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……いただきます。
[鱗刃で削り取るようにして、一かけらを口に頬張った]
…………。
…………!
[言葉は発しないが、明らかに瞳の輝きが変わったのだった*]
― 天龍滝 ―
……ごちそうさま。
[海産物の食事はかなりの満足感があるものだった。
途中クラリッサ>>169と目が合って小さく頷いたりもしつつ。
そんな一時を経て、山頂へと向かうこととなった]
崖登りか。
[しかし険しい道を見て、少し難しい顔をする。
登れなくはないだろうが、飛行出来る者からは大きく後れを取ってしまうだろう。
そう考えているところに呼び掛けがあり>>182]
クラリッサ……さん。
もし良かったら、お願いしてもいいか?
[頭を下げて、山頂までの騎乗を頼む。
彼女が蒼い風と共に姿を変じるのを見れば、感嘆した様子で息を呑むだろう*]
― 天輪湖 ―
[険しい道を越えた先。
景色を楽しむ暇もなく、異様な影を目にすることとなる。
そして響くのは、悲鳴のような竜の声>>160]
……あ、……
[思わず身が動きかけるが、竜たちはそれぞれの相棒によって落ち着いた様子。
そして眼前には、鈍色から千切れた妖魔が現れる]
こいつを倒して……。
……わかった。
[為すべきことはアルビン>>166から告げられる。
頷きと、護りの術>>170への一礼を返して、近付いてくる妖魔へ向き直る]
[そこには毒々しい色の蛾が舞っていた。
散らされる鱗粉は触れたり吸い込むだけでも害があるかもしれない。
常のように鱗刃を構えると、少し長い時間を集中に割く]
――水よ。
[そうして撃ち出された刃は周囲に厚く水を纏ったもの。
妖魔に当たった瞬間、それは水を弾けさせ*]
成功、か。
[鱗粉ごと水に包まれた蛾は、飛行能力を失い、落ちた。
そして妖魔が消え去った後には、鈍色の結晶が残る]
……こいつが、『虚無』の欠片。
[触れてはいけないと言われたその物体を見て、眉を顰める。
何かしらを感じるより早く、金糸雀色の鞭がそれを回収していった*]
[そうしている間にも、上空から飛来する影があった。
巨大なバッタが今まさに着地せんとするところだった]
おおっ――
[巻き込まれては一溜まりもないと、横合いに大きく跳んで避ける。
キチキチと嫌な音を立てながら、バッタがこちらを見た]
こいつらの脆いところって……。
[僅かな思案の後、妖魔がこちらを狙っているのを確認しながら、距離を放す方向へ駆ける]
こっちだ!
[バッタは直接攻撃でなく、跳ねての上方からの攻撃を選んだようだ。
その身が沈み込む瞬間を逃さず、刃を投げる]
[跳躍する動きの瞬間に、脚の脆い部分を狙う。
作戦は成功し、片脚の外れたバッタはあらぬ方向へ跳んで、地に激突した衝撃で再起不能となった。
後には小石程度の欠片が残される]
二個目、か。
[回収を待つ暇もなく、唸るような羽音に顔を上げた。
見ればそこに居るのは巨大な蜂。
見るからに危険だった]
[針を突き刺さんとこちらへ向け飛んでくる姿。
毒を持つ可能性がある以上、一撃でも受ける訳にはいかない]
……なら、
[ざら、と袖を振って、両手合わせ八の鱗刃を一度に手にする。
鱗本来の特性からして、防御に転じることも可能な武器であった]
――弾け!
[放たれた鱗は盾のような平面配置を作る。
水による補強も加わったそれは、目論見通り蜂の針を押し留め*]
[針による攻撃を弾かれた蜂は、飛行姿勢を崩す。
せわしない翅の動きも一瞬乱れたところで、その付け根へ刃を撃ち込んだ。
蜂は今度こそ飛行能力を失い、地に落ちる]
[その身が崩れ去った後に残るものはなかった*]
[不意に、上空から影が落ちた。
見上げれば、そこには猛禽に属する鳥の姿があった。
ゆっくりとした旋回で、狙いを定めているらしい]
(何か、嫌な感じだな)
[身が竦む思いがするのは、蛇の血が混じる故の本能的なものだろうか。
しかし、自分たちが対峙するのはもっと強大で恐ろしいものだ。
奮い立たせるように猛禽を睨み]
[一撃は翼を撃ち抜き、羽根が宙に散った。
しかし虫のような構造的な脆さがないせいか、鳶めいた鳥はやや姿勢を乱しつつも、そのままこちらへ向けて降下する]
くっ……!
