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(──…)
[終わる理由を見つけることができなかった戦いに、終わる理由を突きつけた秘された功労者は、居住区から商業区へ流れる人々を見送りながら、目的の人物を探している。
先程まではこの場所も色々な感情で溢れかえっていたのだけれど。
故郷に思いを馳せ笑う者、抑圧からの開放に高揚し泣き出す者
いろんなものが擦り切れて疲労感しか残らなかったことに力ない笑みを浮かべる者
突然の使命の喪失にぽかりと穴が空いたようになにも表すこともなく立ち尽くす者
悲喜交交であったのだけれど。
彼らはすぐに、この砦の大部分を占める「よくわからないけど臨時収入ができたから一杯やろう」という者達の波に飲み込まれてしまい、喜ぶも嘆くも、とりあえずは呑もうという流れとなってしまった。
それを悪しと言うつもりはないし善しというつもりもない。
けれど──…]

──…こんだけうじゃうじゃいると探しにくいなあ
[密集しすぎの人の波から、己の上官を探すのは……とても、とても骨が折れるのだ。
愚痴るくらいは許して欲しい]

ままならぬものだな
[密集しすぎの人の波を見送って、あれの中の吾は目を開けた]
そのまま抜け出してしまえばいいだろうに、だから小物は小物なのだ。
[ぶちぶちと文句を垂れても、小物の耳に届くことはない。
吾の影響など、小物に焦燥感を与えるくらいが精々だろう]
見失ってまた探しだすのも面倒だというのに……
[世界から世界へ、界渡りに失敗し。忌々しいあの女によって、吾が小物と割かれ、封され幾程経ったのか。
やっと、やっと見つけたのだ、あの日見失った女を見つけたのだ]

……居たのが戦場であったのは予想外であるが
[開放される条件がわからない以上、死なれても困るのだ。
気軽に聞けぬ状況も、それはそれで困るのだ。
故に、停戦をすっ飛ばして、戦自体を終わらせなければならなかったのである。
まあ、あの女をひと目見ただけで、覚醒時間が伸びたのは渡りに船ではあった]
しかし、ほんに謎だの
[王妃付という程であるし、吾を封じる力も魔力もあるのだから、まあ戦力的にはわかるのだが。
だが女であるし貴人でもあるはずなのだ。
彼の国がそんな存在を前線に引っ張り出すのが不可解だと。
彼の国がとうに王政でも貴族社会でもなくなっていることを知らぬ吾は、眠る時間が多すぎて感覚が狂いに狂った吾は、大いに首を傾げるのだった]

[目的の人物を探し当てたのは、吾なる存在の愚痴よりほんの少しだけ未来の話であったのだが]
やっと、やっとみつけましたよ隊長ぉっ!
どご行っでだんですか、俺……おでぇっ!!
[内部から煽られた焦燥感は、涙目では済まされないほどに小物の感情をかき回していたのだ。
それから開放された安堵に、小物は滂沱の涙を流しながら己の上官に駆け寄った。
鼻水と涙でぐしゃぐしゃになった小物に、駆け寄られた隊長なる男は「うわ、寄んなきたねぇっ」なんて引きつつも、小物の頭を撫でながら宥めようと試みる]

[そんな試みの甲斐あって]
ぢがくに、あいだい人が、いで、俺……
[隊長から受け取った、ポケットに入れたままだったのだろうくしゃくしゃになったハンカチを手に、小物はえずきながらも、なんとか伝えたかった言葉を口にすることができた。
困り顔だった隊長も、小物の言いたいことは理解できたようで。
「…………女か? そうか女か!」
近くにいる女なんて商業区の給仕か商売女だろうと当たりをつけた小物の上官は、感極まった(ように見える)自分の部下の様子から、一緒になる約束でもしていたのだろうと、こくこく頷く小物の肩を叩いて笑った。
女が女でないなんて、致命的な行き違いに気づける状態ではないものだから、
小物がかつての敵軍を追いかけるなんてことは予想できるはずもなく。
小物は、デートにでも使えと渡された外出許可とバイクの貸与許可を手に、砦を抜け出すことができたのだった**]

