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──── ひとりに されたら、
ひとりなりに、生きていくと 思います。
[ …どうかご安心ください、までは、言えた筈だ。
話に聞いただけの かぞく だなんて。
きっとずぅっと 手に入らないもの、だから。
其れは、…買われる前から悟っている。
テーブルの奥、内緒の"呪い"を思い起こし、
からん と、氷のぶつかる音を聞く。 ]
[ …自分でも、驚く程度には、
そう時間もかからずグラスが空になっていた。
─── "はじめてきいた"って、
そういうことじゃあありません。
主の 背伸びにつられ、
ポニーテイルにしていたゴムを取ろうと、
両腕を頭にまわし、
おにきょうかん、と 同時に聞いた。
…だからきっと、運が悪かったのだ。
ほんとう、を告げられた気がして、
"わたし"もほんとうを返そうとすると、
………一体何が でてくるのでしょう。
綺麗な"モノ"など なにひとつ、─── ]
[ まるで何時か、"猫"がやってきた日、
遊び相手を無くした男が、
髪を手繰った其れによぅく似て、 ]
──── ソマリ様 も、
きっと 怒るのですね。
[ 冗談、の ような、ほんとう のような。
自分でも分からない言い回しで 髪を解く。
……でも、もし、ほんとうにそうだったとして。
其れでも自分 は表情ひとつ変えないのだろう。
……たぶんね* ]
[ ……きっと、遠くを、見ていてくれたから。
だから碧と再び合った時には、何時も通り だった。
─── 手を 取るべきか悩んだ。
手助けなら、取るべきで、
紳士的でも、……多分 取るべき、だったのだけれど。
綺麗じゃ無い"ほんとう"を纏わせた後じゃあ、
…どうにも。
─── だから嚔に安堵すらして!
ゆる、と 立ち上がったと同時、
着替えましょうとだけ告げた。
……両手は きっと、空いたまま* ]
─── "おいろなおし" の あと ───
[ それから、宣言通り。
ワンピースに着替え直し、
長い白髪は 全部おろしてしまった。
年齢なんて、其れこそ興味も無く。
"もうすぐ20になるらしい"程度の認識であれ、
幾分か"年齢相応"になった様子で
"buffet"
( ─── 主より発音は拙いが、 )
の、メニューを示し、 ]
わたしは…ソマリ様を 運べない、ので。
あまり、飲まないでくださいね。
[ 真面目な顔で言いつつ、
此を取れば良いですか、と
指先で示す料理は 大体、主の好みのものだと思う。
…自分は?と言われてしまえば、
どれが良いのだろう。
何年経っても自分の好みなんて分からなくて、
多分、何時までも主に任せてしまう気がする。
……今がまさにそうだろう。
あれ、とか これ、とか。
並んで選んでもらう中、 ふと、 ]
─── ソマリ様が ご結婚、されたら、
…… 違いますね、
わたしが …何時かひとりになったら、
今日を 思い出そうと、思います。
食べるものを 自分で選べるように。
[ ぽつり と 落とした其れは、
…自分への言い聞かせのような色もあった気がして。
主があまり話さない ように。
何時か、を きちんと想像するのは、
本当は、自分にとって…難しいのかもしれない。
細いゆびさきが、迷いを隠しもせず、
彼方此方、メニューをたどる。 ]
[ たとえば、もし、
自分とおんなじ容姿の誰かがいたとして。
"買われた"理由が そうだったとして、
主の人生に必要なのは、その"誰か"で良かった筈だ。
"もしも"のおはなし、何時かのおはなし、
"白い髪に紅い瞳"が"わたし"だけで無かったとして、
それだったら誰だって良かったのでしょう?
自分で考えてみて、
そりゃあ 問い先も自分だったから
そうだね、って肯定するしか無くて、
だから 何時かの"買われた誰か"は
必ずしも要るものじゃあない。
……きっと。 ]
[ あの日の理由も、事実も、真相も。
結局あの世界の端がどうなったかも。
幾度思い起こしたところで、
ちぃさな舌に乗せ、声にしようとしたところで、
"いまさら"* ]
─── buffet ───
[ ─── …果して
今目の前に居るのは主なのだろうか。
変わった"主"に変わらない顔を向けたまま、
此ばっかりは考えることを放棄して、
手元をジャンクなもので埋めていた。
尚貰った飲み物は水である。
…飲む飲まないは置いておいて、引きずるとか止めたい。
主に酔うとは言うけれど
主の行動に面食らいそう、はあるかもしれない。 ]
[ 飲み込んだ先に つなげるように。
大皿の底を片手で支えて、主の 真似。
ちぃさな声で、場に相応しくない内容を、
しぃ って 人差し指を立てながら。
─── そう、ずぅっと真似していた。
…真似する他に、あの家で学べなかったので、
たとえば"ユーリエ"の筆跡も 主にそっくりな訳で、
単語の発音も 拙いながらによぅく似ていた訳で、
マナーだって、なんだって、
だから、 ]
─── ソマリ様を 見ていたのに?
