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―少し前―
[>>~37謝るなという幼馴染の声に、涙がまた零れた。]
…っ…、でも俺は…!
[お前を救いたかったのだと。――生きて共にいたかったのだと。
そうする事は許されないと考えながらも、そんな未来に焦がれていた。]
[>>~38逃げろという警告がなされた時には、男は既に血親を危険から遠ざけようと行動を取っていた。
――死なせて堪るか。
自分が生きている内には、そんな未来は起こさせない。
幼馴染を手に掛けてしまったからこそ、その気持ちは強かった。]
リ エ、
[幼馴染の身体はこの世に存在しなくなってしまう。
名を呼んだ男の声は爆発の音に紛れて消えた。]
[――どれだけの間、泣いていただろう。
男は幼馴染の血を吸った戦斧の柄の刃近くを握り。]
悪いな。アプサラス。
――ちょっと行ってくる。
[視線を彼女にちらりと向けて小さく笑う。
そして刃を自分に向け…自分の胸を切り裂いた。]
ぐ、…
[熱い血潮が組み敷いた幼馴染みの身体にかかり、痛みに顔を顰めた男は床に手をつく。
力の抜けた手から戦斧が離れ、音を立てて床に転がる。]
――…。
[牙で自分の舌に傷をつけ、口の中で紡ぐのは古代語。
幼馴染と男は因子で繋がっていても、身体という檻で分かたれている。
通常の状態であれば彼の中にある魂に手出しは出来ない。
ならばこの身に流れる血潮を以って門を作り、彼の魂を救いだそうと。
――彼が自分に望んだのは解放。
だから自分のしようとしている事は独断で決めた事だ。]
[男は痛みに顔を顰めながらも、血潮溢れる自分の傷口を幼馴染みのそれに触れさせるように上体を覆い被させる。
幼馴染にまだ意識があれば、肩口に熱い吐息が感じられたかもしれない。]
リエ、俺が
[――助ける。
命は無理だったとしても、せめて魂だけは。]
【狂】
[幼馴染の脳裏には男の姿が見えただろうか。]
こいつの身体も魂も、
お前なんかには渡さない。
全てあいつのものだ!
[幼馴染を蝕んでいた影に向かって叫び、戦斧で切り付け。
そして幼馴染に向かって手を伸ばす。
その手は届くだろうか。*]
[男の流した血液は床に広がり、血溜まりを作っていた。
そこから深紅の細い帯が伸びて男と幼馴染みの腕を繋ぐ。
――それは幼馴染と分かたれたくないと願う、男の願いの籠ったもの。
分かつのは難しいが、労を惜しまねば解くことは可能だろう。]
――……。
[これまでにおける多量の失血によって男はそのまま意識を失う。
魔性に堕ちて得た高い再生能力はその効果を発揮せず、疵口は治癒に向かわないままだろう。
長時間放置すれば男はそのまま死を迎え、やがて身体は灰となる。*]
/*
あ、相方さん。
秘話でお返事させて頂いたの、驚かせたらごめんなさいね。
…ちなみに上のIFは、三回ほど青ログに誤投下しかけました()
―6年前―
うるせー。今日は晴れの日だ。
飲んだっていいだろ。
[酔っ払いはそうのたまった。
式の際にぼろぼろと零した涙は、目にゴミが入っただけだとかばればれの嘘をついて。
その後の食事の際には大事な妹が自分の手元からいなくなってしまうのだと思うと酒はどんどん進み。
そのペースは妹に新郎を恋人だと紹介された日の夜に自棄酒をした時に似ていたと、付き合せた幼馴染なら思ったかもしれない。]
[――そして今に至る。
幼馴染が水を汲んで置けば、一息に半分ほど飲んだ。
昔の話をされれば声を立てて笑い。]
はは、お前ファミルに怖がられてたもんなー。
俺は良い奴だって言ってたんだぞ。
……本当に、あれから随分と経っちまったんだな…。
[妹と幼馴染。そして自分の三人。
妹がリエヴルの事も兄のように思っていたのは知っている。だから彼にも家族の席にいて貰った。
街を駆け回っていた頃を思い出して、机の上に肘をついていた男は視線を遠くに向ける。]
――はは、悪い。
[物騒だと言われれば苦笑して肩を竦めた。
自分達が赴く先は戦地。
しかも相手にするのは人間ではなく魔物だ。
それ故に、死ぬという言葉は自分達にとって近しい現実だった。
幼馴染が教会に脅されていたのは知らず。
