とは言え、そのことに小さく舌打ちを一つ落とすと、サーベルを構える。
雷魚は己と相手のちょうど間に、男を守るように揺蕩うが。]
ッ―――!
[鋭く迫る花弁に飲まれ、あっさりとその姿は掻き消えた。
一拍遅れ、魚同様花弁に飲まれた男は、顔面を守るようにサーベルを握る右の腕をかざす。
鋭い花弁は男の軍服を裂き、その内側の肌に細かい傷を刻んだ。]
『闇と月明かりが味方をするぞ』
『目だけに頼るな』
[戦の始まる直前に主にかけられた言葉>>23が、不意に脳裏によみがえる。
同時に、襲い来る花弁の音とは異なる、大地を踏みしめる音を耳が捉え、とっさにバックステップを踏んだ。
同時に、皮膚の表面を切り裂いて駆け上がる刃の切っ先。>>*43
左の肩から右下へ、斜め掛けに上体に巻きつけたワイヤーが、僅かながら防御の役割を果たし、ほんの僅かに切っ先の軌道をずらす。
そのまま強く大地を蹴り、背後へと距離を取ると、流れるように右腕を振るい、剣の護手で刃を弾いた。*]
[弾き飛ばした刃は重く、受け切れずに体勢が崩れる。
堪えるように後方へ、踏み込んだ脚で大地を捕え。
ぐ、と下肢に力を籠め、右手のサーベルで防御の構えを…
額の上で、太刀を受ける構えを取り、狙い違わずつばの際で受け止める。
受けた刃の峰に左手を添え、そして。]
ダニエル!!
[バチリ、と黒手袋の指先の振れた箇所から火花が散り、そして金色の獣が生まれた。
雷獣は男の意図をそのまま汲むかのように、相手の喉笛を狙い、食らいつかんと
ッ…!?
[狙いは逸れたとはいえ、肉に牙を立てられ赤が咲く。
その上で、溢れる哄笑>>*54に、ぞくりと肌が泡立ち。
本能が、身を引かせる。
合せて雷獣も引かせようとしたところで、打ち払われる金色の狼。
ぎゃん、と一声啼いて、その姿が掻き消える。
同時に、腹におぼえる灼熱。]
っく、
[避けた服の隙間から、紅が一筋、垂れて大地を汚す。
迂闊であった。
雷獣は個別の意志を持つわけでは無く、基本的には召喚主がその意識で操作しているのみである。
意識の隙間が生まれれば、当然のように動きが鈍る。
剣を打ち合いながら同時に雷獣を駆けさせているのは、ひとえに男自身の参謀としての経験に依ったものである。
更に。
雷獣が負った傷は、最終的に男自身へと返る。]
[雷の毛皮が受けた分、人の身で受けるよりは多少は傷は浅い。
大丈夫。
まだ、立てる。
楽しげに笑む紺青を受け、男はぐ、と奥歯を噛んだ。]
くっそ、楽しそうに…
[忌々しそうな口調と裏腹に、男の口角もぐっと持ち上がる。
それは獣の威嚇の表情か、それともヒトとしての、笑みであるか。
男自身にもわからない、しかし心ばかりはどこまでも高揚してゆく。]
『死ねない理由はあるか?』
貴方と共に、立つために…――
『お前が俺を王にしろ』
必ずや、勝利の美酒を、貴方の手に…――
『我が愛しき眷属、銀の狼――』
『ルートヴィヒ・
それが
[溢れる誇りを胸に、男は吠える。
立ち止まってなどいられない、
何故なら俺は、ヴォルフガング。
与えられた名の通り、
貴方が期待して下さった通りに、
この身朽ち果てるまで、突き進む…――!]
ダニエル・ウォーデン・フリードリッヒ!
我が血を喰らいて具象せよ!
[抜いたサーベルを大地に突き立て、吠える。
黒の指先で触れたところから、雷電が大地へと向けて走り、そして広がる赤へと到達すると、ぼこりとその表面が泡立った。]
喰らえ、猛き者、
お前は俺の血の味を知っている!
[呼ばうと同時、赤から生まれた金色が、獣の頭部の形を取り、
バクリ
[獣の牙が、男の左のわき腹へと食い込むと同時、流れ込む雷電。
ぐ、と大地を踏みしめる下肢に力を籠め、踏み応えること数秒。
バチバチッと雷の弾ける音と共に、消える獣の頭部。
同時に、男の髪が金色に染まる。
傷口から溢れる赤は、零れる傍から金色に飲まれ、代わりに男の全身を金色の雷電が覆う。
大地に突き立てた刃を抜き、体の前で構え。]
受けて、立つ!
[来る一撃>>*55に備え、全身に力を込めた。*]
/*
折角のペア村なので、主と共闘できないとしても、主との絆を見せつけないなんていう、アレです。
長くて申し訳ない!!
