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[意識の中で互いの状況を知らせてはいた。
けれども、彼は自分の負傷は一切伝えてはこなかった。
言葉でも、気配ででも隠されていたのだ。
無言のまま彼に近寄り、手を伸ばす。
きつく布を巻かれた肩に指先でそっと触れた。]
─── よく、戻った。
[万感を込めて、短く告げる。]
…この傷は、俺の傷だ。
[俺のために負った傷だから、と。
罪悪感ではなく、自分の心の置き所として告げる。]
男の傷は勲章ともいう。
俺は、この傷を誇りに思う。
……が、勲章もあまり増やすな。
付けすぎると、肩が凝るらしいぞ。
[それでもやはり、案ずる気持ちが少し漏れた。]
今日はもう休め。
次の出撃はすぐだぞ。
[森でおとなしくしていろ、と言っても聞かないだろう。
長らく側にあった彼の頑固さは良く知っている。
だからせめて今夜だけはと命じ、]
― 翌日・キュベルドンの森/解放軍拠点 ―
そうだな。
[自分も橋方面へ出る>>187というチャールズに頷いた。
彼を前線に出すことへの迷いは、今は無い。]
マーティンは、ふたりのことをよく守ってやってくれ。
おまえが吼えれば大概の奴は近づいてこないだろう。
[チャールズと一緒になって、マーティンに信を預ける。]
[ただ気がかりなのは、マーティンの傷だった。
頑健な彼は痛みなど微塵もないように見せるが、
時折、右腕の動きがぎこちないのが気に掛かる。]
無理に前に出ようとしなくてもいい。
なるべく多くを引きつけてくれれば、この作戦は成功だ。
[気遣う言葉の代わりに、指示をひとつ置いた。]
修道院方面は、できる限り発見を遅らせたい。
目と腕のいい弓兵を集めて、
先行して敵哨戒隊の排除を、
そうだな。
これはサシャに任せよう。
[軍議にかの"熊殺し"は参加していただろうか。
いずれにせよ、彼女には後で改めて報せが行くだろう。]
[やがて取りまとめられた損害の状況が届けられる。
砦を守っていたものたちの苦闘の様子が、数字からも読み取れた。>>181
一度目を閉じ、散った者達の魂に祈りを捧げる。
橋を攻撃した隊も、犠牲は大きかった。
戦闘の最初から最後まで最も激しく戦った軽歩兵の部隊がやはり最も損害が大きく、負傷者、死者、撤退し切れず取り残された者を合わせて半数近くが失われている。
次に被害が目立つのは、重歩兵の部隊だ。
重騎兵の二度の突撃に晒されて命を落とした者、動けぬ負傷を負った者は3桁の数に上る。
戦場を広く駆けまわった弓騎兵の被害も少なくないが、直接攻撃に晒されなかった弓兵の部隊は、比較的軽微な損耗で済んでいた。]
[おおよそ5人に1人か2人。
それが多いのか少ないのか、判断はつかない。
数字の上ではそれほどではないと思えるが、
実感としては、多くを喪ったと思う。
このあとの戦いでも大勢が命を落とすだろう。
それでも、その先に手にしたいものがあるから、
皆の命を呑んで、前に行くのだ。]
[兵の再編が大急ぎで行われた。
負傷の度合いや装備の配備状況によって部隊が組みなおされる。
盟主と共にサクソー川中流へ向かう兵は、平原の民や森の民750名ほど。
残る兵力は全て橋への部隊に注ぎ込む。
本隊ともいえる修道院方面隊を遊牧民たちで揃えたのは、盟主自身が彼らと長く共に暮らしていたために、彼らと行動する方がやりやすいと感じたためだった。
元正規兵たちを動かすのも、チャールズの方が向いているだろう。
橋方面に向かわせる遊牧民らは砦にいた者たちの中から100名ほどを選んだ。
カークやチャールズに恩義を感じている者も多かったから、きっと彼らの力になってくれるはずだ。]
[相手の騎馬兵の威力を身をもって思い知らされた経験から、両部隊に狩猟用の網を繋げたものを用意しておく。
鹿や、時には熊を追い込んで捕える時の網だ。
丈夫な蔦や麻縄を編んで作られた網を大きく広げて、騎馬の突撃を止めようという作戦だった。
支えるのは人の力だからどれほど効果があるのかわからないが、やってみる価値はあるだろう。
狩猟の時に人が隠れるための衝立も、橋方面隊の方にあるだけ配備させた。
木枠になめした皮を張り、薄板で補強しただけの代物だ。だがこれだけでも水平に飛んでくる矢への防御にはなるかと思われた。
人と同じように馬も失われたり逃げてしまったりしていたが、合わせて140頭ほどがまだ手元にいた。
橋方面隊の連絡や偵察等のために40頭ほどを回し、残りは修道院方面隊へと配備する。]
[修道院方面へ向かう最も大きなものは、"橋"だ。
10mほどの梯子状に組んだ細い丸木の下に、固く束ねた葦を括りつけてある。
前後に車輪もつけられて、移動できるようになっていた。
これが、6基。
戦場に到着するまでは馬に挽かせることになっていた。
2基ずつ並べて互いを固定し合えば、人馬が通るに十分な橋となる、はずだ。]
そうだ。
カークが寄越したあの油、
枯草を燃やすのに使ったんだって?
