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ジークムントさま 2日目メモ
この話はゲート・オブ・ヴァルハラ3のエピローグの-133あたりをアイデアに商品化したものです。
"その声"が聞こえたことを、どう報告したものか。
商会では、どこにでも商売のタネというものは転がっているから、日頃見聞きしたことは全て報告することになっている。
けどそれは、商人とはそれぐらい目を鍛え周囲の物事に気を配れという意味合いだと思ってた。
「別世界から呼ぶ声が聞こえます」なんて報告して誰が信じるというのかと。
ただでさえ"白銀さま"関連で忙しいのに、こんな話に耳を傾けてくれるわけがない。
と思っていたのだけど……たいして力説したわけじゃないのに、こんな馬鹿げた話があっさりと信用されてしまった。
他所なら間違いなく一蹴されるであろう異世界の有無について、特に若旦那様に強いご理解をいただいてしまったので、そんな話あるかと言える幹部の方もいなかった。
で、この件をどうしようかと大旦那様に話を持っていった結果――
『流通は遠くからその地域に無いものを運べば希少価値が生まれて高い値がつく。
それが異世界ともなればそれこそこの世界にない代物が手に入るやもしれぬし、既存の資源しかなかったとしても金銀宝石がそれこそ道端の石ころのように転がっているところならタダ同然で大儲けじゃ。
あるいは異世界ではなくこの世界のどこかと繋がっている代物であれば、そこを通せば流通のコストを大幅に削ることができる。
危険があったとしても、人員を割いて調査する価値は充分にあるぞ?』
……と、この話はあっさり承認された。
そしてその調査員として私が任命されてしまった。
若旦那様が言うには、私が見聞きしたということは私が選ばれたのだから自分で行って来いと。
――用意したもの。
単独行動で売買する"レア店員"を表す緑の商会エプロン。
同じくその行商時の売り物などを収納するのに使っていた商会特製4号販売箱試作F型。
自分がどこの地方の商人かを証明するための、ランヴィナス公国周辺の主要流通硬貨。
貢物等が必要になったときのための、"白銀さま"グッズ数点。
声の内容から戦闘が予想されるので、自衛用の武器。
声の内容から戦闘が予想されるので、販売用の武器。
その他活動に必要な細々としたもの。
色々なものを箱に詰め込んで背負って、モアネット市を後に。
「金は神速を尊ぶ」という格言によって移動のための馬車も出してもらえた。
― コリバーグ、宿屋 ―
転移門が一般人に見られるとややこしくなるので、宿屋の経営はしばらく休止にしてもらった。
商会直営店なので大旦那様からの業務命令書さえあればこのへんは処置が楽。
その転移門はどう見ても楽しい世界に繋がっていそうに感じられなかったけど。
でも不思議と危険への怖さよりも、未知の体験を迎えることについての震えのほうが強かった。
意を決して飛び込もうと足を踏み出し始めたら、見送りに来ていたあの宿屋の子が大きくお辞儀してくれて――
『いってらっしゃいませ。
もしテオドールさんに会ったらよろしくお伝えください』
……本当に変な子だ。**
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本筋と関係ない子なので突入は悩んだのですけれど。
なお白銀さまの発売日とは前後わからないようにしているので適当に。
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そういえば、神兵1体のHPっていくつなんでしょう?
vs1体なのか無双なのかで回すロール変わっちゃうので……適当なら適当にします。
というわけでこんばんはなのです。
― 薔薇園のある魔法学校校舎 ―
この異世界に辿り着いた私が初めに見たもの。
それは学び舎のようなところで――まずこの世界に人がいるらしいことはわかった。
とはいうものの人の気配は特に無く、何かしら手がかりなり珍しいものはないかと見回してみれば――
赤いペンキか何かで壁に描かれた、うちの商会のシンボルマーク(>>1:120)
大旦那様の太陽のような笑顔(※自称)をモチーフにした模様が眼前にあった。
驚いた、とっても驚いた。
だって異世界に来たら自分のエプロンと同じマークがあったのだから。
誰が描いたのか。
うろ覚えでは、全体的な造形はもちろん、特にこのどじょうひげの跳ね方(左右でちょっと違う)を再現できない。
私を含めて商会員は実物の大旦那様を見慣れているのでピンと来ないが、一般の方々にはよほど強烈な印象を与えているようだ。
もしここが異世界だとしても、商売を行えるに違いない――そんな確信が湧いた。
どうやって異世界にこのデザインが伝わったのかわからないけれど。
とにかく、お客さんか、仕入れ先を探しに行こう――
「 ――っ!! 」
どこかわからないところで、人形のような変なものと遭遇した。
――これは、商談相手ではない。
これ相手にお金儲けを考えるのは大旦那様ぐらいだ。
少なくとも、今の私ではこれと取引しようとは思わない。
『すべて存在するものは金のうちにあり、金なくしては何ものも存在しえず、また理解もされない』
そんな格言を思い出した。
お金の匂いがまったくしないものは、商会の理念に反する。
配送中の商品を狙う山賊だって、お金なの目的だから話が通じる可能性はある。
そういうものが何も感じられないこの人形は――私の、商会の、そしてお金の敵だ。
だから、人形の目が光るのも、危険を察知するのも早かった。
放射された熱線を間一髪回避すると、背負っていた商会特製4号販売箱試作F型の右側面下部のスイッチを手探りで押す。
3つのスイッチの押す組み合わせを判別し、箱は形態を変える――左側面の下半分が外に倒れ開き、外に広がったスペースに選択したものが転がり出て来る。
「 商品番号5! 神殺しの槍
使いやすいハーフサイズ、お徳用6本セットっ!!
