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[本音で言えば、戦いたくはない。
けれど甲高く鳴る弦の音を合図としたように、大きく息を吸って、吐いた。
水中では必要なかった呼吸の動作]
ええ、でも……。
それが呼び出された者として、やるべき事ならば。
[片手を床に着き念じれば、白蛇の半身は人間の二本脚へ変じる。
同時に月白の衣は、膝下までの丈のある貫頭衣へ。
片膝の姿勢から立ち上がり、素足は感覚を確かめるように二三度床を擦る]
やって、みせますわ。
[久し振りに身を支えた両脚には、隠し切れぬ震えがあった。
それでも眼差しは真っ直ぐに、己の主を見据える**]
― 月の舞台 ―
[同じ舞台に立つ変彩竜――初戦の相手――がこちらを見定め、戦場を選んだ>>35ことは知る由もなく。
蛇竜は目の前の召喚主に意識を集中する。
全力を見せろ、と、叱咤するような鋭い声>>34。
真珠色の煌きに、風の力の気配を感じた]
[このような形で――異界で、しかも主との対峙という形で、触れることになるとは思わぬ力だった。
ほう、と口の端を緩めたのは一瞬。
意識はこの場にてやるべき事へと向けられる]
[竜神としての武の素養はあれど、慣れぬ二足の体捌きでは、空舞う相手への対応は不利と思われた。
ならば――と地上にて身構えた蛇竜の身に白き蔓の如きものが這う。
無光沢で硬質なそれらを枠組みとして膜が張り、鱗が生じ、衣の上から上半身を覆う鎧となる。
同時に掌中に生み出されるのは、枝分かれした革紐の先に鉤爪のようなものがついた鞭]
[どこか生命を思わせる素材のそれらこそ、蛇竜が生み出し操る武具だった*]
[こちらの有様は、相手>>*1に如何なる印象を与えたか。
真一文字に口を結ぶのは、緊張の表れと不安に揺らがぬよう。
刹那の後に相手は羽ばたき宙へ舞った。
両足は踏ん張るように着いたまま、相手へ向けて視線を上げる]
――武器、ではなく、術……。
[手にした弓を如何様に使うのか。
思案したことの答えの一つが眼前にて展開される。
変幻なる動きの刃を、動き回りかわすのは難しいと、内心で判断しつつ身構える]
はっ!
[手にした鞭を払うようにして、軌道を逸らし威力を減じたのは、三つの刃のうち利き腕に近かった一つ。
残る二つは左上腕と脇腹――鎧により守られた部分を掠めつつも通過する。
無論、各部の骨や鱗に欠けは生じたが、意に介すことなく鞭を構え直す]
[風の刃を絡めた際、鞭の枝分かれの内半分ほどが千切れ飛んでいた。
しかしそれはすぐさま再生し、更にその長さを伸ばしていく]
["生きた武具"の強みは、硬さではない。
それを示すが如く、鎧の傷もまた徐々に塞がりつつあったことは、召喚主の目に届いていたかどうか。
いずれにしろ、蛇竜は己からの一歩を踏み出し]
行きます……!
