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5人目、共和国大使 カナン が参加しました。
共和国大使 カナンは、囁き狂人 を希望しました(他の人には見えません)。
− シュビト/ベルサリス学館前 −
[獅子のような金髪、海を思わせる碧い目、長身を際立たせる隙のない身だしなみと身のこなし。
何処にいても人目を惹く男であった。
女にモテそうな、という者もあり、将器だという者もある。
接してみればその人柄にはまだ荒削りなところもあるのだが、大任を背負ってこの国にいることは確かだった。
カナン・リリは、マチュザレム共和国より、ナミュールの開国を促すべく派遣された外交官である。]
[外の世界に生を受けた者にとって、ナミュールは伝説の島だった。
止むことない暴風圏によって隔離された絶海の孤島。
いかほどの資源があるのか、どのような文明が存在するのか、得られるのは海難救助者からの断片的な情報のみ。
国交を結んで利があるかどうかも定かではない。
だが、世界と精神の開拓・啓蒙を国是とするマチュザレム共和国にとって、未知の領域をあるままに放置するなど肯じ得ないことであったのだ。
「世界の隅々にまで光を届けに行く勇気こそ、マチュザレムの誇る魂である」
カナンは、自身もその方針によってマチュザレムに開国した辺境の小国の皇子であり、かつ、若くしてマチュザレムの首都に学んだ共和国主義の申し子である。]
[使節団は、マチュザレム共和国の最新機器である飛行船を用いてナミュールへの接近を試みた。
だが、ナミュール近海に巣食う嵐は、上空にもその魔手を伸ばしており、飛行船は破壊されてしまった。
命こそ失わずに済んだものの、カナンは高熱を発してしばらく人事不省に陥り、しかもナミュールの王都からは遠く離れた山中で救助されたため (パラシュートもまたマチュザレムの最新装備であった) 正使としての役目を果たせぬままに時を過ごした。
マチュザレムから運んで来た荷物は散り散りになり、いくつかは後に回収できたものの、いまだ行方知れずのものも多い。
迂闊な者の手に渡ると困るものもあるのだが、鍵が開けられぬことを祈って、カナンは首から下げたマスターキーを握りしめる。**]
− 飛行船 (回想) −
押し戻されるな、 我々は進まねばならない。
[未曾有の嵐の中、懸命に舵をとる船員たちを激励して回る。
「可能な限り突破方向に」と指示するシメオンの声に以心伝心を感じて頷く。]
ふ、 頼もしい。
[「お前が飛ぶ道は俺が作る」と宣言して操縦室へ去るシメオンの後ろ姿に、こんな危機的状況でありながら笑みが零れた。
狼狽えぬ強さで最善の道を探る──なければ作る。
生国を同じくするこの腹心とは強い絆で結ばれている。
魂の兄弟だ。]
[シメオンと分かれたカナンは格納庫へと向かう。
マチュザレム共和国の進んだ文明をナミュールに伝えるべく積み込まれた荷が暴風に煽られて軋んでいた。
軽くて頑丈なアルミケースもまた新開発品だ。
取手が赤く塗装されたものは取り扱いに厳重な注意を伴うもの。]
…災いとなる前に、
[と、一際、激しい風がゴウとぶつかり、飛行船の船体を引き裂いた。
その後に来る無風空間。
カナンの身体は宙に浮いた。*]
− 山岳地帯上空 (回想) −
[意識を取り戻したのは獣の唸り声によってだった。]
…ここ は、
[身じろぎに頭上で生木の裂ける音がして、身長分ほど、落ちた。
足元の騒ぎが一段と大きくなる。]
あ、 は、
[事態を把握して、乾いた笑いが洩れた。
パラシュートは木の枝にひっかかっているらしい。
カナンの身体は宙ぶらりんだ。
そして、下には獲物を待ち受ける狼の群れ。]
とんだ歓迎だな。
[身体がカタカタと震えるのは恐怖ゆえではなく、風雨にぬれそぼった身体が冷えるせい。
腰に拳銃はあるが、これでは狙いを定められぬだろう。]
♪Týnom, tánom: na kopečku stála,
Týnom, tánom: na mňa pozerala.
[カナンは故郷の歌を紡いで朦朧とする意識を励ました。**]
やあ、 君は、ナミュールの人か。
助けてもらえるとありがた──
うわあっ!
[その時、体重を支えていた枝がミシリと折れてカナンは落下した。
ゴツ、と鈍い音がして、意識がブラックアウトする。
どのみち、そう長くまともな会話は続けられなかっただろう。
濡れて冷えきったカナンは高熱を発していた。**]
− ウェントゥスの里 (回想) −
[自分がどのようにしてその里へ、部屋へ運ばれたのか、その過程でどのようなやりとりがあったのかはカナンの知り得ぬ範疇のこと。>>141>>143>>144
しばしは高熱にうかされて、自身の名も所属も失った。
もっとも、カナンの懐にある親書を読めば、彼の役割は知れるところとなる。]
「───カナン、聞こえるか?」
[脳裏に響く声の出所に惑乱し、看病してくれた
…おれに、 力を貸してくれ。
[毛皮ではなく、藁と毛織物の寝具の肌触りに、生国セドナとも、木綿を主とするマチュザレム共和国の生活ともいささか異なる感触を覚えつつ。]
− 14年前・北方の小国セドナ (回想) − >>155>>156>>157
[幼少の頃は病がちだった兄皇子も成長期になれば立派な男になって、”
マチュザレム共和国政府からもたらされた留学の話に、カナンは乗り気だった。
学友として抜擢されたシメオンがその慧眼で推察した”人質”という政治的カードを理解はしても、実感が湧かなかったのもある。]
ん、 留学の理由?
おまえは知りたくないのか?
世界の中心で起きていること、最新の技術、人間の可能性──
この国にいては、半年たってようやく伝わるジャーナルを、最前線で手にすることができるんだ。
あるいは、自分たちの手でそれを開発、発見できるかもしれない。
おれは、自分を、世界を、もっとよりよいものにしたいんだ。
[皇子扱いしない、というシメオンの宣言には陽気に笑い、]
そうだなあ、 皆がおれを皇子扱いしない場所で、おまえだけがしても”浮く”だろう。
マチュザレム共和国は平等主義らしいし、おまえがフツーでいたいならそれでもいいんじゃないか?
[と肩をどやしつけた。
鷹揚なようでいて、少し挑発的だったかもしれない。
とはいえ、その後、対等の扱いをされて苛立つことなく、それでいてナチュラルにアレ頼む、コレやっといて、とシメオンに頼むのは信頼の証であった。]
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