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貴族。平民。
その区別に関わらず、ナミュールに住む全員が
ナミュールの在り方について考えるようになればいい。
巫女姫と結界にこの国のすべての護りを押し付けるのではなく、ひとりひとりがこの国を守っているという意識を持つようになればいい。
俺はそのきっかけを作るために、
王府に民の力を突きつけ、千年の眠りから目覚めさせるつもりだ。
[だから。
言葉を続ける前に、熱を冷ますように息を吐く。]
貴族諸侯を粛清するのは、本意ではないな。
それはまた別の歪みを産むし、
彼らしか持っていない知識が、今は多すぎる。
[言って、ちらりと傍らの友に視線を走らせた。]
[最後の問いには、一度目を伏せた。]
───巫女姫は、ナミュールの象徴で、魂だ。
巫女姫を害すれば、俺たちに敵対するものは増えるだろう。
なにより、解放軍の中にも巫女姫に手を掛けることを恐れるものは多い。
皆の心の拠り所で、憧憬の対象だ。
巫女姫を失えば、ナミュールの魂は損なわれるだろう。
それでも、
巫女姫が頑なに変化を拒んだなら、
伝統を守り国を守り民を守ろうと向かってくるのなら、
… 俺は彼女を、殺すだろうな。
[それは、国を変えるために民の血を流すことを選んだ、昏い決意の行きつく果てだった。]
― アレイゼル領主館 応接室 ―
[語り終え、聞き終えた相手の目を見つめる。
駄目だな、と心のうちに息を落とした。
この男の心を動かせてはいない。
足りない、と感じる。]
ここで貴方に殺されるのなら、
俺は賭けに負けた無様な男ということだな。
友の命も他の人間の命も無駄に散らした
愚かな悪党として歴史書の隅にでも書かれるだろう。
[思考巡らせるらしき相手を見つめながら、沈黙のうちに待つ。
重い気配は、相手の鋭さが凪いだあとも消えなかった。]
巫女姫を、巫女姫という立場から解き放つことはできない。
それは、ナミュールの支柱を失うことになる。
あなたはそう言いたいのだろう。
俺は彼女を、当然にして国と人々を守るものであるという、
伝統が求め人々が求める意識から解放したい。
国の護りをすべて巫女姫と結界に頼り切り、
心の拠り所を巫女姫ただひとりに求める人々の心をこそ
変えていきたいんだ。
[問いに答える口調は平たんなものだったが、
その下でふつりふつりと沸いているものがある。
自分の不甲斐なさを恥じ、
更なる高みを渇望する心だ。]
[瞳に炎を映した貴族を、挑みかかるような眼差しで見つめる。
兵を貸すという言葉に、きっぱりと首を横に振った。]
───ありがたいが、断る。
王国騎士団を打ち倒すのに、貴族の私兵を借りては、
民の力は所詮その程度かと侮られるだろう。
ここは、俺たちだけの力で為すべき場面だ。
それに、今の俺では不足だ。
貴方の心を真底から揺さぶれないのでは、
ナミュールの民すべての心を動かすことなど到底不可能。
俺が、俺の力を証明したとき、
ナミュールの未来を照らすに足る者だと示したとき、
───迎えに来てほしい。
[誓うようにも、挑発するようにも、声は響いた。]
もし俺がこんなところで倒れてしまうようなら、
貴方は今のまま巫女姫についていられるほうがいい。
その方が、国は乱れない、だろう?
[少しばかり軽さを取り戻しておどけてみせ、
戦場に赴くべく立ち上がる。
船だけは貸してほしいと要請した。]**
/*
ええ、欲張りなんですよ。
受けるべきだと理性が言っていても、
どうも納得し切れないものがあると受けられないというか。
こう、なにかを妥協された気がして…。
うん。受けるべきだったんだろうけどねぇ。
(ソマリを困らせている気しかしない)
― 南島 ―
[盟主が不在の間も、南島の状況は刻々と動いていた。
シュビトから出た人々は、各地の町や村の人を取り込みつつ、
数百から千の規模の規模であちらこちらに集まっている。
駐留地では用意されていた武器が配られ、即席の武具が作られ、
ある程度の部隊行動ができるよう訓練が行われている。
彼らを指導するのは、ガートルートが鍛えた精兵たちだ。
学生らを中心とする、戦いの心得のあるものたちは
当初の予定通り、王府軍に対してゲリラ活動を続けていた。
民衆よりは幾分装備が良い彼らは、
王府の兵を襲撃することで、さらに装備を充実させている。
メレディス隊を襲撃したのもまた、そんな一隊だった。]
[南島に帰還した盟主らを待っていたのは、
王国の騎士団が南島に残って行動しているという知らせだった。
行動範囲を聞き、船でそのまま南側へと到達したときには、
騎士団と一戦交えたという話が加わる。
機械弓が有効だった、という話も聞いた。]
あまり好き放題にさせておくわけにもいかないな。
ここで、みなの訓練の成果も見せてもらおう。
[駐留地のひとつを訪れて状況を確認し、
この地の民兵を動かすことを決める。
若干の不安をまぶした歓声が上がった。]
[相手が少なくとも2隊いるとの知らせに少し考えるが、
1隊を確実に潰してしまおうという結論に至る。
歩兵が加わっていたという隊に狙いを定め、
駐留地の民兵らを出発させた。
民兵らが900にやや欠ける程度、
それに周辺の遊撃隊を呼び集めた100名ほどが加わる。
遊撃隊の半数には、有効であった機械弓がいきわたっていた。]
ガート、頼む。
[長年の気安さで遊撃隊の指揮を頼み、自分は民兵らとともに行くこととする。
相手騎士団の予想移動地点へと、およそ1000名ほどの隊が動き出した。]
[民兵の多くは鎧もつけない簡素な姿で、
豊富に産する竹に鉄の穂先だけを付けた長い槍と
大きな木の板に持ち手をとりつけた大盾を携えていた。
他には各々が鎚や手斧を持つのみである。
ただし、民兵の中に3人だけ、別の装備をしたものが混ざっている。
試みに、ライフル銃を持たせてみたものだった。
やがて前方より王府軍発見の知らせが届けば、
全員の上に緊張が走った。]
[ガートら遊撃隊のものたちが横に回り込んでいくのを見ながら、民兵たちは改めて隊伍を組みなおす。
全体で見れば、正方形の形だ。]
初実戦の相手が王国騎士団とはなぁ。
[方陣の中ほどで指示を飛ばしながら、周囲に聞こえぬようひそりと呟いた。
遠目にもわかる白銀の鎧が眩しい。
ふと、枯色の瞳が脳裏に浮かび、
深い息をして、それをゆっくりと消した。]
いいな。
訓練通りにやれば大丈夫だ。
俺たちが王国騎士団に勝てるってところを見せてやろう。
[応、と上がる声にかぶさるように、剣や槍を打ち鳴らす音が聞こえてくる。
それをかき消すように、声を張り上げた。]
構え!
