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4人目、曜変天目 リエヴル が参加しました。
曜変天目 リエヴルは、おまかせ を希望しました(他の人には見えません)。
― 書斎 ―
[廊下の先、容易に開いた扉の奥には本棚が壁を作っていた。
書斎である。
並んだ本に視線を走らせるが、いわゆる活字中毒者ではない。
脱出ゲームの鍵となるものがないか、生真面目に確認しているだけだった。]
[書斎で観察を続けるうち、■darkcyan色の背表紙の1冊に目を留めた。
その本は、周囲の本よりもくたびれていた。
古いのか、あるいはよく読まれているのか。
よく動かされている──というのであれば、隠し扉などの発動トリガーの可能性もある。
ちなみにタイトルは『工房における*兄弟姉妹*間の*劣等感*を嘉する』だった。]
[どこかで何か音がした。
周囲を見渡すと、本棚のひとつが横にズレて、入り込めそうな隙間ができている。
本を元に戻せば、隠し扉もまた元の位置へと戻った。]
なるほど。
[書斎に現われた男がわずかな逡巡の後、肯首するのを見る。
挟まれたわずかな間は、男が尾行してきて意図的に様子を窺っていたわけではないという気持ちの表れと読んだ。]
隠し扉を発見した。
まだ奥は確認していないが、これが脱出口であれば、おれとしては課題クリアだ。
[とりあえず、そこまで語り、反応を窺う。
まだ相手が同じゲームの参加者かもわからない。]
[男が示した書名を読み、目にチラと紫色が流れる。]
是非もなし。
[恬淡と呟くと、書斎の机の上にあったペーパーナイフを手にとり、重さを確かめるように二、三度、掌で弾ませてから、手首のスナップを効かせて投擲した。
動かなければ男の顔のすぐ横を通過するコースである。
殺意はない。
軽いテストだ。]
[投げたペーパーナイフは男の髪を掠めた。
その一瞬前に、男が息を呑んだのを見ている。
来るのがわかっていて避けなかった。
相手の胆力、判断力、動体視力、どれも卓越したものだと判ずる。]
リエヴルだ。
[相手の目元にともる険を受け流すように名乗った。]
[礼をした男が宙に綴る文字を目で追う。]
タクマ、
[音にして確かめ、もう一度、相手へ視線を戻す。]
貴様、舌がないのか?
[問うのはあくまでも事実であって、その声に憐憫はない。
貴様という呼びかけも、男と見た相手に対してはいつもそうしているので敵意はないのである。]
[タクマから戻ってきたのは右の拳を左胸の上に置く仕草。
肯定でないことは明らかだった。
舌がないわけではないなら、戒律なり呪詛なりで発声に制限を設けているのだろうと推測する。
この先もタクマ側から発声による意思伝達はないのだろうと了解すれば、それ以上の立ち入った事情は必要としなかった。]
──、
[そこへ差し出される掌。]
[武器を握り慣れた、だが、今は空の手でタクマと握手を交わす。
恒温動物の体温をもたない肌だが、籠めた情は冷たいものではなかった。
むしろ、正々堂々、というのが似合う。]
明かりに使えるものを探してくる。
[そう告げて、タクマの傍らを擦り抜けて書斎から出てゆこうと試みた。**]
[天井から伸びた影は鷹揚な仕草をしてみせる。
リエヴル自身の”親”にも似た威圧感のある相手だと感じた。
幸先が良い、と言われた意味は読めぬまま、]
その猫は、おれの使い魔ではない。
[差し障りのない事実を提示しておく。]
[黒猫が不意に人の形を取る。
端正な所作を見せた青年の呼びかけによれば、天井の偉丈夫は「テオドール」という名だそうだ。
知らぬ名ではない。
“親”が、小気味よいほど──と賞賛したそれは悪名に他ならなかったが。
そして、サラリとこちらを無視してみせた猫男もまた、例の企てに関連する者だと知れる。
それを「恩恵」というあたり、よく躾けられているといったところか。]
……、
[まったく同じ感想をテオトールが口にしたので、一瞬、親近感を抱きかける。
おこがましい、あるいは危険な感情の揺れだと自制した。]
[テオドールの反応を受けて、ようやく話しかける価値があると判じたか、猫男はクロイツと名乗り、慇懃な礼を向けてくる。
テオドールが口にした「蛇殿」というのが、クロイツの血親だろうか。]
リエヴルだ。
[名乗り返し、]
おれには「遊戯」という認識はないが。
[貴様とは立場が違うらしい、という思いをこめつつ、参加者であることを端的に肯定する。]
[重力を自在に操って自分たちと同じ位置まで下りて(?)きたテオドールが、手を伸ばしてクロイツを愛でる様に目が吸い寄せられる。
同じ仕儀を望む気持ちはこれっぽっちもなかったが。**]
[テオドールに顔を撫でられて目を細めているクロイツはまったくもって猫のようだ。
その媚びた言動は、リエヴルに見せつけようとしているのかと思う。
確かに、自分には真似できない芸当だろう。
対するテオドールの所作も、第一印象を裏切るごとく柔かだった。
が、]
──…、
[語られた言葉を耳にし、リエヴルは静かに後ずさり立ち去らんと試みる。
これより先は立ち会うべきではないと。]
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