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――ラト!?
留守を頼んでいたろうに、なぜ来よった。
[驚いて足が止まり、女王らしからぬようにその声に振り向いた。
この世界に来る前に、そう留守を任せてから転移した。
それが自然と出て来たその一言が、女王の失われた記憶が埋まったことを表した。
取り戻した感覚、というよりも、自分の片割れが全て届けてくれたような。
もともと時間軸など関係のないふたりだから、この邂逅によって忘れていた思い出したの線引きも曖昧で、女王は全てを覚えている状態がごく自然にあった。
幼き日々から、師や友や臣下との邂逅から、覇道を志した理由から、この世界で亜神の欠片を受け入れてまで何をしようとしていたかまで――]
まったく……。
せっかく今度こそ"終端"に在れたものを。
ラトまでおってはそれこそ死ぬわけにいかぬではないか。
おかげで余の覇道がぶち壊しじゃ。
[そう微笑んで嘆く女王であるが、覇道を拠り所にした霊体はその影を薄めることはなく。
むしろ片割れを得て再び実体化したかと呼べるくらい幻影が生気漲るように――]
ラト、来い。
ふたりで、冒険に出ようぞ。
[出征のための赤い絨毯は、あのときの僅かな大冒険のときの廊下に敷かれていたものと同じもの。
覇王に付き従い共に駆ける臣下も、そして時には敵にですら自分に至ってみせよと背後を追わせ、先頭となって切り拓こうとした女王が――差し出された手を取れば自然と自分の隣に誘って、ふたり並んで絨毯を歩み登っていった。**]
[赤い絨毯を登りきり、赤竜にいざ乗らんとしたとき、不意に女王の足が止まる。
前に進むと決めておいて歩みを止めるような女王ではないのに。]
ラト。
――もう1人連れて行って良いか?
[隣に寄せる片割れにそう一言。
もちろん断られることを想定して聞くような女王ではない。
聞いたのは、人員の確認のようなものだ。
女王である自分、隣にいる運命の片割れ、地上から出征を見送ってくれている人――そしてもう1人、この場に居ない人物。
女王はその1名を連れて行きたい、今度は最後まで傍に居させてやりたい――と伝えた。]
シロウ、出陣じゃ!
余の王錫を持てィッ!
[それは、かつての師であり、一の臣下であり、最も傍に居て、最も傍に居させてやれなかった人物の名前。
友を通じ彼に託し、今ではその彼が大切に所有しているであろう女王の王錫を求めて、薔薇が描かれた左腕を天に掲げる。
かつての自分の所有物だから鮮明なイメージが可能だったこと、シロウ本人が訪れたことがあったため王錫の物質情報がこの世界に残されていたこと、女王の最期のときシロウと離れていたこと、そのシロウに王錫を託したこと――
これでできぬ話ではない、成功しか確信していない女王の自信によって、その左手にはかつての王錫が握られることになった――これが新たに生み出された複製品なのか、本当に異世界から届けられたものなのかは分からないが。
赤竜の背中に立つ女王、隣に自分の片割れを連れ、そして自らとシロウふたりの魂とも言える王錫を両手でまっすぐ立てて。
その王錫は、あのときと同じ不退転の決意の表れ――絶対に抜けない刀剣を軽く持ち上げて降ろし赤竜の背中を叩けば、翼を起こし3人を乗せて空の彼方へ飛び去った。**]
[まずイメージしたのは、覇道を志す前に初めて立ったある大きな本棚。
ヴァレール王国主星に在る王立図書館の中にある1つ。
そこに納められた本は、人類が母星の大地に立ち、海の恵みを得て、空に憧れていた頃から伝えられて来たもの。
覇王を志した女王の原典、人類の戦いの歴史――
その本は戦争が起こった年の順に編纂されたわけではなく、極めて順不同に巻数を割り振られていた。
――数十年前、太祖ウィレムI世の偉業をまとめた際に誰かがこの本棚を、幾百幾千、あるいは幾万幾億あるかもしれない本を時系列順に並び直すという気の遠い作業に挑んだ成果。
その本棚の最下段の端――最後を表す位置に納められていた本には、"VI"とかなり若い巻数番号が振られていた。
これは、若き日に見た記憶には無かった巻。
今その巻には大きなブックエンドが差し込まれていて、これ以降は存在しない――と強く主張していた。
女王の手がその巻を取り、本を開き、ページをめくる――]
― 創造神の神殿 ―
神よ、そなたに"終端"を見せてやろう――…。
[振り上げた王錫は、覇道にあるまじき絶対に抜けぬ刀剣――それは"終端"の先にあるもの。
この一撃で全てを終え、全てが刃を封じた状態に至ることを夢見て、この刀剣は王錫に選ばれた。
