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― 橋の北側・本隊 ―
[魔王が駐屯地へ移動したころ、本隊の先頭もようやく橋へ差し掛かろうとしていた。
無秩序に移動するゴブリンたちが橋の上で押し合いへし合いしながら渡っていき、コボルトたちがその間をすり抜ける。
ちょっとした混乱と小競り合いとを織り交ぜながらどうにか川を超えていく。
彼らが追い立てられるように移動するのにも理由はある。
魔軍最後尾付近より地を揺らす音が轟いていた。
オークの歩兵たちが打ち鳴らす太鼓は、大気を震わせ小さい連中を怯えさせる。
その後ろからさらに巨大な影が地面を踏み鳴らしていた。]
― 橋の南側平原 ―
[透明化を指摘されて、腹心の表情がわずかに変わる。
あまり感情を顔に出すことがない彼であったが、
共に過ごした時間は、短くはないのだ。]
……。
なんだ、おまえでも術に失敗することがあるのか。
仕方がないな。
儀式の間が完全となった暁には俺が修正してやろう。
なに。
異界の力を完全に手にすれば、その程度のことは造作もない。
[声には自信が溢れる。]
― 橋の南側平原 ―
[竜が出た、という悲鳴が聞こえると同時、
動揺がさざ波となって全軍へ広がっていく。
魔軍の兵の多くは、封印に歪められた時の中で
ほんの数世代前のこととして竜の恐怖の記憶を受けついでいる。
激しい戦乱を生き延びてきた記憶の利点と裏腹に、
そんな負の記憶をも受け継いでいた。]
―――いいだろう。
クレス。こちら側は任せる。
ひと揉みに押しつぶしてしまえ。
竜は、私の手で仕留めることとしよう。
[飛翔する竜を睨みながら、魔人の顔は昏い歓びに輝いていた。
提言を受け入れ、南岸へ到達した魔軍の指揮を任せおく。]
[本隊のゴブリンたちは、おおよそ3分の1から半分程度が渡り終えた、というところか。
恐慌状態になって橋の上でひしめき合うゴブリンたちを、魔王の乗る戦車と近衛隊が弾き飛ばしながら押し通る。
その後ろを、腹心より譲り受けた魔術師たちが続いた。]
― 橋の北側・本隊 ―
[上空にドラゴンを見つけた魔軍本隊は、その大部分を構成する小さい亜人たちが大混乱に陥っていた。
てんでばらばらに届かぬ矢を上空へ射ち放してみたり、我先に逃げ出そうとして転んだり。
そうして倒れるゴブリンたちを踏み潰しながら、魔王を乗せた戦車は軍の中核へと駆け戻る。]
太鼓を叩け!前進しろ!
貴様らの相手はドラゴンではない!
[魔王の叱咤にオークたちが太鼓を打ち鳴らし、集団に曲がりなりにも一定の方向性が生まれる。
目指すのは、船から新たに現れた敵軍。]
[オークらの後ろに控える巨人はといえば、戦いが始まったのを察知して、大気がひび割れるほどの咆哮を上げた。
引きずっていた攻城塔の綱から手を放し、手近に歩いているゴブリンを数匹まとめて掴み上げる。
巨人の腕力で放り投げられたゴブリンは、みごとな放物線を描き、接近してくる敵軍のあたりへと土煙を立てて落下した。]
― 橋北側 ―
[巨人の血走った目が竜を捉える。
再度の咆哮を上げると、巨人はドラゴンめがけて、手当たり次第に近くのゴブリンを投げつけ始めた。
一方、竜の炎で数十、あるいは数百の妖魔らが消し炭になり、その数倍のものたちが驚きおののいて逃げ出そうとする。
しかし、大群の勢いが止まることはなかった。
逃げ出そうとするものを呑みこみ踏み潰して前進する。
さながら生きた雪崩の如く。]
[竜が近づけば、巨人はそれを捕えようと手を伸ばした。
だが、動きの鈍い腕は掻い潜られ、鋭い爪を顔に受けて苦悶と怒りの声を上げる。
攻城塔に詰め込まれたコボルトたちは震えながらも竜へ向けて弓を射るが、非力な矢では竜の鱗に一筋の傷もつけられないだろう。]
[竜の咆哮とともに、燃える岩が降り注ぐ。
それは巨人を焼き、周辺のゴブリンをなぎ倒し、
攻城塔の一つを粉砕した。
