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リンクテストもかねて
https://www.youtube.com/watch?v=L2MRWFEv9ug
― それから ―
[ メイン・サロンでの待ち合わせは成功したのだったか
ある程度話に区切りがついたならば、ロー・シェンは ]
それじゃあ僕はこの辺で。
打ち合わせの前に色々と見ておかないとまた迷いそうだ。
[ とか何とか言ってその場を辞去しただろう。
なにせ、一人ではメイン・サロンの場所もわからない。
色々と、配置を確認しておいたほうがよさそうだと。 ]
[ ただ、別れる前にまだカレルの姿がその場にあったら
ちょいちょいと手の先で招いて、合図をしようか。 ]
要らなかったら捨ててくれて構わない
ただ…そうだな、
[ カレルが気付いてくれたなら、言葉を一度止めて
滑らかな手のひらの中に紙片を一枚滑り込ませる。
ローの名前と連絡先が記されたそれは、所謂名刺だった。 ]
[ そのまま彼女の手を引いて、
背後の誰か>>71や他の誰にも声が聞こえない距離まで。
もし、叶うのならば息の聞こえる間近まで近付いて…囁く。 ]
「また」、僕の話が聴きたくなった時は使ってくれ
[ それは一方的な約束で。
果たされるかどうかは分からないし、
果たされなくともそれはそれで仕方がない。 ]
[ それでも、
直接的な言葉にならなくても
それとなく伝えられればよかった。
再会出来て嬉しかった。と。 ]
[ 果たして返事があっても、なくても、
考古学者は然して言葉を待つこともなくその場を去った* ]
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>>296
>報告書を書いたような書かなかったような事を思い出した
どっちやねーん
まあ話すための切っ掛け程度なのでどちらでも大丈夫なんだけどね
― 回想 ―
[ 母星から遠く離れた星で開催された学会の帰り、
宇宙船、シルバー・メリー号に兄と乗ったその日のことだ。
確か学会の準備で徹夜続きだったので、昼間だというのに
兄弟二人で部屋の明かりを消して寝込んでいたのだったか。
…ふと。何かを引っ掻くような、
何かが壊れるような微かな音を聞いた気がして目が覚めた。
二人用の客室にしては広い、一等客室。
隣に寝ていた兄の姿がなく、ベッドルームに併設された
ドレッシングルームの方から薄暗い明かりが漏れていた。
まさか、強盗でも――と嫌な予感がロー・シェンの胸を過る。
セキュリティの確りした船を選んで、おまけに中でも
更にセキュリティの確りしたこの個室を予約したというのに。
仕事柄、発掘作業で鍛えられてはいるがそれは体力面だけのことで、もしも賊が武器でも持っていようものなら勝てる自信はない。
しかし兄がこの場にいないことがロー・シェンの足を
ドレッシングルームの方へと進ませた。
あの兄が書置きの類も残さずに部屋の外へ行くとも考えにくいし、
あれは兄本人が何か探し物でもしている音なのでは?
……それを確かめて安堵してしまいたかった。 ]
[ 薄暗がりの中をひた、ひた、と靴を履かずに進む。
ぼんやりと部屋の中を照らす仄かな明かりに導かれるように、
足音を極力殺しながらドレッシングルームの方へと歩いた。
一歩進むごとに聞こえていた音の詳細が聞き取れるようになってくる。
引っ掻くような音は何かを砕き割るような音に。
壊れるような音は抵抗する何かを無理やり引きちぎるような音に。
耳を塞いで蹲ってしまいたくなるようなおぞましい音に
足が小刻みに震えるのを堪えて、
ロー・シェンはついにその部屋の前へたどり着くと、
そぉっと部屋の扉を細く開けて、中を覗いてみた――――。 ]
[ 果たして部屋の中に居たのは
強盗と一言で済ませるような代物ではなく、
狼と人の間の子のような、酷くいびつな形をした生物だった。
ソレがドレッシングルームに置かれていた荷物を漁って
研究サンプルや資料の束を床に投げ出していた為に
あの騒がしい音は扉の外まで漏れていたのだった。
…サンプルの中には実験動物も何匹か混じっていた。
その、サンプルの残骸――としか形容できない何かが
床の上に転がって微かに震えているのを見て。
暖かな命の名残がそこにあるのを見て。
『 ――――――……ッ ! 』
自分の息を飲んだ音はやけに大きくその場に響いた。
咄嗟に手で口元を塞いだが…もう、遅い。