[
今度こそ、彼女に、会いたい、会って、俺は──…!
今度こそ、あの女に、会わねば、会って、吾は──…!
伝令用のそれは少々の悪路もものともしないものだから、引かれた道なぞ関係なしに、小物は己の感覚の導くままに森の中へと突っ込んだ。
ちなみにかつて見失ったと言うだけあって、吾も小物も彼女を探知する機能なんてものは持ってはいない。
つまりはまあ、小物の感覚も、その中にある吾の感覚も、なんの根拠のない当てずっぽうでしかないのである。
山勘だよりに通れぬものを迂回して、通れるものは踏み倒し、森の中を爆走するバイクは、森に新たな獣道を生み出しながら信じる道を突き進む。
そうして彼が出会ったのは、見慣れた制服に身を包む者達と、それに追われる目的の人物と別れた後の講和の使者の一団>>29だった]

[
今度こそ、彼女に、会いたい、会って、俺は──…!
今度こそ、あの女に、会わねば、会って、吾は──…!
伝令用のそれは少々の悪路もものともしないものだから、引かれた道なぞ関係なしに、小物は己の感覚の導くままに森の中へと突っ込んだ。
ちなみにかつて見失ったと言うだけあって、吾も小物も彼女を探知する機能なんてものは持ってはいない。
つまりはまあ、小物の感覚も、その中にある吾の感覚も、なんの根拠もない当てずっぽうでしかないのである。
山勘だよりに通れぬものを迂回して、通れるものは踏み倒し、森の中を爆走するバイクは、森に新たな獣道を生み出しながら信じる道を突き進む。
そうして彼が出会ったのは、見慣れた制服に身を包む者達と、それに追われる目的の人物と別れた後の講和の使者の一団>>29だった]

[終わらせたはずの戦場にある見慣れた制服の存在に、
この場に居てはいけないはずの存在に
それの相対するものが、攻撃してはいけない存在であるということに]
早くあの女をさがぎゃくぞくはちゅうすべし!
[小物はあくまで彼女を追おうとする吾の意識を押しのけた。
先程まで小物はあの砦の中で、感情の奔流の中に居たのだ。
呆然とするものもいたけれど、きっと今頃はその心にもケリを付けていることだろう。
それに隊長は笑っていたのだ。幸せになれと小物を送り出してくれたのだ。
そしてなによりも、この戦は続かずに、終わるはずということも、どうしてか小物は確信しているから。
この世界で、この国で、この軍で、吾より長く表にあった小物には、今やるべきことがあったから。
小物は吾の制止も聞かず、見慣れた制服の一団の横っ腹に、バイクごと突っ込んだのであった]

[アクセルを踏みこんでのバイクの突撃であったが、何とは言わないが柔らかいクッションがあったおかげでその機体には大した傷はついていない。
吾はそれに安堵して、抑え込めなくなった小物にこの場は任せるしかないかと、意識を鎮めようとするのだが]
……誰か、いる? いる、よね?
君は──…
[己の頭を小突きながら、ぼそりと呟く小物の言葉に、その行動を中断する。
小物が初めて行った反抗は、決定的な意見の違いは、違う自我があることを認識させてしまったらしい。
吾が何であるか問い詰めようと、小物が続けて口を開くが、見慣れた制服から見慣れた銃を向けられれば、それを断念せざるを得なくなり]
……ん、んー、あとで聞く!
[小物は一言そう叫ぶと、放たれた銃弾を避けることもせず、ポケットに手を突っ込みながら、かつての味方に踊りかかった]

[かつての友軍の持つ銃が火を噴く度に肌に生まれる穴は、みるみるうちに肉を盛り上げ鉛を吐き出し肌を塞ぐ。
その間も小物は痛みを感じないから、怯むこともなく彼らとの距離を詰め、ポケットから両手を抜き出し一回転、その場で舞って見せるのだった。
手先の軌道に沿うように、元友軍らの首に咲かせた赤を辿ったなら、小物のもつそれが刃物のようなものでることに気がつけるだろう。
近すぎる襲撃者を相手に取ってのライフル弾では分が悪い、故にかつての友軍が小物に向けるはサーベルにショベルに銃床と、ナイフでは少々分が悪いものとかわる。
とはいえ小物は被弾を気にしないものだから、打撲も刺傷も気にせずに、刃を閉じた拳で殴りつけ、銃を持っていないように見える拳を押し付け、接触距離から銃弾を放つ。
絡繰りを知らねばなんと恐ろしい生き物だろう。
小物などと呼ばれる怪物を相手どった者達に、やがて恐慌が生まれ、それはみるみるうちに伝播した。
そうなってしまえば、小物に負ける道理はない。
ただの的と化したかつての友軍を壊滅させるのに、それほど時間はいらなかった]

