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確かにこちらが兵をわけることで各個撃破はあるかも──
カトワールを落とすのが無理と思ったら、逃げて。
おまえの才は計算に裏打ちされた冷静さにあるから、俺に引き際の講釈なんかされたくないと思ってるかもだけど。 はは。
すぐにカトワールへ出発してもらうことになると、入れ違いになって会えないかも。
休む間もなく転戦で申し訳ないけど──
いける?
[武の人ではない相棒を思いやりながらも、期待し励ます声を送った。]
ありがとう、 丈夫なのが取り柄さ。
お互い、頑張ろう。
[見えていればブンブンと手を振って見送るようなオーラで、ひとまず通信を終えた。]
― ハールト=ファットリア間渓谷 北 ―
[ローランドが連れて来たうち、非戦闘員をファットリア南方へと送り出せば、残りはいくばくかの騎兵と民兵たち、峡谷越えをしてきた弓兵部隊となる。
おおよそ1000名でハールトへ向かい北上する。
今回、偵察は、地理に明るい『語り継ぐ者』の一族に任せた。
背後から接近するヴェルザンディ隊に気づくことができるかは、偵察次第といったところ。>>124
偵察には、西へ逃げた人さらいの騎馬隊の消息も拾えるなら、と要望しておいたが、有益な情報は得られるかどうか。]
ローランド、
ハールトにいるベネディクトと遠距離相談したんだけど。
ベネディクトには船団を率いて、カトワールに向かってもらうことにした。
魔物の軍をハールトに集中させないための陽動だけど、ベネディクトには別途、やってもらうこともある。
我らは、レト隊と合流して魔軍と戦うことになる。
魔軍が陽動にかかってくれたとしても数はちょっと…ではなく足りないけど、ベネディクトがハールトに置き土産をしていってくれるみたいだから。
それを使って、敵の足並みを乱そう。
[置き土産の正体は、小声で打ち明けた。]
あのね、置き土産っていうのは、模造ドラゴン。
ゴブリンたちが本物と思って慌てふためいたところを攻撃する作戦だ。
[本物のドラゴンがハールトに向かっているなど、知る由もなく。>>134]
偵察のとりまとめ、よろしくお願いするね。
模造のドラゴンとは、考えたものだね。
[よくぞ考えるものだと感心の声]
承知した、そちらは任せておくれ。
[偵察に関しても承諾し、再び男は頷いた]
― ハールト近郊 (南)―
[峡谷から北へと行軍を進める。
ローランドが取りまとめる斥候隊から、こちらを窺う一団の情報がもたらされた。]
ダークエルフとは、 手強いね。
[竜のすみかで、ディルドレから与えられた本でそれら妖魔のことは学んでいた。
しかも、魔人を復活させた者となれば並の相手ではない。が、]
魔法を唱える暇を与えないよう、わたしが突撃して、相手をするよ。
わたしとルストに護りの魔法をかけておいてもらえる?
[強敵と判じてなお、のっけから、そんな提案。]
あと、オークには、比較的経験のある弓兵と騎士を向かわせよう。
あなたの魔法も加えて、そこを倒せば、残るゴブリンはこの隊の数で圧倒できるはず。
全体の指揮は、ローランド、あなたに預けていい?
”借り”が…?
[ローランドの眼差しに籠る決意を受け止めて、カレルは唇を引き結ぶ。
その因縁は聞いていた。
背負うものがあるのは自分ひとりではない。]
──わかった。
ダークエルフはあなたに任せる。
[そう兵らにも周知し、作戦を呑み込ませた。]
ありがとう、ローランド。
これで──え?
[加護の魔法を施してもらったところで、武器の貧弱さを指摘され、全体が金属製のハルバートと長剣を騎士の従者から借り受け、装備する。
さすがに鎧まではうってつけがなかったので、相変わらず篭手のみだが、ローランドのまじないが身体を包んでいるのは感じていた。
魔法の素養がある者には、輝きが増してみえるか。]
鎧はこれでいいんだ。
この方が動きやすいしルストの負担にもならない。
[そうして身支度を整えると、遭遇にそなえて場所を選んで陣取った。
民兵と弓兵を遮蔽代わりの灌木の後ろに隠し、カレルは騎兵と共に前へ出る。
あとは、敵の出方を待つだけ。]
[ローランドからの追加報告に、短く頷いた。
兄の剣を持っていた男。
黒い疾風。
捕虜になった者たちの選んだ死を伝えられた時だけ、天を仰いで瞑目した。
その想いを空に放つように。]
[そうして、近づく敵団を見れば、だれが元締めかは明白だった。
ダークエルフというわりに、肌は白く見えたけれど。
オークらと隊伍を組む人間もいることに、軽く目を細める。]
我々は、魔物の支配を打ち破るべく起った義勇軍である。
我々に投降するつもりで来たのなら、武器を放棄してきて。
さもなくば、交戦の意志ありと見なします。
[そんな宣言をする姿は、こちらもまごうことなき王家の威風を具現化したものだった。]
[投降の呼びかけは、魔法の発動で決裂を宣告された。
足元の不穏な動きに馬たちがいななく。
よくない感触は伝わってきたが、魔法の対処は端から任せてある。]
カレル・セヴェルス、 これにあり!