扉に背を向けていた異形の顔がこちらを振り向いた。
薄明かりの中で爛々と光る獣の瞳は、
半ば人の顔を留めているその顔立ちは確かに、兄のもの、だった。 ]
[ 兄貴、と呼んだ気がする。
どうしたんだよとかなんでそんな姿にとか声にならない言葉が
丸々吐息になって漏れていくようにひゅうひゅうと喉が鳴った。
"アレ"に自分の兄としての意識が残っているのだろうか。
考えただけで目の前が滲むけれど頭の中はどこか冷静だった。
「あれが人間の姿に見えるのは目が見えない奴か莫迦だけさ」
誰かが言ったような気がした。
…もしかしたら、聞こえた気がしただけだったのかもしれない。
そこからはどこか夢でも見ているように
獣の足が床を蹴って彼我の距離が縮まるのをぼんやりと見ていた。
兄の、金色の瞳。知性を感じさせる柔和な微笑みを浮かべていた、
自分と似ているようで似ていない瞳は今や見る影もなかった。
抵抗も出来ないまま押し倒されて、異形の口から溢れる唾液が
ローの顔を伝い落ちて床に染みを作っていく。
凄まじい力で握られた自分の腕から嫌な音が聞こえる。
振りほどくことは――出来そうもなかった。 ]
[ 人のものにしては鋭く長い爪が顔に押し当てられて、
ロー・シェンは、このまま自分は死ぬのだと思った。
たった十幾ばくの年で。母星から離れた宇宙空間の中で。
自分は惨めにも殺されなくてはいけないのか。それも、兄の手で。
兄の指はロー・シェンの眼球を抉り取ろうとでもいうのか、
瞼の上を伝って動いて――ぴたりと止まった。
鋭い爪が触れた場所は鋭利な刃物で撫でられでもしたように
ぬるりと生暖かい液体を開いた傷口から溢れさせている。
「 ………… 」
実はその時のことをはっきりとは覚えていない。
何か、自分が言ったような気がしたが
今に至るまで思い出せていなかった。
けれど、ロー・シェンの言葉を聞いた兄の力が僅かに緩んだので
無我夢中で手近にあったナイフを掴んで兄の背中に突き立てた。
何度も、何度も。
兄の体が命の温もりを失うまで、何度だって。
その時に眦を伝った暖かな液体は
決して兄やローの血液だけではなかったはずだ。 ]
[ ……兄の抵抗が止んで直ぐ、だっただろうか。
それとももう少し後のことだっただろうか。
何かしら異常を感じたのか、
その場に姿を表したガーディアンシステムに
ロー・シェンはぼそぼそと経緯を説明した。
もしかしたら、船員も何人かやって来ていたかもしれないが、
何分記憶が曖昧で確りとは覚えていない。 ]
[ それから、全ての事情が発覚するまでしばらく時間がかかった。
配達屋が運んでいた"黒い箱"を拾った兄>>299が
部屋に持ち帰った際、誤動作で開いてしまった箱の中から
危険な寄生生物が外部に出てしまった。
不運にもその場にいた兄は寄生生物に感染してしまったらしい…と。
そう大まかに説明はされたが、
実のところ事故が発生した経緯などどうでもよかった。
兄は死んでしまって、自分だけが生きているという事実だけが
ずっしり重りのように心にのしかかっていた。
どうも兄に寄生したのは『特定危険生物』という
カテゴリに属するものだったようで、
同室の自分も寄生されている恐れがあるとして
下船まで隔離されることになったが、それすらどうでもよかった。
むしろ自分から一人になりたいと頼み込むつもりだったくらいだ。
寄生生物について、
メディカルチェックでも発見できないという話は
風の噂で聞こえてきたし、長らく寝ていても起きていても
窓の外の星の海を眺めるだけの日々が続いた。 ]
[ 寄生されているのではないか、
という嫌疑が晴れたのはつまるところ
長らく続いた軟禁生活の日々の賜物ではなく。
寄生された宿主は同種の寄生生物が寄生した宿主を襲わない
そんな何処かの偉い学者の見識に基づいて下された判断だった。
学者が学者に殺されかけて、他の学者の研究で救われる。
何とも皮肉な結末だったが、ローに考古学を教えた兄が死んでしまってもロー・シェンはそれ以降も考古学に携わるのを辞めなかった。
むしろ以前よりも一層精力的に取り組むようになって、
いつの頃からだったか、総会に呼ばれる機会も増えてきた。
とある議題の折、取り上げられるのは
決まってローの発表したある寄生生物についての論文で、
多くの学者や研究者の憧れる総会に
この考古学者が『嫌々』出席する理由もそこにあった。* ]
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