情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新
― 回想/個別領域 ―
[蛇竜にとっては思わぬ形で与えられた、休息の一時。
半人半蛇の姿で小さな海に潜りつつ、思い巡らせていたのは二つのことだった]
[一つは、命運預ける相手として出自を明かしてくれた召喚主のこと。
もう一つは、願いを賭けて戦い破った対戦者のこと]
あの……ヴィンセント……様。
[意を決したように水面へ上がり、小島に手を付いて半身を覗かせる形で言葉を掛けた]
こんな時に、すみません。
……少しだけ、お話させて頂いてもいいですか?
[次なる対戦に響かぬように、とは思いつつも。
蛇竜はぽつ、と口を開く]
大したことでは、ないんです。
ただ……心残りがあるまま最後の戦いに臨むのも、良くないと思って。
[主を煩わせるべきではないのかもしれない。
ただ、信頼の証として語ってくれた相手に、こちらが同じものを十分に返せていなかったのは事実だ]
わたし……はっきりした願いの形があるわけじゃ、ないんです。
ただ、自分の力が怖くて……でも、"ここ"に来れば、何かが掴めるんじゃないかって。
だから、あの力に呼ばれた時、手を伸ばしたんです。
[言葉を吐き切って、大きく息をつく。
空気に晒された肩は、小さく震えていた*]
― 回想/個別領域 ―
……ん。
どうか、したか?
[領域に戻って取った休息の時。
小島に立つ木の枝の上で幹に寄りかかり、のんびりと微睡んでいた所に届いた呼びかけに、紫苑色が瞬く。
どこかぼんやりとした様子は、半ば寝ぼけているため……というのはさておいて]
話をするのは構わんが……どうした、改まって。
[緩く首を傾いだ後、前置きに僅かに眉を寄せて。
綴られる言葉を、黙って聞いた]
願いの形が、ない……か。
[己が力を恐れるが故に、その在り様を求めて召喚に応じた、と。
告げられた言葉に、ふ、と息を吐く]
……己が如何にあるべきか、どう進むべきかの指針がない……って感じか、そりゃ。
[肩震わせる様子に眉寄せて。
投げ返したのは、こんな問いかけ。*]
雷鳥竜――
[対戦者とその主との、先の戦いは目にしていなかった。
故に、その名乗り>>25で気付かされる。
座の違いだけでない、こちら側の不利を]
[しかし蛇竜は、為すべきことを止めなかった。
突き出した棒へ、更に水の刃を生やす。
しかし相手もそれに応じ、扇の骨にて刃を止める>>*25]
……器用は、お互いさまではありませんか?
[虚を衝く動きへ瞬時に対応し、更にこちらの得物を蔓にて絡めとる。
経験に裏打ちされた体捌きや術の扱いに舌を巻く。
とはいえ為すがままになる気もなく]
[絡まれた棒に通している己の気をわざと弱め、中程から折りとるようにして蔓から逃れる。
当然ながら短くなった得物を、剣の柄の如く握り直し]
はっ!
[連撃加えるべく踏み込んで、上段から袈裟懸けに振り下ろす。
折れた部分より噴き出すようにして形成されたのは、先より長い刃渡りの水の剣**]
― 回想/個別領域 ―
[どこかぼんやりとした様子の主。
樹上にて微睡んでいたらしい所に話し掛けるのは申し訳なくもあったけれど、今しか出来ないことだからと、言葉を続ける]
[拙い調子で話す言葉を、終わりまで黙って聞いた後。
軽く息を吐き、向けられた問いに小さく頷いて]
今でこそ、ずっと海の中で暮らしていますけれど……。
もっと若い頃に、海の外や陸の世界も、見たことがありました。
空を飛ぶ竜の姿を見て、自分もいつかあそこに行くんだ、なんて思っていて。
でも……わたしの力は陸を壊すし、地に染み込めば植物を侵します。
何より、多くの生き物は、水の中では生きられないと知りました。
[自分にとっては当たり前で、意識することもなかった数々のこと。
陸の上で無邪気に力を揮った時、齎されたのは予期せぬ破壊であった]
だから、海の中にいれば……。
大海の中で幾ら海流が暴れても、表の世界に影響することはない、って。
[思い込みに過ぎないことかもしれない。
けれどそれはずっと、海に沈むことを選んだ蛇竜の心を縛ってきた]
――ここに来れば、何か変わるのかもしれないって思いました。
少なくとも
[そこまでを語って、蛇竜は長く息を吐きだした。
それから、ぽつり、と零したのは]
でも、そんなこと、申し訳なくて口に出来なかった……。
[もう一つ、心を縛っていたもの。
主への後ろめたさだった*]
竜神同士の本気の相対……。
そう、多く経験出来るものでもないですものね。
[それは蛇竜の心を縛っていたものの一端でもあったのだけれど。
眼前、皇玉としてでなく同じ竜神として対している雷鳥竜>>*35に、改めての敬意を抱きつつ向かい合う。
水の刃のせ振るった棒杖は、しかし蠢く蔓によって相手に達するのを阻まれた]
……この姿で、速さを褒められるなんて、
――――っ!