[
あがっ 痛、痛い! ふざけ──…っっ!!
化物の絡繰りこと吾は、自重できない小物の突貫に怒りをこめて呪詛を吐く。
熱した鉛に焼かれるのに痛みがないわけがないだろう?
不自然な修復に痛みが伴わないわけがないだろう?
骨が砕ければ痛いし、それをつなぎ合わせるのにも激痛が伴うものなのだ。
違う理のもとにあるとはいえ、吾らは人に近きもの。
生存に直結する感覚を切り離すことは難しいのだ。
故に、表にある小物が生を手放すことがないように。
生を諦める程の痛みに襲われないように。
痛覚の大半を吾が引き受けているだけに過ぎないのだ。
吾が代替しているだけで痛覚はあるのである]

[
それ、を、あの、小物は……ぎあっ
新たな呪詛は新たな苦痛にかき消され、吾は小物が勝利を収めるまで、与えられる激痛に悲鳴をあげつつ、のたうち回ることしかできず。
結局、小物が彼女の上官にバイクを譲って砦に向かうよう促した後、彼女に助太刀するべくその場を辞すまで、口も手も出せなくなったのだった*]

……で、怪我しても痛くないのは、吾様のおかげなんだ。
うん、今は無理だけどあとでなんかお供えする!
[砦への先触れの為の一人にバイクに預け、彼女の上官に続く者達は歩きのまま、包囲を抜けることはできるからと出来たての獣道へと送り出し。
小物は、彼女を追う道すがら、小物は吾が何者であるかを問いただすことにしたのだが……
その結果がこれである。
何がどうすれ違ったのか、小物の認識はこれである。
あげく吾が、吾は吾であるなんて第一声をかましたせいで、呼び方も吾様で固まってしまった。
己についた精霊かなにか……
まあ、悪いものではないだろう吾様の為にも、彼女を助け出そうと心に決め、小物は先を急ぐのだった]

交戦した、のかな?
でも、それにしては……
[今度は迷わないように、追い抜かないよう人並みの速度で、示された方向へまっすぐに駆け抜けた。指し示したのは、当てずっぽうに進む吾や小物ではないものだから、その距離は着実に近づいていく。
やがて派手に切りつけられた木々>>39もその視界に入りはじめるのだが。戦闘があったと捉えるには、地面に僅かに残る足跡は乱れることなく一方向を示していることから、小物は状況を判断できずに首を傾げた]
…………誘導。なるほど。
[そうしていると己の中から答えを与えられ、吾様はすごいなあなんて小物は一人で頷いて。
でもなんで?なんて疑問も浮かびはするけれど、それはまあ会ったら聞こうと後回しにしつつ。
先程よりも速度を上げて誘いに応じることにした]

[誘われるまま一直線、一より早く駆け寄れば、彼女が撒く為の行動に移るより先に、彼女の姿を捉えることができただろう。
こちらを見据えて武器を構える彼女の姿に、彼女に会いたいとしか思っていなかった小物は軽いショックを受けてその足を止めようとするのだが、彼女が味方ではないと認識している吾は、小物の動揺に振り回されることはなく。
なんで──…小物、変われ
小物の疑問の声にかぶせるように、彼女が近くに来たが故に緩んだ封をこじ開けて、体の主導権を手にするのだった]

