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ふぁっ?!
[奥の方から聞こえてきた声にこちらも驚いて振り返る。
そこへ飛んできたコウモリの体当たりを喰らった。]
…あたっ。
[余所見厳禁**]
― 図書館 ―
[冷静になれば、コウモリなんて敵じゃあない。
飛びかかってくるやつに狙いを定めて銀鎖を叩きつければ、黒い煙を吹いて落ち、あっというまに燃え尽きたような灰になる。
やはり、吸血鬼の眷属なのだ。
残り五匹を仕留めたところで、最後の一匹がキーキー鳴きながら高く飛び、窓から外へと逃げていった。
逃げてもらうのは当初の予定通り、だけれども、よく考えるとなにかマズい気もする。]
当面はオーケー、と。
そっちは大丈夫かー?
[先ほどの声以降静かになっていたから多分大丈夫だと思うし、ダメだったらもう手遅れだろうな。なんて考えながら声が聞こえた方向に歩いて行き、書架の向こうに顔を出す。]
おおっと。
[無事なおっさんを見つけた、と同時に別の人間も見つけてちょっと驚いた。]
先客さん?
ども。
[軽い挨拶を飛ばしながら、相手を観察する。
コウモリに追われてたおっさんはともかく、妙に落ち着いてみえる少女には若干の警戒を抱いていた。*]
[つい警戒が出過ぎて、微妙な雰囲気になってしまった。
まだまだ未熟か。
おまけに、なんかおっさんににこやかされた。何でだ。]
え?
ダルのおっさん、出てく気?
あーー。じゃ、これ持ってなよ。
無いよりはマシかもだから。
[ツレを探しに行くなんていうおっさんを引き留めるべきか悩んだが、ここに立てこもるのもちょっと危ない。
考えた末に、ダーツを一本差し出した。
聖銀製ではないけれど、弱い聖別を掛けてもらっている。
突き刺せば吸血鬼だってひるませる位はできるはず。]
あんたもどうぞ?
[もう一本のダーツは、少女に差し出してみた。
仮に吸血鬼の仲間が持てば、熱い湯に触ったくらいの反応があるんじゃないかなくらいの見込みもある。
*]
まいいや。
お近づきにはなりたくないけど、なったらチャンスだからねー。
ぶすっといきなよ。ぶすっと。
[噛まれたらチャンス!と親指を立てておいた。*]
[瓦礫のつぶてが止み、続けての攻撃もないとみて身体を起こす。]
なんだったんだ?流れ弾かな。
俺は平気だけど姉ちゃんは怪我…
[していないか、と尋ねかけたところで、はたはたと赤色が床に散った。
見れば、自分の左腕が切れて、血が滴っている。
おそらく、飛んできた木片が当たったのだろう。]
い、つつ…っ
まずいな、これ…。
[気づいたと同時に痛みが主張してくる。
咄嗟に傷口を押さえた手の下から、なおも血が零れた。**]
あ、はは。大丈夫だってこれくらい。
見た目は派手だけど、そんなに深くないから。
[油汗かきながら言うことじゃないけれど、見栄を張りたくなることもある。
女の子の前なら特にね。
探してきてくれたタオルケットにナイフを当てて細く裂き、包帯代わりにぐるぐる巻き付ければなんとかなるだろう。
血が止まるまで暫く掛かりそうだけれど。]
でも、こいつはちょっとマズいな。
俺はここから離れた方が良さそうだ。
吸血鬼って血の匂いに敏感だからさ。
一緒にいたら姉ちゃんまで見つかっちまう。
[よっ、と立ち上がり、扉の方へ顔を向ける。
大丈夫、入り口あたりは別に被害もなさそうだ。*]
[もう一度腕に巻いた布の具合を確かめて、荷物を右肩に背負い直す。]
それじゃ、俺、行くから。
姉ちゃんも、ひょっとしたら場所を変えた方がいいかも。
ここ、けっこう汚れちゃったから。
[図書館の床には、そこそこの血痕がついてしまっている。
これに吸血鬼が反応するかわからないけれど、用心はした方が良い。
と忠告だけして去るつもりだったけれど、なんだか彼女の様子が気になったので言葉を続けた。]
そんな顔しないでいいって。
吸血鬼狩るのが俺のお仕事で、姉ちゃんを守るのはそのおまけっていうかオプションみたいなものだからさ。
それにさ……。
[一瞬真剣な目をして、崩れた天井の穴を見る。]
俺があの吸血鬼を狩ったから、
あいつの親が怒って、街を襲ったんだとしたら、
今の状況って、俺にも責任あるのかなーって思うしさ。
……って、いやいや。
俺、頼まれた仕事しただけだもんねー。
[ないないない、と右手をぱたぱた顔の前で振る。]
けど、いちおーなんとかするよう頑張ってはみるよ。
期待してて。
[なんて、一世一代の見得を切ってみた。*]
あー。うん。あいつだよ。
あんなんでも吸血鬼だし、お供もつれてそうだし、
まー、なんとかなるとおもいたいけど。
とりあえず、どこか奥の方に逃げてて。
なるべく窓のないところがいい。
[姉ちゃんに囁いてから、視界にちらつく黒いものに向かってダーツを投げる。
逃がしたコウモリだろうか。コウモリの区別なんてつかないけど。]
[彼女の答えもダーツの行方も見ずに駆けだした。
背の高い書架の後ろに飛び込む。
天井の穴からは射線が通らず、扉は狙えるところ。
かち、とボウガンを操作して準備する。
今度は、上下二段の連装式だ。]
よう、色男!
