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雷華の僕 ルートヴィヒは、聖蓮の花神 マレンマ を投票先に選びました。
[逃げる、等という選択肢は、男の中では初めから存在しなかった。
下肢が思うようにならぬこと等、何の妨げになる物か。
人と人との争いのみとはいえ、
仮に、養父には実際の戦場へは連れて行かれなかったとしても。
選ばれたのだ、己は。
この、美しい人に。
応えない、など、不遜に過ぎる。
勿論、闘争心そのものも、否定するつもりはない。
男の人生は、戦いと共にあると言っても過言ではないのだから。]
[揺れる赤に、唸る大地。
あぁ、確かにこの人は、この地を治める、“王”なのだ。
この人を、更なる高みへと導く礎になりたいと願うのは、決して嘘ではない。
それほどに、魅了されていた。
出会う眼差しは、決して逸らすことはない。
金色と銀、たがいに映り込む色が、其々の輝きを帯びて、強い光を放つ。
『死ねない理由』
それは、死者への責任だと思っていた。
しかし、それよりもなお、強き力が己を導く。]
[主の掌から滴る赤を視線で追い。
それから上げた眼差しが、ほんの僅かに柔らか味を帯びる。
死ねない理由。
戦う理由。
貴方と共に立つために…――
戴いた“理由”を胸に、サーベルの柄へと右手をかける。
腰に吊るした鞘から、鈍く光る銀が覗く。]
ルートヴィヒ・デンプヴォルフ。
今ここに、
[左の掌でその銀を握れば、そろいの赤が男の手を彩る。
そして、目の前の掌に、己のそれを重ねあわせ。]
どうぞ、お導き下さいませ。
[雷華を冠する主の笑みに圧倒されぬよう、大地を踏みしめ返した眼差し。
そこには更に強い意志が宿る。*]
[掌の隙間から溢れ出す光に、思わず目を眇める。
名は、体を現す。
しかし、苛烈こそあれ、温かみの無い、何かであった。
その名が奪われ、抹消される。>>42
そのことに、どこか胸のすくような思いを覚えたのは、きっと無意識に彼の人へと縛り付けられていたのだろう。
温もりの金色と、静謐の銀。
二つの光が交じり合い、新たなる輝きを帯びて紅野原を照らす。]
ッぅ、
[バチリと、静電気よりも強い刺激が傷口から体内へと流れ込む。
握りこまれた掌を、握り返す様に指先に力を籠め、耐えるように奥歯を噛む。
走る電撃は、指先から足先まで、ビリビリと広がって行き、全身をくまなく駆け巡る。
そうして広がった熱は、最後重ねた掌へと帰り。
漸く開いた視界に、左の手を覆う黒が映り込む。
それは、主との契約の証。
収まる光の内側で、どちらからともなく手を離すと、青年はその黒に覆われた掌をそっと握り込む。
そこに、確かな力の胎動を感じると、再度、ぐっと握りしめた。
ばちり、とその場所から火花が飛ぶ。]
[男は主の金眼を見つめ、それから、とん、と大地を蹴った。
浮き上がった身体を、一瞬宙に留め、それから再度つま先で着地する。
それを確認すると、男の瞳に喜色が溢れた。]
ありがとう、ございます。
[抑えた声に、滲む興奮は、隠しようもない。
かつて、前線へと赴く背を、何度口惜しく見送ったことだろう。
口にこそしなかったものの、下肢の不自由を得ても、並の相手には引けを取らぬ自信があった。
それでも、ルールのある競い合いではない、命のやり取りを行う戦場に置いて、その小さな一瞬が命取りになることは、重々承知していた。