[己のうちでぴーぴー騒ぎ続ける小物の声から意識を外し、吾はかつて相対した女へと視線を向けて、声を掛ける段になって名前も知らぬことに思い当たった。
故に言葉を紡ぐより先に、杖を一振り女に向かって投げつけて──…
そして、その一撃は女の背後より悲鳴を挙げさせることに成功した。
こちらを警戒しすぎていたのだろう、女の気づけぬ二人の敵が、その背後にあったから。
杖の着弾を確認するよりも先に、吾は女との距離を詰め、そこからもう一方へと斬りかかり。
関係性は捨て置いて、男女の逢瀬を邪魔するなんて、情緒のない愚物共なんて吐き捨てつつ、赤く咲いた花の上、女の隣に降り立ったのだった。
割り込んだのは己の方であることを棚に上げた吾は、返り血で濡れた姿のまま、女へと手を差し出して]
──見つけたぞ、女
[にこりと笑おうと務めるのだが。
己の今の姿を顧みないその笑みは、彼女が手を取る未来など、とてもじゃないが想像できるものではなく]

[……呼びかけてみたものの返事がない。ただのしかばねでもないようだ。
さて、アプローチを誤ったようだが、ここからどう挽回すべきか。封印を解く方法もわからない以上、殺してしまうのはもってのほか、臍を曲げられても困るのだ。
じぃっと見つめ続ける時点で相当失礼なことなんて、吾は気づけはしないから。視線を途切れさせることはない]
──…ん?
[それ故に。それ故に気づいてしまった違和感を、今はうまく飲み込むことができなくて]
んんん?
[良く言えば中性的、悪く言えば男に間違えられそうな、その顔立ちは見間違える筈もない。
しかし、記憶の中の女に比べ硬そうに見えるのはなぜだろう? 服装のせいだろうか?
隣に立てば、当時もそれなりに高かった背も、更に伸びているようなのだが。 この世界の人種の成長期はいつまでだっただろうか?
そして声だ。もともと落ち着きのある低めの声であったのだが、さらに低くなってはいないか? 喉に病でも抱えたか?]

[ぐるぐる考え続けても、答えは降って湧かないし、そろそろ小物もやかましい。
とりあえず、女を前に、浮かび続ける疑問をなんとかしようと、幾分かがっしりして見えるその肩を掴むべく、吾は指を伸ばした*]

………。
[だんじょのおうせ、とはなんなのか。いや意味が分からないではないけれど、男女とはなんだ。自分は男だし特に女顔でもない、女と勘違いされたことなどないし、目の前の化け物はさらに勘違いしようもなく男でしかないと思うのだが――あれ、実は女性だったりするのだろうか]

[振り返った化け物、は。まさしく化け物であった。軍服のあちこちに砲弾による小さな穴が全身を穿ち、それでも覗く体には傷のひとつもない。たった今染まったばかりの赤に濡れた手を、こちらに差し出してくる――逃げようがない]
……あ?
(女?やっぱ女って言ったか?)
[いやそれは今優先事項じゃ…あれ優先事項なのだろうか。人違い?人違いで助けられた?人違いで追いかけられたのか?その場合、どうなるのだろうか。
こちらの困惑が伝わったのか、じっと目を見つめてくる。しばし、固まったようにお互いじっと見つめあい……やがて、何かに気付いたかのようにしげしげと全身を見始めた]
(いやどうみても男だろう!)
[とは思うのだが、声が出ない。男だとばれた場合、どうなるのだろう。そろそろと、化け物が考え込むうちにそっと刺激しないように後ずさりを試みる――のだが、化け物はそう長く考え込むことはなかった。徐に伸ばされた手が赤く染まっているのを見て、咄嗟に伸ばされた手を振り払う*]

[
──ぱしり
そう音を立てたのは、女が振り払った吾の指先だったか、
それとも、赤いペンキをぶちまけたような地面からだったか。
それを確認するより先に、吾は、吾らは浮遊感に襲われた]
……
[視線を向ければ踏みしめていたはずの大地は消え、視界の下に森が見える。
遠くを見れば赤い月、どこか懐かしい風景は吾に己が身に起きた事を突きつけるには十分で]
ああ……
[先程までいた筈の、焦がれた世界との別れを惜しむように空を仰いだ]

── 回想 ──
[世界の切れ目から見つめ焦がれたあの世界より、招かれたのは遥か昔。
女ひとりを拐す為だなんて、理由を聞かされたときは失笑したものだったけれど。
それでも、この世界に在ることができるのならば、それはとてもとても素晴らしいことだと思えたのだ。
吾を殺しその力だけを手中にし、世界の王となろうだなんて、
彼らの身の丈に合わぬ野望さえなければ、吾は彼らの望むまま件の王妃を手に入れていたことだろう。
しかし、裏切りは起きたのだ。
故に吾は逃げ出して、王妃へとつき彼らを討ったのだ]