[作法は一騎打ちのそれに近い名乗りをあげて、敵の視線と隊列を分断べく、上空へとペガサスを飛ばし、ローランドの援護とともに突撃した。**]
― ハールト近郊 ―
[ペガサスに乗って上空へと踊り出たカレルは射手にとってはいい的だ。
弓の扱いに長けたダークエルフの風纏う矢は過たずペガサスの翼を叩く。
衝撃に純白の羽根が時ならぬ雪のように舞い、馬体は傾いだが、撃ち落とされるには至らなかった。
共に守護魔法をかけておいてもらって正解。
だが、どこまでその効果がもつかはわからない。
誇り高いペガサスは闇の力に触れられて怒りの嘶きをあげ、矢を放ったダークエルフたちへ蹄を見舞う。]
ルスト…! 俺らのターゲットはそこじゃない。
[ローランドと言葉をやりとりしているダークエルフとは別個体なので、まあよしとしつつ、旋回させてオークらに向かう。]
[ヴェルザンディの先制魔法による落馬をまぬがれた騎士たちが、ローランドの指示で側面から突撃をするのにあわせて加勢した。
足の動きで合図を出せば、ペガサスはスクリューめいた機動で背面飛行に遷移する。
その状態から、カレルは、身長のあるオークを狩り倒すべくハルバートで周囲を薙ぎ払った。]
[そこへ、音のない漆黒の騎馬軍団が風魔法を嚆矢に傾れ込んでくる。
このタイミングか、という血の湧くような高揚を伴う感慨をカレルも抱いたものの、空中機動力を駆使して戦況の一望確認をすると、味方を誤射するのを恐れて手をこまねいている弓兵たちへと、騎馬隊への斉射を指示した。**]
― ハールト近郊 ―
[やはり通常の弓部隊でナイトメア隊を押さえるのは不可能のようだ。]
白兵武器のあるものは持ち替えて中央に突撃!
ここは数で勝てる!
[次なる指示を飛ばす。
双方の歩兵が、複数で相手に当たれという指示を受けているため、白兵戦は混乱の渦中にあった。
波状攻撃で揺さぶろうとする魔物軍に対し、さらに数を投入して士気を上げんと試みる。
だが、即座に弓を山刀に持ち替えた猟兵はさほど多くなかった。
彼らを躊躇させるものがある。それが──]
[のたうち転がるいくつもの身体。
その異様な痙攣と苦悶のさまを見れば、呪詛か毒が原因というのは明らかだ。
義勇兵だけでなく、ゴブリンたちにも損害が及んでいる。
狙い撃ちではなく流れ矢。
その災厄の出元は、3名のダークエルフだった。
目があう。
本命はおまえだと言われた気がした。]
── てぇああっ!!
[直近のダークエルフと義勇兵の射線を遮るように、カレルはペガサスの背を蹴って跳ぶ。
すかさず放たれた矢を薙ぎ払い、そのままダークエルフに跳び蹴りをかました。
竜のすみかで精霊たちを相手に鍛えた身体能力は伊達ではない。
膝のバネと反動を利用して地面にふわりと下りたつ。
その場へ、黒い馬の群れが突っ込んで来た。
とっさに飛び退り、危うく蹄を躱す。]
[数で勝る義勇軍を畏怖させているもうひとつの要因、ナイトメア部隊だった。
今しも、あの男が果敢なる騎士の首を落としたところ。>>248
その武器は兄の剣ではなかったけれど。]
[くすんだ金髪に目を奪われたのは一瞬のこと。]
…は!
[蹄と鎚を躱し、目の前を駆け抜けんとするナイトメアに手を伸ばして、まさに尻馬に乗る。
騎手のゴブリンの襟首を掴んで投げ落とした。]
勝利は我が方にあり! 押し返せ!
[馬上から、よく通る声で叫び、味方を鼓舞する。]
[本当はどっちが勝っているかなんてわからない。
だが、こちらが優勢と、そう思わせることは勢いを呼ぶ。
突撃を躊躇していた弓兵の中で、死者の武器を拾い上げて攻撃に加わる者が出た。]
よしっ!
[もう一押し、流れを決める何かがあれば。]
…おおっ
[騎手が変わったことに気づいたナイトメアが、カレルを振り落とさんと暴れる。
死角からダークエルフの矢が襲いかかる。
カレルは、身を伏せ、ナイトメアのたてがみを掴んで悍馬を制した。
ゴブリン用の鐙は短くて用をなさなかったけれど、元よりペガサスに乗る時にも使っていない。]
走り続けろ、 それでいい。
[闇を厭わないものだけが乗りこなせる魔界の馬。
その有りようを肯定し、促した。]
[それにしても──]
さすが。
[周囲の黒騎兵たちが囲みにこなかったのはハルバートの旋回範囲を避けてではなかった。
気づけば周回した者が背後に迫っている。>>294
向かい合うべくナイトメアに合図しながら、視線は自然と、くすんだ金髪を探していた。]
[「大勢死ぬンだ」と、馬上の男は言った。]
もっと大勢が殺される世界を選ぶことはできない。
[短く答える間にも、両手に煌めく刃が迫る。]
[鎌の曲線を持つ凶悪な武器がハルバートの柄の外側から襲った。
ハルバートの柄を足で蹴ってさの切っ先を逸らす。
だが、同時に兄の剣が胸目がけて突き上げられた。]
──くっ
[かろうじて躱し、脇腹と腕で男の手首を挟みこんで押さえつける。
組み合ったまま、ぎりぎりの拮抗。]
[と、男の背後に、矢をつがえるダークエルフが見えた。
ふたりが動きを留めた今──
シェットラントごと、カレルを射抜くつもりだとわかる。]
──危 、
[刃を交えている当の相手に、同時に警告を発することに、矛盾は感じなかった。
瞬時に両手を離した、一瞬。*]
[均衡が崩れて身体が傾ぐ。
落馬する──
刃が振るわれるのが見え、同時に自分が抜き放った剣も、弧を描き、男の身体を薙いでいた。]
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