[その両足が肩を掴んで、爪が食い込む感触があった。
護りの術や自身の鱗により深手は免れたが]
もっと……確実な急所を狙うべきだった。
[嘴による追撃は流石に許さない。
新たな刃を手元に落とすと、零距離射撃のように鳶へ衝撃を食らわす。
今度こそ鳶は沈黙し、後には鈍色の欠片が残された*]
[鈍色が何処かへ引っ張られるように消えた後、息を吐いて顔を上げた。
肩口の痛みはまだ動かすのに支障ない範囲だ。
それを確かめつつ見回した先]
――竜?
[爬虫類の体に皮膜の翼。
そうとしか思えない形をしていた]
(……竜)
[妖の世界に生きてきた自分にとって、それは心通わす術を知らない、強大な野生生物でしかなくて]
――でも。
[言葉はわからなくても、竜の色んな表情を、断片的ではあっても見てきたから]
お前は、本当の竜とは、違う。
[『虚無』を核に生まれた、形だけの存在を、見据える]
[竜形の妖魔が口を開く。
放たれたブレスは水の属性を持ち、槍のように細く鋭く伸びた。
咄嗟に右へ交わすも、左腕の衣服が裂け、内も僅かに削られた]
お前も水か。なら、
[出し惜しみはしない、とばかりに両手へ八の刃を握る。
しかし今度は防御のためでなく*]
手数で、勝負だ!
[竜のブレスの間隙を突くように、攻撃を仕掛ける。
まず左手の四枚を、位置をばらけさせながら投擲する。
妖魔はブレスを諦めると、一発一発の威力は小さいと判断したか、身を回すようにしてそれを弾いた]
[しかし本命は右手の方だ。
回転の勢いのまま直接攻撃へ切り替えた妖魔へ、翼や関節を確実に狙い攻撃する。
無論それだけでは足りないが]
そっちの刃も、まだ死んでない!
[弾かれ落ちた刃を水の力にて引き戻す。
それは妖魔を背後から急襲し。
更に動きを乱した竜の首元へ、特別に力籠めた一撃を叩き込んだ]
[叫ぶような声と共に、竜の形は崩れ、宙に結晶が残された]
――もしお前に、騎竜師がいたら……。
[戦いの行方は、少し変わっていただろうか。
そんな物思いに耽る先で、結晶は金糸雀色に回収されていく]
……精霊、か。
[世間知らずにはその精霊の特殊性まではわからなかったが。
不思議な存在だ、と思いながら、引き戻されていく光に小さく頭を下げた*]
― 天輪湖 ―
[『虚無』の欠片が一つになり、その根本が呼び出される。
しかし、その時咆哮が響き>>249。
鈍色の渦より姿を現したのは>>250]
龍……!?
