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[嵐が来る前にと急いで摂った夕食だが、そういうわけで時間は短くとも内容はぎゅっと濃厚で、別れ際に心は温かく満たされていた。
ジムゾンは教会に、カタリナはパメラの家へとそれぞれ泊る先も決まり、ほっと一安心する。]
あぁ、良かった。カタリナも女の子の家の方が安心だろうからね。
…ん?パメラは家の掃除?
まぁ、後から僕がカタリナを送って行くでもいいのだけど…
あ、ジムゾンさん、そろそろ行かれますか。
祭りが終わるまでと滞在期間は短いでしょうけれど、どうぞまたいらしてください。
……フリーデルさんも、また。
[続々と帰る客人達を、扉を開いて送り出す。
最後に出て行くフリーデルを見て、そういえばこの人が店で食事するのは初めてだったかと、ふと思う。
――正直苦手だ。顔を合わせれば、つい眉をひそめてしまう。
こちらの勝手な感情であるから、彼女には何のことかわからないだろうが…。
それでも、楽しい雰囲気であった『今日』という一日を共に過ごしたためか(或いは酒で気持ちが昂揚していたのかもしれないが)、
「また」という言葉がぽろりと零れたのだった。
…と言っても、顔はなんとも微妙な表情をしていたと思うけれど。]
[そうして幾人か送り出して、最後にはカタリナが残って。
パメラが部屋の片づけを終えるまで、と何かしらの話を振ってみただろう。
楽しい談笑の時間は瞬く間に過ぎ、気付けばカタリナは帰り支度を済まして、一人出て行こうとする。]
あ、待って、リナ。
少し前に降って来たから…これを。
…ごめん。僕のだから、少し大きいんだけど。
[苦笑しながら手渡したのは、雨避けのコート。
送って行こうと扉を開けたが、道の向こうにパメラが見えて(カタリナは気付いていないようだったが)、
…そのまま、カタリナを送り出した。
パメラはアルビンと帰ったはずだった。
だからまさか一人とは思わなくて、
――まだそこにアルビンがいるんじゃないかって。思うだろう?普通は。
…見たくなかったんだ。
パメラとアルビンが仲良く歩いているところなんて。]
[パンを捏ねながらそこまで考えて。]
…おかしいな。
こんなこと思い出すつもりじゃなかったんだけど…
[アルビンが帰って来てからというもの、どうも心が落ち着かない。
嫌な方向に向かおうとする思考を、無理矢理引き戻す。]
[外は昨日の嵐で酷い有様で。
花時計なんかは土が見えて、汚い斑色に染まってしまっている。
…それでも。
ここを再び綺麗に飾り付けることを考えると――そう、それはずっと昔、子どもの頃に皆としたように。
たまにはそういうのも良いかもしれない。
少し、気持ちが晴れてきた。]
あぁ、寝ぼすけのゲルトにパンを持って行ってやろう。
どうせ二日酔いに違いないしね…ふふふ。
[生地の仕込みを終え、昨日焼いたパンを手に店を出る。
オットーの家まで、フリーデルの悲鳴は聞こえて来なかった。
…だからまだ、ゲルトの家で何が起きているかは知らぬまま。]**
― ゲルト宅へ ―
[昨日焼いた丸パンにレタスとトマト、スライスしたチーズを挟んで。
濃いめのブラックコーヒーを淹れて――ゲルトは大の甘党だけれど――それらを詰めた紙袋を手に自宅を後にする。
あちこちから飛ばされてきた色とりどりの花弁。
それらの降り積もった広場は、鮮やかな迷彩模様を描いている。
そんなところからも昨日の嵐が相当に酷かったことが窺えて、
今さらながら、昨日ゲルトを一人で帰したことが少し心配になる。
たしか数年前のこと、酒に酔った楽天家の友人は、
何を思ったか帰宅後、自宅の屋根に大穴を開けたことがあるのだ…
――どうやったのかは自分でも覚えていないそうで。]
[だからゲルトの家の前に着いた時、その扉が盛大に壊されているのを見て、]
あぁ、またやっちゃったのか、馬鹿だなぁもう…
[それくらいの感想しか、浮かんでこなかった。
ズカズカと、壊れた扉を押しのけ中へと踏み入る。]
[フリーデルやジムゾンのように、或いはアルビンのように。
外の危険な世界を知っていれば、また違ったのかもしれなかったけれど。
…なんせ村の外に出たのはたった一度だけ、しかも街には二度と出るまいと密かに誓っていたりする。
村に生きる青年には、非日常な出来ごとなんて想像もつかなかったのだった。]
[その部屋には。
激怒した表情のアルビンと、
何故か、
不敵に微笑むフリーデルと、ジムゾンがいて、
そしてその、奥に、
その奥に。
真っ赤に染まった、ゲルトが、いて――]
[――もちろん。
わかっていたよ。
だって、見ればわかるじゃないか。
…一目瞭然だ。
ゲルトはもう、目を覚ますことはないって。]
[その事実をすぐに受け止められなくて、
笑った顔のまま、涙が頬を伝うのをただ感じた。
―――何故?どうして…?]
