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[ 南東の物見櫓から狼煙が上がったのは、凡そ予測通りのタイミングだった。>>169 ]
やはり船か。
[ 陸を通っての速度で、到達できる距離ではない。そもそも王国軍はゼファーよりも海戦に慣れている上、保有する軍船も多いのだ。その利を生かさぬわけもない。 ]
陸地にも兵を下ろしたと見て間違いない。トルーン方面に300の兵を差し向け迎え撃て。
[ 敵の兵数はまだ把握できていないが、おそらく数倍は差があるだろうという予測はつく。
だが、寡兵で大軍を迎え撃つ事こそがゼファーの重装歩兵の真骨頂だ。下す命に躊躇いはない。 ]
海上には、私が先行する。
残りの船は、密集せず散開して行動せよと、各船に伝令を送れ。
[ 組織だった海戦を行えば、慣れぬゼファーに勝機は薄い。故に、男は、海戦を別の形に変えようと動き出す。* ]
[ どう見ても、あちらも戦場の只中であろうというタイミングで、飛んできたコエに、思わず苦笑が浮かぶ ]
ああ。覚えているとも。
[ けれど返すコエに動揺はなく。 ]
お前が、どれほど馬鹿なのか、あれ程思い知った時はないからな。
[ 実際に、戻ってきたカナンにもそう告げた。
自分の顔など自分では見えていなかったが、怒りながら泣くなと、怒らせた当人に指摘され ]
『泣いてなどいない!!』
[ と、ぶち切れて、殴りかかったのは...若気の至りと思いたいところだ。
実の所、今も同じことが起これば、どうなるかは自信がないが。 ]
...今度は俺が、遭難するかもしれんがな。
[ ふい、と、落としたコエは、弱音ではない、どこか悪戯めいた響きを含む。 ]
― トルーン方面 ―
[ 拠点から押し出した重装歩兵300は、整然と歩を進め、やがて敵軍の姿を認めれば、隙の無い密集隊形を取る。
盾を並べて自らと隣の兵までも守りを固めつつ、鉄の槍を並べて進むそれは、鉄の皮と無数の鉄の棘を持つ、一体の巨大な獣のようにも見えるだろう。* ]
嵐相手に勝ち負けを主張するな。
そういうところが...まあ、お前らしいが。
[ 呆れたコエは、結局最後は吐息に紛れる。 ]
― トルーン沿岸 ―
[ 他の荷を下ろし油と兵だけを詰め込んだ軍船は、北寄りの風を掴んで常より船足速く南下して、やがて遠目に迫る王国軍の船団を見つける。>>175 ]
弓兵は火矢を用意して待機、射程に入ればあちらからも火矢が来るぞ、直接食らうような間抜けはいらん、自分で海に飛び込め。
消火は帆柱周りだけでいい。
盾構え!
[ こちらの船足が速いせいか、向こうの漕ぎ手の頑張り故か、遠い船影はみるみるうちに大きくなる。 ]
赤毛...?
[ 旗艦と思しい船に、先にも思い出した青年と同じ色の髪を見たように思い、目を細める。 ]
まさか、本当に、彼なのか?
[ 信じがたい筈なのに、どこか自然に胸に落ちる...偶然という名の、必然。 ]
これは、重畳、というところか。
[ 男の唇に、めったに浮かばぬ笑みが刻まれる* ]
ああ、船の上だ。
来るに決まっている。
お前だってそう思ったから、俺に留守番させたんだろう?
[ 戦の中で交わすコエは、常より更に気安く少年の頃と殆ど変わらぬ口調になる。 ]
どうやら、王国軍の新しい頭がこちらに来ている。
覚えているか?赤毛の王弟殿下...