パパに泣きついて、助けてもらったんだって?
女の尻追いかけるのをやめて、覗き魔に転向かい?
[ボウガンを両手で構えながら、挑発する。*]
おい!腰抜け!
[必死になって狼たちの攻撃をしのぎながら声を張る。]
やっぱり女しか襲えないチキン野郎かよ!
そんなだからあっさり狩られるんだよ、この軟弱吸血鬼。
狩人なんか、怖くて近づけもしないんだろ?
[立て続けに悪口をまくし立てる。
なんとか注意をこちらに向けたいところだ。*]
あの、クソ、吸血鬼がっ!
[奥に行った吸血鬼は、こちらの方を見ようともしない。
なんとか狼を片付けて、助けに行かないと。
とはいえ狼たちの攻撃は激しく、正直なところ逃げ続けるだけで精一杯だ。
頭も良いのか、ボウガンを向けただけですぐ躱される。
何度かダーツも投げてみたけれど、当たらなかった。
まずい。
これはジリ貧というやつだ。]
[暫くそうして逃げ続けていると、妙なことに気がつく。
狼たちの攻撃が手や足の先に集中していて、首や胴などの致命的な箇所には向かないのだ。
そういえばあの吸血鬼が、手足を引き裂け、とか言っていたな。
狼がそれを守っているのだとしたら、チャンスはある。]
見てろよ、この犬ッコロども。
[荷物に手を突っ込んで中のものを掴む。
そのとき、狼の一頭に足を噛みつかれ、バランスを崩して倒れ込んだ。*]
[書架の向こうで交わされる会話は、耳に届かない。
悲鳴も聞こえないから無事だと信じたいけれど、嫌な予感は積み重なる。
足に噛みついてきた狼の首筋に、冷静に太矢を撃ち込む。
弱い聖別しかもらってないから、これだけじゃ倒しきれない。
けれども、一度引かせる役には立つ。
寄ってたかって襲ってくる残りの狼たちも、意図がわかればどこを狙ってくるかが見える。
牙や爪を何度か受けながらも、都度、太矢やダーツで打ち払う。
だが狼の毛皮は厚く、なかなか打撃が通らない。
やはり、柔らかな場所を直接狙うしかない。]
[繰り返す攻防のただ中に、その一瞬が見えた。
口が裂けるほどに開き食らいついてくる狼の口に、自ら腕を突き入れる。
閉じられる牙が腕に食い込み、激痛が肩へ駆け上ったが、構わず引き金を引く。
直後、狼の悲鳴が上がった。**]
― 図書館 ―
はぁ……ッ 、はぁ…、
[自分の息が耳につく。
赤く染まった手足は、痛いと熱いを通り越して、冷えてきた。
良くない兆候だ。
狼を倒せたのは一頭。
それも、腕一本に食いつかせた末のことだ。
残り三頭をどうするか。
……思考が霞む。]
[周囲を囲む三頭の狼は、じりじりと隙を窺ってはいても、飛びかかって来ない。
右手に握った武器を警戒している。
強力なバネの力で白木の杭を打ち込む、対吸血鬼専用の決戦武器。矢が刺さったくらいでは動じない狼の毛皮も、問答無用でぶち抜く。
威力は、口の中に喰らって灰になった一頭が証明済み。
ただし、ボウガンの方は腰に戻していた。
あれは両手を使わないと再装填できない。
遠距離攻撃の手段がない今は、狼とにらみ合う他無い。]
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