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─ 王都アマンド付近 ─
[仕掛けるならば援軍の騎兵が到着してからの方がいい。
そう考えて今は待ち受ける布陣をとっていたので……よもや『正々堂々戦おう!』>>156という意味合いに捉えられているとは露とも思わず。]
おやぁ… あちらさんも?
[朗々と響くひとつの声>>157は、騎士然とした真っ直ぐさに溢れていた。
少なくとも嘘をついているような響きはない。
内容も、特にこちらに怒っている様子もなく落ち着いたものだった、が。]
あ〜〜〜…っ!?
[バリスタの矢>>158が突如、空から飛来する。
男は慌てて盾兵の奥へと隠れた。]
これ、やっぱり怒らせちゃったのかなぁ…
『メレディス様が余計なことなさるからですよ』
いやいやぁ、大事なことでしょあれ!たぶん!
[そんな軽口を叩けるのも其処までだった。]
仕方がない… 全軍前進!
[相手の騎兵は動かないが、このまま立ち止まっていては矢の餌食だ。
最前列の盾兵らが矢を退けつつ扇状に陣形を広げて弓騎兵との距離を詰めようとし、その後ろから長槍兵が穂先を突き出し人馬を狙う。
弓兵らは応戦するように、左右の弓騎兵や前方に向けて矢の嵐を放った。
クリフがすぐに送ってくれた援護>>121は、まだ届かない。*]
─ 王都アマンド付近 ─
[大盾で防ぎきれなかった矢を受けて、兵が次々と倒れてゆく。
弓騎兵の機動力に、重装備を持った歩兵の動きが追いつかないのだ。
本来であればその弱点を味方の騎兵がフォローしてくれる筈だった。
だが、今は────…]
くっ、
[更に矢だけでなく、石>>171までが飛んできた。
なるほど投石機ってこうも使えるのか勉強になった──と一瞬、現実逃避したくなった気持ちを振り払う。]
…散開っ!
[長槍は一般的な歩兵の得物よりも対騎兵に効果的だが、なにぶん重量があるので、急な動きに弱いのが難点だ。
投石機によって放たれた石を避けることができず、隊は混乱し、規律だって動けないから更に的になってしまう──という悪循環だった。結果、特に長槍兵が多く削られてしまう。
そこに──前方から騎兵が迫る。]
慌てるな! 落ち着いて目の前の敵を倒すんだ!
[ナネッテに習った通りに単純な命令を繰り返す。が、一度浮き足立った兵を落ち着かせるのは困難を極めた。
それでもなんとか、まだ戦意を失っていない兵が騎兵を迎え撃とうとする。]
『メレディス様、後ろから…!』
っ、…! そっちも、か
[弓兵が反転して矢を番える。近づけまいと慌てて射るが、……それでも数は減らしきれない。]
まずいなぁ…これは、
[突撃してくる騎兵の中に、先程の宣言時に見えた白い羽飾り>>157を視認すると]
…、…──
[ほんの僅かな思案の後、男は声を張り上げながら距離を詰める。]
そこの大将!
俺は連邦属国リンデマンスの王様のメレディスというんだけどさぁ。
お手合わせ頼もうか。
[鎖鎌の分銅側を、相手の馬の足を鎖で絡めとるように投げつけ引っ張る。うまくいけば落馬を狙えるだろうと。*]
[相手の驚く顔>>183に、まぁ確かにこんなところに王様が、しかもお偉いさんが馬にも乗らずにいるとは思わないよなぁ、なんてしみじみする。
手応えはあった。成果も。
が、相手の反射的な動き>>184は予想を超えて機敏だった。]
──── ぁ、ぐぅ… っ!?