一筋縄ではいかなさそうだが、彼を落とせばこの戦も長引かずに済む。*
― トルーン方面 ― >>191
[ 打ち鳴らされる盾の音にも歩兵が気をとられる様子はない。しかし投網を持つ敵兵が回り込む動きを見せると、その姿を確かめるように、じりじりと鉄の獣は身を回転させた。そして、包囲が完成する直前、最も守りが薄いと、最右翼の指揮官が判断した方向へ向けて、重い地響きを立てて、獣の牙たる鉄の槍が襲いかかる。 ]
[ 鉄槍の恐怖に負けぬ王国軍の勇士達が仲間を救おうと石を投げ、網を槍衾に絡め、縄を引いて足をかけ奮闘すれば、盾を落とし、槍を手放す兵もある。
やがては密集隊形の一部が崩れる時も来るのだが、そうなれば、槍や盾が無くとも、鍛え抜かれた肉体そのものを武器として、暴れまわる個々の獣と再び対峙することになる。* ]
― 東海岸 ―
[ 指揮官たる王弟の命は、鏡によって迅速に船団全体に伝わり>>187近づくゼファーの軍船に、やがて火の雨が降り注ぐ。 ]
船足を緩めるな!全速前進!!
[ 男を守るように取り囲んだ歩兵達の鉄の盾のおかげで火矢をまともに受けることは無かったが、甲板のあちこちで煙と炎がゆらめいている。 ]
さすがに、容赦がないな。
[ 熱気に晒され、煙に燻された男の顔は煤で汚れ、一部は火傷を負ったのか赤みを帯びている。
しかし、その唇には笑みが浮かんだまま 。
炎に包まれ燃え上がりつつある軍船は、まるで王弟の座す旗艦に、決死の特攻を仕掛けるように、王国船団の只中に突っ込んでいく。**]
やはり、彼か。
[ はっきりと目視出来る位置まで近づけば、燃えるような赤い髪に神官めいた布を被る、一際目立つ姿は見間違えようもない。>>212
詩人が見たなら華炎纏う美しき闘神とでも例えるだろうか?
生憎と、男は詩心とは縁遠く、深い信仰も持ち合わせてはいなかったけれど、それでも、一瞬、息を飲むほどに、それは戦場の中に異なる光の花を咲かせたような、現実離れした美しさだった。 ]
― 回想 ―
政敵を、余興のどさくさに紛れて暗殺しようとする野心家だと、王国に喧伝でもしたいのか?
[ そんなものは叔父一人で沢山だ。という本音はコエにも乗せなかったが、恐らく、カナンには伝わっただろう。 ]
― 回想 ―
[ かつての新元首主催の宴の最中、飛び交う盃に王国の使者が疑問を口にしたのは>>235ある意味至極当然の成り行きだった。カナンがその問いに何を思ったかは、コエで問わずとも丸分かりだったが、常の通り素知らぬ顔で立ち上がり、王の代理人に、軽く頭を下げた。]
どうぞ、ご遠慮なく。
[ 一瞬交わした視線に、覚えたのは、奇妙な安堵。
これは危険な男だ。だからこそ、今は決して的を外しはしないだろう、と。* ]
[ 海から、王国兵が、軍船に取り付き、舵や船体を破壊せんとして居ることを見つけた漕ぎ手達は、櫂を槍に持ち替えて、彼らを船から突き落とそうと奮戦する。>>213結果として、炎に、殆ど帆を破られ、漕ぎ手を減らした軍船の船足は鈍ることになっていた。 ]
― 回想 ―
[ この酒席には、もう一人の元首である叔父も招かれて同席していたが、年若い者が集まる新元首からは少し離れて、長老達と歓談していた。
それでも、成り行きの不穏さにざわめくこちらの様子に気づいていないとは思えなかったが、彼が口を挟む気配はない。
甥の無事を確信して...ではなく、うっかり王国の使者が手を滑らせてでもくれれば面倒が減るとでも考えているだろうとは、男と、恐らくはカナンだけが知る話だ。 ]
[ 手慣れた様子で鋭いナイフを握った赤毛の麗人の手が動くと同時>>260男は手にしていた酒杯を、胸の前へと、掬い上げるように動かす。
カシャン、と、酒をかき混ぜるような音が鳴り、男はそのまま、乾杯の仕草で酒杯をマドラーよろしく刺さっているナイフごと眼前に掲げた。 ]
ギデオン・エルギーノス殿下の御息災を祝して。
[ そのまま、鉄の味のする酒を、一息に飲み干す。冷たく冴えた青灰の瞳の中には、何の感情も浮かんではいなかったが、丁寧な一礼は、まぎれもなく、己に刃を放った男への敬意を表していた。** ]
/*
一連の回想な、ほんと君ら、何遊んでくれてんねん、と俺は言いたい。とても言いたい。
これもう既にフラグだろう?