[最初の号令で盾が隙間なく並べられ、槍が前へと向けられる。]
前進!
[次の号令で、密集体系を保ったまま、隊全体がじわじわと進み始めた。]
盾、上!
[相手が立ち止まり、弓兵が構えたのを見て号令する。
最前列を除く兵たちが盾を上に翳した。
隊全体に、まるで屋根を掛けたかのような形となる。
そこへ、矢が降り注いできた。
矢の多くは盾に突き立って止まる。
だが不幸にも盾の間をすり抜けた矢に当たって誰かが呻くたび、陣形に動揺が走った。]
うろたえるんじゃない!
死にたくなければ死ぬ気で陣形保て!
[叱咤して陣形を維持させつつ、不運に斃れたものを置き去りにして前進を続ける。
盾の隙間から覗きつつ、相手の矢が止み、接近戦を挑んで来る機をじっと待ち続けた。]
[騎士団の中から、張りのある声が届く。
声の持ち主が予想通りだったことに一度目を伏せ、
上の盾を開かせて、姿を晒した。]
俺たちは、誰かに押し付けられたものではない未来を勝ち取るために、立ち上がった者だ。
たとえ志半ばで倒れようとも、次に続く者のために道を切り開く。その覚悟で武器を手にした。
[半ばは民兵たちに聞かせるものだ。
既に屍を目にして怖気づく者へ。
自分の手で死を生み出すことに怯えた者へ。
そして誇り高き騎士団へ、その長へ、敵手たる資格を掲げてみせるための。]
新たなナミュールへの一歩だ。受けてもらおう!
[合図とともに、民兵に紛れていた3人の学生が立ち上がる。
それぞれの手には、ライフル銃が握られていて、銃口はまっすぐに騎士団へと向けられていた。]
[戦場に、3つの轟音が響き渡る。
近くにいた者は、いっとき耳が聞こえなくなるほどの。]
……行くぞ!
構え!駆け足!
[耳を塞いでいた手を離し、軽く頭を振ったのちに、前進を指示する。
盾と槍の列が、ひとつの壁となって突き進む。
両軍の先頭がぶつかり、騎兵に乗りこまれれば槍の列は容易く薙ぎ払われよう。だがその後ろから無心に新たな槍が突き出され振り下ろされ、戦いの激しさを増していく。]
そう。
だから俺たちは戦っている。
[屍を踏み越えてでも為すべき価値のあるもののために。
血を流すことでしか購えないもののために。]
俺が望む未来のために、
俺は、おまえを斬るんだ、フィオン・ヴァイサネン!
[乱戦の中、自分もまた剣を抜いた。
呼びかける声に、応えるように。]
[乱戦の合間を縫って駆ける。
振り下ろされる剣を、槍を潜り抜け、
栗毛に跨る白銀の前へ進む。]
俺が先へ進むために、
その首、貰い受ける!
[喉から声を迸らせながら、
馬上の相手に向けて、斜めに剣を走らせていた。]
[上から迅雷の如くに長剣が落ちてくる。
それを、咄嗟に引き抜いた2本目の剣で止めた。
否、止め切れずに刃が肩に食い込む。
肩の骨が砕けたのではないかという衝撃によろめき、
痛みに意識を飛ばしそうになるのを堪えた。
初めて知る、戦いの痛手。]
[切り上げた剣には手ごたえがあった。
金属と肉とを裂いた衝撃が腕に伝わる。
それもまた、調練では知ることのないもの。
落馬した彼女にさらに挑むべく駆け寄ったところで、
彼女の素顔と向かい合うこととなった。
こちらを睨みつけてくる枯色の瞳。
共に、学び舎で過ごしたことのある学友。]
…っ!
[逡巡は、半瞬ほどの間だった。
両手で一本の剣を握りしめ、切っ先をフィオンに向けて振りあげる。]
盟主 ジェフロイは、上級将校 サシャ を投票先に選びました。
/*
フィオンの言葉がいちいち心に突き刺さってだね。
こう、なんて鋭くて、的確で、地に足の着いたロールを書く人なのだろうかと。
ありがとう。いろいろ我儘通してキリングに行ってよかった。
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