だが巨人自身は、強大な体力と頑強な抵抗力をもって岩を薙ぎ払い、肌を焼かれながらも吼えた。
残る攻城塔を手に掴み、竜を叩き落とさんと大きく振り回す。]
― 橋北側 ―
[巨人が竜と戦い始めたころ、
魔人もまた、その戦いの近くへと向かっていた。]
貴様らはここで魔法の準備を。
俺からの合図を待て。
[二つの巨体による戦いに巻き込まれない位置に、
クレスの元から連れてきた魔術師たちを待機させる。
一方、自分はさらに肉薄するつもりだった。]
ついてきたのだから、おまえも役にたて。
[肩の上のコカトリスに言葉を掛け、
こけ?と首を傾げるそれを片手に持つ。
指先には、灰と硫黄をひとつまみ。
そして鷲の風切り羽。]
姿を変え、形を変え、
汝の真の力あらわさん。
目覚めよ。汝、猛きものよ。
[コカトリスの背に灰と硫黄で紋様を描き、
呪文と共に鷲の羽でそれを払う。
コカトリスはたちまち体を痙攣させ、
魔人の手から落ちて地面に体を伏せた。
次の瞬間、赤い閃光とともに小さな体は膨れ上がり、
その翼もまた大きく力強く伸び、広がる。]
あの時の若造が、ずいぶんと成長したものだ。
[上空から味方を援護しながら飛ぶ白い翼を一瞥し、
そちらへ背を向ける。]
おまえの首はあとで刈り取ってやる。
それまで良い子で待っているといい。
[嘲笑うような声は、別に相手に届かせるつもりはなく。
コカトリスの翼を竜へと向ける。]
― 巨人と竜 ―
[竜の背を打ち据えた攻城塔は一撃で砕け、
木端とコボルトらを地面に振りまいた。
巨人は無手になった手と上空にいる竜を見比べた後、
ぐっと腰を落として手を地面についた。
全身のばねを効かせ、巨人は蛙のように跳びあがる。
竜へと手を伸ばしたそこへ、氷の刃が降り注いだ。]
[おおおん、と悲しげな声を上げながら、
全身を切り裂かれた巨人は苦し紛れに両腕を振り、
そのまま地面へ仰向けに落下していった。
大地が震動で大きく揺れ、周囲に地割れが走る。
その時だ。
魔王の乗るコカトリスがそこへ現れたのは。]
そこの竜―――!
……もしやディルドレ…か?
[問いには驚きと歓喜が混ざる。]
ディルドレだな?そうだな!
よくもまあ、みごとに老いさらばえたものだ!
[怪鳥に乗る魔人は、竜と相対しながらもちらりと視線を王子に向ける。
歯牙にもかけないという態度を取りつつ、
そちらとの間合いを計ってもいた。
竜が何を第一と考えているか。
それは、少し考えればわかること。]
/*
なんか焦ると更新ボタン連打したくなるので、
代わりに手が空くと灰を打ちまくるという。
無駄にログを伸ばしてくれるわ!(悪)
/*
こう、灰を埋める時間が合ったら、ログを予測して書いておけよとかいう気もするのだけれども、どうもリレーでしか文章が書けなくてだね。
こういう時は不便な体質である。
[ペガサスが上空へと駆け上がる。
それを横目に確認して、コカトリスを緩やかな螺旋を描くように上昇させた。
いつの間にか湧き出した厚い雲が空を覆い、時折稲光が走る。]
ははは。
ロルフのおかげで、ずっと眠っていたからな。
[睨む竜へ楽しげに笑ってみせる。]
おかげでおまえの死に顔を拝めるというのだから。
そこはロルフに感謝してやってもいいな。
[笑いながらコカトリスを上昇させ続ける。
その頭上から、天の雷霆が打ちおろされた。]
[電撃は確かに魔王の体を焼いた。
だが、体中に稲妻の名残をまとわりつかせながら、
魔王は倒れることなくコカトリスの背にあった。
上空の王子を見上げて、にやりと笑う。]
炎よ、我が敵を撃て!
[短い詠唱とともに、手の先に炎の槍を生み出す。
それは一直線に王子へと飛んだ。]
[同時に、地上で待機する魔術師たちへと合図を送る。
王子への攻撃に気が逸れるだろう竜を貫くべく、巨大な石槍がいくつも生み出され、空へと一斉に解き放たれた。]
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