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[アデルの傍らには、当然ながら護衛の面々が付いていた>>143。
彼らも同じ船に乗った仲、姫と同様に種々の海老料理が振る舞われる。
ミヒャエルもひとまず配膳に手を貸すことにして]
あっ、そこの方!
良かったら焼き海老どうですか?
[と、声を掛ける先は、どこか影を思わせる剣士。
配膳役が姫や他の護衛へ声を掛けるのに手一杯で、彼に手が回っていない――ように見えたのだ
それでなくても、普段の緊張が少しばかり和らいでいる護衛役に、声を掛けてみるのは悪くないと思えた*]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
[皿を差し出した相手>>151に名を呼ばれて、思わず目を円くする]
はっ。
――まさか護衛剣士殿に、名を覚えて頂けていたとは。
[焼き海老を受け取る相手は笑顔を見せていて、その表情もまた意外なものだった。
少しばかり肩の力を抜いて]
先の海老との戦いでも、活躍しておられましたよね?
あの――見事な太刀筋で。
[憧れめいた感情を込めつつ、そう言葉を掛ける。
そう言いつつ未だに顔と名が一致していないのが痛いところだが]
[彼に差し出した海老はお気に召して頂けたようだ>>152]
良かった。
[自分が何をしたわけでもないが、重責を担う彼の笑顔が見られて安堵したのであった*]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
はっ。お言葉痛み入ります。
[アデルの労い>>155を受け一礼する。
周囲の船員にも言葉は届き、異口同音の反応を示した。
その中で、こちらへ対して問いが向けられた。
他国の客人のことであり、緊張と共に居住まいを正す]
ラヴェンデル殿ですか。
中原の名家の出でありながら、海軍の、それも演習に参加されるという行動力に、侮れないものを感じました。
演習においても――客分でありながら、全力で当たると。
その言葉には本気を感じました。
[称賛の内に、相手への警戒を含めつつ言葉に出す。
ただの客や見物人ではない、という意志は十分に感じられた]
――それはそれとして。
[と、一度言葉を区切り、表情を緩める]
未知への純粋な興味と船への感心は、個人的には好ましく感じました。
機密に触れぬよう、という緊張はありましたが――
あれほどこの船の紹介を楽しく行えたことは、これまでなかったかもしれません。
[そう付け加えた言葉も、また偽らざる本音であった]
[会話が一段落したところで、焼き海老が姫の手に取られた>>156。
担当が密かに片手を握り、喜びを表したのは言うまでもない。
刺身を手にした方は肩を落としかけたが、姫の配慮に気付いて笑顔を見せた。
食中毒云々は、後に先輩調理担当から忠告が飛ぶことになる、かもしれない*]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
そんなことは……。
[護衛剣士>>171の言葉に少々恐縮を覚える。
たまたま機会が噛み合い、目に留まったのだろうと思えたから。
しかし続く言葉は、気分を高めるのに十分なもので]
はっ、この上ないお言葉です!
同僚たちにも伝えておきますよ、きっと励みになりますから!
[国最高の守り手を守る。
それは水軍兵たちにとって、またとない栄誉であった]
[冗談めかした目礼に笑みを浮かべたところで、聞こえたのは相手からの名乗り>>172]
――カムナ殿。
はい、こちらこそ、よろしくお願いします……!
[その名乗りが珍しいものとは知らなかったが、彼の名とともに、船員としての誇りがまた一つ胸に刻まれた*]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
はい。そう思います。
[アデル>>174の言葉に異議はなく、ひとつ首肯する。
重ねられた礼に深く一礼を返して、その場を辞した]
[そうして、自身も焼き海老にありついたり、休息の時を過ごしていたのだが――]
[船の周囲を取り囲む、無数の手>>180]
新手か……って、こいつは。
[船乗り一族なら誰でも、寝物語に聞いたことがある。
その対処法も連綿と受け継がれていたから、この状態を見るのは初めてであったが]
船幽霊!?
でもなんで桶を……!
[混乱したが、驚き固まる姫が視界に入って我に返った。
犯人捜しをしている場合ではない]
戦闘要員、幽霊の手にお帰り願え!
非戦闘員は全力で水汲み!
姫様のお召し物を濡らすなよ!!
[自分の命令権が及ぶ範囲で、船員たちに声を掛ける。
この状態の船幽霊に対抗するなど前例のないことであるから、発破を掛けるように姫の名を出した。
直接危害を加えられることは少ないだろうが、いざという時の守りは専門家に任せるべきだろう]
『して、オヌシは何をする気だね?』
こういう時のための金だらいだろ!
[かくてミヒャエルも、己に最適な道具を用意するのだった**]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
[護衛剣士が姫の前に立ち、船幽霊の腕を斬り飛ばす>>188のを視界の端に捉えた]
カムナ殿!
