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失敗が先だったのだから、お仕置きも先にしよう。
さあ、おいで。
[鎖を軽く引いて促しながら、部屋の扉へ足を向けた]*
[ご褒美とお仕置、順番を変えられただけで妙に狼狽えてしまう。
人心操作の才があるというか、玩弄のツボを心得ているというか。
息を呑む間に、首輪が嵌められる。
任務にしくじった罰を受けているように見える──とも限らないことに今更ながら羞恥した。
しかもこれを自分から求めたなんて。
めくるめくほど愛されて、どこか防備が甘くなっていたようだ。
いつもならこんなお仕置は妄想だってしない、と思いたい。]
あ、
[お仕置は別の場所で、なのか、首輪につながる鎖を引かれて、手をつき立ち上がる。
痛みは伴わないが、これらは本来、従属と躾の道具であった。
部屋から出るならば服を、と思ったがおそらく却下されるだろう。
導く背中の半歩後ろを歩きながら、手と目線のやり場に困る。]
[頬を染める子の顔に流し目をひとつくれて、扉を開く。
部屋を出る直前、くいと鎖を引いて引き寄せ唇を奪った。
私はおまえを恣にする支配者なのだ、と確認するように。]
そうだ。
今のおまえに似合うものをあげよう。
[手を伸ばし、我が子の腰の後ろをとんと叩く。
その奥に眠らせたまま、未だ取り出していなかった闇が目覚め、入り口近くへ移動しながら大きく伸びた。
するりとしなやかに長く伸びた闇の尾は、それを生やしている当人の意志とは無関係に機嫌よく上を向いて緩やかに揺れる。
暫くその姿を眺めたあと、髪を撫でてやればそこにも闇が宿り、和毛に覆われた二つの三角形を形作った。
こちらは多少感情に反応するようだ。勝手に動くのには変わりないが。]
[見目整えられた我が子の姿を眺め、満足して再び歩き出す。
向かったのは、城の中でも最も大きい広間だった。
両開きの扉を押し開ける前に、扉に手を当ててなにかを小さく呟く
厚い扉の向こう、微かなざわめきが漏れた。]
おいで。
いい子にしていなさい。
[鎖の先の子に声を掛けて扉を開く。
内側からたちまち音楽と笑い声と嬌声が洪水のように溢れ出した。]
[扉の中は華やかかつ淫靡なパーティーの会場になっていた。
色とりどりの服装に身を包んだ男女が広間のあちらこちらで群れ、さえずり、舞っている。
奥の楽隊が奏でる曲は穏やかながらどこか妖しさを感じさせるもの。
人々の多くはパートナーと連れだって歩いているが、それは対等な連れというよりはお気に入りの従者かペットという風情であった。
会場を見渡せば、柱の影や壁際、あるいはテーブルの上で堂々と睦みあっている者達がいる。パートナーを交換し合い、入り乱れて楽しんでいる者もいる。
明らかにこれは普通のパーティーではない。
性愛を楽しみ刺激を求める者達の放蕩な乱交パーティーであった。]
[よくよく観察したならば、これが現実の光景ではないと知れるだろう。
これは城主の記憶を城が映し出したもの。
音楽も、声も、頭の奥が痺れるような香の匂いさえもが幻影だ。
ただし、注意深く観察すればの話。]
これは、お仕置きだからね。
[鎖を引いて引き寄せた子の耳に囁きの息を吹きかけ、広間へと入っていく。
二人を、独特の淫猥な空気が包み込んだ。]
[鎖を手繰られて首を差し出す形になる。
素早く盗まれた接吻けもお仕置なのだろうか。
いつもならば、戯れはお止めくださいと反射的に顔を背けるところだが、声を詰まらせ見つめてしまう。]
な…っ
[伸ばされた手の先に、何か造型を加えられる気配がした。
意志を伴わないまま動くパーツに戸惑う。
尻の方は首を巡らせて見ることができたが、頭上のこれは?