[十本に枝分かれした革鞭を、投網の如く大きく広がる軌道で、宙にある召喚主へ向け振るった*]
中々、面白いものを使うな。
いろいろ予想外だ。
[一矢放ちつつ、落とす呟きは感嘆の響きを帯びたもの。*]
[蛇竜の武器は形定まらぬもの。
再生あるいは成長と見える変化は、相手にも伝わったことだろう。
とはいえ限度がないわけではなく、鞭の先端が空舞う相手に届いた>>*7のは幸運といえた]
とはいえ、……決めきれはしませんね。
[枝分かれし広がった鞭の幾本かは、召喚主により斬り払われる。
それを引き戻す動きをしつつも、顔を顰める主に表情を強張らせた。
そこで立ち止まるわけにはいかないと、思考を振り払うけれど]
[武器が手元に戻るや否やの時、次なる一撃が放たれた>>*8
それは先の攻撃と性質の違う――射撃の構えより生じた光の矢。
軌道はやや甘くはあるも、鎧でまともに受ければ貫かれてしまうことは想像に難くない]
……ならば。
[蛇竜の身が、何かに弾かれたように左横へ倒れた。
直後、元々体があった場所を光の矢が通過する――水飛沫を散らして]
――出し惜しみは、すべきでない、ですものね……。
[強引な回避から身を起こしつつ、"呼び出した"水塊を手元へ引き寄せる。
それは海に住まう竜として、本領ともいうべき力。
ただ、思うまま振るうことには、若干の迷いはあったのだけれど]
――ありがとう、ございます。
[感嘆の声。
一般的な竜神と召喚師の力の差を思えば、当然と流すべきことだったのかもしれない。
それでも、嬉しかったのだ]
届かせなきゃ、いけない。
[それは、目の前の空舞う主に対してでもあり。
そして、この先戦うことになる竜神に対しても。
それが出来なければ、結果は目に見えている]
行き、ます。
[鞭を"変化"させる暇はなかろう、だからそれを活かすように。
鞭の先端へ水の力纏わせ、そしてそれらが十の礫となるように、主へ向け飛ばした*]
[感嘆の声に、返る響きは嬉し気なもの。
あー、これはほんとに無垢だなあ、なんて感想は、心の内に押し込めた。
それでも、穏やかに笑む気配が零れ落ちるのは、止められないわけだが]
[弾け飛んだ水礫は、舐めれば塩辛いと感じることだろう。
蛇竜が操れるのは海水と等しき塩水のみ。
けれどそれは、この場においては些細なことだ。きっと]
[武ではなく術の力を用いたことに、召喚主が見せたのは、笑み>>*16。
相手を傷つけたことに惑っていた時よりそれは良い表情だったから、これでいいのだと、自分を奮い立たせる]
[拡散させた水の礫は、翼ある者とて全ては避け切れまい。
それに対し主が選んだ行動は予想の外にあった。
距離を取るのではなく、急降下>>*17。
多少の傷は厭わず地に降りた幻燈師が光の矢を放つ。
避ける間もない攻撃に決着を覚悟した瞬間、閃光が視界を奪った]
[足音、弦の鳴り、そして到来する風の刃。
先程より小さいものなれど、それは次々に鎧に当たり、砕き、咄嗟に身を縮めたとはいえ顔や腕の素肌にも傷を刻みつつあった]
まずい、ですね……。
[間もなく視界は回復した。
しかし気紛れな軌道で飛ぶ刃の回避は難しく、防戦一方となっている]
……このまま、終わるのは。
[勝ち負けは、恐らく重要でない。
けれど、なす術もないまま終わってしまうのは、駄目だ]
[幻燈師の攻撃が止むよりも早く。
とぷん、という音と共に、蛇竜の身は繭の如き海水に包まれた。
到達した風の刃は水を飛沫かせはするが、その奥へ到達する頃には大きく威力を減じていた]
[その内側で、蛇竜は身を低く屈める。
そして、水繭が弾ける――召喚主の足元向けて、蛇竜を弾き飛ばす方向に。
ほとんど腹這いに滑るような有様で、無様もいい所だったけれど]
はあっ!
[直後、身を跳ね起こすようにしながら主へ向け振るったのは、革鞭から切り離して手中へ握り込んだ鉤爪**]
/*
やっぱ難しいよね…飛べるキャラvs飛べないキャラって。
前例がない訳じゃないだろうけど…。
他二柱は普通(以上)に飛べるみたいですしね。
後は…割と何でもありのつもりで能力設定しちゃったけど、制限の法則性とか考えるべき、かな…。
[水の勢いに押されるように床を滑り身を起こせば、眼前に見えたのは主の笑み>>*35。
それを目の当たりにした蛇竜に、ようやく、少しだけ自身に裏打ちされた表情が浮かぶ。
とはいえまだ勝負は決しておらず、互いにここで止まる心算もない]
届けっ……!
[叫びに自らの意志を乗せ踏み込む。
遠距離主体の主に対し、こちらに利のある間合いのはずだった。
ならば、主は如何に対応するのか――と。
振り上げた鉤爪の先、相対するように打ち下ろされたのは]
え……
[人ならざる手だった。
むしろ自分たち、竜神の本性が有するような。
しかし疑問を差し挟む余裕もなく、激突の時は訪れる。
――8(20x1)]
[油断をした心算はなかった。
しかし端麗な有翼の姿を持つ主が、竜の如き爪を振るうとは予想していなかったのも事実で。
交錯の瞬間、こちらの鉤爪の手応えは浅く、一方主の竜爪は左肩を深く捉えて鎧を大きく砕いた]
くっ……
[勢いで前のめりになりながら、腹這いの形で床に倒れる。
形勢は決したと言えるだろう]
負け……ました……。
[身を起こしつつも、項垂れた視線のまま宣言する。
右手で押さえた左肩には、僅かながら赤色が滲みつつあった*]
……あの……
良かった、のでしょうか……?
