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[
ざわり。
風もないのに揺れた空気に顔を上げる。石で作った釜の下に小枝を放り込む。もくもくと石釜にそれらしく作られた煙突から煙が上がる]
――??
[保存食を少し用意しようとした、のだがつい熱中しすぎて燻製やら蒸留水やら、当初の目的をすっかり忘れていたりとか。首を傾げつつ、続けて小枝を火にくべようとしたら、伸びてきた弦がぺしりと小枝を手から払い落とした]
あっ。
[燻製は火をたかないと完成しないのに。邪魔するように伸びてきた弦を、そばに置いていたサバイバルナイフで切り落とし、そのまま火の中にポイする。落ちた小枝も一緒に。]
[改めて辺りを見回すと、弦だけではない。木の枝が不気味にざわめき、まるでこちらに来いとでも言うように道を作る]
………。
[ぺしぺしと伸びてくる枝を切り落としては火にくべながら、考える。あちらへ行けということか。しかしあちらに何があるのか――もしこれを起こしているのが、あの化け物だとしたら。実際何度か助けられているし、会ったところで大丈夫、なのかもしれない。けれど自分に抵抗するだけの力がないのが問題だ。顔を合わせてしまったとしたら、きっと逃げるのは難しい。
行く気の薄そうな様子に焦れたのか、少し太めの枝が燻製釜を叩き潰すようにしなるのに目に入る]
はぁ!
[ナイフで一閃。しかしこれでは落ち着いて燻製が作れない]
あー…分かった。分かった行くよ、行くけどちょっと待って。これだけ作ったらちゃんと行くって。
[植物がこちらの声を聞いて、理解できるのかは分からないけれど…少し寄ってくる枝が乾燥したものになったから、聞こえていたのかもしれない]
[完成したばかりの保存食や飲み水用の蒸留水を綺麗に洗った大き目の葉で包み、ポーチに押し込めば移動の準備は完成だ。やれやれ、というように枝や弦で形作られた道を見遣る。
気が乗らない。実に気が乗らない。けれど行くと言ったのだから仕方ない。
石を積み上げて作った燻製釜を押し崩し、燃え残りがないようにきっちり消火を確認する。早くしろと急かすように枝がうねうねしてるけど、行く意思があるうちは一応おとなしくしてくれるようだ]
さて。
[行くか、と足を踏み出す。枯れ葉がざくりと音をたてる。さて何が出るやら。願わくば、この先にいるのがあの化け物のような何かではないように。
もしかしたら、もっと厄介なものかもしれないが*]
[
特に反抗するつもりはない、けれど急ぐ理由もないからまったりと歩く。変わり映えがあればいいのだが、警戒するような生き物も危険も見当たらないのだから仕方がない]
……あ、れ?
[微かに聞こえるのは、人の声ではないだろうか。まるで掛け声のような。
こんなところで出会う人物がまともであるとも思えないが、上手く道でも聞ければ幸運。声の方へと微妙に進路をずらしてみる……それは、木の枝に許されなかったようだ。仕方がないから肩から提げた愛銃に手をかけつつ、じっと目を凝らした。ところで]
[
「吾様は天才か!」
なんて声が聞こえて、眉を寄せる。聞き覚えが、あるようなないような。あるとしたら、それはけして聞きたい声ではないような。だって聞き覚えがあるとしたら、それは一緒にここに来た筈の彼である可能性が高いのだ。
向ける視線の先。敵として何度も見慣れた軍服姿にとっさに木の陰に隠れようとするのだが、行動に移すよりも向こうの動きの方が早かった。
なにやら目一杯の笑顔のままその体が跳躍して、一際太い枝の上に着地――そのまま
びたーん!!