手をやって、天鵞絨のような毛並みの薄く尖った耳朶の感度に、ビクと肩を竦めた。
これもお仕置の一環だと?]
[普段から滅多に人と邂逅しない城だが、こんな恰好で連れ歩かれれば、どうしたって緊張して足運びが小刻みにそわそわとしてしまう。
導かれた先は大広間に続く扉だ、さすがに何かあると身構えた。
その先入観が術の導入を容易にしてしまったことに気づくこともなく、開かれた扉の先の光景に魅入られる。]
なにをしてるんですか…!
[思わず口をついたのは、中にいる者たちの行為についての質問ではなく、こんな宴を催したらしい親へ向けたものだ。]
[けれど、水薙公の件もある。
本来ならば、この宴に饗されるべき者が手に入らなかったのなら、その代役を努めさせられるのは仕方ないのでは──と、躊躇いつつも引きずられてしまうのは、またしても燻る香のせいか。]
承知して、 います。
[いくらか険しい表情で言い、鎖を握られているにも関わらず、傍を離れまいと後をついてゆく。
こんなところで一人にされて無事にすむとも思えない。]
[我が子の驚愕は当然のものとして、宴の中へ歩み入る。
気づいた参加者たちが熱に濡れた艶媚な視線を投げかけてきた。
幻であるから、触ることはできない。
けれども、術に深く掛かっていれば、あるいは触られたように錯覚もするだろう。
伸ばされた指が時折掠めようとする。
人々の波間を泳ぎ渡った先は、膝高ほどの低い壇になっていた。
そこへ、我が子を上がらせる。
自らは壇の下で鎖を短く持って降ろし、子に四つ足の姿勢を強いた。]
さあ。
ここにいる皆を楽しませたら、お仕置きは終わりにしてあげるよ。
まずは、尻尾を高く上げて、私におねだりをしてごらん。
[意識を目の前の背中だけに集中して、周囲と目を合わさないようにする。
勝手に動く尾が客人たちに触れるのか、時折、ぞくっとする感触が腰の奥に送り込まれた。
幾度か果てた後で、回復に時間がかかっているのは幸いだ。
それも、この香と雰囲気の中ではいつまで保つかわからないけれど。
黒御影の台に登るよう促され、ゆっくりと息を吐きながら両手をつく。
余興に浮き立つ数多の視線に、舐め回されるように観賞されているのを感じた。
幾人の頭の中で同時に犯されているのだろう。]
俺を、か… 可愛がってください。
[おねだりをするよう求められ、ようやく声を絞り出した。
この程度では、許してもらえないとわかっているけれど、他人の目のあるところでそんな言葉を口にするだけで、目眩がする。]
[壇上に乗せられた我が子が、消え入りそうな声でおねだりの言葉を言う。
想像力豊かなこの子のことだ。頭の中ではすでに、皆に幾度も可愛がられている光景が浮かんでいるに違いない。
手を伸ばして本来の耳と、和毛生えた耳を撫で、唇を寄せる。]
ダメだよ。
それではまだ足りない。
後ろを向いて、可愛がってもらいたいところを私によく見せながら、もう一度おねだりしてごらん。
[鎖を緩め、動ける余地を作ってやって、猫にそうするように喉の指先で撫でてから、やり直しを促した。
闇の尾が、喜び勇んで立ち上がり、せかすように左右へ細かく震える。]
[人の耳と獣の耳と、ふたつながらに撫でられて首筋がそそけだつ。]
や、 止めてください
[懸命に睨むけれど、全裸に首輪をつけられた姿では、恰好がつかなかった。]
[周囲を取り巻く艶めいた群れから、忍び笑いの気配がする。
この身が嗤われるのは仕方がない。
だが、城主が親としての監督力を発揮できず、眷属たちに見くびられてしまったら、この先、議会での地位も危うくなる。]
──…っ
[嗤った相手の喉を噛み裂けというならば、死を顧みずに飛びかかるものを、親の命令は他にあった。]
[ここにいるのは獣なのだと自分に言い聞かせて、身体の向きを変え、肩を沈めて腰を上げる。]