[主の語るのは、己の良く知る物語。
当然だ。
その渦中に、己はいたのだから。]
…あの日、王都は深紅に染まりました。
[咲き乱れる、曼珠沙華で。
思いだし、男はそっと呟く。
戦場とは言え、ただの革命。
舞台となったのは、人々の済む王都の中心部。
にもかかわらず、民衆の一人として巻き込むことなく終わった戦。
流れた血は、最後まで王を裏切ることの無かった僅かな兵士たちのもの。
それと…王自身。]
『お前は、この国を戦火に沈める気か』
[問う王に、当時将軍として戦場に立ち、そして革命を起こした張本人である
『この地へは、断じて踏み込ませません』
[国を想う心は同じであった。
ただ、目指すモノが異なっただけ。
民の幸せとして、願う物が異なっていた。
穏やかな平和か。
邁進する未来か。]
『なれば、見せてみよ』
[お前の創り上げる、未来を。
蒼い目をしたその人は、
振るわれる刃の下、紅に散った彼の人は、最期まで己を飲み込む
[勝利した者には、正義を名乗る権利がある。
同時に、その陰に散った誰かの願いを背負う義務がある。
そう教えたのは、男の
一国の王の願いを喰らい、新たなる皇帝として君臨した男である。
当時の男には、分からなかった。
誰かの志を討ってまで、通す大義があるのか。
しかし、喰らった以上は働かねばならぬ。
そうして世界は回っている。]
[だから、これは罰である。
若き王子の牙を受け、傷を負ったこの体が、思うように動かなくなった時にそう思った。
努力はした。
しかし、どうしても、傷を負う前には戻らない。
しかし、戦場へと赴けなくなったことが、何よりも男を苛む。
この手に刃を握る意味。
自らの手で、切り開く意味。
喪って初めて気づく、それらに、無言の内に歯噛みした。
男自身が喰らった三つの命、それに報いることは、できるのか。
三つの無銘の意志の前で、男は贖罪すらできずに立ち尽くす。]
そう、でしたか。
[己では、泥の中を這いずっているような心持だった数年だった。
それを、この人は美しいと言ってくれる。
それが己にとって、どれほどの救いになるか。
貴方はきっと、気付かない。
けれどせめて、と男は願う。
己に、失ったものを与えてくれたこの人の、その心に報いたい。
失望させたくはない。
期待に応えたい。
…愛され続けたい。
願う言葉は胸の内に。
静かに降り積もる、想いを胸に抱き。
ただ一言、感謝を述べた。*]
[短い礼の言葉に目を細める。
青年のその心中、その表情の意味を全て慮れるほどの感情の機微は、長命すぎる男は持ち得ていない。
けれど分かることもある。
だから、何も言えなかった。]
…俺ばかりがお前に詳しいのも、あれだな、なんか狡いな?
戦に向かう前に、予備知識として少し俺の話をしよう。
[二杯目の茶を継ぎ足しながら、肩肘ついて話題を変える。
それが気遣いなのか素なのかは、傍目に判別し辛いところであったかもしれない。]
最初に言った通り、俺たち《雷華》は、闘争と放浪の民だ。
戦を好み、乱世を歩く。
古くは雷神の血を引くってハナシで、だから大抵みんな"
[そう言って自らの髪をひと掬い指で弾くと、小さな稲妻が空気を裂く。
やや鬱陶し気に掻き上げると、赤灼と金糸の波が流れ落ち、また守るように男を包んだ。]
俺たちの中には、生まれたときから雷華のやつは殆どいない。なりたいやつ、なれるやつに血を分け与えて、仲間に迎える。
だから元の種族も姿もまちまちだし、獣なんかも多い。
その世代の長が、みんなの親父だ。
同じ親父に拾われたやつは、兄弟になる。
[こいつらも兄弟なんだ。
示した先には定位置らしき敷布の上にめいめい臥せるハイイロオオカミの姿。
アイスブルーの双眸はちらりとこちらを一瞥してまた伏せられたが、エメラルドは呼ばれたものかと立ち上がり、尾を揺らして駆け寄ってくる。
ウルはルートがお気に入りだなあ。
男が笑って撫でてやると、狼は嬉しげに男の手をべろりと舐める。
それから、手前に座るルートヴィヒの顔に鼻先を近付けて、すんすんと鳴らした。]
ルート。
口開けて、じっとしてな。
そいつ、お前のこと
[獣が相手の口元や口内を舐めたがるのは、主や仲間に対する挨拶は勿論、親愛や好意を示すことが多い。
甘えているだけの場合もあるが、兎角鼻先を突っ込みたがる。
面倒でも、付き合ってやってくれ。
そんな話をする間に、青年の顔面はべしゃべしゃにされたやもしれないが。
いつの間にか挨拶に加わっていたシヴにもしっかり舐め回されて、ルートヴィヒはどんな塩梅だったやら。
その間ガートルートはと言うと、にやけた表情を引き締める気も無いらしく。一人と二匹を楽しげに眺めながら、またキャラメルを食んでいた。**]
[めったに見れぬ本気。>>*85
そう口にし、対する魔は蒼桜を纏い、舞を見せる。
駆ける魔の斬を受けるは、雷電纏いし金色の獣>>*86。
花びらが、刃が触れる度、青年の纏う金色は眩い火花を放つ。
初撃には、護手を添え、ほんの僅かに軌道を反らし。
一歩後ろへ踏んだステップを追いかけられた二撃目は、ホルスターから抜いた銃身で軌道を弾かんと試みる。
そして、三撃目。]
ッぐ、
[左肩を辿るワイヤーと、降ろされた刃が一瞬掠め、ひときわ大きな火花が散る。
バチバチと、太刀を巻き込みながらスパークが弾け、同時に男の肉体へと刃が斬り込み、それに耐えるような声を漏らした。
しかし、怯むわけにはいかない。
至近距離へと近づいた相手、既にこちらにとっても間合いの内。
男の右腕が、踊るような動きで獲物を捕らえる。
防御の構えは捨て、渾身の一撃を。
ギン、と男の瞳が金色に燃える刹那、己の牙とする鋼の刃が届いたと思った瞬間、大木をも一撃で倒す雷が、サーベルを伝って流れ込まんと暴れ出した。*]
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