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[クロイツの囁きもまた、テオドールに迎合するように届く。]
猫は愛玩物であると同時に、捕食者だったな。
…貴様は、まさしく猫だ。
[こちらも、闇に感想を溶かす。]
[蝋燭を掴んで書斎へ向かう途中、人間を見かけた。
ひどく怯えた表情で「助けてください」と訴えられる。]
貴様がこの城から出る方法を知っているというなら取り引きに応じてもいい。
そうでなければ、今のおれが貴様にしてやれることは、「何もしない」ということに尽きる。
[正確には、その必要がないゆえに牙を剥くことをしないだけである。
追い払うように手を振った。]
[人間が足をもつれさせながら視界の外へ去るのを待ち、改めて書斎を目指したが──]
…違うな。
[自分の感覚が確かなら、ここに階段はなかったはず。
目くらましか、空間歪曲か。
タクマの血をもらっておけばよかった、と思った。
そうすれば、彼がどこにいるか感知できたのだが。]
[謝罪の言葉を述べた男は直後に態度を豹変させ、血を求める。]
おれを、曜変天目のリエヴルと知ってのことか。
[返す視線に緋が過る。
問うておきながら答えを待たずに、上体を壁に寄りかからせたまま、前蹴りを仕掛けた。]
[どうやら個人的な怨恨ではないようだ。
人間が城内にいるなど、どれだけ長期戦をさせる気かと思ったら、なるほど、これも障害というわけか。]
話をする前に「やらせろ」と言ってきたのは貴様だ。
動くな、 座ったままでいろ。
[そう言ったのは、相手の体調を慮ってのものではなく、安全な距離と位置を確保するためだ。
指示に従うならば、話を続けるのはやぶさかではない。
断るならば、関節を極めて押さえ込んだ上で話を聞くことにしよう。]
何を根拠に減らないというのかわからんな。
[いきなり襲いかかってきたやつの話を聞いてやろうとした自分は、随分とおひとよしかもしれないと真面目に分析しながら、反抗する男の腕を捻り上げて押さえ込む。]
背後からの奇襲はよかった。
だが、まだ格闘の技量が追いついていない。
おれの血が欲しければ、もっと鍛えてくることだ。
──楽しみにしている。
さて、このまま立ち去れるとは思うな。
[自分に敵対してきた者を放置するほど甘くもない。]
おまえの血を少し、もらっておこうか。
[必要があれば、居場所を探るためだ。
押さえ込んでいる男の手首に牙を向ける。]
貴様は、おれに負けた。
[リエヴルの信条は簡潔だ。
飢えに惑い叫ぶ男の肌に牙を埋める。
男がかすかに甘い吐息を洩らすのを耳にして、わずかに眼底に金を漂わせた。
時間はかけない。
吸血に没頭してしまえば、自分の背中が無防備になるゆえ。
いうなれば、逢瀬の証に
その程度の失血でも、男がどうにかなってしまうかは与り知らぬところ。]
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