情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
[別に、この男が誰を口説こうと知ったことではないだろう。
そもそも鞘を口説くという発想がおかしい。
だが、好きにしろ、というのはなんだか違う気がした。
…ばーか、と心の裡で呟いてみる。
複雑だ。]
[そんな逡巡も、選ばれた答えに封印する。
与えるでも使うでもなく、力を合わせようとの提言に、やはり天性だなと痛感した。]
《ああ、やるぞ》
[闇の刃に働きかける。
熱に負けぬよう露を含ませ、髪を丹念に梳くように組成の方向を揃えて硬度を増し、魔力を練りこんでいった。*]
[練り上げられた闇の魔刃は、ギィとタクマの融合した意思である。
怜悧な動きで振り下ろされた一閃は、二人をこの世界に閉じ込めんとする呪を断ち切った。
相当に直裁な方法ではあったのだろう。
溢れ出した魔力の直撃はすさまじく、それを押さえ込むのに、ギィはまた無茶を重ね、自身の一部である闇の刃を折られて膝をついた。
刃なら継げるが人を癒す力はない。
タクマはただ、ギィを信じて待つ。]
《これは終わりではなく、始まりだ。
そうだろう?》
*
[全力をかけて戦った末に休息を求める者を、自分なら無様と呼ばない。
むしろ、愛しいとすら感じる。
面と向かって告げたりはしないが。]
《おまえが倒れているのに遭遇するのは初めてではないぞ》
[そんな姿を見られても気にする仲ではなくなった、というのはいささか浮かれすぎか。]
[見かけより消耗が激しいのか、立場を入れ替える誘惑に駆られたか、ギィが頼ってくる。
分かち与えられた血は ── 己と同じほどに古かった。
バックアップから、多頭竜に壊される寸前の姿を復元する。
ただ、吸血鬼の血を素材にしたゆえに、以前とは異なり、双眸は紅を宿していた。]
救助の要請を受諾する。
[横たわった身体の下に腕を差し入れ、横抱きにかかえ上げた。*]
[抱え上げた身体は冷たく、だが不快ではなかった。
脱力してすら、しなやかで優美である。
肩に頭をもたれかけさせれば首筋を牙に晒すことになるが、食糧としては見られていないだろうから、したいようにさせておいた。
沼に背を向けて歩き出せば、ギィが何か言った。]
おれの真名?
── おまえはもう、見ているはずだ。
/*
吸血鬼的には、ルーキス(光)の方じゃなくてよかったなw
うはうはしながら、忘れないうちにエピ延長して寝よう♪
深夜組はがんばってくれい**
[呼べとは言ったが、所有格にしろとは言ってない。
接吻けしろとも求めてない。
甘すぎる。
思わず蹌踉いた。]
痛い目を見るぞ。
[わずかに腕に力を込めたのは、事故防止だ。
抱擁の代わりなんかであるものか。]
おまえの真名も明かしてほしい。
[取り調べではなく、訊いた。
職業上では、一度もしたことのない問いである。]
…あ、 手帳。
[仕事を思い出したところで、手帳もお守りも、上半身とともに吹き飛ばされただろうことを思い出す。
今となっては沼の中だろう。]
…そういうことなんだろうな。
[これから帰るのは、元の世界であって、元の暮らしではない。
どうするという当てもなかったが、それだけは確実だった。*]
[間近にギィの瞳を覗き込む。
これからは、こうして紅の月を見ることができるのだろう。
この世界で結ばれた出来事の思い出に。]
いい覚悟だ。
[微笑む唇に視線を移す。
昨今は責任逃れをする輩も多いが、魔物は真摯だ。]
おまえがほしいのは、この人型か? それとも…?
[笑みを重ねる。
こんな軽口を叩くのもいつぶりだろう。
確かに、おまえのせいだ ── と告げた。*]
[答えは予想の範疇だったけれど、その声と仕草は、魂からのものだった。
深いところで共鳴する。]
それぞれを、それぞれのままに ──
[求めよ、と。
それができる器であると、感じるままに願った。*]
[悪戯な指先が肌を伝う。]
もう回復したんだな?
[触られてばかりいるのもこそばゆい。
身体の位置を入れ替えようかと考えたところに、使い魔が飛んできた。]
[何かやり残していることは、と問われ、目を細めた。]
おまえを淫行罪で逮捕することだな。
[もう追いかける必要はないけれど。
逃走劇は終幕だ。*]
[縛られることの何が愉しいのか、弾む声で快諾される。
更生の余地がなさそうであった。
何を連想したか、不意に神妙な面持ちで、降ろせと頼まれた。
彼にもやり残したことがあるようだ。]
印?
[いろいろくれたはずだが、また違うのか。
何かあるといけない、というからには保険のようなものなのだろう。]
[それは抱擁というよりは捕食の態勢に見えた。
首筋に差し込まれる皓い牙に痛みを覚えることはなく、ただその怜悧な存在を経験する。
自身の指で梳いたのでは決して感じない毛髪の粟立つような感触は、やはり官能的なものなのだろうか。]
…シン
[止めろ、でもなく、好い、でもなく、ただ、その名を息に乗せた。]
[印に込められた意味までは知識にないが、残された痕に注がれるギィの眼差しを見れば、この印を隠したり癒したりしないでおこうと思う。
印を晒してみせることで、やっかいごとに巻き込まれるかもしれなかったが、タクマの手に負えないようなら、その時はギィがなんとかするだろう。
それだけの価値はあるものだ。]
印を授けたところで、おまえのコレクションにはならないぞ。
[言葉にしてはそう告げる。
鞘は、戦人の腰にあればいいのだ。いつでも手の届くところに。
そうして、ギィの真似をして紅の髪を指に絡めると、額に触れるだけの口づけを落としたのだった。*]
[ギィは欲しい答えを返してくれた。
何よりも、その顔に溢れ出る愛しげな表情が嬉しい。
役に立つ、というのとは異なる価値観を ── 愛されるという新しい律を、彼は教えてくれた。]
[聞き間違いではないかと眉をあげる。
彼の感覚には、いまだについてゆけないところはあるけれど。
目の前に開かれた扉を潜ろう。
絆という手錠で互いをつないで。*]
/*
こんばんはー
わあ、村閉じが近い!
ミヒャエルもヒースも、ご参加ありがとうございました。
とてもとても嬉しかったです☆
こんな感じのペア村を気ままに企画しているので、また機会があったら遊んでやってくだされ。
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新