だからこそ、言えなかった。]
[服越しに触れたわき腹には、確かに傷の名残が残る。
恐らく背中側の腰にも、はっきりと残っているのだろう。
かつて、金髪碧眼の、仔狼の決死の刃を受けた傷。
父王の仇を狙った刃を、受け流すこともできずに代わりに受けるしかなかったあの日。
その青年の命を喰らった刃は、今でも共にある。]
…ダニエル…
[幼い頃は共に遊びもした、かつての王子の名前をそっと唇に乗せる。
彼の意志を忘れたわけでは無い、それを示す様に、左の腰に下げたサーベルを、指先でつぃと撫でた。]
バチンッ
[撫でた指先から火花が散り、サーベルが帯電する。
何事か、とそのサーベルを見つめ、それから主を見上げる。
眼差しに、促された気がして、刃を抜くと、バチバチと火花を散らす刃から、金の獣が飛び出した。
獣はちょうど、ウルと呼ばれた狼程度の体躯を持ち、ぐるりと男の周囲を一周駆ける。
そして、再度目の前に戻ってきた獣は、男の蒼銀の瞳を見上げた。
眼差しが出会った瞬間、その獣の正体を知る。
ゆっくりと、抜いた刃を収めると、獣は目を閉じ姿を消した。]
[左手を覆う、黒の手袋の他は、一見何も変わらない男。
しかし確実に、新たなる名と共に与えられた力は、男の中に息づいている。
ルートヴィヒ・ヴォルフガング。
貴方に与えられた名と共に、貴方にお仕えさせていただきます。
[見上げた眼差しに宿るのは、暖かな敬愛である。*]
[ヤールングレイブル。
主の発した単語>>53には、どのような意味が込められているのだろう。
しかし、この与えられた力が、なにがしかの意味を持つのであれば、それは喜ばしいことに違いない。
少しでも、一歩でも、期待に応えたい、と思ってしまうのは、生まれ持った
神に愛されている、などと、言われれば、それは嬉しくないはずがない。
元々自制の強い方であるから、浮かれるなどという事はないが、それでも高揚する気持ちは包み隠せるものではなかった。]
[誘われるまま、建物へと入ろうとしたところで、立ち止まる主を見上げる。
続いて聞こえる、“誰かの声”。
主の視線を辿り、それの声の主を知る。]
…策…?
[呟くように繰り返した声は、主に聞えたかどうか。
問う様な口調でもない、独り言に近いそれは、聞こえたとしても聞き流されたようで、別段それに不服を抱くことも無く。]
は。
お許しいただけるのでしたら、お尋ねしたいことも、少々。
[それは、この戦に関することかもしれないし、もう少し個人的なことかもしれないが、可能であるならば尋ねてみたいと思いつつ。
それはただ、主という存在を、よりよく知りたいが為の願い。*]
― 戦舞台へ ―
[やがて姿を見せた男は、主らと共に戦舞台へと向かう。]
随分、お時間を取らせてしまい、申し訳ありません。
[抜身のサーベルを手に、金色の獣の背に跨り、大地を駆け抜ける。
大きさこそ通常の狼のそれであるが、その速さは、先に巨大化した背に乗せてもらった、ウル達にも決して負けてはいないだろう。
辿り着いた頃には、勝負は開始している。
チン、と音を立ててサーベルを鞘へと納めると、金色の狼は眠るように瞼をおろし、すぅと姿を消した。]
[戦いをやや遠巻きに、眺める。
戦っているのは4人。
二人は氷雪、二人は水…いや、焔だろうか。
それぞれ司る物から、主従関係を知る。
上空にいるのは、別の主従か。]
…あちらは…
[傍らの主に問えば、彼らが何を司る者か、教えられるだろうか。
