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ベネディクト、
おまえがハールトでしたということを聞いた。
俺が知りたいのはひとつだけだ。
──救助を求めてきた船に攻撃をしたのは事実か。
[単刀直入、そう切り出す。
目撃者を名乗り出る者は何人もいた。
ベネディクトの旗艦に同乗していた者からも証言があった。
それでも、あくまでも当人の目を見て問う。*]
― 河口の艦隊 ―
[偵察を担う「語り継ぐ者」たちから、随時、情報が入っていた。
いわく、総動員をかけた魔王の軍は数万。黒い長蛇のようだとも。
先陣はすでにグランツェルツ橋を過ぎたが、魔王自身はまだ後方の本陣にいる。
そして、先行して橋を渡った魔王軍はすぐにカトワールへ入る気配がない。]
むろん、こちらの出方を警戒しているんだろう。
投石機を積んだ船を再び遡上させよ。
目的は、グランツェルツ橋の破壊。
騎馬隊、
魔術師を護衛しつつ、挑発をいれて、川の南岸へできるだけ敵を引き込んで。
魔王軍を分断する。
我々は残る船で北へ渡河し、魔王の本隊へ攻め入るぞ。
魔王軍が後方に構わず、我々の動揺を誘うためハールトへ向かったとしても、
ハールトにある「置き土産」で時間を稼けば、民が船で海へ逃げる時間は作れるだろう。
そして、魔力で魔物たちをこの世界につなぎとめている魔王を倒せば、魔物は魔界へ戻るはず。
瞬時にそうならずとも、魔王の力が消えれば組織立った攻撃は潰える。
[その分析は、いささか正確ではないのかもしれないが、目的は変わらない。]
/*
軍師に相談せずすまん、ってくらいに先行して軍を指揮してますが、開戦に持ち込んでおかないとドラゴン落ちがね。
そして、俺のとった策はギィ様の中の人には読まれてるんじゃないかなあと思うよ。
とても久しぶりな気がするよ。
それほど長いあいだ離れていたわけでもないのにな。
離れていても指輪で話せるのも悪くないが…
…やはり、直接笑い合えるほうが心地よいな。
[やったものに満足したようなカレルに、竜は目を細めた。
喜びに溢れ、空へ飛び立つような力を竜は幻視する。
無論本当に飛ぶ事など、出来ないのは解っているが。
フォアレの礼に、竜はゆると頷く。]
[そしてハールトに残された置き土産の事を聞いた。]
なるほど。
ならあたしは、ハールトの近くには居ない方がいいかもしれないね。
[最前線とも言うが、どちらにせよ細やかな動きを得意としない竜には、町から離れた方が都合がいい事も事実だ。]
上手い事お使い。
うまくいくよう、祈っているよ*
− ハールト 軍議の後(回想) −
[ローランドからの言伝>>167を受け取り、カレルは了承の意を伝えた。
ローランドが何をしているのか、追求することはしない。
無関心なのではなく、彼を信用するゆえの不干渉。
自分が魔人を目覚めさせてしまった──
そう語ったローランドほど、この戦に責任を感じている人もいないと思う。]
ローランドはまだしばらく戻らないけど、必要なときには、きっと帰ってきてくれるよ。
どこで会えるかな、楽しみにしていよう。
[皆にはそう告げたのだった。]
― 川の北岸 ―
[橋を落として魔軍を分断し、本隊を突く作戦。
だが、渡河した先の本隊にギィの気配はなかった。]
…入れ違いに南へ渡られた!?
[だが、兵を戻すには敵本隊へ接近しすぎていた。
こちらにはドラゴンがいるとはいえ、数ではまだ敵の方が多いのである。
混乱すれば、圧し潰される。]
− 河口の野営地・夜 (回想) −
[ベネディクトは揺るぎない冷徹さをもって事実を追認する。>>155
カレルは、深く長い息を吐いた。]
事情はいろいろあるだろう。
だが、それはそれとして、今は、これだけ──受け止めろ。
[拳を握ると、ベネディクトの頬へ渾身の一発。]
我らは、「国土」ではなく「人間」を護るために起った。
二度と、人を駒として扱ってはならない ── おまえ自身を含めて、だ。
[カレルのためには、非道な手段を取ることも辞さないというベネディクトの自負を読み取り、叱った。]
― 川の北岸 ―
[ペガサスが翼を広げて舞い上がる。
南へ馬首を向けさせたカレルが見出したのは、グランツェルツ橋を北へ疾駆して戻る馬車であった。>>176
その傍若無人さ、魔王のものに間違いない。]
── ギィ…! 勝負しろ!
[ペガサスは上空からそれを追った。]
[地上の喧噪が熱気とともに空へ届く。
これほど大軍のゴブリンを見るのは初めてだ。
そびえたつかのような巨人に、人も魔も薙ぎ倒されてゆく。
閃く魔法の攻防。
そして、竜は猛々しく、美しかった。
カレルは味方を鼓舞し、スリングショットで敵将を撃ち落としながら、ギィへの距離を詰めてゆく。]
ああフォアレ。
今が千載一遇ともいえる機会だ。
少しお待ち。すぐに…
[竜の声が届いたかはわからない。
だが王子の声は確かに竜に届いていた。]
[竜が吼えると、空がうねった。
雲が集い、渦巻く。
誰もが竜を恐れつつ、同時に惹かれるようだった。
太古の力の精髄であり──残滓。
カレルを乗せた純白の翼持つペガサスは、小さな伴星のごとく竜の回りを巡ってからギィへと向き直る。
そこに見出したのは──]
貴様に後など、ない…!
[魔王に放置されたカレルは、ペガサスをさらに上空へと駆けさせる。
そこで、竜が招いた雲から雷光を呼び込むのように剣を掲げた。
人間が稲妻の直撃を受ければ命はあるまい。
だが、竜と妖精の加護を受けている今、雷の力はカレルに従った。]
せえええぃやああ!
[視界を灼く閃光を剣の先に受け、ギィ目がけて振り抜く。
迸る雷撃は、さながら竜のブレス。
だが、その出力にカレルの剣は折れていた。]
― 回想・大森林の2年 ―
獲れなかったのかい?
[上手く獲物を狩れないカレルに老婆は呆れたように言う。
森に来た当初は薪も割れず、水も汲めず。燦燦たる結果だっただろう。]
仕方がないね。今日はもうお休み。
少しでも体を休めておいで。
空腹なのは我慢するしかないね。
[そう言いカレルを小屋へと送る。
老婆の方は外で休む。閉じられた場所より、開けた場所の方が好きなのだとカレルには言った。]
[虫の音がりんと静かに響き、星の光は慰めのように空に輝く夜。
老婆は静かに小屋を訪れた。
シーツがわりの布は何とか間に合ったようで、それに包まり簡素な寝台で眠る王子と、小屋の様子を眺める。
人間が最低限使って暮らせるだけの者はあるようで、その他小物などを後でいくつか作らせようかとみやった後、眠るカレルの枕元に、魚と果実を置いておいた。]
暫くだけだよ。
[あまり甘やかしても修行にならないが、かといって弱るのも困る。
夢落ちた王子に言いながら、ずれた布をかけ直す。
未だ幼さ残る顔を、少しだけ懐かしそうに見て頭を撫でた後、竜はそっと小屋を去った。
翌日獲物の事を問われても、妖精らだろうとうそぶき真実は明かさなかったろう*]
だから私が死ぬ時になったら、
今度はロルが迎えに来て…
[それが始祖の王と青銀竜の交わした盟約。]
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