[彼がいれば、姫の安全に関しては問題ないだろう。
直接的な攻撃が少ないからか、護衛からも幾人かが排水や船幽霊の排除に回ってくる>>190]
有難い……!
今はとにかく手数勝負になるでしょうからね。
[船内は汲み上げられる水と汲み出される水で、せめぎ合いの様相を呈していた。
自身もまたそれに加わるため、肩上の精霊に指示を出す]
テツ、金だらいでとにかく汲み出しだ!
[すると磁力で操られた金だらいは、満杯に水を汲み上げては外に捨てるを繰り返し始めた。
地道だが人力でたらいを持ち上げるよりは、確実に早い。
無論水を直接操れる精霊師なら、その手段を取っているだろうが]
取れる手段で全力を出すのが、地味系精霊師の生き残り方、ってな!
[船幽霊からの妨害を警戒しつつも、ざばざばと水を汲み出していく**]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
……汲めてはいるが、いまいち勢いが足りないな。
[金だらいを操りつつ、独り言ちるのはそんな感想。
しばし奮闘していた所に、水を巻き込みつつ通り過ぎていくつむじ風が見えた>>203]
風で巻き上げる……そんな方法もあるのか。
[しかし、いまいち有効な手段ではなかったようで]
『水嵩が低いせいかもしれんな。
たらいで汲むのにも、床を引き摺り回すようにしないといかんだろう?』
ふむ……。
[言われてみると、現状では大きなたらいに水が溜まりきらず効率が悪い]
いっそ、船に水を入れられる前に受け止めてみるか……?
[空中で回収し、一杯になったら捨てる。
その方がたらいと自身の能力を活かせるのではないかと、試してみることにした*]
さっきよりはまし……なのか?
[これはこれで取りこぼしが多い気もしたが、ともかくやらないよりはましと続けることにした。
しかし幽霊の手も水を汲むばかりでなく、直接人に水を掛けたり、桶で殴るようなのもいるようだ。
今もたらいを叩いて引っくり返そうとでもいうのか、不自然に伸びてきた手があって]
――させるかっ!
[素早く手に取るのは腰の鉤縄。
回転運動をつけた先端を、船幽霊目掛けて投げる*]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
[手応えは予想以上にあった。
鉤縄は投げ方によっては複数を巻き込める武器であり、今回もついでとばかり船縁を薙ぐような軌道で投げたのだが。
複数の船幽霊の手が薙ぎ倒され、消えていくのが見えた]
よし、今ので結構手数を減らせたんじゃないか?
[意外と物理的手段も船幽霊に有効なんだろうか。
鉤縄を引き戻し、どちらに意識を集中させるべきか、と逡巡したところに影が差す]
うわっ――とお!?
[船幽霊の手が振り上げた桶に、既に水は入っていない。
それはそのまま、こちらの頭上へ向けて振り下ろされる。
残念ながら、桶を受け止められるような武器は手持ちになく]
[桶を受け止めたのは、水を捨てた直後で空になっていたたらいだった。
普段なら避ける一択だが、丁度いい"金属"があればそれを使うのがキタミ流だ]
でも……こいつ、結構しぶといな?
[金属との衝突で桶の形は多少歪んでいつものの、船幽霊も意地になったのか、鍔迫り合いのような状況になっていた]
『むうう……こんな形で力比べをする羽目になるとは』
砲弾や武器相手ならやったことあるだろ?
どうせだから、そのまま押し切ってやれよ。
[空いた両手で他の船幽霊に牽制の武器を投げつつ、精霊をけしかける]
なっ、負けた?
[正確には船幽霊の手が、不意に力を"抜いた"のだ。
それにより金だらいは桶から力点をずらされ、在らぬ方向に飛んで行ってしまった。
自由になった桶をヒラヒラと振る辺り、偶然ではなく意図的にやった上で、勝ち誇っているようにも見えた]
『いや、コヤツ、随分とやりよるわい』
くそっ、でもこのままじゃ済まさないぞ!
[鍔迫り合いに負けたからといって、見逃すつもりはない。
次なる武器を構えようとしたところで、不意に、天が光った>>224]
この光……姫様の!?