[文字通り頭上から振ってきたランスが、左肩から胸にかけてを痛烈に殴打する。肺の中の空気が一気に搾り取られるような心地がした。重量級のランスがぶつかったことによる痛みと痺れで、身体のバランスを崩しその場に横転する。]
[荒い呼吸を繰り返しながら、天を仰ぐ。空の青さが眩しい。
左上半身に走る痛みは、すぐに動けるようなものではなかった。]
は、…はははぁ……
やっぱり難しい なぁ…
[訓練を積み重ねてきた騎士や兵に混じって戦うには、自分の力量は未熟すぎた。
でも、……────
まだ、諦めない。自分は…王様だから。]
[戦局は終わりを迎えようとしていた。
リンデマンス隊は多くを蹂躙され…残った兵らも、王が倒されたのを見て混乱に拍車がかかったのだろう。部隊として完全に瓦解し、散り散りに逃げてゆく。
敵味方の犠牲があちこちに転がる中で…
男もまた大地に横たわりながら、自分を倒した相手に声を掛ける。]
ねぇ… そこの大将… お願いがあるんけど、さぁ…
俺を捕虜にして…
そちらの司令官殿に 会わせて… 貰えないかなぁ?
[虫のいい願いなのは百も承知で、頼み込む。]
俺は、……この戦争の先を 見据えている。
そのために、 そちらの司令官殿に… お願いをしたいのさぁ。
[負けた将がどの口を──と思われるだろうが、それでもいい。此処でむざむざと命を落とすよりも大事なことがあると、男は信じていたから。*]
/*
やぁ…本当にナイジェルには感謝…!!!
どうにか、想定していたところまで来れたなぁあ。
こんなに遅くまで付き合ってもらえて、全力で拝むしかない。
確かに、その方が兵の命が守れたかも、だねぇ…
[もう少し早く>>188との指摘に苦笑する。自分の状況判断が今一歩足りないせいで、余計な犠牲を強いてしまった。とはいえ幾ら後悔しても──時間も命も撒き戻らない。失われたものは、失われた侭だ。]
……、わかったよぉ。
文句は 言えない立場だし… ねぇ。
[ナイジェルと名乗った騎士が告げる、今後の自分の処遇に対して、素直に頷く。
ひとまず捕虜になれただけでも、今はよしとすべきだろう。]
………………………………、 風呂?
[ただ最後の単語に首を傾げる。ここは戦場ではなかったか…? マルール王国はティルカン連邦の常識では測れない何かを持っているのかもしれない。真顔でそんなことを考えながら…
男は深く息を吐いた。*]
─ マルール軍にて ─
[それは何時のタイミングだったか。
中央平原での合戦が小休止した頃か、あるいは……
ともあれリンデマンスの王様は、マルール軍司令官への面会を許可された。]
お初にお目に掛かる──…
俺は連邦属国リンデマンスの王、
メレディス・ソラーニー・リンデマンス。
この度は此方の無茶振りを聞き届けていただき、感謝するよぉ。
[礼を失することのないよう丁寧に会釈する。]
[そうして顔をあげ改めて…タイガの風貌を観察した。
凛々しい顔立ち、逞しい体躯、ただ佇んでいるだけで威圧感のような力強さを周囲に発している。
(……これが噂のユリハルシラ司令官殿、かぁ)
同じ司令官でも、連邦のクリフとは全くタイプが異なる
ユリハルシラ司令官、
…、──貴方には一度会ってみたいと思っていたんだよぉ。
[吟遊詩人が歌う華やかな英雄。
かつてのネズミっこのおにーさん。
其処だけを切り取れば、天秤は好意の方に自然と傾く。]
でも上手い方法を思いつけなくて、ねぇ。
こんな手段をとらせてもらった。
[捕虜になって敵司令官に会うという暴挙。だが男は賭けに勝った。
傍目には決して見栄え良いものとはいえない。敵の陽動に嵌って、自国兵の命を徒に失ってしまったのは間違いなく男の失態だ。
それでも。…時間は撒き戻らないから、兵たちの死を積み上げた山に立ちながら、今──自分が出来ることをやろうとしている。]
貴方に……、お願いがふたつある。
でも其の前に、少し。
俺の話を聞いてくれるかなぁ。
[そうして最初に口にしたのは…実に元農家らしい単語だった。]
────── 品種改良、 ってあるだろう?