[手から紙袋が滑り落ちる。
それは酷くゆっくりと、床へ向かっていって、
グシャリと嫌な音を立てて、無様に潰れた。]
[流れ出るブラックコーヒーが、床に真っ黒な水溜りを形作る。
ゲルトから目を背けて、ぼんやりと、それをただひたすらに見つめる。
――まるでそうしていれば、ゲルトが生き返りでもするかのように。
アルビンが、或いはフリーデルかジムゾンが、声をかけてくれただろうか。
誰にともなしに、振り返って問う。]
…一体、何が……?**
[手から紙袋が滑り落ちる。
それは酷くゆっくりと、床へ向かっていって、
グシャリと嫌な音を立てて、無様に潰れた。]
[流れ出るブラックコーヒーが、床に真っ黒な水溜りを形作る。
ゲルトから目を背けて、ぼんやりと、それをただひたすらに見つめる。
――まるでそうしていれば、ゲルトが生き返りでもするかのように。
アルビンが、或いはフリーデルかジムゾンが、声をかけてくれただろうか。
誰にともなしに、そこにいる者の顔を見渡して問う。]
…一体、何が……っ?
/*
自分でもちとロルが駆け足だったとかそういう。
無理矢理だなー、感情とか思考飛んでるし…
あと、せっかくみんないるのにソロールごめんなさい…時間をだいぶオーバーしてて焦ってるCO←
色々悔しい。
[――あぁ、これは昔、どこかで。
…そう、なんだか。
母さんがしてくれたように…。
無言でぼんやりと、苦手なはずの修道女の顔を見つめる。
おかしいな。母さんだなんて。
彼女に抱いていた感情は、全く真逆のものだったはずなのに…?]
[フリーデル・ド・プジー。
最初に彼女と出会った時に思い出したのは、街で見かけたある女の姿。]
[…昔話を一つしよう。
まだ親子3人揃って暮らしていた頃のこと。
あれもたしか、夏至祭の季節だった。
この時期、父さんは毎年街へと向かい、祭りの支度を整えて戻ってくるのが常で。
――だがその年。いつもと違うことが起きた。
…そう、父さんは街から帰って来なかったんだ。]
[夏至祭から一週間が過ぎ、ひと月が過ぎ。
何か事件に巻き込まれでもしたのだろうか。
心配になって、僕は街へと父さんを探しに行った。
…そこで見たものは。
街人らしい華やかな衣服に身を包んだ女と歩く、父さんの姿。
後をつければ、仲睦まじげに談笑しながら家の扉を開け、中へと入っていく二人…]
[驚き、動揺したあまり、声もかけずに村へと帰って。
何事かと心配する母さんにありのままを話してしまい…
大丈夫、と笑いかけてくれたけれども、言葉で言い表せないほど悲しんでいるのは明白で。
それから後、人に見えないところでひっそりと涙を流す背中を、僕は何度も目撃している。]
[母さんを悲しませた原因。父さんを誘惑した女。
まったくの別人ではあるけれど、フリーデルはその女に非常によく似ていた。
心を弱らせた母さんは身体も弱って病気がちになり、暫くして亡くなってしまった。
以来、街には一歩も踏み入れていない。あれが最初で最後だ。
…僕は父さんみたいな人にはならないと、胸に誓ったのだった。]
[言いがかりにもならない、酷い理由。
でもそんな経緯で、憎んでいると言ってもいいほどの女に似ているフリーデルが苦手で、
楚々とした態度もどこか冷たく思え、嫌な人だと今日までずっと避けてきたのだが。
――それが、どうしたことだろう。目元を拭う手は思いがけず温かく優しい。
…もしかしたらその指先は少し、震えていたかもしれないけれど>>68。]
[言葉もなくその顔を見つめ、僅か後ずさりかけたところで。
「説明しましょう」と、後ろからそっと背を押す手があって>>72。
そのままアルビンに肩を抱き留められ、現実――ゲルトの死と、村の孤立を知ることとなった。]
え……っ。
[その言葉は、冷静な思考を奪うのには十分すぎるほどで。
ただでさえ混乱しているのだから。
アルビンの話からは、酷くマイナスの印象を受けた。
ただ娼婦をしていただけであったり、
人狼だと疑われて東の都を追われただけであったなら、また違っただろうか。
しかし過去の出来事とそこで出会った人とを、ずっとフリーデルに重ねて見ていたから。
娼婦というものへの不信感はただならないものがあって。
――あぁ。傾きかけていた天秤は。
また、元の位置に、戻ってしまったんだ。]
フリーデルさん…
貴女は…貴女という人は…
聖女のふりをして僕らを騙して…
本当の姿は聖職者とはほど遠い…
嘘、なんだ。嘘ばかりだ…!
さっき涙を拭いてくれたのも、あれも、全部!
人狼、なんでしょう?
ゲルトを殺して、知らん振りの仮面を被って…
…そうだ。そうに違いないよ。
僕は騙されない。そんな演技なんかに。
もう騙されないよ。裏切られるのは十分だ…
[アルビンの言葉で衝撃を受けて、思考は停滞してしまう。
フリーデルの言葉に込められた意味や気持ちを汲み取ることは、もうできなかっただろう。
頭を振って、彼女の存在を拒絶する。
フリーデル、貴女がゲルトを、ゲルトを──]
パン屋 オットーは、シスター フリーデル を投票先に選びました。
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