てやあああああっ!!」
――昔、大旦那様が、粗悪品の剣を"ドラゴンスレイヤー"として販売したことがあった。
文字通り竜殺しの剣なのだから、竜以外に通用しなくても詐欺ではないという詐欺商品。
今度は神が相手らしいのだから神殺し。
そりゃ需要はありそうだけど、神に使われたらまずいことになるのでは――と聞いてみたら、そのときは神じゃなかったということらしい。
竜の本物は誰がどう見ても竜だけど、神は本当にそうかなんてわからないから誤魔化せるとかなんとか。
長さを半分にすればコストも半分、消耗品と割りきって買ってくださるお客様も考慮してセット販売。
とにかく
――短槍を6本束ねたこの商品をまとめて投げつけた。
たとえ詐欺商品でも神殺しと銘打たれたものだ、念ずれば通じるかもしれない。
そしてそれが6本分ならもしかしたら効果あるかもしれない。19(20x1)
「 ……あ。 」
戦闘が予想される世界で、戦闘を実行するのなら、その攻撃方法というか武器は視線を集める。
だから、今投げた商品には、プロモーション用サンプル"白銀さまふわっとぬいぐるみ"――試作はしたもののコスト面で割に合わず商品化を見送ったため展示専用とされ世に出ない超レアモノ――を結わえ付けていたのをすっかり忘れていた。
「 あ、ちょっと、返してくださぁい! 」
神の尖兵らしい敵は、槍が突き刺さったまま暴れ出して手が付けられなくなった。
動き、熱線を振りまくたびに、結わえた白銀さまがぷらんぷらんと揺れていた。**
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いきなり黄砂の村行くのもどうなのかなぁとか思って、場所はぼかしてます。
遭遇はお好きにどうぞ。
神を倒すか、白銀さまを取り戻すか、自分の安全を図るか――
商会では、こういうとき安全が最優先。
命よりもお金とか世間に言われてるうちの商会だけど、そんなことはない。
大旦那様もこうおっしゃっておられる。
『死んだらそれまでにかけた金が無駄になるし、これから稼ぐはずの金も入らなくなる』
あ、あれ?
……とにかく、ここはじっと我慢。
あの熱線は商会特製4号販売箱試作F型(※以下「箱」)の8番形態でも防げるものじゃない。
物陰に隠れ、遮蔽物が熱線で溶かされそうになれば、走って転がってまた別の隠れ場所へ。
死にたくないと思っても、刺さったままの槍から垂れ下がった白銀さまを捨てて遠くに逃げるのは、店員として絶対に嫌だ。
――あれはうちのプロモーションアイテムなんだから。
やがて隠れられる場所も少なくなってきて、このままじゃどうにもならない、何かしらの覚悟や決断を求められたとき――陽気な声(>>299)がした。
割り込んできた人は空を飛んできたような気がする――そんなシロモノは、うちの商品開発部でもまだ作ってない、はず。たぶん。
ハンスと名乗った人に自分の名前を告げ返した――商会のエプロンを見てたいした反応が無かったので、たぶんうちの商業圏の外の人なのだろうか。
あの熱線を前にして、私をかばうように立つハンスの勇気に感動した。
この人なら、お嬢様付き配置が務まるかもしれない。
ハンスは私を守ってくれて、反撃に出る余裕が生まれた頃――神の尖兵は突然動きを止め、壊れたからくり人形のようにそのまま本当に動かなくなった。
垂れ下がっていた白銀さまが慣性でぷらぷら揺れているだけ、というのが少し怖かった。
『なぜ?』
そんな声が聞こえた。
それは、相手の意思――。
戦いが終わってから思う――私は、ひどい思い違いをしていたのかもしれない。
この神が、取引できない相手だという決定的材料は本当にあったのだろうか。
これは敵、すなわち本当に本当に売買が成立し得ない相手だとどうして言い切ったのだろうか。
神が遺した言葉は、需要。
それに応えるのが、供給。
ふたつが交じり合うのが、商取引。
私は、相手が何を欲しがっているのか、というリサーチを怠っていたのではないか。
大旦那様や若旦那様が私をこの世界に送ったのは、そういう心構えのようなものを培わせるためのものなのかもしれない。
あの壁に描かれていた商会のシンボルマークは、どんな場所でも商会員が訪れれば商会の商業圏だという意味だったのかもしれない。
――私は、商売人としてまだまだ未熟なのだと思い知らされた。
――私は止まったままの神の尖兵に近寄り、刺さった槍を引き抜いた。
穂先はコスト相応に使い物にならなくなっており、再利用は無理だろう。
柄のほうは木材として使うぐらいはできるかもしれない――とりあえず箱のなかへ収納。
結わえていた白銀さまは砂埃を払い落としてから、これも箱の中へ――と思ったけれども、プロモーション用途なので箱の外の見えやすい位置につけた。
…………シンボルマークというか大旦那様と白銀さまが並んでいる構図ってどうなんだろう。
箱を背負ってしばらく移動。
村だろうか、人がいそうな場所に辿り着き、やっと落ち着けると思って――とても大事なことを思い出した。
一緒にいるであろうハンスに言わなければいけないことがある。
この村にいて訪れた私を見つけた人に言わなければいけないことがある。
「 いらっしゃいませー! 」**
「 ダメです。
これは非売品ですから。 」
きっぱりと突っぱねた。
言葉の通り売り物ではないせいもあるけれど、プロモーションアイテムを簡単に手放して売り場から早々に撤去するというのが商売上ありえない。
もっと強気に追い払ってもいいのだけど、ハンスの大きな声なら、さらにお客さんを呼ぶきっかけになるかもしれない――。
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