…あなたのペット です。
たくさん弄ってくださると喜びます。
[震える声で告げ、従順さの証に、喉を搔い繰る指先をチロリと舐めた。
目をつぶっても周囲の気配はわかってしまうのだけれど、とてもではないが目は開けていられずに、瞑ってしまう。]
[やり直しを命じられた子は懊悩と葛藤の中にいたようだったが、やがて義務感が羞恥を上回ったようだ。
従順に後ろを向き、肩を落として腰を上げる。
ねだる言葉は先ほどよりも卑猥なもの。
震えているのがまた可愛い。]
いい子だ。よくできたね。
おまえがそんなに可愛くおねだりするものだから、
みなもおまえを喜ばせたくてたまらなくなったようだよ。
けれども今は私が触ってあげよう。
おまえはわたしの可愛い子だから。
[膝をついて腰を上げた我が子の秘所は、ちょうど目の高さにある。
顔を近づけてじっくりと眺めながら、舐められて濡れた指を伸ばした。]
[今も機嫌よく先を揺らす尾の付け根、闇を飲み込んだ穴の周囲をぐるりと指で辿る。
そのまま指を滑らせれば、しどけなく垂れている双つの嚢と、未だ眠ったままの柔茎に触れた。
敏感な場所を指の腹と掌で柔らかく揉みながら、内側に入っている闇をゆっくり波打たせる。
弱い刺激を与えておいて、どこからか一枚の黒い紙を取り出した。
手で押して足を広げさせ、その間に紙を置く。]
これからこの子が、絵を描いてくれます。
見事描きあがりましたら、どうぞ拍手を。
[見守る群衆にむけて芝居がかった声で告げれば、どよめきが起きた。]
[親が褒めてくれるのは、こんなときですら嬉しい。
けれど、見物人の欲望を示唆する言葉を続けられて、身体を固くする。
皆の相手をするのは厭です、と言いかけた矢先に回避策を示されて、ほっと力が抜けた。]
んぅ…っ!
[安堵するのを読まれていたかのように、双果を握り込まれて肩が跳ね上がる。
衆人環視の中で達かせるとの宣言に、弱々しく呻いた。
萎えたものを晒しているのは情けなくもあり、かといって首輪をつけられて熱り立っているのも恥ずかしいジレンマ。]
[あれだけ濃密な愛を交わした後では、粘膜が擦れて痛いだけだろう──と思うのに、滑らかな指で揉みこまれれば、じわりじわりと快感が湧いてくる。
足の間に広げられた黒い紙に、蜘蛛の糸が垂れるまで時間はかからなかった。
勘所を熟知した相手に身体の外と中から扱き上げられて、喩えようもない気持ちよさが蜷局を巻く。
見られているという自覚が意識を滑り落ちてゆき、無防備な喘ぎが洩れた。]
あ、 ぁ、 いい だめ、 達く──…!
[ついには自らその瞬間を教えてしまい、浅ましい獣の姿勢に掲げたままの腰を痙攣させながら欲を迸らせた。
一面の黒に散る白は、まさに落花狼藉の態。]
[始めこそ葛藤に凝り固まっていた身体だったが、触れてやれば次第にほどけていく。
手をかければかけるほどに柔らかく美しく開く艶花。
膨らんだ中心から蜜を零すさまは、どんな蝶をも魅了せずにはいられないだろう。
はたり、はたり。透明な雫が黒い紙の上に銀糸を織りなす。
滴る喘ぎは色を増し甘さを増し、練るほどに高く細く悦びを奏でる。
足の震えが腰の中心にまで達すれば、絶頂の声が迸った。
一面に振りまかれる白。
それは歓喜と名付けられるべき、一幅の絵画。
紙を黒御影の上から取りあげ、余韻に震える鈴口に押し当てて落款とすれば、絵の完成だ。]
さあ。見事な絵が描きあがりました。
どうか我が子を褒めてやっていただきたい。
[鎖を引いて正面を向かせ、絵を示して声を掛ければ盛大な拍手と歓声が上がる。
だが満足の顔で手を叩く群衆の姿は次第に薄く透明になり、やがてすべて消えてしまった。
術の効果は、ここで終了だ。]
お仕置きは、堪能してくれたかい?
