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[ 薬の効果が切れる、とアレクシスは言った。
聞き間違いではないだろうか。今この、彼を憎んであまりある自分が薬によるものなどと?
他の魔族が来ると聞いて、再び暗澹たる気持ちになる。
候補生仲間のことを思い出したのだ。
誰も救えなかった。それどころか、こうして無様に生きながらえている自分を見せるはめになろうとは。]
ひ ぅ… く、
[ 身支度と称してアレクシスが施す処置を、身を固くしてやり過ごす。
厭で仕方ないはずなのに、尻穴を掻き回されているうちに、何故か安心してしまった。
…いたくないようにしてくれているんだうれしいな…
…ほしがってたからくれたのかありがとう…
中に収まる分身蛇を、きゅっと締め付けてみる。]
[ スライムプールが出ると、服が用意されていた。
以前、拘束服を出された時は、何の疑いもなく袖を通したものだが、あの無邪気さは失われてしまった。
今はその意匠に隠された意味があるのを警戒してしまう。
抵抗してみたが、結局は着せられて、
…おせわされることがしあわせだなって…
…さからってもちゃんとしつけてくれるからぼくはじゆうにできるんだ…
…どうしようどうしようくさりだちゃらちゃらなってる…
ふわふわとした足取りのまま、魔王のいる場所まで導かれてゆく。*]
/*
やあうちの子可愛いですね。
なにを言っているんですか。懐いて来る子は可愛いでしょう?
懐かないのもまた可愛いですけれど。
― 寂静の間 ―
[自らのペットを伴って、蛇もまた人の姿で魔王の元へ赴く。
転移せずに歩いてきたのは、蛇なりの敬意の表し方だった。
自身が身にまとうのは、汚れのひとつも寄せ付けぬと言わんばかりの、厳然たる白。監督官の顔をしていた時と変わらぬ装いをしていた。
ウェルシュに身に付けさせているのは、対となる黒の服。
僅かに襟元から覗く首輪からは鎖が伸びて、蛇の手に握られている。]
我が王よ。
黒鱗が御前に。
[魔王の前に膝をつき、ウェルシュの鎖を引いて倣わせる。
それから、彼の鎖を外してやって、前に出るよう促した。]
粗相のないように。
良い子にしていたら、後でご褒美を上げますよ。
[囁きに呼応するように、彼の中で分身がうねる。*]
/*
薬の効かせ方で三種類の可愛い子を楽しめるなんて最高ですね。
そのうち正気で「好きにしろ」とかも言わせてみたいものです。
狼さんが道を示してくれましたし。
[ウェルシュが魔王の前に進み出て、頭を床までつけるのを微笑ましく眺める。
聖騎士に叙勲されるのは誇らしくも感じた。
うちの子が認められるのは認められるのは嬉しい。
私だけの聖騎士。これからはそう呼ぼうか。]
[風向きが変わったのは、その後だ。
我が王がウェルシュに何をしたかは見えなかったが、彼の前に剣が現れ、魔王がそれを『心の剣』だと説明する頃には腰を上げていた。
ウェルシュが剣を掴んだ瞬間には、影に身を躍らせて床の面を疾っている。
魔王に斬りかかる直前に割って入り、背中で刃を受けた。
ウェルシュの中で、小蛇がばたばたと暴れる。]
我が王よ。
私の聖騎士に素晴らしいものを授けていただき、感謝しております。
この子も喜んでおりますようで。
私も早く可愛がってやりたくなったものですから、このまま御前を下がらせていただきましょう。
それでは、失礼を。
[一礼と共に、ウェルシュもろとも闇に溶けた。]
― 自室 ―
[部屋に戻った時には、ウェルシュと向かい合わせに立っていた。
背中の傷は見えないが、はたはたと床に赤い雫が落ちる。]
人間があの御方の魂に触れて、耐えられるわけがないでしょう。
振るう相手は見極めなさい。いいですね?
[人差し指突きつけて叱ってから、ひとつ息を吐く。
そこそこ痛い。ついでに、いつものようには治らない。
魔王の贈り物というのも、困ったものだ。*]
我が王にまで切りつけるなんて。
ああ、うちの子素直で可愛い……!
[間に割って入った瞬間の想いだって、魔空間には駄々洩れているんである。]
ですが我が王と言えど、この子の心には触れさせませんよ。
この子の体も、心も、私だけのものです。
[蛇も竜も、執着心は強いものだ。
竜が宝玉抱くように、闇がとぐろを巻いた。]
粗相をしたらお仕置きだと言っておいたでしょう?
それとも、お仕置きされたかったのですか?
いけない子ですね。
[そんなこと言っていない。
が、蛇にとっては些細な事である。
お仕置きにかこつけて何をしようか、とウェルシュに手を伸ばした時、初めて彼の異変に気付いた。]
どうしました?
まさか私の……なにを見たんです?
[焦点の合わない目の前で手を振り、そのまま顔の輪郭に手を添わせる。
心配の眼差しで彼の様子を見ていたが、途中で我慢しきれなくなって唇を寄せた。*]
[愛しい子が何を見たのか、蛇の知るところではない。
ただ、斬られた時に感じたのは、風の匂いと陽光の温かさだった。
蛇の内側に広がるのは
蛇の鱗が光さえ吸い込むような黒鱗であるのと同様、その魂もまた全てを呑み込む虚無であった。
己の虚を埋めるものを求め、己の魂を温めるものを求めて様々なものを呑む蛇は、やがては太陽すらも呑み込むだろうと予言されている。
ゆえにその名を
[ぷりぷり怒ってるところも可愛いとか、もっとなかせてみたいとか、とろとろにとけてるところも捨てがたいとか、一週間くらいずっと交わっていたいとか、スライムプールならうちの子の体力自動回復で大丈夫かなとか、いっそ中に仕込んでおけば永遠に交わってられるんじゃないかとか、もっと欲しいとおねだりさせたいとか、嫌いなのにいかされちゃうの悔しいなんて言わせてみたいとか、雑念は様々に溢れかえっているが、
ともかくも、手中にした珠に夢中だった。*]
[痛い。痛かった。
いい音を立てて掌が頬に命中する。
その手首を捕えて押さえこみ、強引にキスを敢行した。
牙は立てない。でも舌は出す。
ちらり舌先差し込んで舐める程度の接触で、今は解放する。]
いけない子にはお仕置きですよ。
それともお仕置きされたくて、そんなことをするのですか?
可愛らしいこと。
[既に、下半身は蛇の姿に戻っていた。
機嫌良さげに尾の先がうねっている。
同じリズムを何倍かに速くして、小蛇も尾をぴたぴた振っていた。]
[とはいえ、今はお仕置きよりも別のことが頭にある。]
もうあなたは私の聖騎士になったのですから、これ以上修道院に留まる必要もないでしょう。
記念パーティーも開かれるようですが、私は早くあなたを私の棲家に連れて帰りたい。
何か持っていきたいものがあれば言ってください。
暫く人間の世界には戻りませんからね。
[そんなことを言いながら私物をまとめ始める。
尾の先端が、ウェルシュの足首にくるりと巻き付いていた。*]
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