そうして暫く、彼らの姿をじっと見つめる。]
[戦いは苛烈を極め、戦舞台には氷雪と水火か猛り踊る。
少し距離を取った場所ですら、その冷気と熱を感じるのだから、実際の戦舞台ではどれほどであろう。
ぶるり、と背中が震えたのは、武者震い。
男の口元には、仄かな笑みが浮かぶ。
相も変わらず、男の視界に映るのは、赤とそれ以外の濃淡。
しかし、眼鏡の奥の眼差しは、鋭い。
男は、ふと、あることに気付き、そっとそれを口にする。]
あの娘…表情が、変わりました。
[実の所、この眼鏡に所謂度は入っていない。
長時間の光にあまり体制の無い眼球を保護するために、若干の遮光機能が備わるのみのその硝子は、無くしたところで大した影響はない。
元々動体視力も悪くない、遠目にも戦の状況は良く見えていた。
最初門の傍で出会った時に、わざわざ少し離れたところにいた己に言葉をかけ、名乗りを求めた彼女はそこにはいない。
そこにあるのは、どこまでも冷徹な眼差しの、氷の化身。
その身のこなしも、ごく普通の娘のように見えた少女からは、想像もつかないような代物である。]
[視線を移した先は、白を纏う男。
心に氷を宿す…だったろうか。
言われた言葉を漠然と思い出し、再度少女へ視線を戻す。]
…私は、幸いであったようですね。
[己を呼び出したのが、貴方で。
呟いた言葉は、独り言。
主に聞えたかは分からない。
対する青年と、花神へと目を向ければ、あちらはさほど“弄られた”様子は見えない。
けれど、青年が人ならざる
…あの、純朴そうな、青年も。
上空にいる女性も。
既に、ただの人ではないはずなのだから。*]
─ 少し前・雷華の領域/浮島の邸宅 ─
あ"ーーーー疲れた。
もはや息するだけでも疲弊するわー…
[入り口に下げられた織布を潜ったガートルートが、こきこきと首を鳴らしながら長い溜息を吐いた。
大して働いてもいないのに不平を漏らすのは、いつもの事だと従華たる青年も直ぐに慣れるだろう。
入って最初の部屋からふたつ奥まで青年を案内する。
石造りの円形の建物は中に入ると思いの外広く、隣合う建物同士は様々な模様の入った織布で仕切られ、繋がっている。
扉が据え付けられた部屋が見当たらないのは、獣の身であっても行き来が可能なようにとの配慮であった。]
ルート、適当に座っててくれ…あっ、違う、適当じゃなくここだ、ルートの席はここ!
[茶でも飲もうかと隣室(どうやら廚らしい)に半身を突っ込んでいた男は、碗をふたつ引っ掴んで慌てて戻ってきた。
この部屋の足元には、床材の石の温度が伝わらないよう厚めの絨毯が敷き詰められ、ラグやクッションらしきものが並んでいる。
中央に蜂巣を模した形の硝子の卓があり、上には茶器と、小さな壺と、陶器が幾つか。壁に埋め込まれた暖炉が据え付けられており、向かい側の壁際は調度品が置かれている。
男が示したのは、暖炉側の床。
ふわふわと毛足の長い、灰味がかった白いラグが幾つも折り重なって敷かれている。その上に、質の違うファー素材のクッションが三つ、転がっていた。
たしたしとラグの上を叩いて、見るからにわくわくした顔で青年の着席を待つ。座ったら座ったで、目を輝かせて。]
どうだ?
座り心地は悪くないか?
これな、ヤクの毛皮で作ったんだ。今日の為に前以て準備しておいたんだぞ?
ルートは椅子のが慣れてるだろうから、足とか尻とか痛くなったらかわいそうだからな!
