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……うん。
私も信じてるからね、リト。
[胸中にそっと、告げられた言葉>>=4、同じく抱いた思いを反芻して]
[フレデリカら解放班は、攻撃部隊の反対側へと回り込んでいた。
街道から見てもほぼ対角線上で、万一帝国軍側の動きが早くても多少は時間稼ぎになる位置を取った]
ひとまず、収容施設へ向かいましょう……!
[高い塀に囲まれた無機質な建物は、ほどなく見つかった。
ウル服用者ならともかく、普通の人間ではとても登ることなど出来ない塀だ。
であるからこそ、出入り口以外の警備は手薄とも言えた]
[丁度その機に、空中を舞う一団がその姿を現した>>86]
リト……。
[術だけではない、響き渡るその口上を、少しだけ眩しく思う。
無論呆けている暇はない。
警備の様子を確認した斥候役が、空中や前方に気を取られている様子を見て合図を寄越した。
派手な魔法やそこかしこで歌われる術に紛れて、自身も侵入のための術を紡ぐ]
我らを支えるもの 今は揺らがぬ広き大地よ
我が求めるは進むべき道 風抜ける間隙をここに現せ
[それは地に呼び掛け穴を穿つ、トンネルの魔法だった。
収容者を含め迅速に通り抜ける必要があるため、広さは人一人分よりもやや余裕がある。
壁の下を通り抜けるU字型構造のため、遠目にはわかりにくいが、無論近付かれればすぐにわかる。
見張り役を一人置き、更に二、三人の誘導役を周囲に隠れさせて、自身と残るメンバーは塀の内側に急いだ*]
― デメララ・収容施設 ―
[収容所内部で帝国軍の部隊長クラスと鉢合わせる可能性も、ゼロとは言えなかった。
少なくとも解放班に付き添っていた教員はその事態を想定して、万が一の時は自身が食い止めることを考えていただろう]
[実際のところ、目立つ風体のその男は部下に向けてがなり立てるのに夢中で、こちらの動きにはまだ気付いていないらしかった>>99。
警備の増員はなく、更に入り口側に人が集まっていくのを横目に、侵入を開始する。
内部の人員は、収容者を殴りつけるのに気をとられていた>>105。
胸の悪くなる光景だったが、戦闘の得意な生徒や教員が、素早く無力化を試みていった]
[内部には鉄格子に囚われる形で、数名、あるいは数十名ずつの収容者たちが閉じ込められていた。
喉に大きな傷がある者、そうでなくても鞭打ちの痕や強制労働による異変を抱えた者が多く、胸が痛む。
とはいえ、まずは彼らに自分たちの立場を示さなければならない。
開錠に関わる呪歌を操れるものが散らばって、並行作業で扉を開けていく]
剣にして盾たる剛き者 鍛えられし黒鉄よ
我は命ずその在り様を 時駆けた如くに朽ち果てよ……!
[もはや閉じることは考える必要がないからと、やや強引に破壊の呪を放つ。
そうして幾つもの扉が開けられていくが――多くの囚人たちは呆然と、その様を見守るばかりだった**]
[別々に動くと決めたからといって、意識まで切り離す必要はない。
――と気付いたのは、リヒャルトからの呼び掛け>>=6があったからだった]
そ、っか。
……良かった。
[案ずる気持ちはこちらも同じで。
相手の方がより攻撃にさらされる役目だから、というのもあったけれど、今のところ不測の事態は起きていないようだ]
こっちも大丈夫。
塀があるからか、そこまで見張りは張り付いていないみたい。
[そう、問題なく進行していることを報告する]
[初めて声が繋がったばかりの頃。
完全に子供と言っていい年齢だった自分は、その不思議な関係に無邪気にも喜んで、必要もないのに何回も声を送ったりした。
相手の方も――少し年上とはいえまだ子供のようで、大抵の場合は楽しそうに反応してくれていた、と思う]
[そんな声が、ぱったりと聞こえなくなった>>=7。
どうしたの、なにかあったのと。
問い掛ける声は次第に焦りに、そして案ずるものに変わっていった]
[嫌われちゃったのかもしれない。
真っ先に思ったのはそのことで、でも段々とそれ以外の不安も大きくなっていって]
リト。
……そこにいるって言って?
[色々と悩んだ結果の、たった一つ相手に願ったこと。
――それが叶ったのは、声が届かなくなって一月くらい経ってからだった]
リト?
……リト、だよね?
