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[気づけば暗い場所にいた。
頭上に満月が無い。石壁に囲まれた部屋だ。
身を起こせば明かりがともった。
燭台の炎が、自分と、もう一人の存在を明らかにする。]
……愛しい人。
[囁いて、横たわる彼の上に屈みこむ。
眠る姫にするがごとく、唇を柔らかく触れ合わせた。*]
[頬に触れる手に指を重ね、捕まえて口づける。
唐突な告白に、指の付け根を軽く噛んだ。]
あなたがそんな言い方をするなんて。―――妬ける。
[もちろんそういう意味でないことは知っている。
けれども、そんな言葉を使わせたこと自体に嫉妬してみせた。]
[引きずってしまったかとの問いには、首を横に振った。
揺れた髪の先が、彼の胸の上を滑る。]
私も、だよ。
不覚を取った …… けれど、
[顔を寄せれば、流れる髪は紗幕となって二人を外界から切り離す。]
―――あなたに呼び寄せられた、
と、思いたい。
[ほとんど唇が触れ合うほどの近さで、言葉を注ぐ。]
私たちがこうしてここにいるのだから、
私の子らも直に来るだろう。
そのまえに、 ─── しよう?
[最後の音は直接唇の中へ吹き込んで、体重を押し被せた。*]
[言葉にはされずとも、彼の全身が愛しさを伝えてくれる。
匂い立のはきっと、燃え立つ血の香りだ。
愛している、と囁いて、彼に没入していく。
全てを溶かして注ぎ込んで、ひとつにしてしまいたいと願う。
時間よ止まれ、と叫んだ者がいるというが、まさにそんな想いだった。
優秀な"息子"は、きっとその想いを汲んでくれるだろう。]
[彼に掛けられた呪いを解き、
何一つはばかることなく彼と会える場所を作る。
闘技宴で欲しかったものは手に入れられなかったけれども、機会はまたいくらでも作れるだろう。
今はただ、彼と交わす至福を、己の全てで*味わおう*]
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