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構わない。長期戦は覚悟の上だ。
諸君は期待通りにやってくれている。
[ まだ一昼夜に過ぎない。焦りは禁物だ。
自分にそう言い聞かせながらも、ベリアンのもとに駆けつけんと馬を急がせている。*]
騎馬隊と合流できた。
薬草も調達したぞ。
君が野営地につくのとどっちが早いだろうな。
ところで、会ってみて将軍をどう思った?
いい面構えの男だろう。
元首も、あれに劣らずだ。
印象はだいぶ違うがな。
[ ベリアンのバルタ評にうなずく。]
兵が強力なだけに、勝手に国政に口を出させていたらすぐに内戦に発展するからな。
風刺文化もないようだし、自分には生きづらいところだ。
元首は──ああ、
彼もまた縛られているのは事実だろうが、縛られたままでいる男ではなさそうだ。
最終的には、彼をうなずかせるしかないのだけれど、
君の活躍もあって、少しは、王国兵にも骨があると感じてくれているだろうか。
それとも、まだ制圧一択だろうか。
[ しばし、思案の気配。*]
− 王国軍野営地 −
[ 到着すると、そのまま野営地を一巡りし、兵らを激励する。
麗々しい総司令官代理の姿を、兵らは歓呼で迎えた。
不安な夜の後に太陽を見て安心したかのよう。
天幕の前で、ベリアンから野営地の守備を託されたというマチスが待っていた。]
重責をよく果たした。
[ 功績を称誉し、指揮権の移譲を受ける。]
[ 地図上で、各地に派遣されている部隊を確認し、現在の状況報告を受けた。
いまだ兵らの安否は数でしか読み取れない。
誰が死んだのか──今は考えても仕方なかった。]
作戦を継続する。
ゼファー兵は素晴らしく頑健だ。だが、不死身ではなかろう。
いずれ、力尽きる。
[ その前に、最悪を回避する手を打たなければ──内心ではそう思っているが、まだ味方に打ち明けることはできない。ベリアン以外には誰も。
バルタには遠回しに伝えたが、腹芸なんて考えられぬ程真っ直ぐな将にそれで伝わるわけがないとベリアンにも言われた。
やはり直接、元首か。**]
− 野営地 −
[ 戦闘継続の命を下す一方、幾人かの使者を放って、元首につなぎを求めた。
ゼファーの指揮系統がよほど混乱しているのでない限り、いずれかの書状が元首のもとに届くだろうと思う。
内容は、負傷した王国軍総司令官の代理として、王弟ギデオン・エルギーノスが着任したことを通達するものだ。
カーマルグ駐留が長引いて、ゼファー軍は難儀していることと思う。つつがなく帰国できるよう支援するつもりはあるが、なにぶん、野営地周辺はいささか騒がしいため、まずは書面にてご挨拶のみ──といった内容の、今更ながらにすぎる定型の挨拶だ。
自分は野営地にいるから、神々の思し召しがあれば会える日もあろうと締めくくっておいた。*]
>>54
[ ゼファー軍が移動するのを看過する王国軍ではなかったが、ある程度以上は前方を塞ぐことなく、後方や側面からの射撃や一撃離脱を繰り返す。
さすがに、一定以上の兵が集まってしまえば、ゲリラ戦法は深くまでは届かない。
それでも、うるさくつきまとうのは止めなかった。
ときに、周囲でカーマルグの民謡が合唱されることもあった。
義勇兵の声に、王国兵も声を合わせる。
ここはおれたちの故郷だと、歌声にこめて。
ゼファー軍が工作をしているのを偵察すれば、平地に溝を堀って車輪での移動を妨げ、あるいは薪を積んで火の壁を作る準備をする。
ベリアンからの指示を受けた兵らは先に野営地へと戻り、船から降りた軽装歩兵も加わって、野営地周辺の兵の密度は増した。>>66*]
− 野営地 −
[ 再会したベリアンを軽く抱擁する。
戦塵に塗れた友の身体からは、濃い血の匂いがした。
応急手当ては受けたとのことだが、時間をもらって部屋を移り、持ち帰った薬草で血止めをしてやる。
煮沸した海水で傷を洗うときには、あらかじめ「痛いぞ」と予告しておいた。
傷の深さと、彼自身がしたらしい縫合の痕に唇を引き結んだが、文句は言わない。]
後で、傷跡の周囲に刺青を施してやろう。
君の体を自分の作品にする機会を逃すつもりはないよ。
[ 約束どおり、包帯を巻いて、その上にそっと手を置く。]
さて、休んで次に備えてくれ──と言いたいところだが、ゼファーも次の手に出てくる頃だろう。
おそらくは、短期決戦を狙った強襲になる。
それに対する兵の指揮を君に託したい。
名のある敵将に勝った君は、今や押しも押されぬ殊勲者だ。
君が直接、指揮をとれば皆の士気もあがる。
だが、一騎討ちは禁止だぞ。
挑発に乗る君ではないとわかっているけれども。
[ コツンと額をあわせ、目を覗き込む。*]
[ 負傷者を先に送還したいというベリアンの望みに許可を与える。]
船に乗り込ませる手配をしよう。
…手紙?