[天から降る無数の矢は、一瞬にして数多くの手を消し飛ばした。
それはミヒャエルの眼前の手も例外でなく]
やはり――すごいお方だ。
[次期女王に対する敬愛は当然として、武人としても。
期せずして救われる形になったことを思いながら、一度頭を垂れた*]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
[他方、船の柵の上を駆ける影があった>>226。
細い足場は熟練の水軍兵であっても、そうそう上に立とうと思うものではない。
だからその動きは、どこか意識に引っ掛かるものがあった。
或いは一列まとめて切り裂かれた船幽霊の腕を見て、かもしれないが]
海の兵士にもそうそう出来ない動きをされるとは。
――いや、負けてはいられないな、これは。
[二者とも対抗をするような存在ではないのだが、そこはそれ。
いつ止まるとも知れない船幽霊に対し、今は奮起が必要な時だった。
再び他の船員たちに交じって、対処に駆け回る*]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
[船内一丸となっての対処により、船幽霊は随分と数を減らしていた。
少なくとも沈没の危険はもうないだろう]
とはいえ、問題解決とはなってないんだよな。
[友軍もユウレン側も、行方不明の船が数隻出ているらしい。
精霊術等で連絡や探索は試みられているだろうが。
しかし、それへの対処より先に、やるべきことが出来たようだ]
あの声、ラヴェンデル殿か?
[海上から響いてくる声>>255は、聞き覚えのあるものだった。
デカブツと聞いて戦闘要員は対処のために動き出し、非戦闘員も排水作業から、常の持ち場へと戻っていった。
自身もまた、巨大生物を目視できる位置まで動く]
あれは……海坊主!
[船乗りであってもそうそう遭遇することのない怪異に、流石に息を呑む。
船員が何か言うまでもなく、護衛は姫を守るため動いているだろうか>>259]
――大波に警戒! 間違っても振り落とされるなよ!
あとは直接、殴りかかってくるかどうかだが……。
[既に遠距離攻撃が可能な者は、牽制の術を撃ち始めている。
あとは海坊主がどう動くか、だが**]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
[統制室からの指示>>272は、連絡員を通じ甲板上の船員へも伝えられていく。
程なく艦砲射撃の許可も下り、攻撃はより激しいものとなった]
でも……効いていないのか?
[力を削げてはいるだろうが、何より頑丈が取り柄の怪異だ。
時折起こされる大波には水や風の精霊師が対抗するものの、どうしたって砲の狙いはずらされるし、対処に手を取られることになる]
[そんな中、ヴィルベルヴィント側で動きがあった>>274]
ラヴェンデル殿?
[雷竜の動きが明らかに変化し、それに誘導されるように海坊主はヴィルベルヴィントに近付いていく]
何か、策があるのか?
[ヴィルベルヴィントから連携の要請はあっただろうか。
いずれにしろ、こちら側も静観するという選択肢はなく]
今は牽制に徹した方がいいのかもな。
それでも、少しでもあいつの体力を削らないと。
[海坊主が向こうの船に引き付けられているなら、その間に背中側に回って砲撃するのが有効だろうか]
[船が最適な位置を取る間に、こちらの元へ連絡員が回ってくる]
『砲撃方向に同盟軍の船が位置します。
キタミ航海士、例の術を』
わかってる!
『うむ、ワシもいけるぞ』
[肩上で精霊が、奮い立つように黒い砂鉄を震わせる。
ミヒャエルとテツが行うのは、精霊術による砲撃の方向制御、そして加速]
『撃て――っ!』
[砲撃命令の声を聞きながら、己の術に意識を集中させた]
[ヴィルベルヴィントの剣士の奮闘は、遠目に見えていた>>275。
如何なる手段を用いたのか、やがて海坊主は海の中へと沈んでいった。
激しく手を振り回しながら、であるが]
鎮まったのか……。
――あの人、大丈夫なんだろうか?
[最後、海坊主の腕に当たって、剣士が吹き飛ばされたように見えたから>>276。
体を張って妖魔を鎮めた彼に思うのは、体への心配と]
なんだか、借りを作ってしまったみたいな気分だな。
[自分にもっと力や機転があればと、密かにそんな悔しさも感じるのだった*]
― 水軍旗艦『八幡』・統制室 ―
[海坊主の怒りが海に伝わったか、沈む間際に再び船を大波が揺らした>>284]
――揺れるぞ! 警戒!
[とはいえ船員からすれば慣れた範囲の波であり、大きな混乱もなくやり過ごすと、すぐに状況把握や船の修復などの作業に動き始める]
……俺たちはいいが、姫は驚かれなかっただろうか。
[安全な場にいるだろうとは思いつつ、予想外に始まった海戦は姫に何を思わせただろうかと、船室方向をちらと見るのだった*]
― 水軍旗艦『八幡』・甲板 ―
[どうやら海面は完全に静かになったようで。
作業をしつつも上官からの指示を待っていると]
…………?
今の声は……。
[唐突に響いた、知らぬ女性の声>>#4。
聞こえたのは自分だけではなかったようで、皆不思議そうに周囲を見回す。
そして精霊の気配を辿れる者なら、その正体にも気付いたか]
『水の精霊……かの』
[呟く磁鉄精霊の声にはどこか畏怖があった。
水霊は別の誰かと対話しているようで、今は見守るしかない*]
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