[言って床の上にどっかりと腰を下ろした男の顔には、これから戦に赴く緊張感など露ほどもない。
椀を卓に据えて、鼻歌交じりに芳ばしい香りの茶を椀へ注いでいた。*]
『どっちも子供じゃねぇか』
『趣味の悪い』
[傍らの主の呟き>>66に、ぱちりとひとつ、瞬く。
そうか。
あれは、子供と称される年齢なのか。
12で軍に入った己としては、別段決して幼いと思うような年齢ではなかったのだが、言われてみれば確かに子供の年齢だ。
それを、興ざめと取るのか、わが主は。]
…やはり、貴方はお優しい…
[呟いた言葉は微かに空気を揺らすのみ。
主に聞かせようという言葉ではない。]
[問いに対する返答は、割合あっさりと得られる。>>67
口にされる言葉を、なるほど、と脳裏に刻み。
氷華の従華となった少女。
彼女を眺めていて、思わず口にした言葉は、主へと届いていたらしい。
不意に触れられた手>>71に、思わずびくりとしたのは、単純に不意打ちであったせいである。
その手に上向かされ、金色の瞳と出会うと、こくりと喉が鳴った。
至近距離で、落とされる囁き。]
……。
[一瞬感じた、まるで獣に追い詰められたような錯覚。>>72
しかしそれは、あっさりと身を離されることにより、解除される。
思わず留めていた息を深く吐き出すと、男はついと視線を足元へ落とす。
ほんの僅か、頬に差した朱は、一瞬怯んだ己自身を恥じたもの。]
…決めるのは、私です。
[ぼそり、呟いた言葉は、口の中でもごもごと反響し、明瞭な音を為さなかった。
再度、ため息を付き、ちらりと見やった主は頭上を見上げている。]
[その視線>>72に従い、見上げた先には女性の眼差し。
傍らの主を見ているようだが、その意図は測りかねる。]
我々の相手…
[闇桜、と称された相手の姿を見上げ、小さく繰り返す。
従華と思しき女性の方は、随分と気が強そうだ。
男の国では、女性が剣を取ることは、稀であった。
しかし、決してゼロではない。
女性の身ながら、男の固い身体を易々と掴み、大地へ叩きつける者がいることを、知っている。
尤も、国ではそういった女性は、必ずそれと分かる程度に鍛えていたものであるが。
特異な力を得た者を、ただの女性と侮るつもりは、毛頭無い。
ふと、流した視線の先、闇桜の魔がこちらへと降りてくる>>70様子が目に留まる。]
…こちらへ、いらっしゃるようです。
[主に向けて、抑えた声で囁いた。]
─ 少し前・雷華の領域/浮島の邸宅 ─
[主の零す、気だるげな声に、密かに笑みを零す。
百獣の王たる獣とて、腹がいっぱいであれば日がな一日眠って過ごしたりもするらしい。
この主も、飢えにあてられてない時はそんな調子なのだろうか。
まだ主の事を良く知らぬ男は、そんなことを推測してみたりする。
連れて行かれるまま、主の示す部屋へとたどり着くと、ぐるりと辺りを見回した。
男にとっては、やや珍しい光景がそこには広がる。]
…は。
[示された場所は、他と比べて随分と居心地がよくしつらえてあるようだ。
本来は誰が座る場所なのだろう、と内心で若干不安に思いつつも、誘われるままそちらへと腰を下ろす。
ふと振り返れば、何やら子供のような表情をした主の眼差しと出会った。]
え…あぁ。
私の…為に。
[予想外の言葉に、やや戸惑いつつ。
どれだけ甘やかされているのか、と眩暈がしそうになる。
…ダメだ。
眩暈なんぞしたら、この主はもっと騒ぎそうだ、と若干何かを学習しつつ。]
とても…心地の良い場所です。
[ありがとうございます、と、素直に礼を述べた。]
こういった建物は、新鮮に感じられます。
[二頭の狼が、後からついてきて部屋へと顔を出すと、仕切りの意味もおのずと知れる。
本当に、獣と共に生きるのが常らしい。
建物自体はもちろん、調度品も材質に至るまで物珍しく感じられる男は、どうにもそわそわしていた。
居心地が悪いのではない。
元々、探究心が強い方なのである。
知らぬ文化に触れ、やや高揚しているらしかった。
そんなことをしている間に、辺りに良い香りが漂えば、主の手ずから淹れらえた茶に気付く。]
あぁ、申し訳ありません…
[恐縮しながらも、差し出されたそれを受け取って。
その瞬間、鼻孔をくすぐった香りに、表情が緩んだことには気づかれただろう。*]
― 戦舞台 ―
[降りてくる闇桜の主従>>83をじっと見守る。
主の傍らに立ち、姿勢を正す。]
……。
[しかし、闇桜の魔が主に話しかけている以上、黙ってそこに控えるのみ。
傍らの女性には、ちらりと目をやるが、視線が合えば会釈の一つもしたことだろう*]
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