[返そうとした言葉は、しかし雷鳥竜の次なる動きによって途切れた。
振り子の如く振るわれた蔓、その先にあるのは――]
くっ!
[一旦退かざるを得ないと、振り下ろしで体重の乗った足で後方に跳びつつ振り子の先端へ水剣の柄を向ける。
胴への直撃は防いだものの、衝撃が一瞬攻撃の手を止めさせた]
こちらの武器を使われるのは、予想外でしたわね……。
[破損に頓着せずにいたことが仇となったか。
とはいえ半分はこちらの手中にある以上、"作り替え"は出来る]
なんにせよ、武器を届かせなければ、お話になりませんわ。
[棒杖は再びその長さを伸ばし、更に上部の先端からは、磨き上げた骨色の大きな曲刃が生える。
選んだ形は、草を刈り取るもの――大鎌]
これなら、どうですっ!
[武器を変化させる間に、相手はなんらかの態勢を整えていたかもしれない。
それでも構わず踏み込んで、上段より大鎌を振り下ろした*]
― 回想/個別領域 ―
[問いかけに返ったのは、頷きによる肯定。
次いで語られるのは、蛇竜の過去。
海のものであるが故の憧憬と、それ故の相容れなさが齎したもの。
それはどこか、懐かしさを感じるもの]
……
人の世界に興味を持って、一人で飛び出して。
……ま、色々あって、自分が異端と思い知る結果になったが。
それで一時期、魔界に引きこもった事もあった、な。
[状況は異なるだろうが、似たような過去を経てきたのであれば、それも呼び合う要因となったか、などという分析は今は置いて]
……確かに、ここは力の集う場所。
故に、滅多な事じゃあ壊れない。
ここでなら己が在り方を、力の方向性を見出せるかも知れない……って思うのは、まあ、ありだろ。
[ひとつ息を吐き、紫苑色を領域の空へと向けて、零すのはこんな言葉]
……ま、何というか。
きみはもしかしなくても、考えすぎる癖がついてないか?
この場所に集う者は、皆それぞれに思う所を持つ。
それは他者があれこれ言って、どうこうできるものじゃない。
で、少なくとも、その理由は、
[ここで一度、言葉を切って]
だから、ま。
……申し訳ないとか、思う必要はない。
まだ望みがないなら、ここでの事を探す契機にすればいい。
案外、何とかなるもんだぜ?
[笑みと共に向けたのは、軽い口調の言の葉、ひとつ。*]
[確かに先の一戦は、人の身に慣れ温める意味でも効果があった。
互いの利を確認し終えた所>>*45で、戦闘は仕切り直され、新たな局面を迎えていた]
あの御方から……。
[脳裏に少しばかり奇抜な、しかし心根の好さそうな男が思い浮かぶ。
華麗な雷鳥竜とは対照的とも思えたが、しかし良い相棒でもあるのだろう]
わたしも同じですわ。
決して、出し惜しみしないこと――
[微かに笑みを浮かべて再び床を蹴る。
こちらが武器を用意する間に、相手もまた手を変えていた>>*46。
生え伸びる緑の植物の名を、蛇竜は知らなかったが]
――っ! これ、は……!
[しなやかに撓んだそれが、大鎌の柄を受け止め、その動きを阻む。
刃先に触れたなら切り裂けもしようが、腕力のみで押し切るのは無理というもの]
すごい……。山には、こんな"生命"がありますの?
[海の"生命"を力とするものとして、興味と感嘆の声を零す。
攻撃が通らない以上、一度退いて再度斬り直すしかない、のではあるが]
きっと、届きませんわね、それでは……。
[そう独り言ちながら、蛇竜は逆に、己の腕の限界まで矢竹と力比べをする。
そして]
伸びなさい――水柱!
