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[ひたすらバタバタ足踏みしても、寒いものは寒いのである]
オレもう、家に引き返してベッドの中に潜りてーよ。
でもそういうワケにもいかないよなぁ。
……お使いきちんと済ませなきゃ、母ちゃんおっかねぇし。
[普段は優しい母だけれど、叱る時はしっかりと叱りつけてくる女性でもある。
今より幼い頃、よく悪戯を仕掛けては首根っこを掴まれてつまみ出されたものだった。
ちら、と家の方へ視線を投げて、子供らしからぬ溜息を深々と吐いた]
[とはいえ、うだうだ悩んでいても仕方ない]
ようし、仕方ないや、とっととお使い済ませてかーえろ!
そうと決まれば善は急げだぜ、ひとっぱしりいっくぞー!
[子供は風の子、寒さはトモダチ。
ぱっと頭を切り替えて、バスケットを振り回しながら雪道を駆け出した**]
―村の中心部―
[バスケットを振り回しながら雪道を駆けることしばらく。
村の中心部に近づくにつれて、パンの焼ける香ばしい匂いが漂い始め、育ち盛りの胃がぐぅっと鳴いた]
うー、腹減ったぁ。
こりゃやっぱり、早くお使いすまさないとなぁ。
[お使いをすませて帰宅すれば、朝食にはちょうどいい時間だろう。
走る速度を緩めてお腹のあたりに手を当て、のんきにぽつりとひとりごちた。
……と、視線の先に見覚えのある赤いフード>>33]
おっ、あれカタリナじゃね?
おーい、カタリナー! おっはよーさん!
[ぶんぶんと手を振って、しゃがみ込む同級生の元へと足音もけたたましく走り寄る]
お前、こんな時間にこんなトコでどーしたんだ?
いっつも牧場で羊にエサやってる時間だろー。
[彼女の牧場と、ペーターの自宅は近距離だ。
だから家族ぐるみの付き合いも多く、まるで兄妹のように時間を過ごしてきた。
牧場の仕事を手伝う彼女にしょうもない悪戯を仕掛けて、母に耳を引っ張られた事も数え切れない。
それゆえに、彼女がこの時間に村の中心にいるなんて珍しいなと首をひねる]
あっ、さては。
[まーた羊が逃げ出したんだろ!
はやし立てるように言おうとしたのと、カタリナの藁にもすがるような問いかけは同時。
予想通りの質問に、深刻な様子の彼女と対照的にちょっとだけニヤニヤした]
わりーけど、ここに来るまでの間には見てないぜー。
逃げたのアイツ?
あの、ちぎれ耳の活発なチビ。
[彼女の牧場の脱走常習犯といえば、そのチビ羊か、年季の入った偏屈そうな爺さん羊である。
適当に脱走犯の目星をつけて、きょろきょろ辺りを見回した]
例のチビなら、お気に入りの隠れ家知ってんぜ。
お使いすませてからでイイなら、探すの付き合ってやろっか?
[お使いは今日の分のパンだけだから、すぐすむはずだ。
母は待ちぼうけを食うだろうけれど、「困ってるカタリナほっといて帰ってきちゃったテヘペロ!」なんて言った方が大目玉をくらうのはわかりきってる。
それに、こうして彼女に困り事を相談されるのは、実はそんなに悪い気がしないのである。
ちょっと得意げな顔をして、カタリナをじっと見つめた**]
/*
ヨアヒム兄ちゃんの[[fortune ]]の0初めて見たなー!
思わず笑っちゃったぜ……!
ともあれ、薔薇の下には初参戦!
初めてさんも多いし、宜しくお願いするぜー!
おまかせで何の役職が来るかだけ、今からちょっとハラハラするなー!
[とはいえ、それもほんの数秒のこと。
すぐさま気を取り直すと、カタリナへ視線を戻す]
それとも、カタリナも一緒に来るかー?
オレさ、お駄賃に好きなパンひとつ買っていいって言われてんだ。
何かテキトーなパン買ってさ、半分こして食べよーぜ。
ほら、あれだよ。
腹が減ってはなんとやら、って言うだろー!
[飄々と言い放つと、パン屋へ向けて歩き出した*]
―パン屋―
おーい、兄ちゃん邪魔すんぜー!
[数分後、悪戯小僧の姿はパン屋のドアの前にあった。
無遠慮な声を投げながら、ドアをくぐって店内に踏み込む。
靴に付いた雪を店内に落っことしてゆくのは、もはや日常茶飯事である]
カイザーゼンメルふたつとー、ローゲンブロートとー。
[店に入るなり、慣れた様子で目的のパンを指差した。
今日のお使いは朝食パンとライ麦パンだ。
それから、うーんと首をひねって店内をぐるりと見回した]
おっ、それいいじゃん!
[やがて目に止まるのは、『本日のおすすめ』アプフェルブロートだ。
パッと目を輝かせて、ビシッとアプフェルブロートを指し示す]
本日のおすすめひとつ!