派手な音を立てて、顔から倒れこんだ]
――うわぁ。
[あれは痛い。絶対痛い。何をやっているのだろう。
呆然と眺める先で、そのまま木の枝に乗せられ運ばれていく化け物。木の枝をかりかり引っかいているのは、抵抗のつもりなのだろうか。奇しくも……でもないか。方向は同じようだ。わぁ行きたくない。
と、枝の上の化け物と目が合った]
あ。
[あ、やばい。咄嗟にウィンチェスターを構える。
化け物がこちらに向かって何かを伝えるように口を開き、枝から飛び降りようとするのが見えた]
……。
[遠く声が響き遠ざかっていく>>43
なんだろうあれ。困った。あれを相手に緊張し続けるのが難しい。そこまで怖いものではないのだろうか。よく分からないけど、歩くことを促すように枝が肩を叩くから、止めていた足をまた動かした。
どれほど歩いたのか、所々に折れた枝や蔓が散らばる>>23のが散見されはじめ、あのすごい勢いで枝に乗って移動していた彼のせいであろうか、と考えるが、それにしては散らばる枝が少ないような気がする。
やっと招く先へとたどり着いたのか、枝が導く先に高い城壁とその向こうに尖塔が見える。まっすぐ進む先に開いた門が見えた]
――…。
[あそこへ行けということなのだろう。けれど今までの様子からして、あそこから入るとあの化け物と出くわす可能性が高い。さすがに門の中までは見えないが、ちらりと動く人影が見えた。ならば。
道を外れて歩き出したせいだろう、小枝が進路を邪魔するようにしなった]
行くよ、ちゃんと行く。別のところから入りたいだけだよ。
[伸びてくる蔓を切る、まではせずにナイフの裏のギザギザの部分で受け止めて遠くへと払う。蔓の動きもどうしてもそこからでなければダメ、という訳ではないのか文句を述べる、くらいの頻度でしかないから、払い、押しのけながら歩くことしばらく。新たな門が見えてきた>>45]
― 東の門 ―
[先ほどの門は開いていたが、こちらの門は閉じていた。けして乗り越えられない高さではないのだが。]
ふ、む。
[近くでうねっていた蔓を引っつかんで強度確認。ずるずると森から引っ張り出して三本の蔓を絡めて長い一本のロープもどきの完成である。
先に大き目の石をくくりつけて、門から少し離れた位置からの侵入を試みた。だってあの門大きくて開きそうにない。もしかしたら呼び鈴のようなものはあるかもしれないが、ただでさえ危険かもしれない場所に行かなくてはいけないのだ。できるなら、目立ちたくはない。
あっというまに蔓を手がかりに門の上まで上りつめ、近くに人影が見えないのを確認してからできるだけ衝撃を殺しつつ飛び降りる。進入に使った蔓に結びつけた石をほどいて蔓から手を離すと、蔓はするすると城門の向こうへと戻っていった。続いて追い立ててくる様子はないから、ここに入ってしまえばもう構わないのだろう。
よく分からないが、これは招待なのだろうか。ならば建物に入らないといけないのだろうか……うん、気にしないようにしよう]
[ 東屋に近づくど、石造りの池が見えた。東屋もしっかりした作りだし、休憩にはちょうどいい。ここしばらく落ち着かなかったし。
備え付けのベンチに座り、あちこち見回して。池を見ると、湯気が上がっているのに気付いた。これは ]
池、じゃなくて、温泉、かな
[さすがに今の状況で入る気にはならないから、休憩所にさせてもらおう。
この場所はとても静かだ。警戒を緩める気もないのに、気付いたらぼんやりしてしまっている]
[仮眠でも取れればいいのだけど。じっとしていると、だんだんに眠くなってきた。温泉の熱気で気温が高いせいだろうか。
とにかく眠る訳にはいかないと、首を振って眠気を散らす。ついでに安全そうな今のうちに、銃の手入れもしておこう。ライフルは手入れを怠ると、狙いが悪くなる。
軽く分解して部品を布で拭き──考えるのは、元の場所に戻らなくてはということだ。
あまり非科学的なことを信じてはいなかったのだけど、この場所はおかしい。空にはずっと月が見えていて、生き物は謎ばかりだ。植物は意思を持って動くし…とにかく、おかしい]
[しかし、帰りたいと思うなら]
──会わない、とダメなのか…?
[ここがどこかは知らないが、来た原因なら、きっとあの化け物にある。手が触れた瞬間にこのよく分からない場所に飛ばされたのだから。帰る手がかりはあの化け物にしかない。しかし]
会う、のか……
[気が重い。ミヒャエル自身は何もされていない、というか助けられてもいるが、あの化け物は人を殺すことに躊躇いがない。何かの拍子にミヒャエルがそうならないという保証はない]
[しかし、とにかく。帰るならば会って、そして原因を探らなくては。そのために、今度見かけたなら、少し話しかけてみよう。今のところ、ミヒャエルに危害を加えるつもりはない、よう、だし…]
………。
[できれば、距離を取った状態で。こちらの位置が分からなくて会話ができればなおいい。武器は手放さないで。難易度高い。]
[考え込んでいたせいだろう、物音に気付くのが遅れた。人が動く気配に振り返って…たった今、会おうと思った人物が、逃げようがない距離に立ち尽くしていた。
お互い、フリーズして。とっさにできたのは]
うわぁー!!