― 回想 ―
[ どうやら余興は成功を見たようで、和やかな交歓の様子に戻った、新元首と王国の使者の間で、ダシにされた男を更に餌にするような会話が繰り広げられるのを>>278男は眉ひとつ動かさずに聞いていた。 ]
いずれ機会があれば。
[ 使節として訪問するという意味なのか、王国へ鞍替えするという意味なのか、微妙に濁して口にしたのは、決して意趣返しではない......多分。* ]
― 回想 ―
彼が虎だというのは同意するが、お前は他国からの評判を少しは気にしろ。
たいした相手でなかろうが、お前が侮られるのは、俺が侮られるのと同じだ。
[ お前と同等に戦えるのは俺だけなのだから、と、続ける前に、落ちる一拍の間......声音を僅かに変え、落とされた言葉に、小さく息を吐いた。 ]
奢るなら肝を冷やしたお前の信奉者達にしろ。俺は、あの程度の事で、お前に借りを作られる程、惰弱じゃない。
[ 殊更に冷めた声を返してから、小さく笑う。 ]
お前が自分を的にと言い出していたら、その場で殴り倒してやったがな。
[ 結局はそういうことだ。と、言葉の裏の想いが、その響きの柔らかさに乗るのは無意識のうち* ]
― 過去 ―
お前はどうしてそう、落ち着きがないんだ。それで先輩面なぞ、良く出来たな?
[ 危険にも一切怯まぬカナンは怪我も多く、いつの間にか、その度に説教めいた言葉を吐きながら応急手当てをするのは男の役目のようになっていた。 ]
お前を倒すのは俺なんだ、くだらん怪我で命を落とされては困る。
[ 付け加える文句は、少々苦しい言い訳に近くなっていたものの、本音であることは間違いない。 ]
[ 苦しくはあるが、楽しくもあった、と、振り返れば思う、その日々が様相を変えたのは、父...バルタ・ザールが戦死し、母が後を追うように亡くなった時だ。
本来であれば、成人までの次期当主の後見となる筈だった母を失い、叔父が当主代理として、その権を握った。 ]
「私がお前の母を毒殺したなどと噂する者もいるが、女を手に掛けるほど恥知らずではない。無論、お前が望むなら、いつでも当主の座は譲ろう」
[ 父母の葬儀の場で、そう告げてきた叔父に、男は「それには及びません」と答えた。 ]
私は未だ若輩で未熟です。いずれ妻を娶り、当主としての責を果たせるようになったと、叔父上が認めてくださる時が来るまで、研鑽に励みます。
[ そう答えなければ、おそらく自分は成人するまで生きられない。
それを判断できてしまうだけの知恵が、男にはあったのだ。 ]
[ その時から、表情を変えることも稀になった男が、顔色を変えたのは、カナンが遭難したと聞いた時、そして、新元首の候補としてカナンと男の名が並べて噂されるようになった頃、叔父からカナンへの激励の酒を渡すようにと言付けられた時だ。 ]
カナン、くれぐれも叔父上には気を許すな。
[ 自分はカナンには疎まれているから、贈答などは渡しても突き返されるのがオチだ、と、毒入りの酒は叔父に返したが、それで諦める相手ではない、と、カナンに改めて注意を促したのも記憶に新しい。 ]
[ わざわざ芝居掛かった毒味を始めたのもその頃だ。いつ叔父に毒殺されるか知れない、と、毒に体を慣らして来たことが、こんな形で役立つとは思わなかったが、それを望外の幸運だと、男が思っているのは確かだった。** ]
― 東海岸 ―
[ 炎の中、視線を敵船に向けた男は、かつて感じた安堵とは似て非なる、明確な危険の予感に目を細める。
果たして、しなやかなる美神の手から放たれた黒曜の矢は、過たず男の喉を貫く軌道で熱風を裂いた。>>216 ]
『閣下!!』
退け!
[ 身を投げ出し庇おうとした兵を、槍の一振りで跳ね飛ばし、同時に身に届く寸前に鉄の盾で矢を払う。
石の鏃は鉄に砕かれながら、破片となって男の眼前に飛び散り、その一片が、兜の下の額を掠めて小さな切り傷を作る。 ]
......っ!