食いながら帰るから、持ってけるようにしてよ。
[実に子供らしい遠慮のなさで、ズケズケ注文した]
いやー、でも今日はおっちゃんいなくて良かったなー!
いつもなら口うるさく注意されてるトコだもんなー。
『靴についた雪は、ちゃんと足拭きで拭ってから入りなさい』
[オットーの父親の不在をいいことに、しかめっ面しい顔をして声真似した。
本人は我ながら上出来だと思っているけれど、周りから見ると随分と稚拙な演技である]
だろっ?
ホラ、オレってば目利きだからさー。
いいパンを見抜くガンリキ、っつーの?
今からばっちり備わってるんだぜー!
[実際のところは、ただ“本日のおすすめ”だし、林檎が好きだから選んだだけだ。
けれど、オットーに褒められてふふんと得意げに鼻を鳴らしてみせる。
促されて、彼の方へとバスケットを向けた]
代金、バスケットの中な!
[さんざん振り回したけれど、遠心力で代金が無事なのもまたいつもの事。
……たまにうっかり落っことして、慌てて道を引き返す事もあるのもまた事実だけれど。
幸いな事に、今日の代金は無事そうだ]
兄ちゃん、もうカンベンしてくれよー!
もう一年は前の事じゃん、一緒に探してくれたのは感謝してっけどさー!
[ぶぅぶぅと不満げに、でも懇願する響きも交えて、抗議の声を張り上げる。
わんぱく盛りの男子にとって、過去の不名誉な歴史ほど振り返りたくないものはないのである。
たまに持ち出される去年の『お金落っことし事件』は、オットーに忘れて欲しい記憶の上位に常にランクインしている]
[そうこうしている内に、お腹がぐぅっと鳴いた。
本日実に三回目、格好つかないタイミングにうへぇと項垂れて、口を尖らせた]
とっ、とにかくオレ帰るな!
リンゴパン、美味しかったら皆に宣伝しとくなー!
[これ以上醜態を晒す前に、速やかに撤退するのが吉である。
行きより中身が充実したバスケットを抱えると、逃げ去るように店を後にした*]
[パン屋を飛び出てすぐに、待ってと呼び止めるカタリナの声>>171に店先で足を止めた。
慌てて後を追いかけてくる彼女を待ちながら、バスケットからアプフェルブロートを取り出す]
カタリナ、おっせーよ!
あんまり遅いと置いてっちゃうぜー!
[もちろん、本気ではなく冗談だけれど。
野次を飛ばしながらもニッと笑って、半分にちぎったパンの、紙ナプキンの付いた方を押し付けた]
ほら、これお前のな。
とっとと腹ごしらえして、チビ羊を追っかけよーぜ!
[言うが早いか、自分の分のアプフェルブロートにかじりつく]
もぐもぐと咀嚼して、すぐさま頬を緩ませた]
やっぱり、ここのパンはウマいよな!
サイッコーだぜ!
[実に子供らしい単純な感想を口にして、次の一口を早速パクリ。
半分こしたパンが悪戯小僧の胃袋に消えるのは、あっという間の事である]
しまった、もう一個買っときゃ良かった。
[結局、まだ食べ足りないという顔をしてパン屋を振り返る事になる。
とはいえ、今はまだ朝食前。
そして、お駄賃はあくまでもパンひとつぶんだけだ。
家に帰ったら、上手いこと母ちゃんを言いくるめて追加でまた買いに来よう、なんて計画を膨らませる]
それで、なんだっけ。
……そうそう、チビ羊な!
[あまりのパンの美味しさに、その後の予定もうっかり忘れた。
つい素で間抜けなことを問いかけて、思い出したと手を叩く]
いつも隠れる場所があるんだよ。
ここからそんな遠くないぜー、ついてこいよ!
[言うと、返事を待たずに歩き出した。
向かうのは、来た道を引き返すように村はずれの方向。
そんな遠くない、という言葉どおりに、少し歩けば羊の鳴き声が聞こえてくるだろう]
[やがて足を止めたのは、教会側へと向かう分かれ道の脇。
近くの民家の物置の影から、白い毛の端がちょこっと覗く]
ほら、あそこあそこ!
雪が降る前にあそこに生えてた草がよっぽどうまかったらしくて、未だにここに来るんだよなアイツ。
ちょっと待ってろよー、おっじゃまー!
[人の家の敷地内だけれど、そんなのお構いなしに踏み込んだ。
パンのバスケットを片手に、物置の裏に潜む子羊へと足音を殺して歩み寄る。
充分に距離を詰めたところで――]
わっ!!
[大声を上げて、子羊を脅かした。
慌てた子羊が、ぴょこんと飛び跳ねてカタリナの方へと駆けてゆく……!]
カタリナー!
そっち行ったぞ、捕まえろー!
