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[下がる、という言葉に、滲むのは安堵の気配]
そっか、なら、いい。
……無理すんなよ。
[言ってる自分は全力で無茶している、というのは棚に上げてそう告げて]
[背後を突いた敵軍が何者なのか。
その時点ではまだ、"動いている"とまでしか把握できていなかった]
[ただ、逃げ道を探すように振り向いた視線の先。
軽々と飛び上がり屋根上に立ったシルエット>>81に、思い出すものがあった。
学園の中で一際目を引いていた、ひらひらできらきらのその姿]
ドロシー……ちゃん……?
[思わずそう名を呼んで、見詰めてしまっていた。
"彼"の立場が何であるのか、もう明白であるというのに*]
って、後ろから!?
[齎された報せに、上ずった声が上がる]
一体、どこから入って来たんだよ、それ……!
[よもや水中からとは思いも寄らず。
また、それを率いる者が誰かも、今は気づく余地はなく。
この状況をどうするべきか。
今はそちらに意識が向くものの、すぐに答えは見つからない]
わかんない……でも……。
[どこから、の問いには首を横に振るしかない。
ただ一つ、自分が確かに見たものがあった]
ドロシーちゃんだった。
[彼も知っているはずの――短期間とはいえ、この学園に在籍していた人物の名を口にする]
逃げよう、リト……?
[恐らくロヴィン先生が告げているであろう言葉を、自分からも伝える。
1年前のあの時と同じように、自分はそれをしなければいけない]
もう、十分時間は稼いだから……きっと……。
[背後から来た一団に、完全に挟まれる前に。
彼に動いてもらわなければと、必死に念じる*]
[ロヴィンの懸念>>86通り、リヒャルトを置いては下がれないまま、互いだけに通じる声を彼に向ける。
一方で視線は、彼らより後方に位置していたからだろうか、既に認識できる距離にあったドロシーに向けられていた。
そちらからもじりじりと距離を取りつつ、使うべき呪歌を思案する*]
― 回想 ―
おとーさん!
わたしも魔法、使えた!
[不思議な"声"を聞いたあの日、喜び勇んで父に報告したことを覚えている]
[父親は魔導師で、魔法の力で人々を災害から守ったり、街の便利な仕組みを作っている人だと聞かされていた。
そんな父が小さい頃からの憧れで、ずっと同じような力を使いたいと願っていた。
それが特別な力だということも、同時に聞かされていたけれど]
[だからその"声"が兆しなのではないかと、拙い言葉で父に伝えようとしたのだけれど]
『残念だけど、それは魔法とは違うものだよ』
[優しく頭を撫でて、父はそう言った]
『けれどきっと、魔法よりずっと大事な力だ。
だからその力と相手との縁を、大切にしなさい』
[本当の魔法の力が確認できたのは、それからもう少し大きくなってからだった。
"声"の相手は先んじて魔法を使えるようになっていて、色々あって今は学園にいるらしかった。
自分は魔法の力をどう伸ばすか――例えば父の伝手で専門的な魔法を学ぶなんて道も、自分の前にはあったのだけれど]
――うん。
いつか魔法が使えるってわかったら、絶対に行くよ。
[そんな約束>>59が胸の内にあったから、父親に頭を下げて学園に入りたいことを告げた。
勿論、より高度で世の役に立つ魔法を学びたいというのも、嘘ではなかったけれど――]
― 5年前/ロンリコ湖畔 ―
[自分の名を呼ぶ声>>60がして、はっと顔を上げた。
対岸は遠く、顔を知らない相手を見分ける術もないのだけれど――確かに、そこに居る、と感じられた。
いつもより弾んだ響きに、こちらも緊張より高揚が上回る]
今からそっち、行くね……!
[声と共に手を振った後、大きく息を吸い込んだ]
天を翔けるもの 吹き渡る風よ
我が身を運べ 眼差し導くままに――!
[父に教わった少し古い呪歌で、己が身を対岸へ飛ばす]
[――ところで、呪歌の発現には抑揚も重要な要素となる。
思いのままに逸るテンポで歌い切れば――]
って……きゃあっ!?