ふたつを掛け合わせてより良いものを作る…
農家だと作物相手によくやる手法さぁ。
俺はねぇ、
マルールとティルカンを交配させれば
もっといい
……そう、思っているんだ。
[男は、理想を滲ませ目を細めた。
新しい品種を生み出そうと毎年交配に挑戦し、最良の作物を目指したあの頃──。
その時の情熱は、今は形を変えて、…リンデマンスの王様の心に宿っている。]
[そうして口にしたのが、この間クリフにもぶつけた問い>>1:137だった。貴方はブリュノーがこれまでのままでいいと思うか? …──と。]
俺は、ブリュノーって作物を品種改良したいんだよぉ。
もちろん、ひとんところの国政に口を出す気はないけど、さぁ。
でも────ここまで周りを巻き込んだんだからねぇ、
少しくらい…意見をいってもいいかなぁって思うんだ。
それに、品種改良すればきっと国の質が上がる。国益が増す。
生活が豊かになるなら──民も歓迎もしてくれるかなぁ、って。
[それは俺の勝手な願望だけどぉ、と添えて笑う。]
そしてブリュノーが変われば、
俺の国──リンデマンスもおのずと変わる。
隣から得られる刺激が変わるんだから、当然さぁ。
マルール王国も、ティルカン連邦も。
新しい風は…きっと新しい実りを産む。
[今の戦争を否定する気はない。
クリフ>>2:33が言ったように、勝利がもたらす益こそが有用な場面もあるかもしれない。それでも、]
どちらがブリュノー王政の主導を握るか──…
それも確かに大事なことだけど、
本当に大事なのは其処じゃあないって俺は思うんだよぉ。
先日…貴方の弟くんが連邦の野営地に来た時、お土産を持ってきたんだ。
その土産のタラの塩漬けと、俺んとこ産の野菜。
一緒に煮込んだら とっっっても! 美味かったんだぁ。
そりゃあ、料理みたいに簡単なことじゃあないだろうけどさぁ…
片方の国だけで勝手に進められるものでもないし。
…、でも。
不可能って決めちゃうのも勿体無いって、思わないかい?
[野菜のことを語ると止まらなくなるように、自分が熱を入れていることを話し始めると止まらない性格が此処でも出た。
ひとしきり喋ってから──…ようやく我に返る。]
…… は、 はっははぁ…
うん、まあ。
全部俺の理想で、
ティルカン連邦の総意って訳じゃあないんだけど、ねぇ。
[若干赤くなった頬を掻く。]
でも、────…
うちの司令官殿は、多分、同じ理想を持っていると思うのさぁ。
だからユリハルシラ司令官。
貴方にお願いしたい。
この戦の決着がついた後…
我がティルカン連邦軍司令官
クリフ・ルヴェリエにお会いいただきたい───… と。
[二人が出会えば何かが変わる……
それは予感かもしれなかった。]
それがぁ大事なひとつめのお願いで……
もうひとつは、ねぇ。
[自らを指し示すように、右の手のひらでぽんぽんと己の胸を叩いた。]
──俺をこのまま、マルール王国の捕虜にしてほしい。
[まぁ現時点で既に捕虜なのだが。改めてのお願いである。]
属国とはいえ、俺は一国の王様だからさぁ。
俺が死ぬと、連邦としては面子を潰されることになりかねないんだよねぇ。
そうなると……色々面倒になりそうでしょ?
[そう考えるに至った理由は、軍議で聞いたナネッテの弁>>0:153にある。王国側に比べれば連邦は名誉よりも実利を取る性格だが、それでも名誉を傷つけられればいい気はしないだろう。]
あとねぇ…
俺さぁ、言われたんだぁ。
“敵を倒すよりも自分を守れ”──って、さ。
[あの時を思い出して、男は口の端に笑みを滲ませた。
それは友人であり先生であるローランドからのアドバイス>>1:32だ。]
だから仲間がきちんと戦ってくれるのを信じて…
俺は、ここに留まって自分の命を守っておきたい。
あとついでに捕虜になることで
マルールの国の雰囲気ってものも知ってみたい。
[多くのリンデマンス兵を犠牲にしてしまった悔恨は今なお在る癖に、我ながら全く身勝手なことだ。でも、]
…そういうものらしいからさぁ、 王様って。
[恥知らずでもなんでもいいから、生き残る。
それが───… 国のために、未来のために、なると…信じて。***]
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