[そうしてめでたしめでたしなんて、悪が滅べば物語は大団円と向かうはずではなかったようだ。
拐わされはしなかったものの、拐そうとした時点で、火種としては十分だったのだろう。
諍いは戦火に成り代わり、陣取り合戦の延長を燃料に急速に燃え広がって収拾がつかなくなってしまった。
そんな時勢である、異界の怪物は当然戦力として求められるようになり。
また相対する国からは、抹殺または封じるべき対象となったのだった。
吾の前にあの女が現れたのは、国家間の板挟みで二進も三進もいかなくなったときであった。
元の世界に還すとの申し出を拒否すると、あの女は吾の額に手を当てて──…それからの記憶は吾にはない。
次に目を覚ましたときには、吾はすでに小物の中にいて、小物が為すことをただ見守るだけであった]
── 回想・了 ──

[
あの女の拒否の意思>>52により、働いてしまった防衛機構。
送還の術の導くままに、吾は小物ごとかつての世界に落ちていく。
周りにあった死体も、多少の草花も吾の視界の隅を泳いでいるあたり、吾一人のみを飛ばす術ではないらしい。
この分だとおそらく隣にいた女も、落下行に巻き込まれているだろうけど、まああの女なら問題なんてない筈だと目を閉じたところで──…]
っ!!!
[その変化は突然に。
突然すぎるがゆえに、対応することができなかった。
静観を決め込み流されるままでいようとした吾の内の、小物の存在が急激に膨れ上がり、吾の意識を塗りつぶしにかかる]

[
なんで落ちているんだろう?
わからないけど、彼女はどこにいったんだろう?
かわってと言い続けているのに無視を決め込む、わからず屋の吾様にまかせてなんていられない!
力づくで吾様から体の主導権を奪い去り、辺りを見回せば落ちいく彼女の姿が見えたから。
先程拒否された手、血塗れの手であることも忘れて、精一杯に手を伸ばす。
その手が届いても届かなくても、すべきことは変わらない。
意識のない吾様の力を引っ張り出して、彼女を地面の上へと送るだけだ]

[
果たして、小物が小物としてあって初めて使った魔術なるものは、彼女を無事に送り届けることができただろうか?
彼女の姿が目の前から消えたことで、成功したと思い込んだ小物は、すぐさま意識を手放してしまったから、
ない意識で具体的な行き先を意識するなんて器用なことはできずに。
重力の導くままに地表へと落ちていくのだった。
地表に付けば体がバラバラになる程の激痛に、吾は叩き起こされるだろうけど、
満足げに意識を失う小物の脳裏にはそんなことなど僅かにだって掠りもしなかった**]

[足の裏に地面の固さを感じて、思わず閉じていた目を開く…咄嗟に空を見上げる、けれど空から落ちてくる人影はみえなかった]
――…。
[あれは、助かる高さではなかった。それができるかできないかは知らないが……あの化け物、に助けられた――の、だろうか]
なんで
[女性と間違われた、などと失礼な話だ。どこを見ているんだという気持ちがないでもないが、少なくとも彼が自分をどこかの女性と勘違いしていなければ、自分はとっくに死んでいたのだろうと思うとそれを安堵すればいいのか焦ればいいのか、感情の落としどころに困る。
再び会いたいかといえば全力で首を振るが、あの高さから落ちたのかもしれないあの化け物が、自分と関わりにならないところで無事であればいいと思う程度に絆されているのに苦笑した]

さて。
[ここはどこだろうか。森である、ということは前と同じだが、微妙に薄暗いというかおかしな空気だ]
――…??
[見上げる空には、赤い月。赤い月自体は珍しいけれどないとはいわない、けれど時間感覚がおかしい。たしか時間はまだ昼過ぎの筈。どちらに向かえばいいのかさっぱり分からない。山か川か、あるいは星かとにかく目印になるものがあればいいのだけれどさっぱり手掛かりがない。
かといってじっと立ち尽くしていても仕方がないのも事実]
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