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[ 薬の効果が切れる、とアレクシスは言った。
聞き間違いではないだろうか。今この、彼を憎んであまりある自分が薬によるものなどと?
他の魔族が来ると聞いて、再び暗澹たる気持ちになる。
候補生仲間のことを思い出したのだ。
誰も救えなかった。それどころか、こうして無様に生きながらえている自分を見せるはめになろうとは。]
ひ ぅ… く、
[ 身支度と称してアレクシスが施す処置を、身を固くしてやり過ごす。
厭で仕方ないはずなのに、尻穴を掻き回されているうちに、何故か安心してしまった。
…いたくないようにしてくれているんだうれしいな…
…ほしがってたからくれたのかありがとう…
中に収まる分身蛇を、きゅっと締め付けてみる。]
[ スライムプールが出ると、服が用意されていた。
以前、拘束服を出された時は、何の疑いもなく袖を通したものだが、あの無邪気さは失われてしまった。
今はその意匠に隠された意味があるのを警戒してしまう。
抵抗してみたが、結局は着せられて、
…おせわされることがしあわせだなって…
…さからってもちゃんとしつけてくれるからぼくはじゆうにできるんだ…
…どうしようどうしようくさりだちゃらちゃらなってる…
ふわふわとした足取りのまま、魔王のいる場所まで導かれてゆく。*]
/*
やあ魔王さまだ。おつかれー
いやよいやよも好きのうち状態な、ほろキメ状態ウェルシュですなう
まあ、うちの飼い主の場合、してと言おうがいやと言おうが結果同じだろうけどなw
/*
ラブコール嬉しいぞ
しかし、今のところ懐く要素がないなw
薬なしの「やだもう殺す」ウェルシュと
ラリってる「あんあんもっと」ウェルシュと
半落ちの「あんたなんかにっ…感じちゃう」ウェルシュを全部かわいがってね♡
粗相のないように。
良い子にしていたら、後でご褒美を上げますよ。
[囁きに呼応するように、彼の中で分身がうねる。*]
― 静寂の間 ―
[ 魔精を浴びて陶酔している意識でも、その場の雰囲気に緊張した。
戦士としての感覚が、集った者たちの強さを、異様さを感じ取っていたのかもしれない。
ゆらゆらと引っ張られていたのをやめて、アレクシスのすぐ傍について歩く。
遮蔽であり、…あんしんできるところ…でもあった。
視線を左右にやり、エディとその連れの姿を認めると唇を戦慄かせる。
やっぱり彼もここに、…なかよさそうだねああよかった…
涙が一筋、こぼれ落ちる。]
[ 魔王の御前に至り、その尊顔を拝する。
こいつが皆を、…すごくつよそうでもやさしくしてくれそう…]
はふぅ…っ!
[ 中に仕込まれた小鱗蛇が脅迫を、…これはうれしいごほうび…してきて、
ウェルシュは身体を折って魔王に対し叩頭する形をとる。
握りしめた拳が、わずかばかりの戦意の証だった。*]
/*
おれもあたまがざんねんになってきたからもうねるぞ
さきにべっどでまってるからおしおきしにきてね (
[ 魔王が聖騎士叙勲を行うなど茶番でしかあるまい。
苛立つ、…きしになれたからおんがえしできた…。
感覚は曖昧模糊としていたが、何かひとつの節目を迎えた気はする。
顔を上げさせられ、魔王を見上げた。
重々しい中にも、深いものを感じる。
冷たい目だとは思えなかった。
彼を憎く思うのは、先入観だろうか。]
[ 自分の胸のあたりから、短剣が姿を現すのを見る。
刺さっていたものが抜かれたような、逆に身体の一部が分かたれたかのような。
心の剣だ、と魔王はおごそかに告げた。
抽象的な話は、魂のどこかに記憶されたが、今は理解が難しいと思った。
何が言いたい、…こんなものをいただけるなんて…
知るために、…ああ…
これを振るえと言ったな、…
ウェルシュは短剣を掴むや、魔王に斬りかかった。*]
[ 魔王が下賜した短剣は、割って入ったアレクシスの背を撫で斬りにする。]
んっあああ…!
[ 体内で蛇が暴れ、短剣を取り落としそうになって、とっさに刃の向きを変え、自分の胸に向ける。
そのまま引きつけた。]
[ それは自傷行為ではなく、出現した場所に鞘があるという直感に基づく収納方法である。
《心の剣》は心臓の位置に再び飲み込まれた。
そしてウェルシュ自身はアレクシスが呼び出した闇に飲まれる。]
──…、
[ 影の中から取り出された時、アレクシスが最初に投げかけたのは教育的指導だった。
それを聞く間も、目の焦点が虚ろだったのは、彼を斬ったことで"知った"ものゆえ。*]
[ アレクシスの中に見えた漆黒の空間は、以前、投げ入れられた水牢の比ではなかった。
そのあまりの果てのなさに目眩がする。
虚ろに酔ったというべきか。
立ちすくんでいると、なにやらピンクの霞が視界を埋め尽くす。
意外と子煩悩なのか?
相手を"知る"はずが、余計にわからなくなった気がした。 ]
[ 声が届く。呼びかける声。
はっと意識を取り戻せば、アレクシスの顔が近かった。
その唇の奥に牙があるのはわかっていたから、とっさに平手を飛ばす。*]
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