[ その傷から感じる熱と痺れに、男は顔を顰め、低く喉を震わせて笑った。 ]
毒か...まったくもって、油断ならないな。
[ 常ならぬ痛みは感じる、けれど、男の体も視線も揺るがない。 ]
矢を放て!!
[ 男の号令に従って、弓兵が番える矢は鉄の鏃、そしてその軸には油をたっぷり染み込ませた布が幾重にも巻き付けられている。 ]
火樽を投げろ!
[ 続いての命は、油入りの樽を、木材を支柱とした羽板の一方に乗せて、反対の端を叩く事で、敵船向かって投擲するる合図。
樽の箍は緩めてあり、上手く届けば、中味を一面にぶちまけ、後を追って放たれる火矢の炎を、先に撃ち込まれた油布付きの矢との相乗で拡げる算段。
矢数を費やすことの出来ないゼファーが、効率的に、敵船に炎の返礼をする為の秘策だが、十分に近付けたとは言いがたい距離だ。ゼファー兵の鍛えた腕をもってしても、どれ程の数が届くかは分からない。 ]
[ その間にも、男を狙った矢の雨は、燃える軍船に降り注ぎ続けていたが、その殆どは鉄の壁、或いは肉体そのものまで壁として立ち塞がる歩兵によって阻まれる。 ]
小舟を下ろせ!
[ 自らの代わりに矢を受けた歩兵の数が50を超えた頃、漸く投げる樽が底をついたと見ると、男はすでに沈みゆくのみの軍船からの離脱を兵達に命ずる。
降りたところで、王国兵との交戦になる可能性も高いが、それならば、一兵でも多く敵兵を倒そうと本能で動くのがゼファーの兵士だ。問題はない。 ]
[ 叶うなら、燃える軍船を王国軍の船にぶつけて白兵戦に持ち込み、王弟の首まで狙いたい所だったが、数の差ばかりではない敵のしぶとさ、搦め手と力技を縦横に使う多様な作戦の巧みさに、その意図は挫かれた形だ。 ]
...だが、これで終わりじゃない。
[ ずきずきと、毒受けた額の傷が絶え間ない痛みと熱を齎すが、男は、最後まで甲板の上に立っていた。
軍船一艘は完全に犠牲にした形だが、未だ後陣に三艘の船は、ほぼ無傷で残る。味方の屍を文字通り乗り越えてでも、戦い続けるのがゼファーの戦士だ。 ]
火でも、毒でも、俺は止められないぞ、「慣れて」いるからな。
[ 二十数年、誰より熱い炎と競い合い、身内の送り込む毒を躱してきたのだから、と。そんな呟きは、敵将に届きはしないだろうが ]
[ ふと、思い立って、男は懐深く隠すように持つ黒曜石の笛を引き出した。
男が奏でられる曲は一つきり、ゼファーでも祭りの折には演奏される戦神を讃える歌の一節だけだ。
以前の宴の折にも、その曲だけは披露されたから、もしかすると王弟も覚えているかもしれない。 ]
ふ...
[ 覚えていたからといって、何がどうなるわけでもない。
けれど、何故か、そうしたいと、求める心のまま、男は黒く光る石笛を炎の只中で吹き鳴らし、やがて海へと身を投じた** ]
カナン、お前を出し抜き損ねたようだ。
まだ、勝負はついていない、と、思いたい所だが。やはり、あの虎は強いな。
[ 炎揺れる海から、届くコエは、僅かに沈む。弱音ともとれる内容は、この男には珍しいものだったろう。
耐性があるとはいえ、身に回った毒が、いくらか気を弱らせているのかもしれない。 ]
だが、お前を無敵にするつもりはない。
お前が、戻るまでには片付けておくさ。
[ けれど、最後の宣は、常の如く...いや、常より明るい調子で告げられた。
だから必ず戻れ、とは、やはり言葉にしないまま。** ]
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セルウィンと、ミヒャエルが、めっかわだなーと思いつつ、二人とも落ちる予定なんだなーと、悲しむそんな夜。
んで、すげーなカレルwここで敵の大将口説きにいくかー、そうかー。
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