[ようやく聞こえた声>>=8。
短い謝罪からは相手方の状況はわからなかったけれど、返事が返ってきただけで胸が一杯で、そんなことには思いが至らなかった]
よか、った……。
リト、リトだ……。
[ただ、繋がっていると、それが実感できただけで嬉しかったのだ。
まだ幼かったがゆえに、色々言葉にはならず、相手へ気遣う余裕もなくて。
ひたすら名前を呼んでは泣きじゃくっていたことが、相手にどう思われたかはわからない]
[その後、彼からの呼び掛けが増えたことには純粋に喜んでいたのだけれど。
歳月が経って落ち着いた頃合いに当時の事情を知って、恥ずかしいさやら何やらで頭を抱える羽目になったのは余談である**]
― デメララ・収容施設 ―
[外の騒ぎに気付いた収容者もいたものの、すぐに逃走に移れた者ばかりではなかった]
「どうしました? 逃げていいんですよ」
「外に行けば私たちの仲間が待っています!」
[そうした呼び掛けに、動かぬ者から返るのは虚ろな眼差し。
長い収容所生活が、体力以上に気力を奪っていたことは明白だった]
やっぱり……。
[そうなる可能性については、事前の話し合いでも上がっていた。
フレデリカは周囲の仲間に視線を送りつつ、一歩進み出る]
みなさん。私たちは、共和国の人間――ロンリコの学園に所属していた者です。
[そう名乗ると、ざわめきが人々の間に広がった]
今、私たちの仲間は、外で戦っています。
――帝国軍の視線を引き付け、みなさんを解放するために。
[その言葉に沸き立つ者もあったが、多くは戸惑いと共に顔を見合わせた。
声を潰されていない一人が、代表するように声を上げる]
「待ってくれ……そんなのは無理だ。
首都ももう落ちたってのに……」
……はい。
事実、私たちの学園も既に襲撃を受けて……。
追い立てられる形で、私たちはここにいます。
[絶望的ともいえる状況だったが、そこを誤魔化すことは出来なかった。
向けられる表情に息詰まるものを感じつつ、でも、と言葉を繋げる]
それでも諦めなかったから、私たちはここにいます。
私たちは、呪歌を失いたくない……!
そして、それにはみなさんのお力が必要なんです。
[急かすような声が入り口側から届いてくる。
あの切り札>>1:171に頼るべき時が近付いているのかもしれない。
けれど出来ることなら、魔力でなく言葉こそを彼らを動かす力にしたかった]
奪われた居場所は、私たちがきっと取り戻します。
だからみなさんも、私たちに居場所を――在るべき理由をください。
[魔法の力は、魔法を使えない者のためにこそあるべきだ。
そんな信念は、かつて魔導師だった者も含むこの集団に、どう響くかはわからないけれど。
自分たちが立ち上がるためには彼らの助力が必要だと、願い籠めながら頭を下げる**]
リト。
リトはどうして、学園に入ることにしたの?
[そう問うたのはいつのことだったか。
少なくとも、帝国の脅威が遠く、まだ魔法の国が平穏に機能していた時のこと]
私はね――
[自分が問われたならば、それはいつかドロシーにしたのと重なる解答>>1:100となるだろう]
……リト。
[ふとそんなことを思い返したのは、これから自分の歌う呪歌に籠める想いは、きっとリトの目指す先と重なると思ったから]
あの呪歌を歌うよ。
[その呪歌を教えてくれたという人は、この中にいるのだろうか――自身に知る術はなかったけれど**]
― デメララ・収容施設 ―
[こちらの言葉に対し、広がるのはざわめき。
やがて一人の男が、怒気を孕んだ表情で飛び出して来る>>124。
周囲は彼を押し留めはするものの、思う所は同じであることは向けられた表情からも見て取れた]
それは――……
[ただ解放する、というだけでは彼らに納得は与えられないのかもしれない。
帝国の手から彼らを守り反撃の糸口となる一手を、頭の中に探る**]
お偉いさん……?
[その言葉>>=16に少し身を硬くするが、そこはリヒャルトたちがうまくやってくれると信じるしかないだろう。
自分の目の前の状況こそ、重要な局面だった]
[最後の切り札は、リヒャルトに委ねることになるだろう>>=17――とは言え、彼の言葉が届く状況まで持って行かなくてはそれも不可能だ。
こちらの現状――収容者から上がった声などを伝えれば、リヒャルトから伝えるべき言葉が返る>>=18]
……うん。ありがとう。
[意識を割かせてしまったことに申し訳なさはあったが、反省は後に回して端的に礼を告げる。
不安や揺らぎが鎮まったことは、言外に伝わるだろうか]
どうにか、やってみるよ。
――そっちも、気を付けて。
[そして意識は眼前の状況へ向けられる*]
― デメララ・収容施設 ―
……うん。
[僅かな沈黙と、遠くへ向けられた眼差し。
それが何を意味するか知る者はいないだろうが、戻された視線には力が籠もり、心なし背筋が伸びたのは伝わっただろうか]
確かに――今は居場所はありません。
けれど、だからこそ、私たちは取り戻すための戦いを始めています。
何もしないでいたら……闇の中で閉じ籠って、目を閉じているだけでは。
ずっと、何も変わらないままではないですか?