[悲鳴をあげるくらいだ。ウィンチェスター…は、分解してる!なにが安全だ!腰の後ろに挿していたSAAを引き抜き、銃口を向ける。しかし、話をするつもりの相手を撃っていいのか。怒らせないだろうか。
迷いがあったせいだろう、逃げる間も無く。攻撃もできず。次の瞬間には、しっかりと化け物の腕の中に捉えられていた]
[会いたかった、だなんて。耳のそばで囁くのはなしだと思う。背中がゾワっとした。力が抜けるからやめてほしい]
ヒィ⁈
[情けない悲鳴が漏れる。なんなんだ、なんなんだこれは!まさかまだ女と思ってるのか。さすがに気付くだろう普通。柔らかさもないし声だって低い。いや化け物の前でまともに喋ったことはないかもしれない]
は、なせ!ちょ、な、に…
[片手に持ったままのSAAが邪魔だ。さすがに引き金は引けない、化け物よりも自分が怪我をしそうで。押し離そうにも近すぎて、慌てて服の背中を掴んで引っ張るのだけど…これは、抵抗になっているのだろうか*]
離せ!!
[そんな声は相手に届いているのだろうか。しばらくはじたばたと無駄な努力をしてみるのだけれど。
触れた頬が濡れているのに気付けば、ほんのちょっと抵抗は弱くなった*]
[これは違う。
あの女ではないと、ここまで近づけばさすがに気づくことはできたのだが。
ならば何故、これを見ただけで吾の封は緩んだのか。
いや、違う、のだろうか?
封が緩んだのは小物であって、吾は、吾はただの──…
この世界に来て、より本来の吾らに近づいた今、
吾の中にはひとつの疑念が浮かんでいる。
あの女とこれの違いを理解していたということは、
吾以上にあの女を知っていたということではないのか?
小物の痛みを吾は引き受けることができるが、吾の痛みを小物に押し付けることはできない。護られているのはどちらといえるだろうか?
吾と小物、この生き物の主体はどちらだ?
]
エル、ディリ……
[耳慣れた地名に相手の胸を押していた腕の力が少し緩む。夏に。覚えている。突然の奇襲、事前に入っていた情報。敵がどこに潜むかまでは分からない。うちの上官が、ここへ陣を張ると言い出して。彼の頭の中には正確な地図が入っていたのだろう。とても暑くて急造の土嚢の後ろ、汗と埃と土と、薄汚れて待ち伏せて結果、上官の読みは当たっていた。そんな記憶。一目ぼれをされる要素がない。そもそも]
あの、な。俺は
[男なんだ、と告げるつもりで見上げた視線がばっちりと合った]
――…。
[情熱、執着、恋慕。どれと言っていいのだろう、分からないけど彼の目は本気だ。どれだけ思ってきたのだろう。けどその相手が男でなんだか申し訳ない。もっと早くに話せていれば、誤解も解けていたのだろうか。少なくともこんな場所に飛ばされたりは、しなかったのだろうか。けれどミヒャエルは男で、もうどうしようもない。せめて今更であっても、誤解は解こう。それが責任というものだ]
あの、な、おれ……って、ちょ、待て近い近い近い!わあぁ!!
[力が緩んでいたせいだろうか。離れていた距離がなくなりそうな近さにまた悲鳴をあげた。いくらなんでもキスでもしそうな距離は近すぎる。ミヒャエルが本当に女性だったら一発アウトの距離である]
に、げ、ないから!だから放せ!頼むから!距離ー!!
[顔が近いんだよ!慌ててまた相手をぐいぐい押しやる。押す力よりもミヒャエルの背中に回った腕が締め付けてくる力の方が強いから、距離はちっとも離れない。ひぃぃ、とまた悲鳴が洩れる。もはやちょっと涙目だ。もうキスでもすれば少しは落ち着くのか?!いやダメだ余計にこじれるし、男と分かったらどうなるか分からない]
[必死で顔を背けて抵抗を続けてどれ程か]
「……そうだな、場所を変えたい。」
[聞こえた声は、冷静なものだった。ばっと勢い良く男の顔を見上げようとして――視界が、黒に染まった]
?!
[一瞬理解できなかったけれど、それは男の服だ。距離が近すぎて黒にしか見えなかった。つまり、ものすごく近い。
離れたい、けれど。
付き合ってもらえるだろうか、という声は否定を許すものではなかったし、抵抗をしても逃げられそうもない。事情を説明してくれる、ようだし。
それより、なによりも。分かってしまった。今の彼は、さっきまでの彼とはなにかが違う。そう、あの時>>0:41の。全身血塗れでこちらに手を差し出し、凄むような笑みを浮かべた>>0:42、あの時の]
?!?!?!
[違った。彼とこれは違うものだ。掴まってはいけなかったのは、彼ではなくてこれだ。でも背に回った腕は離れそうもない。
抱きしめられたまま、微かな浮遊感……元いた場所からこの訳の分からないところに飛ばされた、あの時に似ているけれど、もっとずっと短かった。そして一瞬後には、また周りの風景が変わっていたのである*]
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