[オレいい仕事した、と言わんばかりの充実感溢れる笑みを湛えて、同級生へ無茶振りした]
[そんなさなかに、ふと視線を移したのは誰かの視線を感じたから。
見据えると、遠目にこちらを見守るリーザの姿があった>>283]
あれ、あんなところで何してんだアイツ。
[人の心の機微に疎い悪戯小僧は、近寄ってこないリーザに首を傾ける。
……そうこうしている内に、彼女は身を翻してパン屋の方へ向かってしまった]
んー、なんか釈然としねーなー。
[学校では顔を合わせるけれど、リーザとはそれほど親しく言葉を交わした事はない。
年齢の割にしっかりしていると思っても、彼女の抱えた複雑な事情など、噂の切れ端としてしか耳に入っては来ないのだ。
次に見かけたら、見てないで声かけりゃ良いのに、とでも話しかけてみようかなとぼんやり思う]
[ともあれ、怯えた子羊をなだめるカタリナへ視線を戻し、再び口元をへの字に曲げた。
せっかく羊探し手伝ってやったのになー、という子供じみた不満と、彼女が羊たちをいかに大事にしているか考えるべき、という冷静な指摘が、胸の内でせめぎ合う。
本当は、彼女にとって羊たちが大事な家族の一員なのはわかっている。
……わかっているけれど、ないがしろにされたようでやっぱり面白くないのである。
ディーターが声を掛けてきたのは、そんな微妙なタイミングだ]
食いもんじゃねーよ。
おっさん、タチの悪いジョーダンやめろよな!
[右腕のない、ガラの悪い飲んだくれ。
日頃であれば、そんな彼をちょっとばかりカッコイイと思ったりしないでもない。
悪い大人に心惹かれるお年頃なのである。
けれど、今は到底そんな気分にはなれないのだ。
自分の日々のしょうもない立ち振る舞いを棚に上げて、噛み付くように文句を付けた]
言われなくてもとっとと散るよーだ!
人狼とか、子供だましの昔話聞かせるのやめろよな!
べーーーー!
[彼の哄笑を素直に馬鹿にしているととって、思い切り舌を出した。
それから、くるりとカタリナの方を振り返る]
それじゃ、オレそろそろ帰るな。
後はヨアヒム兄ちゃんにでも手伝ってもらえよ、じゃーな。
[悪評高いならず者を前にして、彼女に投げるのは素っ気ない挨拶。
普段なら、彼女を庇って手を引いて連れ帰るだろうに、今日は子羊の一件ですっかりむくれてしまったのである。
そのまま、カタリナを置き去りに、振り返らずにパッと走り出した*]
[……白い息を吐き出しながらしばらく走り続けると、風景は村はずれの見慣れたものへ。
カタリナの牧場近くで足を緩めると、雪道の脇で足を止めて頭を掻き毟った]
うわー、オレってばホント馬鹿……!
[きちんとごめんと謝って、一緒に帰ってくれば良かったのに。
ディーターみたいな大人相手じゃ、カタリナが怖がる事なんてわかりきっているはずなのだ。
にも関わらず、感情的になって彼女を置き去りにしてしまった。
どうして自分はこう子供っぽいことしかできないのだろうかと思うと、雪の中に頭をつっこみたくなる]
人狼の昔話とかさー、オレはちっとも怖くねーけど、カタリナ苦手そうだしなー。
[モーリッツ爺さんが言いふらして回る言い伝えとやらを、ペーターはちっとも信じていない。
ペーターの母親はその伝承を聞くのを嫌がったけれど、それは女子供は怖がりだから、と思っている。
物心付いたころから母子家庭で、男手がペーターしかいないから不安なのだろうと。
……その怖がりな女子供を、それもよりによってカタリナを、子羊と一緒に放り出してきたわけで。
今更ながらに自己嫌悪がじわじわこみ上げ、がっくりと項垂れた]
ヨアヒム兄ちゃんみたいに頼れる大人になりてーのになぁ。
[牧場の手伝いに訪れる青年は、子供っぽく短気なペーターにとって憧れであり、同時に妬ましい目の上のたんこぶである。
どうせこのあと、カタリナを連れて帰ってきて、慰めるのは彼の役割なのだ。
そう思うと、むしゃくしゃしてつい道の脇に出来た雪山を蹴飛ばした]
〜〜〜〜っ、いって!!
[直後に、硬い氷の層につま先をぶつけて、痛みのあまりぴょんぴょん飛び跳ねる。
……この間抜け姿が誰の目にも止まらないことを、切実に祈りたいものである]**
/*
勇者っぽくカタリナを守って連れ帰る選択肢もあったんだけれど、喧嘩別れからの悲劇って王道だよなーと思ってこんな感じに。
中の人的にはすっごく庇いたいんだけどなー!
ペーターの実年齢考えると、旋毛を曲げるくらいの方が多分反応としては正しそうだし……(
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