[俯けた顔を上げぬまま、掛けられた言葉>>*59に呟きを返す。
奥の手とも言えるものを引き出したこと、反応は肯定でも胸中は揺らぐ。
しかし片膝つく気配に、ようやく姿勢を正し視線を主へ向けた]
わた、しは……。
[互いを知り、盟約を結ぶための儀式。
ただ乗り切ることに必死であった蛇竜に、相手を評する言葉は何もなかったけれど。
改めて、と告げられた言葉>>*60に、ゆっくりと頷きを返す]
天翔ける風と光の術師よ。
主と認め、盟を結びましょう。
良き舞闘とならんことを。
[盟約への了承を返し、見やるは人の形へ転じた右手。
その上には血潮に似た紅色の珊瑚があった。
異界へ手を伸べた時の胸の熱を思い出しながら、その上へ右手を重ねた*]
ああ、それと。
『奥の手』の事は、後で説明するんで。
とりあえず、他の連中には内密にな?
[立ち上がりざまに落とすのは、揶揄うような口調の言の葉、ひとつ。*]
[召喚主に掛けられた言葉にひとつ頷いて。
重ねた手の内、珊瑚が熱を帯びるのを感じる。
主との目に見えぬ繋がりが生まれたのもそれと同時か。
安堵に小さく息を吐いて]
はい。
……次までに、万全にしなければいけませんものね。
[休息を勧める声には同意を返す。
身に受けた傷を塞ぐのは、術下にある武具のようにはいかない。
とはいえ今回程度のものなら、落ち着いた場に居れば回復はすぐだろう]
[右手を軽い支えに、二本の足で立ち上がる。
周囲巡る風の補助に、密やかな笑みを零した*]
はっ――
ええ、勿論です!
[囁かれた言葉には慌てたような了承を返す。
とはいえ相手の口調は、揶揄うような軽いもの*]
[こちらが立ち上がった後、召喚主の手は静かに離れた。
自身をこちらへ呼び寄せた石は、彼の手に握られたまま>>49]
あ、はい!
[休息場所へ歩き出した主を、追うように歩き出す。
化身したばかりよりはやや慣れた足取り。
軽さを感じるのは、周囲を舞う風による安心も加わってのことだろうか]
― 個別領域 ―
[異空の入り口の先。
水に囲まれ小島の浮かぶ空間を見て、蛇竜もまた目を円くした]
すごい。
ちゃんと……水場まで用意されているのですね。
[自らの力により確保するまでもなく。
淵に寄り手を浸せば、それは確かに海水であることが力の気配により感じられた。
碧色で透明度の高い水は、覗き込めば適度な岩場や海藻もあり、まさに海を切り抜いたようだ]
[驚きはあるが召喚主の言葉>>51には小さく頷くに留め。
腰を下ろす主を見るともなしに見た後]
では、わたしも……失礼致します。
[ぱしゃん、と小さく水音立て、海中へ。
一潜りして再浮上する頃には、半身は既に白蛇へ変じていた]
やはりこの方が、落ち着きますね。
[本性そのものでないとはいえ、長年を過ごした姿はやはり身に馴染んでいた*]
― 個別領域 ―
そういえば、そのようなことを話していましたね……。
[召喚主の話に頷く。
聞いてはいたが、予想以上に広々とした空間だったのはやはり驚きだ]
[一度身を海中に潜らせた後、治癒の術を使いつつ語り始めた主>>55へ視線を向ける。
ちなみにこちらは術ではなく自然治癒頼りだが、最適な環境が得られたので問題なく完治するだろう。
そうして語りに耳を傾けていれば、彼の右手は再び竜のものへ変じる]
へ……?
[そして、あっさりと告げられた答え>>56。
すぐには呑み込めず、しばしぽかんとした後]
竜のお子……ということ、ですか……?
[それは翼においてもそうだという。
魔界に住まう種族としての特徴だと思っていたが、どうやら違ったようだ]
それって……ありえるのですか……?
[思わずそう口にしてしまったのは、あまりに信じられなかったため。
異界の行き来を阻む壁は厚い。少なくとも、竜にとっては*]
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