――だから金の行く先は孤児院か、もしくは貯蓄でもするつもりなのだろうと、そう思っていた。]
[両親の事を口にされれば、男は瞠目し息を詰める。]
――…。
[彼の口から両親の話がされるのは少なかった気がする。
けれどすぐに冗談だと打ち消されれば、男は踏み込まず。]
…そうだな。
被検体だからってむざむざ死ぬ必要はない。
[続く言葉は素直に首肯して。
この幼馴染を死なせず、また自分も死なず。
再びこの街で共に暮らす未来を、その時の男は望んでいた。*]
―そして現在―
ん、…馬鹿馬鹿言うじゃねぇよ。
……。
[揺蕩っていた男の意識は引き戻される。
聞こえたのは血親の声。
悪態をつきながら目を開いた男は違和感に気付く。]
[欠けた視界が広がっていた。]
――は、何だこれ。
[乾いた笑い声が漏れた。
そうか、自分は死んだのか、と。
危険を察知した瞬間、その覚悟を決めた。
けれど死ねば無に帰するものと思っていたから。
――其処に広がっていた光景に瞠目した。]
[視線を落とした男の左手首には紅い帯が腕輪のように浮かんでいた。
それは彼女の血と自身の血が体内で混じり合って出来た新たな枷。
生きていた時にはそれが見える事はなかった。
見えぬ枷に男は必死で抗おうとして…けれど自分から断つ事は出来なかった。
男はそれをなぞるように触れて嘆息し、]
――…あんたは死ぬなよ。
[彼女の背中に向かって、ぽつりと呟く。
自身が今、生死を彷徨っている状態にある事を男は知らない。
これはこの世から完全に消え失せる前に与えられた猶予なのだろうと。
残っていられる限りは、彼女を、彼らの行く末を見守っていようと思う。
>>55どれだけ経ったか、彼女が城に仕える影を呼び寄せて自分の身体を託すのを男は黙って眺めていた。**]
―回想:ジークムントと―
『あれは苦くて苦手だが
君の血は甘く好ましいものだった。』
[>>41ジークムントにそう聞かされれば、虚を突かれた男は思わず目を剥いた。
好ましいと真顔で言ってみせるこの男は、ひどく恥ずかしい奴だと思った。
惨事を送られた血親と反応が違うのは性差だろうか。
――いや、俺は仮に女だったとしも顔を蕩けさせたりはしない。]
――…っ!
は、それはあれこれ口にしてない所為だろう。
色々と口にしてみれば分かる。
俺のも他のと同じだ。
[髪を再び引けば、「禿げる」と不満を零され、男は声を立てて笑った。
流麗な顔立ちの彼の口からそんな言葉がもたらされるなんて予想していなくて。
――その時には、自分が彼との間に壁も作っていなかった事に男は気付かないまま。]
―現在―
[聖なる炎は未だ激しく燃えさかっていただろうか。
それとも魔の者を一人道連れにし、鎮火に至っていただろうか。
男は黙って部屋の方を見やる。
恐らく幼馴染の身体は影も形もなくなってしまったのだろう。
触れる事は出来ないと知ったのに、それが酷く惜しい。]
……。
[男は目を閉じて気配を探る。
自分と同じく彷徨っている者は他にいるのだろうかと。]
俺と、リエと…後は誰だ?
こうなっちまったからか、どっちだかも分からねぇ。
少しはあっちの戦力も削れてりゃいいんだが。
……。
[そこまで言って、男は口を閉ざす。]
…あー…、俺は
[両手で白銀の頭をくしゃりとかき混ぜ、
すっかり吸血鬼側の思考に立っている自分に苦い笑みが浮かぶ。
吸血鬼と、人間。
共に在れぬのならばこの戦いはまだ続くのだろう。そして他にも犠牲が出る。
――その間に血親が失われない事を祈る。]
/*
……めっちゃ挟まったね?
リエヴルさんは消化不良だったら本当にごめんなさいですよ。
バトルしていてくれてもいいのよ。観戦しているので!
……くそ。
[血親の姿を見て向き合う事になった気持ちに戸惑う。
そう出来るようになったのは、男が死んだからか。
それとも他人には聞こえぬ聲で幼馴染と束の間語らったからか。]
……反抗期かっつーの。26にもなって。
[憎しみのみだと思っていた血親に対する感情は、いつしか別の感情も混じっていて。
――それらを分かつことは不可能で。]
…死ぬな。
死ぬんじゃねぇぞ。
[守る事が出来ないのが悔しい。]
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