[予想外に高い軌道で、少女の身は対岸へと飛んでいった*]
……ドロシー……って。
いや、あいつなら何やっても不思議ないけど。
[どこから、という疑問に答えが得られるとは思ってはいなかった。
ただ、告げられた名――忘れたくとも忘れられないそれは、思わず、こんな呟きを落とさせる。
続けて紡がれた願い。
答えるには少し、間が開いた]
…………ん。
わかっ、た。
― 5年前/魔法学園都市 ―
[魔法の飛翔力は予想外に強く、体は対岸よりもっと先の、どこかの建物へ向けて飛んでいく]
いやっ――
[制動のための呪歌を歌い直すとか、そういう考えも浮かばぬまま、衝撃に耐えるために身を縮めて。
しかし激突するはずだった身に受けたのは、予想外にやわらかな衝撃だった>>103]
あ……。
[どうやら、受け止めてもらえたらしい。
恥じらいや申し訳なさもありつつそろそろと目を開くと、自分より少し年上と見える少年の顔が間近にあった>>104]
は、い……。
[名を――限られた人しか知らぬ愛称を呼ばれて、少しぽかんとした顔をしながら頷く]
フレデリカ、です。
それじゃ、あなたが……リト……?
[お礼とか色々をすっ飛ばしたまま、こちらからも思わず確かめていた]
― 現在/魔法学園都市 ―
[投石が城壁へ打ち付けられる音が響き>>89、説得に応じたリヒャルトはこちら側へ飛んでくるようだった>>101。
しかしこの状況で、自身はつい名を呼んでしまった相手――今目の合った相手>>118から、視線を外せずにいる]
う、ん……。
[懐かしい、と言う声は本当に喜んでいるように聞こえた。
けれどそれで素直に笑顔を返せるはずもなく、強張った顔を向けてじり、と一歩を引いた]
私は……これでいいの。
今はおしゃれよりも、やりたいことがあるから。
[入学して間もなく目にした"彼"のことは、強く印象に残っている。
その華やかさに惹かれて思わず声を掛けて、男の子だとわかってからもどこか憧れのような気持ちがあって。
髪のことを褒められた時も、素直に嬉しいと思った]
[その服飾費の出所や、その他諸々の所業を知ってからは、そんな見方も変わってしまったけれど]
それは……出来ないよ。
[ティータイムのお誘いに、首を大きく横に振る]
私、いかなきゃ……みんなのところに。
[また一歩を後退しながら、息を吸う]
天より降り注ぐもの 地を固める雨水よ
其に願うは縛りの力 彼の者を地へ繋ぎ止めよ――!
[紡いだのは粘性の雨を降らせ、相手の動きを鈍らせるための呪歌。
真っ当にやり合う心算はなく、すぐにも離脱する体勢であることは相手にも見て取れるか**]
― 学園都市 ―
それは……っ!
[主に教員たちが、前線に出ていったのは知っている。
それでも生徒たちの多くは脱出に成功したはずと。
反論の言葉は飲み込んだまま、ドロシー>>139への呪歌を唱えた]
[足止め程度の効果は期待したかったが、相手の対処は早かった。
振り回す上着を傘代わりにして、全身への被害を避けている>>141。
お褒めの言葉に返すだけの余裕はないけれど、ただ真っ直ぐな眼差しを相手に向け]
私は――
[次に唱えるべき呪歌のことは、脳裏に思い描いていた。
だからそれを為そうと開いた口に、予想もしなかったものが飛び込んでくる>>142]
――――!!
[自らが放った魔法の粘液だった。
顔全面に張り付いたそれを咄嗟に拭いはするが、動きが止まるのは避けられない]
[よく知る声が、耳とそれ以外の両方に届いたのは、その時のこと>>138]
リト……!
[声は出せない。
だからこそ胸中にて強く、その名を呼んでいた*]
― 5年前/魔法学園都市 ―
[ようやく会えた、その言葉と、満面の笑み>>136に]
はい……!