[その形状に、思わずアイリとリュウシンの方を見て。
アルビンの呼び掛け>>252に、再び視線を戻す]
……捕らわれてる、のか。
[救う、と精霊師が口にした言葉。
かつて見上げることしか出来なかった得体の知れない存在は、今、考え得る限りの一番恐ろしい形を取っている]
それでも、お前が本当はこんなの望んでないってことは……わかる。
[知ろうとも、近付こうともしなかった頃とは違い、龍の姿持つ相手を真っ直ぐに見詰める]
だから、救うための戦い……やってやる。
[そうして、為すべきことのために身構えた**]
― 天輪湖 ―
アイリ様……。
[呼び掛ける声>>260に視線を向ける。
腕を伝う紅に少し眉を顰めるけれど、戦いの最中であるからと今は意識から振り払って]
――はい。
[要請に応えるように、一度頷く]
[護りの術はその力を強め>>261、蒼虎の風が姫騎竜師を援護する>>267。
高空からは清冽な風が吹き>>268、精霊の炎が天龍へ迫る>>272]
やっぱり、すごいな……みんな。
[ふとそんな素直な感想を漏らした後、表情を引き締めて]
ここが……天沙河の、水の源流。
[それは水の妖にとっては力の源泉とも言えるもの。
本来なら近付くことも許されぬ湖は、異変のせいもあるだろうが、ここまで来ると更に色濃く力を感じられた]
――天沙河の支流の一を護る、大蛇の妖の血を引く者として頼む。
この地の水を在るべき姿へ戻すため、少しだけ、その力を貸してくれ。
[直接水に触れることは叶わずとも、土地を護る者として、力を借りることは出来るだろうかと呼び掛ける。
成否はともかく、自身のやることは変わらない]
派手な力なんて、使えないしな。
[ならばやるべきは、仲間たちの攻撃の間隙を突くこと。
どんな攻撃でも無限に続けることは出来ないが]
――そこだっ!
[攻撃が途切れる瞬間があれば、その瞬間に鈍色へ一撃を加える。
威力は弱くとも、龍の意識を一つへ向けさせないように*]
― 天輪湖 ―
……いいのか?
[水蜘蛛を散らすウェルシュ>>277に思わずそう呟く。
しかし水面に現れた足場が、飛べない自分にとって有難いのは確かだ。
水面歩き自体は出来なくもないが、それ自体に力を分散させる必要があるわけで]
今更、そこにこだわっても仕方ない、か……。
俺も使わせてもらう。
……ありがとう。
[蜘蛛の巣を渡り、更に鈍色の龍へ接近する。
暴れ回る龍の尾を間近に見るが、それはウェルシュの縛りによって動きを鈍らせた>>278]
ここまでくれば。
水の力だって……!
[刃の纏う水の気が、より色濃く、鋭くなるのを感じた。
放たれた一撃は、高圧の水流を伴い、速度と威力を増して鈍色を切り裂いた*]
― 天輪湖 ―
[内心の疑問には答えが返ってきた>>282。
納得の頷きを一つして、前方へ向き直る]
[皆によって拓かれた道を、姫騎竜師が翔けていく>>286。
この地に宿る力によって増幅した水の妖気も、道をこじ開ける一助となっていたか]
……もう少し……!
[虹の仔竜の力も受け取って>>287。
アイリの狙う先は、龍の眉間と見えた>>289]
じっとしてろ……!
[僅かにでも首を振ろうとするなら、反対側から水弾を打ち付けるようにしてそれを阻む。
そうして、神獣角が過たず鈍色を貫くのを見届けた]
[アイリと、リュウシン、シエルの声を受けて、鈍色は静かに声を上げた>>291。
直後、その姿は消え失せる]
……安らかに、か。
[一息つきかけたところを、アルビン>>293の声で気を引き締め直す。
この先は自分が手出し出来るものではなく]
……頼みます。
[アルビンに頭を下げた後、蜘蛛の巣を渡ってその場から退避する。
自力でどうにかするつもりだが、うっかりつまずいたところをウェルシュ>>295に運ばれたりはするかもしれない*]
― 天輪湖 ―
[『虚無』の欠片と精霊の力との攻防。
膠着したかと見えたところに、仔竜の声が響く>>301]
……大きくなった……?
[過去の出来事は知らず、その変化に目を円くした。
そしてシエルの力もあり、結晶体は一つとなって]
…………!
[槍の穂先が翡翠を宿し>>303、鈍色を貫く>>304までを息を呑んで見守った]
[そして、『虚無』による心乱すような焦燥感は、消えた]
アイリ……様。
[なんと言葉を掛けていいのかと立ち尽くしていると、彼女が龍の背にもたれかかるのが見えて>>305]
だ、大丈夫……ですか?
[真っ先に心配が口をついて出た。
咄嗟に彼女の許へ駆けるが、それより先に動くべき人が動いているかもしれない*]
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