[笑み含みながら我が子の顔を引き寄せ、耳朶に口付ける。]
[沸き起こる拍手が、しとどに濡れた身体に響く。
これでお役御免となるだろうか。
興奮した客人たちにこの先を求められる前に、燻り疼く身体がそれを許容してしまう前に、早く首輪を引っ張って立たせてもらいたい──
そう願うさなかにも、静寂が部屋に戻り、空気の温度さえ変えてゆく。]
…消え た?
[パチパチパチと最後まで残った拍手の主は、種明かしをして微笑んだ。
すべて幻影だったかと溜め息をついて睨みつけるも、頭と尻でピルピルしている黒い部分はいまだにそのままで、顰め面も一向にサマにならない。
幻影でなかった方がいいのかと問われれば、即座に却下した。]
こんな俺を見ていいのは、あなただけです。
[小声で付け足し、引き寄せられるままに、その唇を軽く噛んでやった。
撫でられすぎた猫が不意に荒ぶるごとく。]
[子供の不意で可愛らしい逆襲に笑いながら、その体を抱えて再び闇の中へと身を躍らせる。
現れたのは城近くの森の中。
木々や下生えの茂みが鬱蒼と生い茂る中、周囲から隔絶された空間には星が降り月光が注ぐ。
柔らかな苔がみっしりと積もるその場所は、城主のお気に入りのひとつだった。
厚い苔の寝台に我が子を横たえ、肌を重ねて覆いかぶさる。
二人を包むのは、漆黒の衣一枚。]
ここからはご褒美の時間だよ。
"
そうだったね?
[確認したのち、唇を重ねる。
どこまでも甘い口付けは、今度は噛みつかれることはないだろう。]
[望まれた通り、あるいはそれ以上に我が子の願いを叶えてやった。
肌を吸い、柔らかな場所に牙を立て、赤や青の文様を我が子の白い肌に捺していく。
頭上に輝く星空をそのまま肌に転写したように、真っ白なキャンバスに無数の唇紋が散りばめられた。
無論それは人の目に触れぬところ、余人の目には決して触れないところにまで及ぶ。
それらのいくつかは暫く消えずに残るだろう。]
愛しているよ。私の大切な子───
[愛を囁きかわし、抱き合って穏やかに互いを感じあう。
ここには、夜を追い払う無粋な太陽はない。
望む限り、求める限り、いつまでもこうしてふたりきりの幸福な時を*過ごせるのだ*]
[喉を鳴らすような笑い声が、抱き上げられた肌越しに伝わってくる。
歩むことなく移動した先は、森に抱かれた夜の底。
偽わりのない天然そのものの苔の褥に横たわり、星を隠す美しい貌を見上げる。
「ここからはご褒美の時間」と言われ、尽きない情愛のほどに、敵わないなと思い知らされた。]
あなたは夜毎に俺を鍛えてくれますね。
[腕を絡めて迎え入れ、接吻けのひとつひとつに小さく噛み殺した喘ぎをあげる。
どれひとつとして忘れはしない。
拙くとも、その高みへ並ぶべく、接吻けを返す。]
愛しいひと──…、 あなたが欲しい。
[太古の昔から、夜は愛の時間。
吸血鬼はそれを選んだ魔であった。
それは、親から子へと、血の交わりとともに*受け継がれる。*]
紅水晶の蕾 レトは、艦長 ゲオルグ を投票先に選びました。
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