女王の左腕にある薔薇が、茎を伸ばす。
それはこの世界の女王を生前の世界と繋げようとする願いを受けたもの。
薔薇は女王の腕を伝い、手から王錫へ――王錫からさらに茎は伸び、上空に小さな一輪の花が掲げられて、その矢先。
その花を中心に、無数の何かが現れる。
ヴァレール王国宇宙軍、近衛艦隊正式砲艦――その先端、圧倒的火力を発する赤い舳先。
数は、あのときと同じ――戦記に書かれた通り。
ひとつ異なったのは、歴史書には真円を型どっていた陣形は、その赤い舳先によって大輪の薔薇を咲かせていた。
この世界に引き寄せられた女王をここまで支え誘ってくれた薔薇と贈ってくれた人物への心情であろうか、それとも艦隊1つ瞬時に薙ぎ払う陣形ではなく神の顔面を撃ち抜くための陣形がたまたま合致したのか。]
[神像から熱線が発せられれば、どこからともなく現れた艦が目の前に割って入り、燃えて落ちて消える。
あのときのように――ただ1度の必殺の一撃のためだけの陣形を守ろうと。
抵抗が止めば、女王は一歩踏み出して、残った右手を上げていく]
我が忠勇なる王国軍の勇者たちよ。
余を止め余に至った連合軍の将兵たちよ。
母星より熱き魂を繋ぎ、今また共にある古の英傑たちよ。
まだ見ぬ世にて、別の戦いの歴史を刻んでいる者たちよ。
これをもって、人間の永き戦いの"終端"とす――
[砲艦がエネルギーを蓄える。
この出力を女王の覇気が供給できるだろうか、隣にいる片割れと共有しているぶんであろうか、それとも王錫の今の持ち主が遠い世界から見て心をひとつにしてくれようとしているのか、イメージで形作られた砲艦にあのとき運命を共にした将兵たちの魂が乗っていて自分たちの力で撃とうとしているのか――。
エネルギーの光が、砲艦の色を赤から白へ染め上げなおす。
全体を形取る赤い薔薇は、白い薔薇へ。
覇道の情熱から、永き戦いの"終端"へ至ろうとする純潔の想いへ。]
[右手を振り下ろせば、女王の残り全ての覇気が掲げた左腕から王錫を伝い、伸びた薔薇へ。
艦隊の中心にある一輪の薔薇から、全ての白薔薇のエネルギーに。
発せられた火線は一点に集中し――神の顔面を貫かんと撃ち抜いた。3(20x1) ]
[エネルギーを放出した白薔薇は赤薔薇に戻り、還る。
伸びていた赤薔薇は茎を戻し、再び女王の左腕へ戻ろうとするが……もうそんな身体は無く。
"終端"を見届けた王錫は持ち掲げる手を失い、赤竜の背中に落ちる。
その赤竜も供給が途絶えたことでやがて高度を落とすだろうか。
そして女王は――無限にあった覇気を使いきった。
そしてあのイメージの本棚にあった歴史書によれば、女王はこの一撃を放ったのち崩御したと記されている――*]
/*
おぉー……中の人も全部の力使い切ったせいでダイス運に回すものがなかった。
ラトの攻撃は合わせて点数上積みしてもいいし、締めたあとはラトのターンなので上手く決めるも良し。
なんにしても……やりきって、疲れた。
アルビンのとか返すべきのは明日に……(ぱた**
[女王は、ただ"終端"に至りたかった。
母星の時代から続く戦いの歴史そのものの"終端"に――そして、自分自身がその終端になればいいと。
それが女王が覇道を選んだ根底であって、その結末がああなった。
女王は、終端に至れなかったことを悔やむと同時に、自分が終端になれなかったことにより人類の戦の歴史が続く可能性を残したこと、その解決を託さざるを得なかったのを悔やんだ。
だから、もう一度覇道をやり直そうと。
終端へ至るために、自身がその終端となることに。
覇王は何も背負わぬもの――と最も新しくできた友人に豪語しておきながら、敵からの憎悪や怨嗟を全て引き受けることで終端となろうとしていた。]
[けれど、敵でありながら、悪意を知らない男がいた。
根底から計画を崩された女王は、一時的に冷静になって――気性の荒さからまた我を失ってを繰り返して。
そしてこの世界で、ついに"終端"に至った。
その覇気で創造神を打倒し、戦いに終止符を打った。
だから、覇道は役目を終えた。
だから、女王は覇気をすべて使い切ることをためらわなかった。
自分の魂を維持するものでありながら。
なぜなら、終端に至る夢は――終端で自分が消えることで完成するのだから。
だから、かつての女王は必殺であると同時に自身に致命傷が及ぶあの陣形を採ったのだ。]
[――ひとつだけ異なったのは。
あのときは、至りに来た。
今は、はじめから居て、支えとなった。
覇気を全て使いきり、空になった女王の魂は。
そのままこの世界に溶け込んでしまおうとする終端のシナリオに反して、新たなものを注ぎ込まれた。