[収容施設の環境は、決していいものとは言えない。
それでも、外に出ることを拒むのは――希望を抱いても、それが裏切られる、その過程こそ恐ろしいのではないか。
そのように自分なりの解釈を持ちつつ、言葉を繋げる]
希望を抱いて裏切られるよりは、同じ闇の中に沈んでいる方が、楽なのかもしれません……。
けれどどうか、もう一度だけ光に目を向けてください。
――とても眩しくて、暖かい光です。
[情の籠った一言をぽつりと付け加えた後、視線を脱出路へと向ける]
せめて――
今から、外で起こる出来事を。
私たちがもたらす一番の光を、見てくれませんか?
[それが叶うなら、判断は委ねるというように。
言い切った所で、再び振り向いて収容者らの顔を見た*]
― デメララ・収容施設 ―
[自分の語る言葉に、人々が沈黙し、耳を傾けるのを感じていた>>144。
語り終えた後も、しばし静寂の時が続く。
その中で最初に動いたのは、喉に痛ましい傷のある老人だった]
[声を無くした者たちの間で使われているのだろう指文字を、老人を支える者が翻訳する>>145]
あ……。
[太陽を――光を望んでくれた老人に、知らず安堵の声が漏れた。
他の収容者らも、口々に外へ出たいという意志を口にする。
声でなく指で語る者たちも多くいた]
ありがとう……ございます……!
[感謝の仕草>>146を受けて、少し身を屈めつつ老人の手を取った。
それから他の収容者たちへも視線を向け、改めて呼び掛ける]
体の不自由な方には、私たちが手を貸します!
どうぞこちらへ……!
[出入口の方へ順次収容者らを誘導する。
外には班の仲間が待っていて、事前に取り決めた場所まで案内する手筈になっていた。
ある程度流れが出来たところで、見張りの兵士が手出しを出来ないよう、本来の扉を塞いだり魔法の壁を出現させたりもした。
最後には脱出口も塞ぐこととなるだろう*]
― デメララ・収容施設 ―
[建物への工作のため殿に回っていたこちらへ、列を外れた男が一人、近付いてきた。
どうかしたのか、と問う声は飲み込む。
それは――喉の大きな傷を除けば、よく知った顔だったから]
とう、さん……!
[呼び掛けに、相手はゆっくりと頷いた。
思わず飛びついて、強く抱擁を交わす。
事情を悟った周囲の人々は、見て見ぬ振りをしてくれた]
[語りたいことは幾らでもあった。
けれどそのすべてを堪えて、ゆっくりと身を離す。
状況を弁えているのだろう父も、同じようにした。
しっかりと目を合わせながら、口を開く]
ごめん、父さん。
話は後で。
――大切な人が、今も戦ってるの。
[その言葉の意味するところは、絆の存在を知る父なら察せられただろうか。
父は大きく頷いて見せると、脱出者の流れの方へ戻っていった]
[そして、最後にフレデリカ自身も収容施設を抜け、脱出に使った穴やトンネルを塞ぐ*]
――リト。
[状況が定まった所で、胸中にて言葉を紡ぐ]
こっちは、動いたよ。
――後は、お願い。
[信を置いていることを示すように、告げる言葉は短いもの*]
― デメララ ―
[そうして収容者を解放し、最後に自身が表へ出た頃。
空中を広く渡っていく声があった>>152。
これがそうなのかというざわめきが収容者らに広がっていき、皆の視線が声の出所を探すように動く]
「呪歌を……絶えさせないために……」
「道を……開く……」
[リヒャルトの言葉が、その場の人々の浸透していくのが感じられた。
皆の視線が上がっていく。その先に]
[光り輝く竜が、天へと舞い上がった>>153]
[おお……と、驚きや控え目な歓声が、その場の人々の中に上がった。
それはただの光というだけではない。
真っ直ぐに突っ込んでいく――駐留軍本部へ向けて]
「やる気なのか……!」
[相手がウル使用者でありこれだけでは倒せない可能性は、この場の誰もが承知していた。
それでも、"彼ならやり合える"、皆がそう思い始めていることは表情から感じられた]
――はい!
[だから自身も、確信を持って声に出す*]
やってくれます。
彼なら、きっと……!
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