[ …どうして真似をしてはいけないの?って
本当に不思議そうな 顔をして、
つられてローストビーフを貰っていた* ]
[ 軈て テーブルを挟んで。
おんなじ皿を完成させたものだから、
おんなじように、食べ物を取り、
─── 先に、思い出したみたいに、
伸びた髪を耳にかける。
最中 …碧の視線を感じたから、 ]
─── ソマリ様は"おや"ですか。
[ 慣れない言葉を返しつつ、紅を向けた。
"ふつう"の"わたし"だったら、どうしていたのか。
この年齢、ボーイフレンドでも出来ていたのだろうか。
"おや"が本当にいたとして、
其れを 嬉しそうに語っていたのだろうか。
…… ぜんぶ もしもの はなしだけれど。 ]
わたしが何時まで "ここ"に居るのか、
わからないですけれど、─── …
[ 水のグラスを傾ける。
……記憶の中の"わたしのような誰か"は、
もっと幼かったけれど、
既に"おとな" とはいえ、
あの時から 時が止まったみたいに、
主は変わってないところがあるから。 ]
何時までも 部屋の片付けが出来ないままは、
……やめた方が良いです。
そうじゃなくても、
もう 良い年齢だって …何度も言います、きっと。
…何時か ほんとうに居なくなったときに、
何も出来なくなりますから。
[ 良い年齢の お話は。受け売りだけれど。
"酔った"訳でもないのに 舌が回る。
─── 誰の "真似"だか** ]
[ ずぅっと昔の記憶
若き軍学校の少年に、 強く つよく疵を残した
" 初恋 "
白い髪に 紅色の瞳、
名もない少女の 肖像画 ]
( 腕を引かれた、髪を掴まれた、
嗚呼此から人としての"わたし"が死ぬ、
── 等と、愚かにも、モノのくせに、 )
[ "買われる"前の 想起。 ]
[ 相手なんか、誰でも良かった。
誰だって どうせ、わたしは選べないのだから。
だから 誰かの"かわり"になればいい。
望まれるなら 愛を囁かれる相手になればいい。
その腕に 抱かれる者に、
そうすれば きっと、まだ、
"わたし"が望まれていないのなら、其れが、
──── 嗚呼、
あと どれだけ、呪いを重ねれば、 ]
──── ソマリ様は、…恵まれています。
その気に、ならないだけで ゆるされるのだから
[ 皮肉でも 嫌味でも 無かった。
"本当のこと"に対して、
─── "主"が"何"なのかの答えが出ず、
─── "未だ"捨てる気にも
綺麗にする気にもならないことに、
…どうして?が先に出てきて、紅が上がり、
( どうせこのいろだって かわりだ!
"そんなのわかりきっている" ) ]
…… わたしは その気にならなくたって
ぜんぶ ゆるされなかった のに、
[ ……今度は舌が回らない。
つっかえたみたいに途中で途切れて、
持ち上がった"誰か"の紅色を 皿へと戻した。
本当に、怒っている訳じゃあ無い、のに。
自我 とも 違うけれど、
……だから、わたし なんて、出すべきじゃあ無いのだ。
フォークを皿が擦って、細い、厭な音。
帰る日、が 重なるものだから 尚更、 ]
[ ……そりゃあ、
まるで"保護"でもされているみたいに、
世話になっているのだから、
帰る先だと 認識はしていて。
( ─── 今、漸く 気付いたけれど、 )
今回だって直ぐ帰ると思っていた故に、
荷物は最低限にも程があって、…… ]
……… そこで ソマリ様に
出て行けって言われたら、
[ ──── ひとりなりに生きていく、と、
言ったばかりだったことを、思い出し。
……抑も、よぅく考えなくたって、
そう必死にならなくても良いことだった筈で、
フォークを握りしめていたらしい手を見下ろし、
今度は 自分に、"どうして?"が降りてくる。 ]
…………… 、
なんでも ありません…
[ ……周りの こえ、が 遅れて聞こえた。
声が思ったより響いていなかったことが、
幸いだったと 思う。
"主"に倣って水を飲もうと したけれど、
握っている手を解くのが難しくて
……只 そのまま。 ]
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