いつかのように。
いつものように。
――それは、続きがあることを。
死は終端ではないことを、覚えていた。
今の女王の生は――あのときあの場所で、自分の片割れと共に死んでから始まったのだから。]
ラト、おはよう――
[目が覚めたとき、女王の幻影は姿が変わっていた。
纏うのは覇道を示す軍服ではなく――薔薇のレースを編みこんだ薄く透けかねないほどの白が、照らす陽光によって微かに紅く色付いた暁のドレス。
女王の魂は覇道を失い、代わりに自分の片割れとより強固に結びついたことでその幻影も移り変わった。
やわらかく声をかけ微笑んで――互いの生を確認しあった。]
― 創造者の神殿、地上 ―
[エネルギー供給を絶たれ高度を下げる赤竜は、騎乗する女王にその旗艦と同じく"ウィレム"と勝手に名付けられたこともあってか、どうにか墜落することなく地上に降りた。
暁のドレスを纏った女王が――物理的に風を受けるわけではないのに何故か裾をはためかせながら――降りたとき、ここにいた人物らは立ち去ったあとだろうか。
目の前には、たった今撃墜した創造神の残骸。
その最期の声は、夢の中で聞いた。
その形見とも言える欠片が、手元にある。
自分の仮初めの身体に埋め込まれたものよりはるかに小さいが物は同じ――ささやかな願いなら叶うだろうか。]
ラト、この欠片の使い道なのじゃが――
こやつに、この神に、使ってやりたいと思う。
[覇気を完全放出して覇王をやめても、その口調は癖になってしまっているのかそのまま残ってしまって――当分はこのままかもしれない。
女王らしさを残したまま――あるいは纏うものが変わってある意味女王らしさを増して――片割れを向いてそう告げた。]
この神は――余と同じじゃ。
ラトにも、シロウにも、ゲルトにもグレーテにも……もし余が誰にも出会えないまま覇道を選んでいたら、こうなっていたのではないかと思うと、他人ごとに感じぬ。
だから、このまま見捨てて死なせるのはしとうない。
いつか至ってくれる者と巡り会えることもあろうから、手を貸してやりたい。
人間、1度死んでみないと気付けぬものがある――余が何よりの証人じゃ。
ふふ、あれだけ終端にこだわっておいてすぐこれでは、誰かに責められても仕方がないな。
[現れ、倒したときまでは間違いなく神だった。
欠片1つ返した程度で神の力が蘇ることはないだろうが、終端が終端でなくなる可能性をわざわざ残す道理は無いはずで。
けれど、女王にはこの残骸は本質的には人間の遺体と同じものだと見えた。
自分のように、死んでから大きなものを得る人間だっている――だから助けようと。
次でもダメだとしても、やり直せばいつか誰かと出会い至り合うこともできるだろうと――]
――ふふ、その幾度の転生の果ての姿こそが、この余自身なのかもしれぬな。
[その冗談は意外と遠くないかもしれないが、解答は知る由もなく。
女王は、手に入れた欠片を、かつての自分のようなものに還した――自分のようなものが、自分のように豊かなものを得られることを願って。**]
/*
余はここでご挨拶。
というわけで、1年前に2人めの王子のことを報告して、もう今度こそ無理であろうと思っていたけれど――
どうしても女王をやり切りたい想いと、ゲルトの参入を見てお邪魔しました。
ラトともゲルトとも触れ合い、女王として覇気を燃やし尽くせたこと改めてお礼申し上げます。
ロールの内容は私のキャラらしくあいかわらずチートでしたがそこは女王の格ということでどうかご容赦。
あと、またご報告が――。
……実は3人めの存在が発覚ホヤホヤで。
緑の天使にも創造神にもダメージが3点だったのはきっとそういうことだったのでしょう。
さすがに今度こそ本当の本当に来年は無理だろうとは思いますが、何か触れ合えるものがありましたらよろしくお願いします。
シロウ、王錫は返すぞ。
これはもうそなたのものじゃ。
これが抜けぬのと同じように、覇道ももう二度と起こるまい。
人類を頼む、とは言わぬ。
やりたいようにやればよい――と言えばシロウは勝手に頼まれるであろうしな。
[そう笑って、王錫をかつての世界に、今の持ち主に還した。
ただあのとき借り受けたのと異なるのは――その王錫を赤竜ウィレムがくわえていたということだった。
アマツキ家の敷地か、あるいはレントゥスの艦内がどうなったかは、女王は知る由もない。
ただ、きっと面白い顔をしただろうという自信はあった。
当時の王国宮廷ではよくある類の話。**]
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