[ 差し出された宛名書きに目を細める。]
君は
[ 悪い予感がする。指先にベリアンが手紙に込めた想いが触れてくる気がした。*]
[ 去年、王都で。
セルウィンの兄の文才を噂に聞き、面会を申し込んだが、残念ながら都合がつかないと断られた。
そんなことが数回続いて、引かれればいっそう追いかけたくなる心情に逆らわず、ギデオンは蔦をよじ登って窓から屋敷に侵入したことがある。
セドリックは、呆れながらも許してくれ、「弟もそうやって窓から入ってきたことがあった」と言った。
兵役についている弟を思って作った詩というをいくつか朗読してくれた、その声は鮮明に思い出せる。
セドリックは足が不自由なことを機にしていて、「こんなわたしのところに王弟殿下がおいでになったと知れたら妬まれましょうから、この訪問は内密にしておいてほしい」と頼まれた。
内密にしてもいいが、また来ると言っておいた。
このようなことになって──切ない。]
自分も聞かせてもらっていいか?
[ セルウィンの最期の想いを。*]
[ セルウィンの最期の言葉を伝えるベリアンの声は淡々として震えることなく、だが、決して冷たいものではなかった。
戦いの前、セルウィンは「心構えを保っていられるか」と不安を吐露していた。
だが、残された言葉からは、彼がまっすぐに戦ったことが伝わってくる。]
ありがとう、ベリアン。
── 己をまっとうせし者に、敬意を示そう。
[ 目を閉じ、声に出さずに、彼の兄の詩の一編を捧げた。*]
/*
プロローグで、セルウィンを見て「そうか兵役に出てたのか」なんて言ってるんだが、「カーマルグ方面に」って、頭にそっとつけ足しといてください。(
[ 死んだ将に感謝せよとベリアンは言う。]
ああ、死者に国は関係ないな。
信ある将に感謝しよう。
君と、刃を交わした上で、託してくれた男なのだから。
では、これは一時預かる。
──安心して行って来い。
[ もう一度、肩を抱いてからベリアンを送り出した。*]
[ 徐々に、兵が野営地に集まってくる。
ベリアンに頼まれたとおり、戦線に戻れそうにない者を船に乗せるよう指示した。
乗船する負傷兵らに声をかけてゆく。
水を求める声に、自ら柄杓を渡しもした。]
諸君は勇敢に戦った。
歴史に名は残らずとも、自分は忘れない。
[ そうして、セルウィンと同じ隊にいた兵を見つけ出し、ベリアンの書状を託す。
旅費にするようにと、銀貨の小袋も渡しておいた。]
ありがとう、ベリアン──メラン。
[ 秘めたる思いを打ち明けてくれた彼に、そっと言葉を返す。]
自分は、君と出会ってから、ようやく「人間」として目覚めた。
君を頼りに、世界を知った。
君が育てたと言っても過言ではないよ。
君は、あの日、己のことを手足だと言った。
自分は、君と手を伸ばし、君と共に歩み、世界に希望を届ける。
──人生が豊穣であるように。
豊穣を司るようには見えないかい。
[ 性別を過たれても怒りもせず、敬礼には、武人のそれではなく、神官の儀礼をもって応えた。]
実に卓越した行動力だ。
では戦場にいるのは影武者か?
常に最前列にいれば、ゼファー兵が見るのは背中だけになるわけか。
…それは、いずれバレるな。
貴殿のような男は、背中でも人を惹きつける。
[ カナンひとりを近くにと招く。]
貴殿が来てくれたことを喜んでいる。
書状に書いたとおりだ。
ザール将軍からも聞いているかな。
物資を積んだ船を用意できる。
カーマルグから兵を引き上げる潮時だというのは、わかっているだろう。
貴殿の「物語」は何を望む?
[ ごく簡潔に、話を切り出した。*]
[ 微笑む気配が伝わる。
怒りと涙で始まった出会いは、豊かなみのりをもたらした。]
───ゆえに我あり。
[ 誓いのように、共鳴のように言葉を重ねる。*]
[ 革袋を受け取り、重さで中身と送り人を把握して微笑む。]
律儀な将だ。
[ 続けて語られた単刀直入な話に、驚きは示さない。おおむね予想どおりだ。 ]
…何があれば、ゼファーに新たな風を吹かせられる?
自分は、両国が戦ったこと自体、正史に残すのは避けたいとすら考えている。
"王国とゼファーそれぞれが「海賊の残党」と戦う中で、共闘についての合意がなされた。"
"ゼファーがカーマルグを襲撃した海賊を討伐したことに対し、プラメージは感謝してカーマルグの富を贈る。"
[ 自分が作った「物語」を語ってみせた。]
それと、かの将から問いの答えを聞くよう、言われているか?
[ 革袋を掌で転がして訊く。*]
そうだな、あまり勇ましい物語を作られると、ゼファー兵が図に乗って、王国人を蔑視しないとも限らない。
そうなっては、今後の交流に差し支えようから。
最後のあたりで妥協してもらえるとありがたい。
ゼファーは海賊に勝利した。
王国はカーマルグとその民を守った。
その点において、互いに勝利宣言をすることは可能だと思っている。
どのみち、貴殿に与えられたのは「ゼファーの交易船を襲った海賊への報復のための軍勢指揮権」であって、カーマルグのことは貴殿の独断、違うか?
王国は、「海賊討伐」で死んだ兵らのために慰霊碑を建てよう。
毎年、この時期に遺族を招いて祭祀を執り行い、遺族には年金も支払う。王国からの感謝の気持ちだ。
人と技術は、ゼファーに送るわけにはいかない。少なくとも、そちらの奴隷制度がなくなるまでは。
だから、ゼファーの方から来てもらおう。
海賊戦のノウハウ等を教練してくれる者を派遣してくれれば、むろん報酬を払う。継続的に。
[ 問いの答えについては、]
そうか。ならばやはりもう一度、会わねば。
[ 嬉しそうに言った。*]
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