[軍議の席で思い出したように確認する。]
エディが少し持ってきていたようだ。
持っていくといい。
[テレピン油の残りを橋方面部隊に預けておく。]
[出立は、夜が明ける前と決まった。
暗いうちに拠点を出て、総数をわかりにくくする目的だ。
分隊を発見されても、"橋"を見咎められても、
判別しづらくなることを狙う。
森に帰還した日の翌日は部隊再編に充て、
その夜には可能な限りの酒と料理が全軍にふるまわれた。
さらに翌日には軽い訓練と十分な休息が与えられたのち、夜を越え、まだ闇深い夜明け前に全軍が静かに出立する。
出陣前の言葉も無い、静かで密やかな出発だった。
それぞれが目的地に到達する頃には、空は明るくなっているだろう。]**
― 翌朝 キュベルドンの森 ―
[羊を使いたいとカークから聞けば、思案の顔になった。]
羊は遊牧民の財産だ。
使うなら、彼らの承諾が必要だな。
[その場にいた平原の民の取りまとめ役たちと話をする。
エディが健在であれば、この交渉も彼の役目だっただろうと微かな感傷を胸の隅に抱きながら、彼らの協力を取り付けた。]
思うように使うといい。
任せる。
[正攻法では抜けないことは実証済みだからなと、策を預ける。]
― 進軍中・修道院方面部隊 ―
[キュベルドンの森を出た独立解放軍の一隊、
盟主が率いる部隊は、南西に向かって移動を開始した。
斥候として隊の先に立つのは、今は弓持つ10数名の小隊だ。
敵の哨戒隊に行き合えば、相手が少数ならば討ち、優勢な相手ならば伏せてやり過ごし、鳥の囀りを真似た指笛で本隊に知らせる手筈となっている。
川岸に着いた後は同じように警戒しながら伏せて待つよう指示が為されていた。
本隊は、いくつかの隊に分かれて進んでいた。
何本か投げ槍を持ち、最初に攻撃した後は基本的に距離を取りつつ攪乱する隊、フォークや大槌、大鎌など大型の装備を持つ隊、狩猟用の衝立や背を隠すほど大きな木の板を運びながら狩猟槍を持って戦う隊、主に弓で攻撃する隊、弓を持ち馬に乗って戦う隊だ。
騎馬弓兵が馬の数と同じ100名であるほかは、それぞれ150名ずつに分かれている。
最後尾に続く"橋"は、今は3頭ずつの馬に曳かれていた。
これを担当する50名ほどは、特に泳ぎの達者なものたちが選ばれている。]
[夜が明け空が白む頃には先遣の弓兵隊が川岸に到着するだろう。
修道院跡からちょうど真北に行ったのあたりだ。
本隊が到着するのは、もう少し明るくなってからのこと]**
/*
うはは。
落そうとしてチャールズの顔が見えて、
思わず見入ってしまう定期。
たまらないなぁ。贅沢だよなあ。ありがたいなあ。
― 進軍中・修道院方面部隊 ―
[薄闇がだんだんと晴れ、草原の草に宿る雫が煌めきだす。
うっすらとした夜霧が空気に溶け消える頃、草の間を赤い影が近づくのを同胞が見咎めた。>>324
ほどなく、先行隊の様子が口づてに報告される。
この時盟主はカークに染め粉を借りて、少し髪色を明るくしていた。
暁日の光浴びて、淡い色の髪もまた縁どられたように光宿している。]
よくやってくれた。
逃げられても構うことはない。
少しくらい、気づかれてもいい。
[先行隊の働きをねぎらえば、サシャから眼差しが飛んでくる。]
心配いらない。
俺を守ってくれるものが大勢いるから。
けれど、ありがとう。
[短い言葉で告げ、立ち去ろうとするサシャの手を素早く握る。]
俺はもう、友を失いたくない。
[エディの分まで。
言葉にしない思いを視線に込め、去っていく彼女を見送った。]*
/*
おう。遂行しなかったから、改めて読むとあまり意味の通じない文章になっているぞ。
だが、まあ、それも良い。
/*
そう言えば、狩猟用の衝立は全部本隊に回したとか自分で書いてませんでしたっけ、俺。
確認しようそうしよう。
― 夜:キュベルドンの森 (回想) ―
[直接心響かせる言葉。>>*46
チャールズを案じる無防備な心に、それは案外大きく響き]
…ば、馬鹿。
───おまえの、おかげだ。
[口ごもるように、不器用に、
"父親"への感謝を紡いだ]*
/*
さて。教会側は最初はPCいないのかな?
オクタヴィアスが来る??
コリドラスは、どうも橋の方に行きそうだしね。
― 戦いの日:修道院側北岸 ―
[サシャ達先行の弓兵に遅れること1時間ほど。
盟主率いる本隊が川岸へと到達した。]
敵の姿は?
[確認が飛ぶ間にも、"橋"が河原へと引き出されていく。
ざりざりと車輪が河原の細かな石を噛んで啼いた。]
― 修道院北側 ―
[サシャからの報告を聞きながら戦況を読む。
サシャの視力で見つけた敵部隊が動かないのは、こちらにまだ気づいていないのか、それとも渡ることはないと高をくくっているのか。]
橋方面の部隊が本格的な交戦状態に入ったら渡河を開始する。
工兵隊は準備を開始しろ。
サシャは引き続き向こうを見張っていてくれ。
["橋"が川辺に並べられ、馬が引綱から放される。
何人かの工兵が水に潜って長い杭を打ち始めた。
"橋"の安定度を増すための工夫のひとつだ。
サシャへの指示には、肩を叩く仕草と南島を指す身振りが加えられた。]
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