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[エルフとドワーフが交互に「竜の魂はもうここにない」と言い聞かせる。
戦場の空の上、竜が呼んだ雲が緩やかにほどけてゆき、その隙間から一条の光がさした。
それは、大地に横たわる竜へと真っすぐに伸びる。]
…ロルフ──大丈夫なんだね。
[ゆっくりと頷いて立ち上がる。
背後から聞こえたローランドの声に振り返った。
その金髪を光が包む。]
おかえり、 ローランド。
あなたも竜にお別れを──
待って、
その肩──まさか、
[ローランドの動きの中に見えた異変に、眉根を寄せた。]
彼女が──、
[死せる竜が、烙印を負う語り手に託したという品。
カレルは進み出て受け取る。
包みをほどけば、現れたのは一振りの剣。
まるで誂えたかのように、手に馴染む。]
──なんだか、懐かしい気すらする。
わたしは前にもこれを何処かで?
[周囲でエルフやドワーフたちがざわめいた。
間違いない、と畏怖とも驚愕ともとれる声が交わされる。]
聖剣…!
王家には伝わっていなくて、もう失われたものだと思っていたのに。
これを手に入れるために、あなたは危険に飛び込んでくれたんだね。
その勇気と知恵と覚悟がなければ、これはここにはなかった。
あなたを見込んだ竜と、期待に応えたあなたの尽力に感謝します。
[カレルがローランドに最敬礼をすれば、エルフとドワーフもまた、それぞれの敬意の仕草でローランドを認めた。
これより、彼の名を、魔人を解き放った者ではなく聖剣の解放者として記憶しようと。**]
[やるべきことをやった男に、確と頷き、カレルは聖剣を彼が運んできたように斜めに背負う。]
これは、「魔人を封じていた力の欠片」、必要なものだが、これがあればすべて丸く収まるような万能の力じゃない。
これからもわたしに力を貸してほしい。
[皆にも伝わるよう告げた。]
[竜の状態については、やや堅い表情で聞き入る。]
レトが、魔王軍を追ってくれているが──
ローランド、あなたは治療師に傷を診てもらうこと。
幸い、ここには広く魔術に通じたエルフもいるし…
[と、そのエルフたちが一点を睨んでいるのに気づく。]
何…? まだ敵が?
[そこへ妖精が飛んで来て、カレルの金髪に乗っかると、早口でしゃべりはじめる。
あまりの早口に、それは鳥のさえずりにしか聞こえない。]
あう、 タムタム、 もっとゆっくり…!
− 川の北岸 −
[ローランドが、見出したものの名を告げる。
カレルもまた、その視線を辿り、鋭き風の如き闇の刃の舞を見た。
ローランドが躊躇なくカレルを庇い、放たれた闇の刃は容赦なくその身体を傷つける。
互いに強い意志を示した衝突だった。]
── ローランド、 借りておくよ。
[エルフに彼の治癒を任せ、カレルはひとつ頷いて、エディの方へと近づいていく。]
エディ、 自力で逃げた上で、挨拶を残してゆく、とか、
[ローランドがエルフたちの応戦を制し、時間を与えてくれる。
妖精タムリンが、パッペルにチチチチ…とさえずった。]
今の姿を、わたしに見せつけたかったか。
ああ、わたしもだ。
確かめさせてくれ。 納得させてくれ。
話よりもまず──
[その温もりを。
両手に抱き締めて、あの日に分たれた距離を埋めんと望む。]
逃げて解決が得られるなら、黙っていられもしたはず。
ならば、その不可抗力な半分は天意、残る半分がおまえの意志だ。
[足元に弾ける火花に怖じず、エトヴァルトを見つめた。]
2年前のあの日、おまえは、わたしを遠くへ逃すことで命を助けた。
だが、おまえの力では、おまえ自身が闇に堕ちるのを救うことはできなかった。
それが、我々の別離、そして現状にいたる事実。
おまえは、自分が弱いと思っているね?
そして、おまえを生かすことのできたギィのように強くなりたいと思っている。
あるいは、彼を助けることで、自分の望むものが手に入ると。
そうなれば、失わずにすむもの、変えられるものがある。邪魔されず、干渉されるもことなく──自由になれると。
おまえは、そうならざるを得なかった自分が弱いと思っているね?