[叫ぶと同時、蛇竜の身は撓んだ竹の反作用を受けて跳ね飛んだ。
無論、ただそれをすれば他の竹か床に激突するのみであるが――次の瞬間、上方へ向けて伸びる水柱が蛇竜の身を呑み込んだ]
[水柱の勢いにより、幾らかの幹や枝は横へ押し退けられただろうが、強引な上昇により枝葉がぴしりぴしりと顔や腕を打つ。
しかしそれには構わず、矢竹の林の高さを追い越して]
ここです!
[中空に身を投げ出し、再び大鎌を構える。
そして雷鳥竜の居場所向け、落下しつつも振り下ろした*]
― 回想/個別領域 ―
[迷いと、少しばかりの恥じらいと共に語った過去。
それを受けての召喚主の語りに、蛇竜はゆっくりと瞬く]
ヴィンセント様、も?
[出自に思う所があるとは、先にも聞かされていた。
自分には立ち入れない事と思っていたけれど、それによる行動や惑いにどこか似た部分もあると知って、蛇竜は小さく詰めていた息を吐く。
翼持つ主を、目映く自由な存在としてどこか遠く見ていたことに、密やかな自省の念を持った]
[それから告げられるのは、この場に来た理由――或いは理由がないことへの、肯定。
考えすぎると言われれば赤面するよりないのだけれど、そうして主に受け入れられたことに、何よりの安堵を覚える]
ありがとう、ございます……。
[口にしてしまえば、些細なことだったかもしれない。
しかしここに至るまでの蟠りが解けたことに、目元が海水ではないもので潤んだ]
まだ、迷いながらで、至らない所もありますけど、でも――
[そうして全てをさらけ出した後に口にするのは、今この場において願うこと*]
どうか、最後まで、共に戦わせてください。
― 回想/個別領域 ―
ああ、まだ子供と言える頃にな。
[瞬きの後に上がる疑問の声に声すのは首肯。
その時と、その後の葛藤を経て、今ここにいるのだと。
言葉にて語らずとも、その意図は伝わるか]
[告げた言の葉が齎したもの。
目元が潤む様には紫苑色を瞬いたものの]
いや、それはこちらこそ、だ。
[告げられた礼の言葉に静かに返しつつ、ふわ、と樹上から舞い降りて]
迷いながらも至らないも、人の事は全く言えん
きみが共に戦ってくれるのならば、最後の瞬間まで、全力で翔け行こう。
と、いうわけで。
改めて、よろしく、だな……ベルティルデ。
[屈託ない笑みにのせるのは、初めて言の葉なした、蛇竜の名。**]
ええ、本当に――強く美しい御方でした。
[二彩の名に頷きを返し、良き縁への感謝の念を抱く。
必死に食らいつくのみの蛇竜には、雷鳥竜>>*56の思う所までは至れなかったけれど]
ふふ……そうでしたわね。
[潮は草木を枯らす>>*57。
聞こえた言葉に僅かに自嘲を浮かばせるけれど、今この場においては強みであることに違いはなかった。
跳躍からの上昇、目まぐるしく変化する視界の中で、雷鳥竜が何を為そうとしているかまでは判断つかぬまま]
[見下ろす視界の中、矢竹構える雷鳥竜向け、構わず大鎌を振り抜く。
刃が滑る感触こそあったものの、その先の手応えは、確かに雷鳥竜へ届いたことを伝えていた。
痛みに呻く声が聞こえた――その直後]
ああっ!?
[大鎌の柄を掴む手、奔る雷光>>*59。
それは雷鳥竜の手中にあった蛇竜を、過たず撃った。
反射的に得物から手を離し、地に落ちる]
さす、がに……効きますわ……。
[海水は雷電を通すものだ。
当然の理を突き付けられて呻きを漏らす]
でも……。
[じりじりと地を這い、手を探る体で雷鳥竜を睨みながら。
蛇竜は水の気を背後にて高めていく。
不利を打ち崩す一手へ、手を届かせるために*]
― 回想/個別領域 ―
[樹上より舞い降りる姿に、自身もまた小島へと這い上がる。
羽毛竜の血を引く召喚者と、海蛇の竜神。
姿は違えど、ようやく同じ高さを得た気がした]
はい。よろしく、お願いします。
――ヴィンセント様。
[言の葉に乗せられた自身の名に、沁み入るような喜びを感じ。
そしてこちらからも彼の名を呼び、深く頭を下げる]
[そして再び、月の舞台へ赴く時。
蛇竜の瞳から、懼れはもう消えていた**]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新