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[ ルートヴィヒが文句を言わないばかりか協力をお願いしてくる。
これほど素直になっているのはだいぶ弱っている証拠だ。
それでも、理知的に分析結果を伝えてくるのは、彼が芯まで扶翼であるからなのだろう。
期待に応えよう、と思う。
この片翼はいつだってアレクトールの原動力だ。]
おれは上からするから、おまえは下からやってくれ。
[ とっとと脱がせて温めてやりたいから、そんな修正案を投げて彼を引き寄せる。]
[ あけおめ、と聞こえてきた挨拶に、あけおめ ! と呼応した。
“郷に行っては郷に従え”は、広大な版図と数多の友好国を有する皇帝アレクトールの基本姿勢である。]
支援の申し出、ありがたく思う。
こちらは二人だ。怪我はない。
そちらに降りたいが、さてどうしたものか考えているところだ。
[ せっかくなら乾杯のひとつもしたいよなあ、と腕の中に抱えたあえかな温もりに頷きかける。*]
[ 体は休息を必要としていても、状況判断をさぼったりしないルートヴィヒの声を腕の中に聞く。
下に降りたらこの状態ではいられないだろうから、今しばらく特権を堪能しておこう。]
確かに手土産のひとつも渡したいところだが、
あれを落とす策があるか ?
[ 得物は護身用の拳銃と簡易ナイフくらいしかない。]
[ 落下しないように縛っておくべきという判断を吟味して、くすりと笑う。]
縛られているおまえというのはレアだな。
最初に会ったときを思い出したぞ。“牢名主”殿。
よし、救命胴衣の金具を使って固定するとしよう。
まずは一緒に美味しそうな実を選ぼうか。
あちらも出かけたようだから、ゆっくり慎重にいこう。
[ 立ち上がって枝の上を移動すべく促した。*]
顎でこき使われてこそいないが、口調は当時から変わらないな。
[ 思い出し笑いを続けながら、危うげなく枝を渡っていく。
なるほど、体が慣れている感じがするのは、波の上と似たような揺れ具合だからかと合点がいった。]
先端近く ?
[ この状況で目利きを発揮するルートヴィヒを頼もしくも愉しくも思いながら、おまえはこの辺で、と頑丈な枝の近くに押し留めて、カラビナで安全確保してやる。
自分はナイフを咥え、舳先のような梢へと歩を進めた。
よさげな実の軸を蹴って落とせるか試してみる。*]
[ 後ろから飛んでくる腹心の声を応援とも警告ともして作業を続けた。
柄に切り込みを入れ、ルートヴィヒが脱いだ服をロープ代わりに結ぶ。
よい頃合いに、地上組が真っ赤な布を引きずって戻ってくるのが見えた。]
この下に頼む !
[ 呼びかけて、彼らの到着を待ってからロープの端を持ってルートヴィヒのところへ戻り、力をあわせて一緒に引いた。]
せーの !
[ リンゴが落下するや、ルートヴィヒが予告していたとおりの反動が枝を跳ね上げる。]
おおう、
[ だが、あらかじめ気をつけていたから、大丈夫だ。
ルートヴィヒから伸ばされた腕と腕を絡めてバランスをとる。
ダンスパーティのエスコートのようだと愉快に思った。]
[ ルートヴィヒの笑顔に視線を向けながら、頷く。
そのまま、出会の時から相変わらず高揚させてくれる片翼と共に翔んだ。
下では二人組が着地地点を確保してくれている。
赤い布の海に、ルートヴィヒと思い切り転がろう。]
感謝するぞ !
リンゴは遠慮なく受け取ってくれ。
[ 挨拶はそつのない副官に任せておく。
あちらの副官とおぼしき男にはなんとなく見覚えがあった。
というか、鏡で見た感じ ? ]
武器 ? ナイフも拳銃もあるが、まあ必要なのはナイフだろうな。
[ 先ほど、柄を切りつけるのに使ったけれど、まだ刃は鈍っていないと思う。
サクリとリンゴの皮に突き立ててみせた。]
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