そして、おまえを生かすことのできたギィのように強くなりたいと思っている。
あるいは、彼を助けることで、自分の望むものが手に入ると。
そうなれば、失わずにすむもの、変えられるものがあると。邪魔されず、干渉されるもことなく── 自由になれると。
わたしはもう、おまえの「秘密」を、
おまえの「おそれ」を、知っている。
[パッペルにチラと、安心していい、というような視線を送る。
カレルの頭上で、タムリンがこくこくと頷いた。]
古い約束により、おまえは闇を宿して生きてきた。
けれど、それはおまえの本質ではない。
王家の血筋が、わたしの本質ではないように。
[それは、カレルにとっても抜けない棘。
血筋ゆえに隔てられ、血筋ゆえに守られ、血筋ゆえに求められることの煩悶。
それでも──受け入れた上で自分である道を選んだ。]
束縛されない在り方、とおまえは言う。
だが、おまえにもわかっているはずだ。
ギィの有りようは、強さに価値を求めることは、強さに「縛られる」こと。
強さを求めても、人は自由になれない。
[竜の下で学んだこと、そして、戦いを通じて学んだことを伝えんとする。]
いやだ。
[エトヴァルトの挑発めいた宣言を一蹴。]
「殺す気で来い」と言っておいて、自分はわたしを「殺す気」になっていないくせに。
[頬を膨らませて言い返す様は、2年前とさして変わらぬ。]
わたしは、わたしと同じ希望をいただかない人たちととも共に暮らす国を作る。
おまえの秘密を、望みを知ってなお、おまえを排除せず生かす未来を選ぶ。
それができなくて、何の王道か。
わたしは理想を目指すことを、やめない。
その上で、エディ、
おまえの主張はわかった。
おまえらしい決意だよね。
わたしはそんな今のおまえをも、恋しいと思っている。
ゆえに、おまえがあくまでも魔王を是といい、その元に帰りたいならば──
[むろん、自分も率先してエトヴァルトにタックルを仕掛ける。
転移魔法など使わせないと。
近接により、後方からエトヴァルトに対する攻撃魔法が使えなくなるのは、むしろ計算のうち。]
[むろん、自分も率先してエトヴァルトにタックルを仕掛ける。
転移魔法など使わせないと。
近接により、後方からエトヴァルトに対する攻撃魔法が使えなくなるのは、むしろ計算のうち。
エルフの矢には先を越されたものの、勢いは緩めず。]
[ローランドの加護の魔法が、闇の風に巻き上げられた礫を包む。
それでも肌に命中する痛みはあったが、幸い、目つぶしされることもなくエトヴァルトの魔法陣を踏み越えた。
エトヴァルトが血を魔術の触媒にすることはよく知っている。
とにかくその動きを拘束するか、呪文を唱える口を封じんと、顎を狙った頭突きをかます。]
[エトヴァルトの身体を仰け反らせ転倒させたものの、押さえ込むには至らず、呪文を発動させる隙を与えてしまった。]
昔から、 口が達者なんだから!
[素早い詠唱に、悪態とも賞賛ともつかない声を投げれば、怪しく飛び交う血色の結晶体が命中するたびに熟れた果実めいて弾け、骨に響く衝撃を与える。]
イッ つあてててて!
[痺れるような痛みに動きが止まりかけ、こちらも倒れ込むように前回りの受け身をとった。
そのまま、エディの位置を確認。]
[魔弾の残滓が軋んでたまらないけど、強くイメージすれば身体は動く。
身体を鍛えることに重きを置いた竜の教育方針の賜物だ。
蛇のごとく関節を絡めとって態勢を崩させると、エトヴァルトにのしかかった。]
それでも、──待ってる。
[それは、受け身の庇護を求める言葉ではなく、自分のすべてを尽くした先の信頼の誓い。
カレルはエトヴァルトのローブの首もとの布を逆の拳に巻き込む形で頸動脈締めを仕掛けんとして──弾けた魔力に両者の間は引き離された。
手に残るのは──]
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