[こちらも同じ表情を浮かべ、たのだけれど]
って、ちょ、リト……!?
[まるで抱き締められているような体勢に気付いて真っ赤になる。
勢いで同じことをしかけた手は、慌てて引っ込めた]
あ、あの、もう大丈夫ですから……。
[周囲を気にするように視線を彷徨わせつつ、そっと身を離そうとする*]
[もちろん、その動きは拒絶などではなく]
――助けてくれて、ありがとう。
[この状況でも、言いそびれたその言葉を伝えられたのは、絆持つものの特権であったかもしれない*]
……ん、どういたしまして。
届いて、よかった。
[交わしなれた声で告げられる、感謝の言葉。
それに返す声音には、はっきりそれとわかる安堵が滲んでいた。**]
― 対ドロシー ―
[雨雲はドロシーの周囲にも広がってはいたが、彼の率いる兵については視認していなかったこともあり、狙って巻き込むことは出来なかった。
動きを止めていたらしい彼らが、ドロシーの命令に従い足場を作る>>151]
…………!
[魔法が使えぬなら肉体をも踏み台にする。
その様に抱く感情は驚愕に近いが、黙って見ているわけにはいかない。
こちらに迫る様子に、咄嗟に喉を守るように両腕を交差させ、地を蹴って後方に飛ぼうとする。
肉体強化したドロシーから見れば、それはあまりに緩慢な動作であっただろう*]
― 5年前/魔法学園都市 ―
[どぎまぎするこちらに対し、リヒャルトはまるで理解していないような表情を向けていた>>152。
もー、と怒りたい気分だったが、この状況でそれをやれば更に墓穴を深くする。
それに、と、下を見下ろせば少しだけ頭が冷えた。
リヒャルトの魔法がしっかり支えてくれているとはいえ、危険な位置にいることに変わりはない]
はい……。
よろしく、お願いします。
[大人しく身を預けると、あとはリヒャルトが魔法を操るのに任せた]
[対岸についた後は歓迎の言葉と同時に、慣れない魔法を使う時の心得についてもたっぷり聞かされた。
リヒャルトみたいな無茶はしちゃ駄目、なんて言には、苦笑を浮かべるしかなかったけれど**]
― 回想/1年前 ―
[戦いの仕方を教えて欲しい。
そうロヴィンに志願したのは、首都陥落やそれに伴う避難民受け入れが一段落した頃合いだった。
家族が戦火に巻き込まれた者も多く、学園内の空気は重苦しい悲しみに満ちていた。
ロヴィンもまた、家族を亡くした一人だとは、囁かれる噂の中にもあったけれど]
――はい。
戦いに向いてないことは、自分でもわかっています。
[それは才能というより、心構えの問題だった。
フレデリカが戦闘系魔法をほとんど学んでいないことは、その習熟度を知る立場であれば知れたことだろう]
でも……このまま何もしないでいることは、どうしても出来なくて。
誰かが戦わなきゃいけない時に、そこに居る資格すらないのは――やっぱり、嫌なんです。
[言いながら、体側にある両手をぎゅ、と握る。
その胸中にあるのが誰の姿なのかは、もう既に知られたことかもしれない]
強く――は、なれないかもしれないけど。
せめて、背中を向けないでいられる自分で、いたい……。
[こんな時に何を、と思われるかもしれない。
それでも、状況に流されるばかりの自分より、一歩でも前に進みたかった*]
― 対ドロシー ―
[こちらの姿にドロシーは何を思うのか。
獲物を見る目は炯々と輝いているように見えた>>169]
――や、
[ようやく開いた口だが、歌を紡ぐ暇があるはずもなく]
やめ、……
[代わりに零れたのは懇願めいた声。
喉が潰れる痛みはなかったが、それを幸いと言っていいのかどうか。
的確な圧迫に、視界はあっという間に暗くなる*]
[――しかし、その刹那]
[声が聞こえた気がした。
それは、絆により繋がった、音ならぬ声でなく>>177]
――――!!
[数瞬でも長く、意識が保つことを願いながら、その声の先へ必死に手を伸ばす*]
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